アイテム番号: SCP-7355
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-7355は発見されて間もないため、以下の特別収容プロトコルは不完全です。異常性に関する新たなデータが発見され次第更新されます。
ドノヴァン・ヘラー記念病院は財団のフロント企業によって買収されます。二名の警備員がSCP-7355の玄関外に配備され、進入を試みた個人は他の場所に誘導されます。フィオドール・アンドリッチ博士の手術に関わった全ての個人は記憶処理されます。
アンドリッチ博士の捜索は継続されます。
説明: SCP-7355はドノヴァン・ヘラー記念病院の305号室であり、ほとんど未解明である多くの異常現象の中心です。ドノヴァン・ヘラー記念病院は1989年にペンシルバニア州スクラントンに実業家のヤコブ・ヘラーによって設立されました。ヘラーは、彼の息子・ドノヴァンが交通事故で亡くなったのを受けてこの病院を設立しました。
SCP-7355は、2023年5月11日に自動車に轢かれたアンドリッチ博士がドノヴァン・ヘラー記念病院に搬送された際に発見されました。アンドリッチ博士は重体で、首の骨折はかろうじて免れていたものの、頸椎に軽度の損傷が見られました。彼は病院の305号室で治療を受けました。特筆すべきことに、この事故以前、ドノヴァン・ヘラー記念病院には305号室が存在しませんでした。
SCP-7355の異常特性は現時点でほとんど未解明ですが、主たる異常性はアキヴァ放射の密度が極端に大きいことです。SCP-7355の内部には、病院内の他の部屋の約870倍ものアキヴァ放射が存在します。放射線量はSCP-7355が発見されてから増え続けています。現在のアキヴァ放射線強度は神格による介入の特徴を示すレベルに達しています。詳細は補遺7355.03を参照してください。
補遺: 7355.01: 観測された異常性の一覧
以下はアンドリッチ博士の入院中に発生したことが知られている異常現象の一覧です。さらなる調査が継続中です。
- アンドリッチ博士の手術中、数人の医師の動作が通常考えられる程度を超えて正確だった。後のインタビューでルドルフ・ワトキンス博士は、強力で痛みを伴う力が彼の手を掴んで動かしていたと説明している。何人かの医師は、腕に怪我、打撲痕、及び軽度の骨折が見られた。
- 手術中、複数の肋骨がアンドリッチ博士の肺を潰し、穴が開く。肺移植が必要となる。この事象の間、Site-██にいた複数の財団職員の臓器が自発的に消失し、緊急手当てが必要になる。何人かの職員は「神が他の誰かが手にすることを望んでいる」と述べ、臓器を失っても幸福であると主張した。それらの臓器は後にドノヴァン・ヘラー記念病院の臓器保管庫で発見された。
- 手術の最中、歪んだトランペットと子供の叫び声が混じった音が不明な音源から聞こえ、7分間続く。この時点でSCP-7355内部のアキヴァ放射はほぼ2倍になった。
- 手術中、人間の血液33%、聖水15%、モルヒネ52%から成る液体がアンドリッチ博士の皮膚表面に常に生成する。この液体によってアンドリッチ博士の身体が異常に回復したと見られる。
これらの事象が発生しなければ、アンドリッチ博士は死亡しただろうと考えられています。
補遺 7355.02: 回収された文書
2023年6月20日、まだ退院していなかったものの、アンドリッチ博士は車いすを使用し話せるようになるまで回復しました。彼に異常性について説明し、他の異常現象に警戒するように指示することが決定されました。アンドリッチ博士はこの後、入院中に以下の文書を執筆しています。
神が私を生かそうとしているとしか思えない。
つまり、あの手術室を使って彼が私の命を救ったことは私にとって信じられないことだ。全ての人の中で、私のためだけのアノマリーが存在するというのは、本当にすごいことだ。そして、それが宗教的なアノマリーであること、我々が神が関与したことを証明する数値とデータを保有していることもだ。もしそうでないとしても、それは私の命を救うためだけに作られたものだ。神からの贈り物。私が死なずに生きていける機会。
それから、私はあることに気づいた。私は悟った。神が私の命を救ったのはこれが初めてではない。本当なら死ぬはずだった出来事がこれまでいくつもあった。生まれた時、私はしわくちゃで、黄疸があって、脆弱だった。正直、母が待っていたら私は死んでいただろう。医者の助言で待っていたのだ。もし彼女が別の医者に変えていなければ、私は生きられなかっただろう。一連の説明しがたい出来事たちが私に、そして私の人生につながっていた。
それだけではない。3歳の時、溺れかけたことがある。17歳のとき、腕を切った。9歳の時、屋根から落ちた。フライトをキャンセルした後、その飛行機が墜落したことを知った。それらすべての瞬間に神がおられたから、私は生きることが出来たのだろう。偶然の積み重なりにも見えるが、全て一つの意味があるはずだ。他の人たちが死んで、私が生きている理由。子供たちが死体になって、私はそうならなかった理由。
だから、あの部屋は神様で、彼は何らかの目的で私を生かしたい、根拠を持ってそう結論付けた。私は彼の意思を伝える預言者か、使者か、あるいはエージェントなのだろうか?私には本当に何も分からないが、私が生き残ったことには何か意味があるはずだ。あの部屋。305。彼が私のために、そして私のためだけに作った物。そこに神はおられる。そこで私は神を見つける。だから、私は戻ろうと思う。中心アノマリーへと。神の意志の中心へと。私の人生を彼の手に捧げる場所。私は死の影の谷を歩いてきたが、もう災いに怯えることはない。あなたは共におられる。啓蒙はメスであり鎮痛剤だ。[判読不能]
補遺 7355.03: 探査ログ
以下はアンドリッチ博士により無許可で行われたSCP-7355調査の唯一の記録です。
<記録開始>
アンドリッチが車いすを使ってSCP-7355に進入する。部屋は拡大・歪曲しており、前進は困難である。彼がスイッチに到達して照明を付けるまで5分かかる。
照明は通常よりも非常に強く、強烈である。SCP-7355内に存在するはずのベッド及び医療器具の代わりに、大量の子供の死体が積み重なっていることが明らかになる。
アンドリッチの車いすが崩壊し、彼は地面に押し付けられる。彼は力を振り絞って死体の山に向かって這う。這っている間、彼は泣き叫び、祈りの言葉を囁く。光が徐々に明るくなり、強い雑音が聞こえる。
アンドリッチがおそらく臓器不全から吐血する。左腕の縫合が解け、彼は痛みで泣き叫ぶが、光に向かって這って行く。血液と中絶胎児の死体が床を覆っており、進むのが難しい。アンドリッチはいまだ這っている。
それまでは部屋が拡張して移動が困難になっていたが、部屋が崩壊し、アンドリッチは不可能な速度で死体の山の頂上に到達する。先に進むほどに彼の状態は悪化し、ついには不良品の人形のように落下したように見える。アンドリッチが山の頂上に到達して頂点の方を見た時、光と雑音が苦痛を感じる程に強くなる。手術台の形のみが判別できる。
アンドリッチ: なんだと…. これは本当のあなたではない…
アンドリッチが地面に落下する。すすり泣く声が聞こえ、照明が眩く光り、雑音が耳をつんざく程大きくなる。
<記録終了>