SCP-7337
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サイト-88植物園の水場で食物の欠片を洗うSCP-7337。

アイテム番号: SCP-7337

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: その比較的軽微な異常性と、ヴェールを脅かす危険性の低さに鑑みて、SCP-7337は未収容状態に置くことが認められています。

SCP-7337の研究を担当する職員は、サイト-88の植物園に、SCP-7337と最大20羽の他のカラスのための適切な塒を維持します。最低2名の主要世話役が任命され、SCP-7337に割り当てられる食料、清掃用具、娯楽/訓練用具を含む設備を管理します。設備の追加はサイト管理官に要請するものとします。

SCP-7337や関連するカラスとの直接交流は、必須の鳥類学研修を修了したクリアランスレベル2以上の研究員にのみ許可されます。SCP-7337の群れに属するカラス (SCP-7337自体を含む) が財団職員との信頼関係を築いた場合、その職員はカラス (たち) とのあらゆる交流を入念に記録します。これらの報告は毎週、SCP-7337研究チームに提出されます。

説明: SCP-7337は複数の軽微な異常性を有する1羽の Corvus brachyrhynchos (アメリカガラス) です。これらの異常性には以下が含まれます。

  • 高度な知性。特にパズルを解く能力は平均的な成人に匹敵する。
  • 同種の他個体を引き寄せて群れを形成する能力1
  • 金色の羽根を落とし、他のカラスの身体に恒久的に付着させる能力2 (この現象の重要性は現在不明) 。
  • 遠距離から間接的に観察すると、尾羽の付け根に3本目の脚が見える。

SCP-7337は通常、同種の様々なカラス、最も一般的には鳴き声や翼を広げる仕草で食物をねだるなどの従属的な態度を取る個体に囲まれています。この種の非異常なカラスは大抵の場合、そのような行動を利用して自らの優位を確立しますが、SCP-7337は攻撃的な振る舞いを見せず、自らと他個体の間に階層関係を築こうともしないことが注目されています。

また、SCP-7337が形成する群れは、一般的なカラスの集団によく見られる家族関係の個体からは構成されません。代わりに、SCP-7337はそれ以前に他の群れから排斥された個体のみを選んで接触するようです。この現象の更なる調査が現在進行中です。

SCP-7337は当初、サイト-88の敷地内に営巣する様々なカラスが、羽毛の中に1枚だけ金色の羽根を持っているという、全く別のアノマリーとして登録されました。当該アノマリーが財団の注目を集めたのは、2020年にハリケーン“サリー”の上陸が現地に生息するカラスの大混乱を招き、多数の群れの解散を引き起こす少し前だったことが確認されています。ハリケーンの後、サイト-88とその周辺を塒とし、金色の羽を1枚持つカラスの数は230%増加しました。

この現象の要因は、1羽のカラス (後日SCP-7337と特定) が自らの羽根を引き抜き、他のカラスの風切羽の中に配置する様子を、2020/12/31にゴンザロ・パエス研究員が目撃するまでは謎に包まれていました。植え込まれた羽根が過去に観察された金色に変色したため、同地域に生息する様々なカラスの調査が実施されました。SCP-7337は金色の羽根を持たない唯一のカラスであったため、容易に特定されました。パエス研究員が観察した挙動は、2021/01/03にも別なカラスに対して繰り返され、SCP-7337はその後間もなく正式に分類されました。

補遺 SCP-7337-1: SCP-7337プロジェクトの (元) 班長、大塚研究員による行動記録

SCP-7337 ログ1: 大塚研究員
- 非異常なカラスと一致する行動 (採餌した物を溜め込む習性)
- 人間を警戒しているようだが (普通だ) SCP-7337の群れはリソースを提供する人間の近くではあまり怯える様子を見せない
- カラスがどのようにエッジケースを判断するかは不明 (例: 水浴び用の噴水を修理する整備員)
- カラスたちは餌台を毎日補充しに来る人を認識しているらしい
- 私は髪の色で識別されている? 若いスタッフより白髪が多く、おもちゃや娯楽を与えている

SCP-7337 ログ12: 大塚研究員
- SCP-7337グループのカラスの多くが求愛行動を行っている
- 巣作りはまだ見られない
- 幾つかの小さな娯楽用品 (光るおもちゃ) が先週なくなった
- SCP-7337の群れは、花粉媒介者を呼び寄せるためにテーブルに乗せた春の花束から、特定の花を持っていくこともある
- カラスたちは“代用品”を持ってこようとしている (小銭、割れたCDの破片、ファストフードの箱半分など)
- “代用品”はカラスたちの娯楽用品を乗せたテーブルに放置される

SCP-7337 ログ25: 大塚研究員
- 暑さと湿気 = カラスを常に見守るスタッフの数が減っている
- SCP-7337と群れの仲間たちは庭の日陰に留まっている
- 群れに新しいカラス。カラスたちはここの人々に順応しつつある
- SCP-7337が庭を“散歩”し、新入りのカラス (みすぼらしい雄) がその後に付いて行く
- 私に近付くと、新入りのカラスは非常に警戒していたが、SCP-7337は新入りを軽く押して前進させた。両方に殻をむいたピーナッツをあげた
- どちらのカラスも私が数歩下がるまで食べ物に近寄らなかった
- 訊くべきこと: 鳥小屋を設置する資金? カラスたちが過ごしやすい温度調節された場所

SCP-7337 ログ38: 大塚研究員
- 今日は秋をテーマにした軽いピクニックをカラスたちのそばの敷地で行った
- 誰かが鳥にとって安全なマフィンを作ったので、スタッフはマフィンの欠片を持ち、SCP-7337や他のカラスが近付いて来るかを確かめようとした
- カラスたちは近寄らなかったが、代わりに1人の次席研究員に群がった
- この研究員はピクニックの間とても静かだった (財団の修士課程を修了したばかりで、次の学位取得の方向性を迷っていた) 。カラスたちが近寄った理由?
- SCP-7337の群れの一部は彼女の肩に止まり、髪をとかそうとした

SCP-7337 ログ63、メモから音声記録に切り替えて2週目。監督評議会は後付けの考察よりも自発的な観察を求めているんだろう。さて。温室と植物園の他の区画を行き来するには、もう1枚上着を持ってくるべきだったな。温室に小さな側室を設けて、カラスたちに使わせることにした。好き勝手に出入りできるのでお気に召したようだ。カラスたちは暖かい場所を好んでいるらしく、ランプの下に身を寄せているのを見かける。私を見かけると年配のカラスは鳴き声で呼びかけるが、以前のように群がってくることはない。私の気持ちが塞いでいるのに気付いたんだろうか。賢い鳥だ。 [合間] 引退したら彼らが恋しくて仕方なくなるだろう。定年退職の年齢はとっくに過ぎているが、現状に満足することがどうしてもできなかった。私にはいつもやりたい事があった。今でもやりたい事はあるが、それが純粋に研究を続けたいからなのか、仕事に追われなくなった後の生活が怖いだけなのかはよく分からない。自分の知っている事に専念するほうが気楽だ。

SCP-7337 ログ78。もうそんなになるのか? [合間] また春が巡ってきた。あと数日で引退だなんて信じられない。上層部は我々のために中庭で式典を開くと言った。そこで特典として、老後の家の鍵を受け取るわけだ。多分カラスたちも私を見るだろう。大勢の人間を見るのは初めてだろうな。我々も同じく大きな群れの一員なのだと思うだろうか? [合間] 毎日出勤する必要がなくなるのは妙な感じだ。退職者コミュニティまでは車で数分なのに、遥か遠くへ離れるような気がしてしまう。 [合間] 訪ねてきても構わないとは言われている。多分そうする。

SCP-7337 ログ79。…まず何から話すべきだろう。私の髪の中には、SCP-7337が抜いた金色の羽根が混ざっている。群れに最後の挨拶をしに行ったんだ、特別なおやつも持ってね。すると… 何故か、彼らは知っているという気がした。ほとんど全てのカラスが集まっていた。私は1羽1羽の特徴を知っている。嘴が少し曲がった小さな癇癪持ちの子。頭の羽がぼさぼさになっている年上の個体。爪先が欠けた威厳のある雌。

SCP-7337は式典の後で私を見つけた。私は… 普段と同じく、いつものベンチに座っていた。 [笑い] またおやつが欲しいのか、遊びたいのかと思った。でも違ったんだ。羽根を嘴にくわえたまま、私の肩に飛び乗って、私の髪にそれを突き刺した。私はそれを引き抜けなかった、そして今は… 髪に金色の筋が入っている。すぐ報告したが、サイト管理官は“目を光らせておけ、時々状況報告をくれ、移動の際は注意しろ”というばかりだった。 [合間] 何だろう、私は… この先が楽しみになっているんだと思う。本当の意味で身を落ち着けるのはどんな感じか、ずっと考えてきたんだ。私はカラスたちが居場所を見つけるのを1年間見守ってきた。今度は私の番なんだろう。

結: 2023/06/15、SCP-7337プロジェクトに配属された財団職員は、大塚研究員からの手紙を受け取りました。この手紙には、大塚研究員が他の退職した財団職員たちと共有している地所のピクニックテーブルに、3羽のカラス — 親2羽と幼鳥1羽だと推定される — が止まっている様子を撮影した写真が同封されていました。2羽の親カラスはどちらも1枚の金色の羽根3を羽毛の中に有しており、幼鳥は餌を出す仕掛けが付いた玩具で遊んでいます。大塚研究員はテーブルに座っており、彼女の自然な銀白色の頭髪には黒と金色の目立つ筋が通っています。手紙に署名は無く、“新しい坊やを連れて遊びに来てくれた。覚えていてくれるのは嬉しいことだ。”と記されていました。


補遺 SCP-7337-2: 2024/12/06、財団職員は、SCP-7337の群れに属する若いカラスが金色の羽根を受け取るのを観察しました。しかしながら、普段のように羽根が融合する代わりに、問題のカラスは全身の羽毛が黒い筋の通った金色に変色しました。当該事案の映像記録を綿密に検査したところ、このカラスは特定の角度から観察すると3本目の脚を有するように見えることも判明しました。SCP-7337は一見したところ非異常なカラスに戻ったことが注目されました。

暫定的にSCP-7337-1と指定された新たなアノマリー継承者は、それ以前の交流において、人間の感情に一際敏感であり、SCP-7337の群れ全体から広く受け入れられていました。SCP-7337-1の最も頻繁に記録された活動は、他のカラスたちへの“支援”であり、SCP-7337を援助して新入りに植物園を案内し、各種リソースがある場所を示していたことが知られています。ある一事例において、SCP-7337-1は次席研究員が特定の花壇に使用する正しい肥料を探すのを手伝ったことも確認されています。

一方、SCP-7337は大塚研究員の退職者用アパートの近場で頻繁に目撃されており、アパートの敷地に近い木に営巣しています。SCP-7337とSCP-7337-1の指定名称の変更に関する議論が進行中です。SCP-7337固有の異常性が単なる偶然からカラスに影響を及ぼすのか、それとも自ら獲得しなければならない地位なのかをより良く理解するために、更なる研究が必要とされています。




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