アイテム番号: SCP-739-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-739-JPはサイト-8107にある低温収容チャンバー内に-20℃で保管し、完全に活性を失った状態を維持してください。
日本全国の医療施設における受診記録から、新たなSCP-739-JPの発生の兆候がないか常に監視してください。新たなSCP-739-JP感染者が発見された場合、発見地点に最も近い財団所有の施設において対バイオハザード設備付きの収容室内で治療し、感染者の体内からSCP-739-JPが消失し、感染のリスクがなくなったことが確認でき次第、通常の症状であればクラスB記憶処理、後述する特異症状の場合はクラスC記憶処理を施して開放してください。該当地域にはカバーストーリー「新型インフルエンザ患者の隔離と治療」を適用した上で対ウイルス装備のエージェントと研究員からなるチームを派遣し、感染源の特定と感染拡大の阻止を目的とした活動が開始されます。
説明: SCP-739-JPは人間に感染するウイルスです。外見的特徴はヒトライノウイルスに酷似しています。SCP-739-JPに感染した人間には発熱やせき、鼻水などの症状が現れます。これらの症状の重さには若干の個人差が認められますが、一般に「風邪」と呼称される症状とほぼ一致しており、同様の手段で治療することができます。
SCP-739-JPの特異性は感染した人間の一部に現れる症状にあります。(この症状を「特異症状」と呼称します。)通常、特異症状の発症率は5%程度ですが、感染者が生物学、化学(特に生化学)の研究をした経験を有している場合、発症率はおよそ80%にまで上昇します。発症者は自分自身を「日本生類創研」の構成員であると認識するようになり、特定の場所に行きたいという欲求を生じます。「特定の場所」は感染が確認された█件の事例で全て異なりますが、日本生類創研関連の施設が存在していたという点で共通しています。体内からウイルスが消え、発熱などの症状が治まってもこの特異症状は継続しますが、クラスC記憶処理によって治療可能であることが判明しています。
SCP-739-JPの特異性の起源を探るために遺伝情報の調査が行われましたが、財団の所有するいかなる機器を用いても塩基配列の読み取りは不可能でした。読み取りを阻害する未知のシステムで守られているものと考えられており、そのメカニズム及び解除の方法について現在研究が進められています。
SCP-739-JPは██県██市で発生した風邪の大流行と現地の██大学にて生物学研究室に所属する教員、学生たちの奇妙な言動が報告されたことから発見され、収容に至りました。調査の結果、██市の歩道沿いにて日本生類創研のラベルが貼られた小瓶が発見され、これがSCP-739-JPの発生源であると判明しました。付着していた物質を解析したところ、SCP-739-JPと複数の香料の混合物で、甘い匂いを発していました。発見した子供が匂いを嗅いだことから感染し、家族や学校の友人等を介して広まったと考えられています。
補遺1: 特異症状発症者へのインタビュー記録
対象: ███教授(SCP-739-JP特異症状発症者。██大学で魚類の研究をしている。)
インタビュアー: ██博士
<録音開始>
████博士: こんにちは、███教授。現在の体調はいかがですか。
███教授: ほとんど症状は治まったようです。
████博士: それは良かった。これからちょっとしたインタビューを行いますがよろしいですか?
███教授: 大丈夫です。
████博士: ではまずあなたの所属について伺います。
███教授: はい。私は██大学大学院海洋生物学研究科██研究室の…(5秒間沈黙)…あれ、日本生類創研██研究部門…いや、私は大学の、でも創研、創研大学、いやそんな大学に所属したことは…
████博士:大丈夫ですか。
███教授: すみません、混乱してしまって。自分が何者なのかよく思い出せなくなってしまいまして。…今までに感じたことのない不思議な感覚でしたが、今ようやく思い出せました。私は日本生類創研で研究者をしています。
████博士:…そうですか。では次の質問です。あなたの研究テーマを教えてください。
███教授: 私の研究テーマは…確か「海水と淡水を行き来する魚の浸透圧調整」について研究していたような。
████博士: ご自身の研究テーマですよね。なぜそんなに不確かなのですか。
███教授: すみません、昔の研究テーマのことでしたから記憶が曖昧で…。今の研究テーマはより発展的な…(10秒間沈黙)…「現実改変能力を持つ魚類による水中塩分濃度改変」に関するものです。
████博士: ちょっと待ってください。本当にそんなテーマの研究をしたことがあるのですか。それに今現実改変とおっしゃいましたがどこでそんな概念を知ったのですか。
███教授: 確かにそんな研究をした記憶はないような。しかし私は確かに…。でも言われてみると現実改変についてもどこかで教わった記憶はありません。おかしいな。
████博士: 他に自分の記憶が矛盾していると感じるところ、不自然に感じるところはありませんか。どんな小さなことでも構いません。
███教授: 不自然といえば、このような状況なのにあまり家に帰りたいと思えないのはそうかもしれません。むしろ私の帰るべき場所は…██山。そうだ、治療が終わったら██山まで送ってもらえませんか。お願いします。早く行かないとオリエンテーションが始まってしまう。
<録音終了>
終了報告: ███教授は体内からSCP-739-JPが消失したことが確認されたため、Cクラス記憶処理を施し、解放しました。解放後も監視を続けましたが不自然な言動は無く、SCP-739-JPの影響は消失したものと考えられます。
インタビューの結果を受けて、██山には調査員を派遣し、放棄された日本生類創研の施設が発見されました。内部には発見の2日前に行方不明となっていた███氏が昏睡状態で発見され、保護されました。███氏の職業は近隣のコンビニエンスストア店員で、過去研究活動に携わっていた経歴はありません。███氏の衣服のポケットから以下の文書が封筒に入った状態で発見されました。
███様
日本生類創研の██と申します。
先日はお忙しい中、当研のウイルスにご感染の上、研究員採用試験にお越しいただきありがとうございました。
厳正なる選考の結果、誠に残念ではございますが、今回は採用を見送らせていただくことになりました。
ご希望に添えず恐縮ですが、なにとぞご了承くださいますようお願い申し上げます。
多数の研究機関の中から当研を志望していただきましたことに感謝するとともに、███様の、より一層のご活躍をお祈り申し上げます。
補遺2: SCP-739-JP感染事例-200█/██/██
201█/██/██時点で財団が確認しているSCP-739-JP感染事例の最後のものです。
過去の感染事例及びサンプルを用いた研究結果をもとにしたプロトコルの実行により、SCP-739-JPによる集団感染はおよそ█週間で収束しました。最終的な感染者は██名、特異症状発症者は█名でした。また、付近での行方不明者の発生はありませんでした。
また、発生地点付近の山中に無許可で建造されていた日本生類創研関連のものと思われる放棄された施設が発見されました。異常性を持った生命体が█体確保され、Anomalousアイテムとして収容されました。これらの起源から想定される高度な実験用の設備は発見されず、飼育設備のみが発見されたことから、別の場所で作り出され、移送されてきたものであると考えられます。同時に「新人研究員のための生命体設計手ほどき」というタイトルの本が発見されました。内容は暗号化されており、現在解析中です。これらの遺留品から、発見された施設は日本生類創研の新人研究員教育のための施設であると推測されています。
この事例以降SCP-739-JPの発生は█年間確認されていません。
本事例以降SCP-739-JPの発生がなくなったことについて、私には一つ懸念がある。これまでその原因は奴らがSCP-739-JPをばらまくことで財団に探知されるのを嫌がったからだと考えていたが、奴らがSCP-739-JPを改良し、財団がその存在を察知できなくなったからだという可能性も残されているのではないだろうか。確かにこの█年間、生物学者の行方不明など報告されていない。しかし奴らの欲している「人材」は研究者だけではないはずだ。奴らは「被験体」をどこから調達しているのか、その答えにSCP-739-JPが関わっているのではないかと私は考えている。調査の継続及び調査範囲の拡大を求める。 -██博士
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