以下は、SCP-7436の着信記録のうち特筆に値するもの、またその後の事象の記録です。通話内容の書き起こしや被害者の回収の可否によって、実例ごとに利用可能な情報量が異なることに留意してください。以下、適宜SCP-7436の生存者によるコメントが含まれます。
実例: #03
状況と通話内容: 被害者(ジョン・キンケード、38歳)は、ノバスコシア州のニュー・グラスローのホテルに滞在していた。午後9時40分頃、被害者に面識のない個人から電話の着信があり、電話口の相手は支離滅裂なことを話した(「酔っ払った感じの話し方で、道を聞かれました。多分、ホテルへの道のことだったかと」)。約30分の後に、被害者は通話を切った。
イベント内容: 被害者によれば、通話終了後、扉の外からくぐもった息遣いが聞こえてきたとされる。被害者はこれを調査した。(「ドアを開けましたが誰もいませんでした。身を乗り出してみると、誰かが廊下の向こう側に見えて、角のところをさっと曲がっていくところでした。追いかけて話を聞いても良かったんですが、何だか壁の様子が変なことに気付いたんです。見え方が違ったというか」)。被害者は一時的に自室を出て、それから戻って就寝しようとした(「また息遣いが聞こえて来て、それで眠れなくなりました。普段なら何かしてやろうと思うところですが、何となく、外に出ることがとても恐ろしいことであるような気がしました」)。およそ2時間後、息遣いは止み、SCP-7436イベントは終了したとされる。後に被害者の靴裏に付着していた物質を解析したところ、人間の血液と唾液、様々な種類のアルコールの混合物が検出された。
実例: #18
状況と通話内容の書き起こし: 被害者(エリン・バスキン、55歳)は、ウィスコンシン州のマディソンの自宅にて、午前2時1分、固定電話に着信を受けた。被害者によれば、発信者の声は自分の夫の声に似ているような気がしたという。
[書き起こしここから]
バスキン: もしもし?
SCP-7436: [沈黙]
バスキン: ……あの——
SCP-7436: エリン、外に来てくれ。
バスキン: マットなの? どこにいるの?
SCP-7436: ドライブをしていて道に迷ったんだ。中に入れてくれ。
バスキン: え? ドライブ?
SCP-7436: 何だか、(不明瞭な音声)に追われているみたいなんだ。
バスキン: 分かりました、すぐに出ます。
バスキン: それにしても、どうしてこんな遅くに外に? 朝の2時なのに。
SCP-7436: ……朝。
[書き起こしここまで]
イベント内容: 通話終了後、被害者は窓に向かって移動し、夫が外にいるのを確認しようとした(「窓から外を見ると、空は真っ昼間みたいでした。真夜中なのに。空は真っ黒のはずなのに」)。この状態は数秒続いた後、前触れもなく空は暗い状態に戻った。
被害者は、続いて自身の夫に類似した実体が外に立っていることを視認したが、この実体には口がなかった(「ただ口がなかったという感じではありませんでした。まるで、その……(……)マットの顔から、スプーンで掬い取ったみたいな感じでした」)。被害者は急いで自分の部屋に戻り、その後イベント終了まで自室に鍵を掛けて籠城した。
実例: #32
状況と通話内容の書き起こし: 被害者(ブライアン・スパン、20歳)は、マサチューセッツ州のボストンにて、友人と一緒にパーティに参加していた。11時38分頃、被害者の友人が、不明な理由でその場を短時間離れた。その後すぐ、被害者自身の携帯電話に着信があり、これに応答するため、被害者は上階に移動した。
[書き起こしここから]
スパン: もしもし……マイクか?
SCP-7436: (くぐもった声で)あぁ。
スパン: ちょうど電話しようとしてたんだ。そろそろ出ようかと思って。知らないヤツばかりだし。
SCP-7436: あぁ、それが良いかもな。
スパン: よし。じゃあ後で落ち合うか。
SCP-7436: 家まで車で送るよ。この時間は危ないだろ。
スパン: そんなこと言うのは珍しいな。
SCP-7436: この辺りのことを知らないだろ。後ろをついてくるんだよ。前に目があってさ。
スパン: 何の話だよ。
SCP-7436: 分からないか? 狩られる側の目は横についているだろ、その——(不明瞭な音声)俺は外にいるよ。
スパン: ……あぁ、分かった。
(被害者が階段を降りていく音)
スパン: 安全運転で頼むぞ……何だおいこれ。
SCP-7436: どうした?
スパン: (囁き声で)下に来てみたら皆ゾンビみたいに黙って突っ立ってる。誰も会話をしていない。
スパン: 何だよ、皆こっちを見てくるんだが。
SCP-7436: 俺は外だ。早く来い。
スパン: 向かってる。どういう集まりだよこれ。
(被害者が急いで扉を開け、建物を出ていく音)
[書き起こしここまで]
イベント内容: 本イベントは、被害者がまだ通話中に発生したものと考えられる。被害者が電話を取って上階に上がってから、その姿を見た者はおらず、上階では被害者の携帯電話が後に発見された。被害者の友人は、本イベントの後、数日間にわたって深刻な喉と口の痛みを訴えた。
実例: #65
状況と通話内容: 被害者(ジョセフ・カルデラ、58歳)は、ワイオミング州の地方の州間高速道路を運転中、午後9時27分に携帯電話に着信を受けた。被害者によれば、通話相手は唾液の量が多いような話し方だったとされている。通話相手は被害者に対して、近くで車に衝突されたのだと述べ、半狂乱で助けを求めた。被害者は通話内容に困惑したとしている(「相手がどうやって私の番号を知ったのかさえ分からないですし、当然、私が周囲に何もないところを移動中であったことだって、どうして分かったのか分かりませんし」)。被害者は通話相手に対し、救急サービスに連絡するように助言し、通話を終えた。
イベント内容: 通話が終了して数分後、被害者が車を運転中、前方に無人の車を発見した。被害者は自身の車から降りて状況を調査し、該当の車はOrvis canadensisに衝突したらしいことを確認したが、このOrvis canadensisは異常なほど巨大な歯を持ち、目が前についているといった、身体的に異常な特徴を有していた。また、被害者によれば、該当の車の見た目にも奇妙な点があったとされている(「偽物っぽかったんです。サイドミラーも、窓も、ガソリンタンクもなかったですし。映画で見る作り物みたいな、実際には運転できないものみたいでした」)。
被害者はすぐに自分の車に戻り、その場を去った。その後、自宅の私道に駐車完了時、被害者は背後から強い衝撃を受けて昏倒した。被害者は次の日の朝に、その私道にて、被害者の妻に、顎と喉に深刻な負傷を負った状態で発見された。現場近くでOrvis canadensisの死骸が発見されたが、その内臓のほとんどは欠損していた。
実例: #79
状況と通話内容の書き起こし: 被害者(ジェラルド・パディラ、29歳)は、オンタリオ州のトロントにて、バス停でひとりでバスを待っていたところ、11時5分に以下の着信を受けた。
[書き起こしここから]
パディラ: もしもし?
SCP-7436: バスは……
パディラ: 誰だ?
SCP-7436: バスは来ない。
パディラ: もしもし?
SCP-7436: おかしい。私——(不明瞭な声)。バスで家には帰れない。
パディラ: 何? 遅延?
パディラ: いや、公共交通機関っていつから直接電話するようになったんだ? 誰?
SCP-7436: バスは来ない。
[書き起こしここまで]
イベント内容: 被害者は、この通話の後、数時間の間に、複数の動画、写真、その他デジタルファイルの記録を録った。これらは、次の日に同じバス停で被害者の携帯電話が発見された際に回収されたが、被害者本人は発見されていない。回収されたファイルについては、補遺7436.2を参照のこと。