SCP-7302
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アイテム番号: SCP-7302

オブジェクトクラス: Uncontained

特別収容プロトコル: SCP-7302会員は特異な能力を帯びているため、収容は現時点で実行不可能です。諜報チームは、2名以上のSCP-7302会員が交流する際、異常現象が発生しないかを監視するものとします。

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SCP-7302-0を写した既知の最も鮮明な写真。

説明: SCP-7302は異常実体の食物としての消費を活動主体とする組織 “テラトファガス・クラブ”Teratophagous Club の会員の総称です。クラブ自体は何らかの形で数世紀前から存在しますが、会員数が6名を上回ったことはありません。

SCP-7302会員を収容するための財団職員の取り組みは、異常物質の摂取に起因する彼らの能力のため、いずれも成功していません。民間人17名が死亡し、蘇生イベント36件が発生した2013年の作戦失敗以降、積極的な収容試行は得策ではないと判断されています。

本稿執筆現在、SCP-7302には4名の会員が所属しています。

  • SCP-7302-1、別名 ジェームズ・ユーテル、イギリス人の料理人/メディア・パーソナリティ。1997年、スコットランドで異常な有毒齧歯類を発見・摂取したと主張してSCP-7302に加入した。SCP-7302の仲間内では“料理人”と呼ばれる。
  • SCP-7302-2、別名 ジャン・アンテルム、国粋主義的な見解で知られるフランス人政治家。1989年、北アフリカで奇跡術的な実体を捕獲・摂取した後、SCP-7302に加入した。SCP-7302の仲間内では“政治家”と呼ばれる。
  • SCP-7302-3、別名 ケネス・ヤン、中国系アメリカ人の実業家。2005年、数羽の異常なニワトリ1を摂取目的で輸入した後、SCP-7302に加入した。SCP-7302の仲間内では“輸入商”と呼ばれる。
  • SCP-7302-0、名前・出身地不詳の大柄な白人男性。SCP-7302の創設時からの会員であり、能力や経歴は不明。SCP-7302の仲間内では“創設者”と呼ばれる。

補遺 2023-01-02:

2022年12月31日、SCP-7302-1、-2、-3が2毎年恒例の新年晩餐会に出席するため、ニューヨーク州バックランドへと移動するのが確認されました。3名は全員、午後遅くになってから町の港にある小さな海鮮レストランに入りました。財団エージェントは付近に3ヶ所の監視ポイントを確立しました。

19:30頃、レストランの近傍でマグニチュード5.9の地震が記録されました。3分後に接近した財団エージェントは、SCP-7302会員らを発見できませんでした。レストランの内部は数トン相当の内臓にまみれており、そのいずれもが既知の地球上の生物と遺伝的に一致しませんでした。

SCP-7302会員らの行方は現在不明です。調査は進行中です。

補遺 2023-01-05:

SCP-7302-2の個人資産の押収と分析の過程で、財団職員はSCP-7302が開催した幾つかの晩餐会の映像が記録されたハードドライブを発見しました。当該記録が発見された部屋の状況を基に、これらの映像は、SCP-7302-2がエキゾチックな肉類の摂取と関連する性的倒錯を満たす目的で録画・再視聴していたものだと仮定されています。

2022年12月31日に開催された晩餐会の映像は、地震の直後、遠隔操作でハードドライブにアップロードされていました。

映像記録


日付: 2022-12-31 19:23

注記: 映像はSCP-7302-2の胸部に設置されたカメラで撮影されている。可読性を考慮し、各会員を指す名称としてSCP-7302の内輪の呼び名を用いている。


[記録開始]

録画は暗い海鮮レストランの内部から始まる。唯一映っている光源は、厨房と、2人の男が着席しているテーブルの上に吊るされたランプである。カメラがテーブルに接近する。

政治家: やあ、友よ。またしても一年が過ぎ去っていったな、え?

輸入商が立ち上がり、笑顔で政治家と握手する。テーブルの上座にいる男は含み笑いするが、立ち上がらない。彼の顔は未知の理由でぼやけているが、明らかに創設者である。

厨房のドアが開く音が聞こえ、カメラ視点が動いて、近付いてくる料理人を映す。料理人の表情が険しくなる。

料理人: 勘弁してくれ、ジャン、会合の度にそのふざけたカメラを付けてこなきゃ気が済まないか? スタジオに連れ戻された気分になる。

創設者: さあ、さあ。

料理人とカメラ視点はテーブルに向き直る。創設者は立ち上がっていない。

創設者: 誓いを忘れてはいかんぞ、君。我々は権力者同士、支配力という絆で結ばれた仲だ。果たして君は他の会員たちの消費の楽しみ方を批評できる立場かね?

料理人: そうでした。仰る通りです、はい、申し訳ございません。

創設者: 謝る必要はない! 今晩は何が楽しめるのかを教えてくれたまえ。

カメラ視点は料理人に向き直る。料理人の顔は先程よりも蒼褪めている。

料理人: はい、創設者様。まず、生のカーバンクルにレモン汁をかけて味わいます。メインコースにはナックラヴィーの蒸し煮 シログワイ添えをご用意いたしました。食後のデザートはニカラグア産アクマワナの果実でございます。

創設者: それは素晴らしい。始めよう。

料理人は頷き、背を向けて厨房へと戻っていく。政治家のカメラ視点がテーブルに向き直ると、輸入屋が身を乗り出す。

輸入商: この際言っときますけどね、ナックラヴィーをここまで運ぶ手間は悪夢でしたよ。オルカディア当局が色々と特殊な書類を出せと言うし、いつものパイロットは臭いのせいで吐き気を -

レストランの裏口が開く音がする3。カメラが向きを変え、暗がりに立つ3つのシルエットを映す。若干の訛りがある低い声が聞こえる。

不明#1: 失礼します。外で車が故障してしまいました。電話をお持ちなら、貸していただけませんか?

政治家が椅子から立ち上がり、カメラの角度が上がる。隣で椅子の足が床を擦る音が聞こえ、輸入商も立ち上がる。厨房のドアが開く音がする。

料理人: お前ら、ここで何をしてる? この建物は私有地だ。とっとと -

3つのシルエットのうち1つがちらつき、視点外に消える。政治家の背後から叫び声と衝突音が聞こえ、振り向いたカメラに、もつれた長髪の痩せた人物が料理人の首を掴んで持ち上げている様子が映る。割れたワインボトルが床に落ちている。

不明#2: ここで何をしてるかだって? あんたはあたしから何を奪ったか分かってんのか?

料理人: 生意気な口を利きやがって、このクソ

料理人の皮膚が波打ち、一瞬、剥がれ落ちかけたように見える。対峙する人物の握力が目に見えて強まり、料理人の皮膚の位置を固定する。

料理人: てめえ、何者だ?

最初に発言した人物が、部屋の向こうから仲間に呼びかける。

不明#1: アシェラの到着を待つつもりじゃなかったんですか?

料理人を抑えつけていた人物は唾を吐き捨て、彼を床に叩き付ける。料理人が苦痛の呻き声を上げる。

創設者: 君たち3人とも、自己紹介をしてくれるかね? これまで会った覚えは無いはずだ。

創設者は椅子から立ち上がっていない。政治家がテーブルに向き直ると、他2人の侵入者は数フィート離れた場所に立っている。最初に発言した男性は長身かつ色黒で、両腕には薄いアラビア文字が見える。その隣に立つ小柄な人物は、フードを被って顔を隠している。

不明#1: 実のところ、それは厳密には正しくありません。私はユーセフと申します。そちらにいらっしゃるアンセルムさんと1989年にお会いしました。

政治家: お前のような輩と会ったことはない。

ユーセフ: あちらの、あー、せっかちな友人はキャリスです。彼女は2005年頃、どこかでユーテルさんとお会いしたはずです。

カメラの後ろで料理人が話そうとした際、耳障りな音が聞こえる。直後の破砕音と苦しげな声から、キャリスが料理人を更に負傷させたことが伺える。

ユーセフ: そして、こちらはアカエです。ヤンさん、彼女の顔を覚えていますか?

輸入商: もう沢山だ。創設者様、こいつらは私が始末します。

カメラの隣から、柔らかく湿った何かが生える音が聞こえ、突風でユーセフの髪がなびく。ユーセフの隣に立っていたフード姿の人物が飛び掛かる。政治家が輸入商に向き直る前に、フード姿の人物はテーブルに置かれていたステーキナイフを輸入商の頸静脈に押し当てている。輸入商は現在、黒い翼を生やしており、鼻は膨張して鮮やかな赤色になっている。輸入商は身動きせず、ナイフを見ようとして寄り目になっている。

ユーセフ: 覚えているはずですよ。3ヶ月前、彼女が愛していた女性を撃ち落とした直後に、彼女の姿を見ているのですから。

輸入商: 女なんて殺してない。本当だ、やってない!

アカエは何事かを小声で輸入商に囁きかける。ナイフに沿って、輸入商の首に赤い血の線が浮かび上がる。

輸入商: 日本語なんか分かんねえよ!

創設者: 天狗のことだ、ケネス。君が今生やしておる翼の元の持ち主だ。

テーブルの反対側で、創設者が椅子の背にもたれかかり、ユーセフを見ている。

輸入商: て、天狗? じゃねえじゃねえか、あれは -

政治家: ケン、空気を読んだ方が身のためだぞ。

輸入商が口をつぐむ。カメラ視点がユーセフに向き直る。

政治家: 私が誰かを知っているなら、若者よ、私に何ができるかも知っているだろうね。

ユーセフ: ええ、あなたに何ができるかは完璧に知っています。

ユセフはゆったりとテーブルを回り、政治家に接近する。強力な奇跡術フィールドによって映像に歪みが生じ始める。

政治家: 私は天空から雷霆を召喚できる。私はお前をシラミに変えて踏み潰すこともできる。私は -

ユーセフ: 招かれざる家に入ることができる。

ユーセフは周囲でちらつく魔術を何事も無く通り抜ける。政治家が一歩、そしてさらに一歩後ずさりする。

ユーセフ: あなたは眠っている男を、光と魔法と純真さでできた男を見つけることができる。そしてその心臓に刃物を突き刺すことができる。私は個人的な経験を通してそれを知っています。

政治家: どういう -

ユーセフはテーブルに置かれたナイフを掴み、カメラの視点外で政治家の腹に突き刺す。政治家は後ろによろめいて別なテーブルにぶつかり、1脚の椅子に力なく座り込む。ユーセフは視点内に留まっているが、背後のテーブル上に位置する光によって、その顔は陰に隠れている。

ユーセフ: あなたはご自分で消化した魔法しか身に着けていません、アンセルムさん。私は20年間それに囲まれて生きてきました。あなたが憎しみを込めて私にできることのうち、私が愛情と共に感じたことがないものは1つもありません。

創設者: これは実際、ヤンくんに同意せざるを得ないようだ。

創設者が立ち上がり、背筋を伸ばす。

創設者: いい加減飽き飽きしてきたよ。ところでケネス、本当に小さなナイフ1本で倒されるつもりか?

輸入商が話そうと口を開くが、アカエが割り込む。

アカエ: 剣術を編み出したのは天狗だ。食べたって何も分からない。

創設者: それにジェームズ、君もそうあっけなく諦めるのかね? 栄養失調の浮浪児相手に?

キャリス: こいつはあの子の魔法を使ってる、それかそうしようと、あの子の魔法を使おうとしてる、でもこいつはあの子の名前を知らない。名前を知らないなら、あの子を愛してないなら、あんたは何も得られやしない、手に入るのは滓だけだ、何一つ得られない! 何一つ! 何一つ!

大きな骨折音に続いて、静かなゴボゴボという音が聞こえる。創設者が溜め息を吐く。

ユーセフ: 大丈夫ですよ、キャリス。大丈夫。もうすぐ片が付きます。

創設者: ああ、言葉が足りなかったかな。相手はこのクラブの一端として我々に消費の悦楽を与えてくれた数多いセルキーの1匹の恋人か。私の勘違いだった。

視界外からシュッという音が聞こえ、一瞬にしてキャリスが創設者の喉元を両手で掴んでいる。創設者は動揺を示さない。

創設者: 君たちの事情は尊重しよう。しかし、自分が置かれている立場をよく理解しておらんようだ。

創設者の皮膚が波打ち、その数十ヶ所が勢いよく裂ける。太い暗色の触手が創設者の皮膚から飛び出し、3人の侵入者に巻き付いて、両腕を脇腹に押さえつける。再び話し始める時、顔の横から突き出している触手のせいで、創設者の声は不明瞭になっている。

創設者: 君たち3人は、何匹かの魔物と臥所を供にした程度で、自分は強大だと思い込んでおる。しかし、私は君たちには想像も付かんような存在を消費してきた。神話全体、万神殿全体を食してきた。デザートの余地を残しながらも、時の流れの中でその名が忘れ去られた神々を呑んできたのだ。

不明: ならば、彼らの名前は?

創設者が入口に目線を向ける。3人の侵入者が奇妙に穏やかな表情になる。カメラは角度の都合上、発話者の姿を映していないが、声のする方向からは柔らかな光が差し込んでいる。

不明: そこまで喰らったことを誇るなら、どれだけ時が流れていても、きっとお前は彼らの名前を学んだはずだ。彼らは何という名前だった?

創設者: なぜ叩き落としたブヨの名をいちいち覚えておかねばならんのだ?

もう1本の触手が創設者の胴体から飛び出し、光に向かって加速しながら視点外へ出ていく。破砕音に続いて、液体が撥ねる湿った音が聞こえる。触手の動きが止まる。別な触手が顔から生えているため、創設者の表情は変化しないが、目が見開かれる。

不明: 私はね、期待していたのだよ。お前が彼らに、彼女に対して僅かばかりでも敬意を払っていたことを望んでいた。

不明: しかし、愚かな望みだった。お前たちの世界には敬意など存在しないのだろう? 敬うに値するものは全て喰らわれるのだからな。

創設者: 貴様、何様のつもりだ?

動かなくなった触手の根元から、更に数本の触手が突き出す。いずれも視界外へ出た途端に動かなくなる。未知の声は話し続ける。

不明: 因みに彼女の名はティアマス。彼女は輝かしく冷徹で、声は鯨の歌のようであり、触手は大洋の幅を占めるほどに伸びていた。そして今、お前は彼女から盗み取った力で、辛うじて1つの部屋を支配している。

創設者: 貴様が何者かは知らんが、叩き潰してやる。貴様は今までで最高の食事になるだろう。

創設者の姿がぼやけ、視界外へと消える。3人の侵入者が床に落ちる。

不明: 私は彼女のあらゆる側面を愛していた者だよ。そして、ある愚か者がそのちっぽけな頭の中に何の考えも無く、彼女の側面の1つを喰らった時、残りはどこかへ消えなければならなかった。

不明: 愛とはそういうものだ。相互の崇拝なのだ。

大きな破砕音に続いて、何かが弾ける音がする。3人の侵入者がカメラ視点から消失し、押し寄せた大量の内臓がカメラに叩き付けられて、映像は終了する。


[記録終了]

この映像の確認後、レストランの奥の壁に強く圧迫されたSCP-7302-1、-2、-3の死体が発見されました。周囲を包み込んでいた内臓によって、彼らの死体はほぼ完全に溶解していました。

SCP-7302の壊滅に関与した人物4名の発見・収容は最優先事項です。

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