RAISA — 電気通信転写
2022/09/19 — E726B932_IA
発呼者ID: マリア・ジョーンズ — 記録・情報保安管理局 管理官
着呼者ID: ヴィンセント・ボハート — サイト-333 管理官
ジョーンズ: こんにちは。こちらはマリア・ジョーンズ、財—
ボハート: ようやっと来やがったか、何が“30分以内に届かなかったら無料”だボケ。待ってろ、今開けてやるから…
ジョーンズ: そちらはヴィンセント・ボハートさんでしょうか?
ボハート: そうだよ、少し待ってろ、 [くぐもった声] ジェニー、正面玄関を開けるやつはどれだっけな?
ボハート: [くぐもった声] 違う、それはもう試した… ああ… 当たり前だろ、チップなんか出さねぇよ、こちとら1時間も待たされてんだ…
ジョーンズ: 管理官、私は財団の記録・情報保安管理局代表としてお電話しています。あなたのサイトの年次報告に関連して、若干の懸念が見られました。
ボハート: はん? あんた — おい、なんで初めからそう言わないんだ。えーっと、そうか。いや、今は9月だろ、俺の記憶が正しければ会計年度末までお偉方の顔色を伺う必要はないはずだ。いつだったっけな、5月?
ジョーンズ: 財団の会計年度は12月31日までです。ですが、それはこの電話とは関係ありません。私たちの記録によれば、サイト-333は1982年以来、義務化されている記録管理をRAISAと共有していません。
ボハート: お、おう。ホントか?
ジョーンズ: 間違いありません。今週末までに全ての関連ファイルのデジタルコピーを送付していただきたい。
ボハート: オーケイ、ちょっと待ってもらえるか?
突然、通話が着呼者側で切断される。
特別収容プロトコル: N/A
説明: SCP-7399は1982年からサイト-333所在地で管理されている記録を全部消費したに影響を及ぼしている邪悪な実体異常現象です。正確な性質は現時点では解明されていませんが、SCP-7399はマジでヤバい本質的にメーマティックなものだと推定されており…
サイト-333 — 部門間交流ログ: 2022/09/19 — 3:14 pm |
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レオノーラ・モラレス: 絶対“ミーメティック”ですって。 トニー・カタラーノ: おいおい、そりゃどういう意味なんだ? レオノーラ・モラレス: 見ると脳が誤作動を起こす画像みたいな、確か“ミーム”っていう用語からの派生だったと思います。 トニー・カタラーノ: 背景付きの小動物の写真みたいなアレか? ノア・パテル: やっぱり、ある種の生き物が関わる話の方が良かったと思うよ。我々の調査に感づいたジャージーデビルが、サイトに押し入って書類を燃やしたり食べたりしたと言えばそれで済むのに! トニー・カタラーノ: 俺もノアに賛成だ — 後半じゃなくて前半な。部門の代表として言わせてもらおう、俺たちの立場は断固として反ミームだ。 ヴィンセント・ボハート: もし投票のつもりで言ってんのなら、考慮に入れておく。とにかく俺たちが今まで気付かなかった理由が必要なんだ。何故こんな状態が長々と続いていたかをごまかすカバーストーリーが。 レオノーラ・モラレス: ホントに何故こんな状態が長々と続いてたんですか? ヴィンセント・ボハート: 調べてみたら、どうも前任の管理官は — 俺の赴任前だってのは強調しておくぞ — 書類の配送を外部業者に委託して、1、2ドル節約してたらしい。俺たちが正面に箱を積んでおけば回収される手筈になってた。 ヴィンセント・ボハート: で、その業者は肺移植絡みの誤配で訴えられた後、'82年に潰れてたことが分かった。 トニー・カタラーノ: だったら、俺たちが何年も外に出してきた箱は? みんな何処に消えた? ヴィンセント・ボハート: そりゃ、積んでおく場所が生ゴミ置き場だったからな。もう… ノア・パテル: えぇ… でもきっと複写してあるんだろう? だって、まさか原本を捨てるはずがない。 ヴィンセント・ボハート: プリンターのインク代がいくら掛かるか知ってるか? 既に手元にある書類にそんなムダ金使ってたまるかよ。 レオノーラ・モラレス: “あった”。手元にあった書類でしょう、今はもう何処行っちゃったか分かんないんですから。 ヴィンセント・ボハート: そうとも、だからこそこいつを乗り切らなきゃヤバいんだよ。勝手に書類を捨てちまうアノマリーの仕業ってことでごまかそう。“Super Keter”、大物的なやつ。 ノア・パテル: あのぅ、ボス。もし財団が真に受けちゃったらどうするんだい? ヴィンセント・ボハート: 止せよ、ノア。敵対的なミームエージェントが書類を食ってると向こうで思い込んでくれりゃ、俺たちは晴れて潔白なんだぜ! ノア・パテル: そして、そいつが外部に拡散するのを心配し始めたら? RAISAはもう既に我々に目を光らせてるのに、自分たちの記録を脅かすものがここにいると考えたら、なんて言われると思う? ヴィンセント・ボハート: クソがよ。 ヴィンセント・ボハート: オーケイ、プランB。お前ら3人で書類をでっち上げろ。現地報告、収容したアノマリー、研究結果、金曜夜のピザパーティー、そういう成果物をだ。 トニー・カタラーノ: 20年分の情報を1週間で捏造しろってのかよ? ヴィンセント・ボハート: その意気だ! さっさと取り掛かれ。お前らだってサイト-333のモットーを知ってるだろ、“敢えて挑む者こそが勝利する”。 レオノーラ・モラレス: イギリス特殊空挺部隊のですよね? ヴィンセント・ボハート: 分かって言ってんだよ。イカすだろ。 ノア・パテル: で、我々がこの件に取り組んでる間、あなたは何をするおつもりで? ヴィンセント・ボハート: プランCだ。 |

Nx-36 — “アトランティックシティ” — 宣材写真 — 使用前にキャプションを更新すること。

典型的なカモメの習性 — 例示A。
SCP-7399 報告 — 01: レオノーラ・モラレス
2022/09/21
ボハート管理官、
動物行動ファイルに目を通して、一つ気になったことがあります。ネクサス-36では動物の異常行動が多数観察されています — カジノのビュッフェを襲撃するコウモリの群れ、遊歩道沿いの全てのスープにハエが混入する時期、毎年3月になるとカニに占拠されるビーチ、そして私たちが対応しなきゃならなかった、例の観覧車につっかえたマッコウクジラの騒動 — しかし、カモメほど頻繁に記録に現れる動物は他にいません。
動物学部門が目録化したカモメ関係の情報量ときたら衝撃的です。確かに、私も一部のカモメがタバコを吸ってるらしいと以前コメントしましたが、このウサギ穴はそれより遥かに深いですよ。私の前任者たちは、遡れる限りでは全員、アトランティックシティのカモメに見られる攻撃的・独占的・操作的な行動についての評論を残しているんです。何か大変なものを… 事によると財団の歴史上最大規模の異常な動物行動の記録を見つけちゃったのかもしれません!
私の発見は下の資料にまとめました。世界中の財団サイトに駐在している動物学者たちにこれを送付し、査読してもらいます。
まさにRAISAが手元に置きたがるタイプの最先端なフィールドワークに違いありませんし、こうして思えば、今回の審査が無ければ私はこれに気付くことさえなかったでしょう! この制度は機能してます! 良い予感がしますよ!

典型的なカモメの習性 — 例示B。
更新:
2022/09/22
一部の同僚から、この種の鳥が出没する事実上全ての都市中心部で似たような発見がある、という返事がありました。私が昨日お伝えした習性ってめっちゃ普通らしいですね。アトランティックシティのカモメは異常じゃなくてただの根性悪でした。
SCP-7399 報告 — 02: ノア・パテル
2022/09/23
ハロー、ボハート管理官、
様々な異常に関して、できる限り多くの情報を編纂してほしいという要望は理解しているけれど、実はそんなのよりもずっと興味を持ってもらえそうな資料があるんだよ。以前にも印刷したコピーを渡した覚えがあるけれど、この形式ならもう失くさないね!
ニュージャージーデビル考察
財団による直接観察の回避を踏まえた上での、当該未確認動物の存在に関するフィクトクリティカルな探求及び正当化。
ニュージャージーデビル博物館、サイト-333、未確認動物学者 兼 主任学芸員、ノア・パテル 著

要旨:
本稿は、ニュージャージーデビルという謎に包まれた未確認動物に関する証拠文献、目撃談、及び周辺情報を編纂したものである。私は更に、これらの目撃事例を民話や都市伝説の枠組みの中で分析し、ジャージーデビルと、財団によって実在が認められた他の未確認動物との共通点を確立する。そうすることにより、ジャージーデビルが実在する可能性が肯定され、妥当と認められる。何故ジャージーデビルは未だ財団によって正式に認知されていないのかという疑問に答えるため、筆者はこの生物の行動様式、目的、欲求、対人関係に関するフィクトクリティカルな解説を含めることにした。この証拠に裏打ちされた物語的説明が、この未確認動物と人間社会、財団、そしてダンス芸術との関係について、客観的な情報とデータに支えられた理解を提供する。筆者としては、都市圏の未確認動物とそれらを調査する個々の研究者の複雑な相互関係を理解するための財団の試みに、本稿が新たな活気を吹き込むものと信ずるところである。
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SCP-7399 報告 — 03: トニー・カタラーノ
2022/09/24
ヴィンセント、
俺はサイト-333の財務を見直し、腰を据えて全てを綿密に調べ上げるのにたっぷり時間をかけた。
きっとしっちゃかめっちゃかだろうと覚悟はしてたが、それがなんと、遥かにヤバい。ヴィンセント、これはもうどんなに強調してもし切れない。サイト-333は、本来ならどんな基準で見たって、数十年はおろか3週間も運営が成り立たない財政状況にある。
筋の通る部分がまるで無いんだよ。これが経理の一番基礎的かつ根源的なルールをどこまで侵害してるかってのを — いやもう、こりゃルールの墓の上で踊ってるも同然だぜ — 耳にタコができるぐらいたっぷり説いてやりたいところだが、どうせお前は聞きゃしない。だから代わりに、長い、長~いリストから幾つか例を挙げてやるよ。
- どういうわけか、この物件は3重に抵当に入ってて、そのうち2つは同じ銀行が相手だ。
- 俺たちには2階洗面所の法的な所有権が無い — 1985年に売却されてて、誰が買い手かすら分からない、“プラマー家”とだけ書いてある。
- サイト-333の従業員は全員、ブラキストーン靴墨社の50%割引クーポンを受け取ってる。その代わり、俺たちの誰かが履物を買うと、靴墨社はその売り上げの一部を受け取ってる。これがどういう風に施行、監視されてるのかは見当も付かない。
- ギフトショップの収益の35%は“ソルトウォーター・タフィー”の売り上げだという記載がある。俺たちが過去にソルトウォーター・タフィーを購入したり仕入れたりしたっていう明細請求書は1枚も見つかってない。
- アトランティックシティ消防局に対して、“まだ行なわれていない役務”代として120,000ドル以上の借金がある。
- 明らかにマネーロンダリングと分かる支払いが数百件あるが、誰が仕組んだにせよ、その野郎はサイト-333の口座を受取に使ってやがる。だから実際の支払いも“汚い金”も、ロンダリング業者の運営費を差っ引いた状態で直接戻って来る。
- 給料から所得税がその都度天引きされてる従業員はノア・パテルだけで、しかもそいつは韓国政府への支払いとして記載されている。
見つけたもんをあらかた会計ソフトに入力してみたら、“意味のある回答には不十分なデータ”INSUFFICIENT DATA FOR MEANINGFUL ANSWERとかいうエラーメッセージが出た後、フリーズしてコンピュータが煙を出し始めた。
情報をまとめろというお前の指示に背くことになるのは分かってる、だが経理部門を代表して俺はある決断を下した。火を吹いたコンピュータを裏手のゴミ入れに放り込んで書類を全部その上に積み重ねた。全部最初からやり直すよ、あんなクソ溜めには手の付けようがない。
- トニー

Nx-36 — “アトランティックシティ” — 宣材写真 — 使用前にキャプションを更新すること。
サイト-333 — 部門間交流ログ: 2022/09/23 — 11:17 am |
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ヴィンセント・ボハート: 全員よくやってくれた、諸君を誇りに思う。 ノア・パテル: どうもありがとうござ— ヴィンセント・ボハート: お前らが全部台無しにしてなかったらそう言いたかったんだがな。バカにしてんのか、なぁおい。俺だって奇跡を期待しちゃいなかったさ、だがこのザマはどうした? ヴィンセント・ボハート: ただ1週間きっちり仕事しろと頼んだだけだぞ。結果はどうだ、サイトリソースの非効率配分、無能、不従順、そして三文小説の下書きと来やがった。ノア、もし俺に読む気があったら、最初によこした原稿を捨てたりしてないんだよ。 ノア・パテル: でもあなた、鳥が— ヴィンセント・ボハート: RAISAがウチのドアを蹴破って俺の歯をへし折るまでに、まだあと5時間の猶予がある。まだアイデアがあるなら、今が出し時だぞ。 ノア・パテル: … トニー・カタラーノ:… レオノーラ・モラレス:… ヴィンセント・ボハート: だろうと思ったよ。いいか— レオノーラ・モラレス: プランCはどうしたんですか? ヴィンセント・ボハート: プラン何? トニー・カタラーノ: そうだよ、お前、俺たちがこれに取り組んでる間にプランCを用意すると言ったよな。 ヴィンセント・ボハート: おう、そうだったな… その、えー… レオノーラ・モラレス: プランCなんて無いんでしょ? ヴィンセント・ボハート: [溜め息] ああ、無い… いやしかし… そうだっ! ヴィンセント・ボハート: ノアの編集スキル不足のおかげで閃いたぞ。RAISAは俺たちの記録を欲しがってるが、考えてもみろ、あいつらは世界中の全ての財団サイトから集めた資料を管理してるんだ! 実際に全部の紙切れを読んでるわけがない! SCPファイルだけで数百件はある! レオノーラ・モラレス: 実は数千件あるんですよ。 ヴィンセント・ボハート: その通り! 作戦はこうだ、諸君。今からこのサイト、いやこの街全域から書類を1枚残らずかき集める! 本、領収書、苦情申し立て書式、手に入るもんは全部スキャンしてRAISAのオタクどもに送り付けろ。あいつらは大量の情報に忙殺されて、この先また20年間は俺たちに構ってられなくなるだろう! ヴィンセント・ボハート: ノア、お前の文章が長ったらしくて本当に助かったぜこの野郎、早くあのヘンテコ博物館の写真を全部引っ張り出してこい — ギフトカードもだ! トニー、スプレッドシートを作れ、中身はどうだっていい、適当に数字で埋めとけ、多けりゃ多いほど良いぞ。レオノーラ、お前は人手を集めてバンで公共図書館に乗り付けろ。棚から本を出して積み込むんだ、もしとやかく言われたらシロアリとか何とか言ってごまかせ。 レオノーラ・モラレス: 多分シロアリはいないんじゃないかと— ヴィンセント・ボハート: 俺は“何とか”と言ったんだ、大した問題じゃない。さぁ取り掛かれ諸君、納期が迫ってるぞ! |

無人かつ資金不足の児童図書館からデジタル化対象の文書を調達するサイト-333職員。
RAISA — 電気通信転写
2022/09/26 — E726B932_IA
発呼者ID: マリア・ジョーンズ — 記録・情報保安管理局 管理官
着呼者ID: ヴィンセント・ボハート — サイト-333 管理官
ジョーンズ: こちらはマリア・ジョーンズ、財団記録—
ボハート: ああ、マリア! 連絡をありがとうよ。ウチが送った資料は届いたかな? 遅れてすまん、こういう事もたまにはあるもんだ。でもきっと今頃、何処かちゃんとした安全で目に入らない場所に保管してあるんだろ?
ジョーンズ: ええ、転送された資料は受け取りました。実は先程、そちらのサイトが送信したファイルの審査が終わったばかりです。
ボハート: お、終わった?! 全部か?
ジョーンズ: はい。遅れてしまい申し訳ありません。これがもし週末でなければ、もっと迅速に連絡できたのですがね。
ジョーンズ: 最初にご連絡した理由が偽装であったことを明かす許可も下りました。RAISAは、サイト-333が関連ファイルや資料を審査に提出していないのを、初めて送付が途絶えた1982年時点で既に把握していました。虚偽を述べたことはお詫びします、しかしこれは必要な措置でした。私たちは現在、記録管理・情報保安の緊急事態に対する財団サイトの対応について内部監査を実施しており、サイト-333はそのようなサイトの1つとして審査対象に選定されたのです。
ボハート: ちょっと待てよ、つまりこれはある種のお遊びだったということか?
ジョーンズ: お遊びではありません、管理官。査定です。たった今送信したメールを開いていただければ、あなたのサイトの業績に対する私たちのフィードバックを確認できるはずですよ。あなたが通知表を読んでいる間、通話は繋いだままにしておきます。
RAISA — サイト-333 業績審査: |
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基準 | 評価 |
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リーダーシップとチームワーク: サイト職員はチームとして効率的に活動しているか? 権威ある立場の者は、効率的に職責を委任し、部下を統括しているか? | D |
組織と情報伝達: サイト職員は問題解決に向けて体系的かつ秩序だった取り組みを行っているか? また、この取り組みを効率的に伝達できているか? | F |
創造性と柔軟性: サイト職員は発生した問題に直感的に対応できているか? また、創造的な解決策を模索する能力を示しているか? | C- |
プロフェッショナリズムと責任感: サイト職員はプロフェッショナルな態度で行動しているか? 自らに課せられた役割や、自らの犯した過ちに対する責任を受け入れているか? | F |
対応の妥当性: サイト職員は記録・情報保安管理局から伝えられた査定状況に適切に対応できているか? | F- |
全体的査定結果: 不十分 | 合格/失格: 状況に鑑みて合格 |
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ボハート: 何だこれは? どうやって? 俺たちを盗聴してたのか?
ジョーンズ: 管理官、RAISAが確実に運営上の情報保安体制を維持するため、全ての公式通信チャンネルの監視を義務付けられているのを、あなたもよくご存じのはずです。尤も、今回はその必要もほとんどありませんでした。あなたのオフィスは、私たちに転送されたファイルの1つに、“SCP-7399”という隠蔽工作の試みを記録したままでしたからね。
ボハート: おいおい、ホントに全部に目を通したのかよ? 俺なんか自分の書類でさえ捌き切れないってのに。マジな話、俺は署名するもんの半分は読みもしないぞ。
ジョーンズ: あなたは本当にその情報を開示したいのですか?
ボハート: 待てよ、もしこれがテストなら、そして俺の高校時代の記憶が正しければ、“F”は“悪い”だろ。どうして俺たちに合格判定が降りてる? “状況に鑑みて合格”ってのはどういう意味だ?
ジョーンズ: 管理官、この査定の目的は、財団サイトの記録管理・情報保安体制の改善点を見極めることです。RAISAが見落とされてきた落とし穴や冗長性を特定し、現在の運営方式の有効性を向上させる機会とすることが狙いでした。
ジョーンズ: サイト-333の業績は過去に類を見ないほど低迷しています。事実上あらゆる場面で、職員は確立された方針と体系的なサポートを蔑ろにしています。端的に言えば、有意義な改善、自己反省、個人的・組織的な成長の余地が見出せません。従って、今回の審査では、サイト-333の職員を教育し、より良い記録管理システムを導入するために必要となる取り組みは、サイト-333の現在の — 極めて不適切な — 手法が引き起こす被害よりも、時間と労力の両面で著しく高コストであると結論付けました。財団にとって、今回特定された問題を解決する努力には、あなたのサイトの運営ぶりを象徴する貧弱な記録管理と標準以下の情報保安体制に耐え忍び続ける以上のメリットは無いというのが、私たちの見解です。
ボハート: なんとなく分かった気がする。つまりだ、サイト-333のやり方は型に嵌まらないが、RAISAがうっかり手出ししてメチャクチャにするのはマズいと思う程度には上手くやってるってことだろ?
ジョーンズ: いいえ、全く違います。話を聞いていましたか?
ボハート: 今日は貴重な教訓を得た気がする。あんたからお褒めの言葉があったと部下にも伝えとくぜ。俺の口から出た言葉とは思われたくない、それだと奴らは関心持たないだろうからな。話せて嬉しかったよ、ジョーンズ。
ジョーンズ: 管理官—
突然、通話が着呼者側で切断される。