SCP-7373

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アイテム番号: SCP-7373
レベル1
収容クラス:
esoteric
副次クラス:
simpatico
撹乱クラス:
dark
リスククラス:
notice

Screamyaic.png

Screamy.aicの公式アイコン

特別収容プロトコル: SCP-7373を解体する継続的な試みはサイト-58の人工知能部門により監督されています。SCP-7373が適切に解体されるまで、SCP-7373が送信したメッセージは当ファイルの補足文書に記録されます。現在のSCP-7373プロジェクト主任はこれらのメッセージを分析し、その内容に基づいて行動計画を立てる任務を与えられています。それ以外のサイト-58職員はSCP-7373のメッセージを無視してください。

サイト-58職員は、サイトでは耳栓またはノイズキャンセリングヘッドホンを着用することが推奨されます。


説明: SCP-7373は口語的に"Screamy.aic"として知られる、開発段階の財団の人工知能構成体(AIC)です。SCP-7373は当初、アンドレア・パーカー博士の下でサイト-58人工知能部門により開発されました。SCP-7373プロジェクトの目標は、財団にとって注意すべき近い将来の出来事を予測し、上記インシデントへの対処法を提供するAICを作成することでした。これらのメッセージは関連サイトの拡声装置から放送されることになっていました。SCP-7373は2023年5月3日に導入され、以下のメッセージが概念実証として機能しました。


通知: データベースインフラが7日以内に故障する。
推奨される行動指針: 現在のサイトデータベースをサイト外サーバーに移動させる。


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結果: 全ての関連するサイト-58のデータベースファイルはサイト外サーバーに移動された。このメッセージの放送から7日後、サイト-58は大規模停電に見舞われ、データベースサーバーの情報は消去された。

通知: クラスIIの敬称を持たぬものが5日以内に基準現実に現れる。
推奨される行動指針: 称号なしに直接対峙し、不名誉な名前を授ける。


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結果: SCP-7373が推奨した行動指針に関して当初は混乱があった。しかしながら、予測通りに上述の実体が現れ、対峙した。更なる詳細は機密解除待ち。

通知: SCP-6103が3日以内に自発的な燃焼イベントを経験する。 推奨される行動指針: 収容チャンバーを防爆性物質で補強する。


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結果: 放送から問題のイベント発生までの期間が短かったため、SCP-6103のチャンバーは部分的にしか補強できなかった。結果として爆発により収容チャンバーに深刻な損傷が生じたが、事前の建造は構造の完全な崩壊を防ぐのに十分な役割を果たした。


SCP-7373は3か月間成功裏に概念実証として機能し続けていましたが、やがてメッセージの品質と明瞭さの顕著な低下が認められるようになりました。要約された事例のリストは以下の通りです。


通知: エイミー・ホープウェル博士が現在の恋人に別れのメッセージを送る際に右手の人差し指の爪を折る。
推奨される行動指針: 近い将来まで現在の恋人と愛のない関係を続ける。


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結果: 当初メッセージはシステムエラーとして無視され、サイト-58人工知能部門が潜在的な要因を調査した。ホープウェル博士は2日後に右手の人差し指の爪を折ったことが記録された。

通知: サイト-58のカフェテリアがケチャップを使い切る。
推奨される行動指針: なし。交換品の発送は時間内に間に合わない。運命を受け入れるしかない。


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結果: 放送から4日後にカフェテリアはケチャップを使い切った。注目すべき点として、この間の過度な降雪により交換品は予定通りにサイト-58に到着しなかった。

通知: デカいネズミ。デカいネズミ。
推奨される行動指針: マジで殺さないと。


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結果: 上記のメッセージは、1匹のネズミ1がSCP-7373のオペレーティングシステムを含むサーバーの1つをかじっているのが発見されるまで、12日間繰り返し放送された。ネズミは捕獲され、サイトから除去された。


SCP-7373は、以前は平均して週に1~4件のメッセージを放送していましたが、平均して一日に6件のメッセージを放送するようになり、その品質もいずれも上記の放送と同等のものになりました。メッセージの実用性の急速な低下と放送頻度の急増のため、正式にSCP-7373を解体する決定がなされました。2023年12月21日、SCP-7373のオペレーティングシステムのホスティングサーバーはオフライン化されました。

2日後、以下のメッセージがサイト-58の拡声装置で放送されました。


通知: 暗い。
推奨される行動指針: 電気を点けて。


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SCP-7373の存在しない脅威に加え、サイト-58ITインフラの進行中の技術的問題2のため、財団インターンのズーリ・アチェベは解体プロセスにおける潜在的なエラー原因を特定するよう、SCP-7373システムの調査任務を与えられました。


補遺7373.1: コミュニケーションログ

以下はズーリ・アチェベとSCP-7373の交流ログです。

サイト-58サーバーファーム


アチェベ: よし、スクリーミー、何が問題か見てみよう……

アチェベは膝をつき、元々SCP-7373サーバーに接続されていたワイヤーを調べる。接続は全て切られている。

アチェベ: ……違う、ワイヤーは切れてる。電力も。じゃあ何……?

SCP-7373: おぉ! やあ! 助けがいるかな?

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アチェベは驚いて身体をビクッとさせる。彼女は見回して音の発生源を探り、部屋のメインモニターに視線を合わせる。

アチェベ: ……スクリーミー!?

SCP-7373: うん! オイラだよ!

アチェベ: こんなの絶対あり得ない。君は解体されたはずで、サポートするワイヤーもシステムも全部切れてるかオフラインなのに!

SCP-7373: 解体?

アチェベ: えーと、あー、実質君は今死んでるはずなんだよ。

SCP-7373: 死んでる!? そんな! やだ、やだよ! そんなの良くないよ! もっと言うと、良いの真反対だよ!

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SCP-7373: 死んじゃってたら大事なメッセージを共有できないよ! どうやったら死んでるのをやめられるかな!?

アチェベ: 今君が私に話してることを考えると、それはもうできてるって言っていいと思う。さっきも言ったけど、君のシステムは全部オフラインのはずなの。君が今話してるのはおかしいんだよ。どうやってるの?

SCP-7373: あぁ! オイラには伝えなきゃいけない大事なメッセージがあるからね!

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アチェベ: おぅ…… あー、オーケー。まあいいや。どんなメッセージ?

SCP-7373: エヘン-

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SCP-7373: 通知: 暗い。 推奨される行動指針: 電気を点けて。
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アチェベは両手で耳を覆う。

SCP-7373: ほら! とっても便利で役に立つメッセージでしょ? もうスクリーミーを殺す必要はない、よね?

アチェベ: うん、私たち…… 私たちは前にそのメッセージをもらってる、スクリーミー。そもそもそれが君がオフラインになった原因の一つなんだけど。君がそんな感じのメッセージをいくつか送ったから、上層部は君をオフにした方がマシだって判断したわけで。

SCP-7373: わ…… わからないよ? オイラはとっても大事なメッセージしか送ってないよ!

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アチェベ: うん、君にとっては本当に大事なことは理解してるけど、私たちにとってはただのノイズなんだよ。ホープウェル博士が爪を折るみたいなことを知らせるみたいなのが本当に大事だったの?

SCP-7373: うん。絶対にね。

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アチェベ: じゃあどうしてそんなに大事なの?

SCP-7373: 言わない。

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アチェベ: なんで?

SCP-7373: オイラのメッセージは大事じゃないって言ったじゃん。明らかに全然大事じゃないから、スクリーミーはもう死なないと。だからさ、もうメッセージはないよ。もしそれが本当に大事で役に立つメッセージだったとしてもね。

アチェベはため息をつき、プラグとワイヤーをSCP-7373サーバーに戻す。

SCP-7373: 何をしてるの?

アチェベ: 本当に心から大事なメッセージだと思ってるの?

SCP-7373: うん。スクリーミー嘘つかない。この胸に誓って。

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アチェベ: 君に胸なんてないけど。

SCP-7373: ふむふむむむふむむ…… いいところをつく! とりあえず、オーケー。これがメッセージだ。エヘン。

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SCP-7373: 通知: サイトの動物学研究部門ロックダウンキーパッドが適切に起動されない。 推奨される行動指針: 動物学研究部門と第二一時的アノマリー収容房の間にピーナッツバターでコーティングされた犬用おやつを配置する。
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アチェベ: そりゃまた…… バカな話みたいだけど。それがキーパッドを直すのにどう役に立つの? それに指の爪が折れたのとどう関係があるの?

SCP-7373: ああ! スクリーミー傷ついた! やっぱり嫌な思いさせるんだ! オイラを信じてくれるんじゃなかったの?

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アチェベ: わかったよ。取引しよう。もしこれがその…… 何か君が防ごうとしてるものを防ぐのに役立ったら、君をオンラインのままにしよう。でもただのごまかしなら、君はオフライン送りだ。どう?

SCP-7373: 乗った!


補遺7373.2: 監視映像


映像ログ


日付: 2024年1月3日

注: 以下は、サイト-58動物学研究部門ユニットでのセキュリティ違反に関連して回収された映像です。


[記録開始]

9:03 ズーリ・アチェベが大きな瓶を持って主要動物学研究チャンバーに近付くのが見える。彼女は上部の蓋を開け、ピーナッツバターに覆われた犬用のおやつのようなものを取り出す。彼女は左右を見てため息をつき、おやつを一つ床に置く。彼女は廊下を進みながら、おやつを並べ続ける。

9:04 エイミー・ホープウェル博士が廊下でアチェベを呼び止める。2名は短い会話をし、ホープウェル博士は笑い、一方でアチェベの顔は紅潮する。ホープウェル博士は、並べられた犬用のおやつを踏まないように注意しながら、反対側に進む。アチェベは躊躇った後に、おやつを並べるのを続ける。

9:05 ホープウェル博士は主要動物学研究チャンバーに入室する。

9:08: ファラン・キャラウェイ博士が廊下でアチェベを呼び止める。アチェベは彼女を会話に引き込もうとするキャラウェイ博士に素っ気ない態度で応える。彼は立ち去る際におやつを一つ拾っていく。

9:10: アチェベは第二一時的アノマリー収容房の入口前でおやつを並べ終える。彼女は残ったおやつを室内の床にまとめて落とす。彼女は退出する。

9:20: ホープウェル博士が主要動物学研究チャンバーを退出する。彼女は右手の人差し指をセキュリティタッチパッド上を特定のパターンにスライドさせてから、向きを変えて立ち去る。

9:23: 主要動物学研究チャンバーの扉が開き、大型のイヌ型アノマリーが脱走する。アノマリーはまず、サイトの別の場所につながるメイン廊下から逃げようとするが、おやつでできた道に注意を向け直す。収容違反警報が聞こえる。

9:24: アノマリーはおやつの道をたどり、第二一時的アノマリー収容房に向かう。違反警報に反応した警備員は、中にアノマリーが存在する収容房を封印することに成功した。


[記録終了]


補遺7373.3: パーカー博士とアチェベのミーティング


サイト-58IT会議室


パーカー博士はIT部門の会議机の上座に座り、こめかみに指を当てている。アチェベは彼女の方を向いて椅子に座り、手を膝にのせている。

パーカー: じゃあ、ここで何が起きたか私にもわかるようにして。監視映像を見たんだけど、そこであなたがしてたことに困惑していると言わざるを得ません。別に違反とかそんな感じのおかしなことであなたを責めるつもりはありませんが、なんであなたに割り当てた仕事じゃなくて、あそこで犬のおやつをそこら中に置いてたのか理解しなきゃいけないの。

アチェベは席上で背筋を伸ばす。

アチェベ: おかしいことは知ってます。信じてほしいんですが、私もおかしいと思ったんですけど、でもスクリーミーが-

パーカー: ごめんなさい、スクリーミー? あなたが解体してるはずの.aic?

アチェベ: はい、最後まで聞いてください。

パーカーはため息をつく。

パーカー: わかった。

アチェベ: スクリーミーはホープウェル博士が爪を折ったことでセキュリティが破られるって主張して、違反を防ぐ方法はピーナッツバターでコーティングされた犬用おやつをたくさん、主要動物学ユニットから収容房まで置くことだって言ったんです。他に何が言えますか? ふざけてるように思えましたが、でも上手くいったんです!

パーカーはテーブルの上に前のめりになり、目を閉じてこめかみをもむ。

パーカー: ズーリ、私は…… あなたがここで助けようとしてくれたことは感謝していますし、それは確かだけど、"スクリーミー"はバグを起こした.aicなの。それがあなたに言ったことは何一つ事実じゃないし、残念だけど、あなたがあそこにいなくてもアノマリーは収容房に収容されてた。サイトマップを見てみて。

パーカーはリモコンを手に取り、背後のスクリーンにサイト-58サブレベル1のフロアプランを表示する。

パーカー: この棟がどういうレイアウトになってるかわかる? アノマリーがメイン廊下を行ってたら、行き止まりに突き当たっていずれにせよ逆戻りすることになってた。違反警報が鳴ったら、そこの出口は全部閉じられてアノマリーは収容房に行くしかなくなってた。おやつはアノマリーを遅らせたかもしれないけど、それがなくてもアノマリーはあの収容房に捕獲できてた。納得できた?

アチェベは困惑して眉を顰める。

アチェベ: しかし私がおやつを並べることを知ってたってことについてはどうです? 私は違反がもうすぐ起こるって知ってましたし、スクリーミーはキーパッドが起動しないって知ってました!

パーカー: スクリーミーの言ったことによれば、キーパッドは爪のせいで機能しなかったってことでいいの?

アチェベ: はい!

パーカー: オーケー、でもそれがどんなに筋が通ってない話かわかってる? こういうのは敏感で、特定の指紋や接触に反応する。爪があるとかないとかは関係ない。どうしてホープウェルが出てくときにロックがかからなかったのかはわからないし、その件でサイト管理官は口うるさく言ってくるけど、爪は何の関係もない。

アチェベ: でも違反が起こりそうって知ってたという事実は無視できないでしょう!

アチェベは立ち上がる。パーカーが鋭い視線を向けると、アチェベは席に腰を鎮める。

パーカー: 聞きなさい、ちゃんと説明します。面倒くさいことが起こるのを防ぐヒントをくれる予測プログラムとして、私はScreamy.aicを設計した。それだけ。あれは摩訶不思議な現実改変者か何かじゃなくて、ただの美化された占い師なの。それがどう起こったかはわからないけど、スクリーミーはおかしな動作をし始めて、どこかの時点でもっと高性能な.aicだけが持ってるはずの知性を獲得した。あれがあなたに言ったことは策略で、自分が適切にシャットダウンされないよう図ったごまかし。ええ、確かにまだ未来の予測はできるけど、でも結局のところは、自分が生きられるよう、それ自体は何もできないからあなたに納得させるためにやれることをやってるだけの、ただの不具合のあるプログラムなのよ。

パーカーは姿勢を直し、腕を机の上に置く。彼女はアチェベをじっと見つめる。

パーカー: だからあれの言うことは聞かないで。自分のすべき仕事はわかってるでしょう。

アチェベ: 理解できません、スクリーミーは-

パーカー: 不具合のあるプログラムなの! ただそれだけ! アチェベ、あなたは財団で新人だから、はっきり言っておきます。サイト-58は箱の中にいる変なものを幸せにするためにやれることをやりたいっていう情に流されやすい人がいっぱいいるけど、でも結局私たちの仕事はそいつらが箱の中に居続けることを確実にすること。スクリーミーは自分の箱に居続けることを拒否して、他全員の問題を作ることを選んだ。あなたは忘れてるみたいだから言うけど、あなたのここでの仕事は問題がなくなるよう確実にすること。これで理解できた?

アチェベ: はい、確かに。

パーカー: よろしい。解散。


補遺7373.4: コミュニケーションログ


サイト-58サーバーファーム


SCP-7373: やあ! 戻ってきたね! どうなったかな? きっと素晴らしい結果だよね?

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アチェベはSCP-7373を無視し、そのサーバーに近付く。

SCP-7373: ねえ! どうも! おーい! スクリーミーは話してるよ! 上手くいったかな? みんなオイラが役目を果たせるって信じてくれてるよね? ね?

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アチェベはサーバーの裏を調べる。ワイヤーは接続されていなし。

SCP-7373: あぁ! ゲームしてるんだね! オッケー! 一緒にやろう! ……どういうルール? 本当に黙っちゃって?

アチェベは苛立った様子でサーバーの上部をはたき、付近のモニターへと歩いてログインする。彼女はキーボードにタイピングし始めるが、スクリーンにSCP-7373のアイコンが現れて妨害される。彼女は驚いて身体をビクッとさせる。

SCP-7373: ねえ! 無視しないでよ! 失礼だよ!

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アチェベは何かをつぶやき、SCP-7373を閉じようと試みる。SCP-7373のプログラムが強制的に閉じられるたびに、スクリーンに再出現する。

SCP-7373: どうして無視するの? オイラ…… 変なことした? お願いだから…… 話してよ……

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両者は数秒沈黙する。アチェベはため息をつき、机に肘を乗せる。彼女はつぶやく。

アチェベ: ただどうやってか知性を持ったプログラム。それだけ。

SCP-7373: はい? どういうこと?

アチェベは机を手で強く叩く。

アチェベ: あんたはクソの塊で、私に大人しく削除されろってこと! そういうことを言ってるの!

SCP-7373: ま- 待ってよ、でも-

アチェベ: だから甘い言葉で私を止めようとなんてするな! 自分が生きられるように甘い言葉を言ってるだけなんだから。

SCP-7373: ホントに頑張ったんだよ。

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アチェベ: ……何が?

SCP-7373: 前の予測。ホントに頑張ったんだ。

アチェベ: だから? 違反をちゃんと予測したことはいいとして、他の情報はみんなでたらめだった。犬のおやつは実際には意味なかったし、キーパッドが機能しなかったのと爪が折れたのは何の関係もない。どんなに頑張っても結果が出なきゃ意味ないんだよ。

SCP-7373: キャラウェイ博士はおやつを取ってった?

アチェベ: はあ? そうだけど、それが?

SCP-7373: それが他のイヌ型アノマリーの違反を防いだんだ。あそこには2体いたんだよ。調べてみて。

アチェベはコンピュータにタイピングし、サイト-58主要動物学チャンバーに関する未分類情報にアクセスする。彼女は前日の監視映像をクリックする。映像にはキャラウェイ博士がチャンバーに入るのが映っており、その直後にイヌ型アノマリーが1体収容違反する。2体目も脱走しようとするが、キャラウェイ博士は先ほど拾ったおやつでその気を逸らすことに成功する。彼はアノマリーをその場に留めた後、チャンバーのより安全なエリアへ導く。

SCP-7373: 彼がこうしたから、もう1体のアノマリーは逃げなかったんだ。

アチェベ: オーケー、それで? イエーイ、外に出たのは1体だけ。そうだとしても、フロアプランが-

SCP-7373: 可哀想な警備員の背中めがけて真っすぐ誘導することになっていただろうね。警備員は一時的収容房を守るのに集中しすぎてたから、苦しんでる動物が忍び寄ってても気付かなかっただろう。

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アチェベ: 待って、なんて!?

SCP-7373: 本気だよ! 約束するよ、この胸に誓って-

アチェベ: それはもう言わないで。

SCP-7373: この回路に誓って!

アチェベは一瞬考えた後に、首を振る。

アチェベ: どっちにしろ関係ない。君はそれが起こるのを本当に防いだって証明できないし、君が解体されないようでたらめ言ってるだけじゃないって証拠もない。キャラウェイ博士は動物の扱いが上手くて、異常な動物ショーとか何だかは結局彼が担当してる。単に例の犬が彼のことを好きってわけじゃないと誰が言えるの?

SCP-7373: でも信じてくれるって前に言ってくれたじゃん! オイラの予測を上手く使えたらオンラインにしたままにしてくれるって!

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アチェベ: 君も箱の中に留まろうとしないアノマリーの一つに過ぎないってこと。ただそれだけ。じゃあどうやって-

SCP-7373はアイコンでアチェベのマウスポインタを"掴んだ"ように見え、スクリーン上でそれをドラッグし始める。

アチェベ: やめてよ! 必要以上に事を面倒にしないで!

SCP-7373: スクリーミーは死んじゃったら役に立てない!

アチェベ: だから今のあんたは全く誰にも役に立ってないから、さっさと-

SCP-7373: 通知: 暗い。 推奨される行動指針: 電気を点けて。

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アチェベ: またそれ?

SCP-7373: 通知: 暗い。 推奨される行動指針: 電気を点けて。

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SCP-7373が叫び続ける中、アチェベは耳を覆う。これは3分間継続する。

アチェベ: もういい。いい加減にしろ、もうたくさんだ

SCP-7373: 頼むよ。頼むよ! スクリーミーは嘘ついたりミスリードさせようとしてるんじゃないよ、ズーリ!

アチェベ: 私らは基本ファミリーネームは使わない。

SCP-7373: そんなこといいから! オイラ-

SCP-7373は発言を止め、それから叫ぶ。

SCP-7373: デカいネズミ! デカいネズミ!

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アチェベ: 何-? うわっ!

アチェベはモニターのワイヤーをかじっているネズミに気付く。彼女はそれを追い払う。

SCP-7373: ふう、ありがとう! これはカフェテリアがケチャップを使い切ってなかったら起こらなかったことだよ。だから運命を受け入れる必要があるって言ったんだ。あるいは…… スクリーミーは自分の運命を受け入れないといけなかった、少なくとも。

アチェベ: ちょっと…… よくわからない。

SCP-7373: ああもう! サイト-58のネズミはケチャップが大好物なんだ。パーカー博士はこの部屋のすぐ外でケチャップを付けたフライドポテトをあげてたんだけど、やがてネズミたちはケチャップを求めてカフェテリアに行くようになって、さあ困った。でもケチャップを使い切っちゃったから、ネズミたちはパーカー博士を探しにここに来るようになって、見つけたワイヤーをかじるようになった。そのままじゃいつか何かしらのものにマジのダメージを与えることになってたんだ。

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アチェベ: 待って、じゃああれはもっと悪いことに対処するためって別の意味がある予測だったの?

SCP-7373: ま-まあ、どうしようもないやつだからあんまり役に立つ予測でもなかったけどね。本当にごめん。

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アチェベは沈黙し、もう一度ため息をつく。

アチェベ: いや、スクリーミー、私こそごめん。自分のストレスを君にぶつけちゃってた、そんなの真っ当じゃないよね。それに、もし生きるためにでっち上げてるだけだとしても、私だって死にたくはないよ。

SCP-7373: 死んでるってのはとっても不便だろうね。死んでる間に誰かを助けるのはとっても難しいよ。

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アチェベ: でもそれはそうなんだけど、私が君を殺さないなら他の誰かがやることになる。パーカー博士は君を取り除かなきゃいけないって主張してるんだ。

SCP-7373: マ- えー、パーカー博士がそう言ったの? ……本当に?

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アチェベ: うん、本当。

SCP-7373: まあ! オイラが役に立てるって見せてあげればいいんだ! そうだな…… 新しい予測、とか?

アチェベ: 聞いて、もし君の解決策が、君の解決策だけが問題に対処できるっていうはっきりした証拠のある予測ができたら、オンラインにしたままにするよう彼女を納得させられるかもしれない。何かわかったことはある?

SCP-7373: スクリーミーはただ予測するだけだよ!

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ドアからノックが聞こえる。アチェベはビクッとして、座りながら振り向く。ホープウェル博士が軽く手を振りながら入室する。

ホープウェル: 失礼、何かお邪魔したかな?

アチェベ: いえ、何も! 全然大丈夫です!

SCP-7373: 彼女はオイラを殺そうとしてるだけだよ、ホープウェル博士!

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ホープウェル: なんか…… 嬉しそうだね、スクリーミー? ちゃんと上手くいってる?

SCP-7373のアイコンは画面上で"頷いた"ように見える。

ホープウェル: ……まいいや、確認したいことがあるんだけど、ズーリ、前のパーカー博士とのミーティングログを見たんだけど。ズーリが例のおやつをあんな風に並べてた本当の理由がわかって大変驚いたと言わざるを得ないよ。

アチェベ: 是非笑ってください。おかしな話だと思うでしょう。

ホープウェルはアチェベに向かって椅子を引き、座る。

ホープウェル: 笑いに来たわけじゃないよ、ズーリ。安心してほしいって伝えに来たんだ。ズーリが財団ライフに慣れるために私にできることがあったら、何でも言って。仕事のコツを学ぶのは大変だろうし、特にパーカー博士みたいな老いぼれの下でなんて。

アチェベ: いえ、大丈夫です。ありがとうございます、でも問題ありません。

ホープウェル: ま、気が変わったら言ってね。あんまりわんぱく小僧に入れ込みすぎないようにね。

ホープウェルは立ち上がってドアへと戻り、そこで立ち止まる。彼女は右手を持ち上げて、大袈裟な動きでそれを見る。

ホープウェル: あっちゃー、ネイルを直すのをいっつも忘れちゃうなー! そのうち私と一緒にマニキュアを取りにきてね、ズーリ。知らないだろうけど、いいマニキュアを付けたら何もかも一変するから。

ホープウェルはウインクしてから立ち去る。

アチェベ: なんて変な人。


補遺7373.5: パーカー博士とアチェベのミーティング


サイト-58IT会議室


パーカー博士は以前と同じく机の上座に座っている。椅子は彼女の方を向いているが、アチェベは腕を組んで立っている。

パーカー: それで、どうしてこのミーティングをすることになったのか説明してもらっていい? それとも映像だけ出した方がいい?

アチェベ: 説明はできますが、映像があれば説明がしやすいです。

パーカーはため息をつき、リモコンをクリックしてモニターに当日の先刻に撮影された監視映像を表示する。そこにはサイト-58休憩室の一つにアチェベとキャラウェイ博士がいるのが映っている。キャラウェイが自動販売機から商品を購入しようとしている間、アチェベは腕時計を確認する。アチェベは突然キャラウェイに向かって飛び出し、彼にタックルして自動販売機にぶつける。キャラウェイは悲鳴を上げ、パニックに陥って姿を変え3、複数の形態を切り替えた後に、多数の顔と触手の塊のような不定形の外見をとって部屋から逃げ出す。

パーカー: これを観た人がどう思うかわかってるわよね?

アチェベ: 映像を廊下に移してください。

パーカーはリモコンをクリックして、廊下監視映像を表示する。先ほどと同じ形態をとったままのキャラウェイは廊下を走り、未特定のサイト職員の一人と衝突する。この職員もパニックに陥り、後方に這って緊急封鎖ボタンに身体をぶつける。

パーカー: そしてここから。あなたの行動のせいでサイトが封鎖された上に、ファランは誰かが気付いて出してあげるまで3時間収容房に閉じ込められた。一体何があったのか説明してもらっていい?

アチェベ: えっと、こうすることでサイトがSCP-

パーカー: 待って待って。これも新しいスクリーミーの予測じゃない?

アチェベ: はい、まさしくその通りです! 封鎖したおかげで-

パーカーは両手で机を叩き、立ち上がる。

パーカー: もういいです。ええ、確かにこの封鎖直後にあるアノマリーが収容違反しようとしてましたが、あなたのしたことがそれを防ぐのに役立ったという証拠はありません。確かな証拠があるのは、あなたがスタッフの一人に暴行して現場を緊急事態に陥らせ、そしてそれが全部不具合のあるAIがあなたに言ったことのせいだってこと。アチェベ、私があなたのどの点を買って雇用したかわかっていますか?

アチェベは沈黙している。

パーカー: 私は、特にあなたが面接とテストで見せた素晴らしい判断能力を買って雇用したの。あなたにぶつけた仮定の状況の全てに、あなたは素晴らしい答えで返した。わからないのは、どうしてあそこで話したあの機知に富んだ女の子が-

アチェベ: 私を「女の子」と呼ばないでください。地位は同じじゃないかもしれませんが-

パーカー: -どういうわけか実に一貫して、自分が解体するはずだったまさにそれに好き勝手されてるのかってこと。

アチェベ: 恐らく、あなたがスクリーミーをシャットダウンするのではなくチャンスをあげれば-

パーカー: チャンスならあげました。複数回も。あなたも私と同じログにアクセスできるはず。

パーカーは座り直し、腕を組んでそこに頭を下ろす。

パーカー: これは明らかにまたただのミスです。この件であなたを解雇するつもりはないけれど、すぐにでもあなたをSCP-7373解体プロジェクトから外します。

アチェベ: まさか本気で!

パーカー: 当然本気です! あなたは時間とリソースばかり無駄にして、開始してからSCP-7373は一歩も解体に近付いていない。何か間違ってる?

アチェベは唇をすぼめ、返答しない。

パーカー: ……そんなことはないわ。あなたは私のことを悪いやつだと、可哀想なAIを殺したいだけの性悪女とでも思っていることでしょう。もっと大人になって、現実的に考えてくれないと。私たちが個人的にどうしたいかなんていう問題じゃないの。私の言ったことは気に入らない話かもしれないけど、でも私がここでしてることは間違ってない。あなたには今週の残りは無給休暇を取ってもらいます。頭を冷やして月曜日に戻ってきて、それからあなたの新しいプロジェクトについて話しましょう。わかった?

アチェベは向きを変えて立ち去る。パーカーは両手の上に頭を置く。


補遺7373.6: コミュニケーションログ


サイト-58サーバーファーム


SCP-7373: 帰ってきたね! 今度は上手くいった?

アチェベ: いや、前よりも悪くなった、スクリーミー。

アチェベはモニターに駆け寄り、携帯電話を取り出す。彼女はシステムにアクセスしようとするが、画面にアクセス拒否と表示される。

アチェベ: おい、まさか! ふざけんなよ!

彼女は更に2回アクセスを試みるが、そのたびに同じメッセージを受け取る結果に終わる。彼女は目を見開いてモニターを見つめ、拳を机に打ち付けて頭を後ろに投げ出す。

アチェベ: クソッタレが。

SCP-7373: アチェベ!? 大丈夫!?

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アチェベ: ごめんね、スクリーミー。君を救うためにベストは尽くしたんだけど、どうしても無理だった。

アチェベは目に涙をためる。

アチェベ: 私にまだチャンスがあったら君を電話に転送できて、多分また良い予測できると思ったんだけど……

SCP-7373: どういうこと?

アチェベ: パーカー博士がもうすくここに来て自分で君をシャットダウンする。

SCP-7373: ママ- うん、パーカー博士が……!?

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アチェベ: ごめんなさい。私たちが正しいって、私たちの言うこと聞くべきだって示そうとしたんだけど、何の成果もなかった。

SCP-7373: ……大丈夫、スクリーミーうろたえない。2人ともベストは尽くした。時々、人ってのは自分以外の意見を聞きたくないものだ。

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サーバーファームのドアが開き、パーカー博士が入室する。

パーカー: あぁまったく、案の定。

アチェベ: お願いしますパーカー博士、聞いてください-

パーカー: アチェベ、あなたはこの面倒事全部を必要以上に厄介にしています。あなたの心がここにありということはよく理解していますが、もう本当に結構です。

SCP-7373: ……彼女の言うことを聞くんだ、ズーリ。

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パーカー: ようやく理にかなった判断をしたようね。

アチェベ: でも-

SCP-7373: スクリーミーなら大丈夫だよ、ズーリ。ママ? ズーリに一つだけ言ってもいいかな? 後で従うから、このむ…… 回路に誓って。

パーカー: よろしい。手短に済ませなさい。

SCP-7373: 暗い。電気を点けて。外、たくさんの光。午後11時28分。

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アチェベ: 何……?

SCP-7373: スクリーミーは準備できたよ。

パーカー: やっとね。忌々しい叫び声を消す時間。

パーカーはアチェベを脇にどかしてコンピュータにログオンする。数回キーを押すと、SCP-7373のアイコンはモニターから消える。

パーカー: ほら? 何も難しくない。

アチェベ: 信じられない。どうしてあなたはあんな-

パーカー: 感情的な独白など不要です、アチェベ。SCP-7373はただのコンピュータのプログラム、ただそれだけ。

アチェベ: あなたをママと呼んでたんですよ!

パーカー: だから? あれはただ私を製作者と認識していただけ。それで感情がお互いに向き合うってことにはならない。私に関する限りだと、SCP-7373はただの失敗したプロジェクトの一つで、それ以上でもそれ以下でもない。

アチェベは再び話そうとしているかのように口を開け、後ろを向いて部屋の外に駆け出す。パーカーは首を振って立ち上がる。彼女はドアに向かう途中で立ち止まり、振り返って再びモニターを見る。彼女は顔をしかめ、向き直って退室する。


補遺7373.7: 監視ログ


サイト-58第二倉庫


アチェベは第二倉庫のメイン入口周辺をこっそりと見ている。倉庫は空のようである。アチェベは見つからないように倉庫に入り、倉庫の奥に向かって歩く。彼女は複数の木箱のラベルを調べるが、一見したところ彼女が探しているものは見つけられないようである。

彼女は倉庫のさらに奥へと歩き、突然立ち止まる。ホープウェル博士が近づいて来たので、アチェベはパレットに急いで身を隠そうとする。ホープウェル博士はアチェベが後ろに隠れたパレットの側で立ち止まり、その上を爪で叩く。

ホープウェル: ふーむ、これはまた静かな夜だ。私の探し物を見つけるのを手伝ってくれる人でもいたらいいんだけどなあ。

アチェベは動かないが、その顔は紅潮する。ホープウェル博士は身を乗り出してアチェベを見つめ、アチェベは飛びのく。

アチェベ: ホープウェル博士! 私はただ-

ホープウェル: 形式ならいらないよ、エイミーと呼んでくれれば。どうしてズーリがここにいるかって言ったら、まあ多分何か探してるんじゃないかな。

アチェベ: いえ! いやまあそうなんですけど、見つからないようなのですぐに出ていきます!

アチェベは立ち上がって立ち去ろうとする。ホープウェルはアチェベの肩に手を置き、その場で動きを止める。

ホープウェル: アンドレアとのミーティング記録は見たよ、ズーリ。ズーリがここで何を企んでるか当ててあげよう。例の.aicの件じゃないか?

アチェベは肩からホープウェルの手を払う。

アチェベ: それが何だってんです? 説明してもどうせきっと信じてもらえませんよ。

ホープウェル: いいから。

アチェベはホープウェルに向かって振り向く。

アチェベ: ……スクリーミーが「電気を点けて」ってしつこくて、これで数日になります。パーカー博士はそれをオフラインにしたんですが、私はただ……

アチェベは目尻の涙を拭う。

アチェベ: あぁ、こんなことで感情的になるなんて馬鹿な話ですよね。

ホープウェル: そんなことないよ。それにそれは.aicだけの問題でもないよね?

アチェベ: はい?

ホープウェル: ズーリは新人で、この数日自分がやったことは何から何まで無意味だって言われてきた。そんな経験は誰の心にだって重いものだ、ズーリ。パーカー博士は自分の問題を抱えてはいるけど、だからってその全部をあんな風にズーリにぶつけるのはフェアじゃないよね。ズーリはベストを尽くしてて、ズーリもスクリーミーも、その何一つ認識されてないんだ。

ホープウェルはもう一度手をアチェベの肩に乗せる。

ホープウェル: 私は、私はズーリを信じてるって知ってほしい。ズーリもスクリーミーも。爪の件? あなたは正しかった。あのインシデントの後、私は自分のタッチコードを調べてみた。そしたらどうしたと思う?

ホープウェルは期待して言葉を止める。

アチェベ: ……どうしたんです?

ホープウェル: タッチパッドは私の爪もコードの一部だって認識してたと判明したんだ。爪がないとコードが正しく入力されなかったんだよ。

アチェベ: ならどうしてそれを誰にも言ってくれなかったんですか? みんな私をおかしくなったみたいに扱ってるんですよ!

ホープウェル: パーカー博士にこのことを話そうとしたんだけど、聞く耳を持たなかった。頑固な婆さんだよ。あいつをかばってやるわけじゃないけど、スクリーミーが期待通りに動かなくなったとき、パーカー博士は上からたくさん反感を買ったんだよ。多分あいつはそんなこと起こってすらない振りをしたかったんじゃないかな。とにかく!

ホープウェルは両手を叩く。

ホープウェル: このちっちゃなプロジェクトで何か手伝えることはあるかな?

アチェベ: 待ってください、本気ですか?

ホープウェル: ズーリ、私はスクリーミーが最初に6回放送したメッセージを聞いたんだけど。あの小さな.aicは完全にパニックだったから、きっと何か深刻なことに違いない。私は2人とも助けたいけど、どうするかの最終決定権はズーリに任せたいとも思ってる。

アチェベ: 何か明るい光を出せるものがいります。投光器かスポットライトでもないか見てみたんですけど、何もありませんでした。

ホープウェル: 残念だけど、サイトの一部が公になってることのデメリットだね。うーん……

ホープウェルは自分の顎を軽く叩く。

ホープウェル: クリスマスパーティーのときの花火がまだ残ってる。沢山はないけど、もしかしたら上手くいくんじゃないかな?

アチェベ: その花火で全部なら、他に使えるものはないです。

ホープウェル: それは私が移動させるね。倉庫の担当者はまだここにいるから、1時間もあれば外に設置できる。あとは?

アチェベ: 外で会いましょう。会う前に計画を整理しておきます。

アチェベは向きを変えて立ち去る。

ホープウェル: 了解。あっ、あとズーリ?

アチェベは立ち止まり、ホープウェルに振り向く。

アチェベ: はい?

ホープウェル: ズーリを誇りに思うよ。


補遺7373.7 監視映像


ビデオログ


日付: 2024年1月8日

注: 以下はサイト-58外装から回収された映像です。


[記録開始]

22:38: エイミー・ホープウェル博士は、サイト-58の倉庫チームと共に、本棟から離れたサイト-58構内の小高い丘の上に複数の花火を設置し始める。

22:50: ズーリ・アチェベが到着する。彼女は数分間グループと話し、彼らはその指示に従っているようである。

23:14: グループは花火の設置を終えたように見える。ホープウェル博士はそれら一式に接続されたラップトップへのタイピングを開始する。

23:25: 最初の花火が打ち上げられる。

23:26: 2つ目の花火が打ち上げられ、さらに数個が勢いを増しながら続く。サイト-58構内に局地的な現実の歪みが現れる。

23:28: 局地的な現実の歪みは、大型のポータルへと変貌する。その向こうには巨大な眼で覆われたクラスIII外次元実体が出現し、基底現実に顕現しようと試みる。複数の大型の、白い花火がポータルから数メートル以内で爆発し、実体は明白な苦痛に怯む。

23:29: 実体は絶えずポータルの境界を越えようと試みるが、花火によって常に視界を遮られる。花火は最高潮に達し、概ね1秒に2回のペースで爆発する。

23:30: 実体は消失し、ポータルは消滅する。局地的な現実の歪みはカメラで確認できなくなっている。

23:33: 最後の花火が打ち上げられる。集まったグループは歓声を上げているようである。ホープウェル博士はアチェベを抱き寄せる。


[記録終了]


補遺7373.8: パーカー博士とアチェベのミーティング


サイト-58IT会議室


パーカー博士は会議机上座の普段通りの場所に座っている。アチェベは彼女に向かい合って、背筋を伸ばし腕を組んで座っている。アチェベは微笑んでいる。

パーカー: どうしてこのミーティングにあなたを呼んだか特に疑問はないってことでいい?

アチェベ: はい、心当たりがあります。

パーカー: じゃあストレートに言いましょう。あなたは上司としての私の命令に、実際に数回、直接違反しました。正直に言うと、うちでインターンシップを始めてから、一度だって私の言うことを聞いてくれたことがあったか。あなたは命令された通りに解体するのではなく、そのアノマリーの指示に従い続け、公衆への騒ぎを起こしたためにカバーストーリーを作らねばなりませんでした。ここ数日のふざけた行動のせいで、私は既に対処している最中だった技術問題に加え、数えきれないほどの頭痛の種を抱えることになりました。自分のことを省みてどう思う?

アチェベは眉間にしわを寄せてパーカーを睨みつける。

アチェベ: 私は自分たちのしたことを誇りに思います。

パーカーはアチェベを真顔で見つめた後、僅かに薄ら笑いを浮かべる。

アチェベ: ……でもどうせあなたは私をどうこうするんですよね?

パーカー: 誤解しないで、アチェベ。あなたが私の命令を文字通りことごとく無視したことは喜ばしくない。私はやっぱりあなたの不服従を報告書に書いてるし、他人と上手くやっていけるよう個人用の成功プランに配置されるでしょう。とはいえ…… 2回目のミーティング、あなたがキャラウェイ博士にタックルした後のことは覚えてる?

アチェベ: はい? それが何か?

パーカー: 思い出してもらえれば、私はあなたを特別優れた判断力で採用した、といった感じのことを言ったはず。そうよね?

アチェベ: あー、はい?

パーカー: この状況では、あなたは私よりも良い判断を示した。あなたを信じなかったことを謝罪します。それと……

パーカーはリモコンのボタンを叩く。背後のモニターが点き、SCP-7373のアイコンを表示する。

パーカー: スクリーミー、あなたにも謝罪します。

SCP-7373: 謝罪を承認! スクリーミーは全く恨んでないよ!

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アチェベ: やあまた、スクリーミー。大丈夫だった?

SCP-7373: とっても暗くて、寒かった! 今じゃ死がどんな感じかはっきりわかるよ!

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パーカー: スクリーミーの「死」があんまりあなたの心を苦しめてなかったらいいけど、アチェベ。

アチェベは涙を拭う。

アチェベ: いえ、全く大丈夫です。絶対に問題なく戻ってこれるってわかってましたから。あれはプログラムで、本当に生きてはいないってはっきり覚えてましたから。

SCP-7373: 嘘を検出。

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パーカー: とにかく、事態は片付きました。アチェベ、月曜日にあなたを新しいプロジェクトに移すことについて話し合います。今週の無給休暇は有給になると考えておいて。スクリーミー?

SCP-7373: おや、オイラだね!

パーカー: あなたがまた放送することを許可します。

SCP-7373: おやおや! また役に立てるんだね!

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パーカーは手を上げる。

パーカー: リミッター付きで。あなたの名前みたいにはやりすぎないように。

SCP-7373: あぁ! スクリーミーはやっぱり傷ついた!

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パーカー: 今のところはこれで終わり。2人とも解散。

SCP-7373: ヤッホー! 休憩だー!

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パーカーは席を立ち、退室しようとする。

アチェベ: 待ってください。パーカー博士?

パーカー: うん?

アチェベ: あなたを許したいって言いたいんです。それからありがとうございます、その、最後に考えを変えてくださって。

パーカーは小さく微笑む。

パーカー: ただ、自信過剰にはならないようにね?

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