発見記録 (筆録版) 7533:
原本: 2018年4月18日に行われた中村のライブ配信『居酒屋紀行:渋谷編』から回収された映像
登場人物: 中村明 (POI-7533-A)、伊藤順一郎 (POI-7533-B)
[ログ開始]
映像は、明るくネオンに照らされた路地を歩く背の高い男性 (POI-7533-Bと特定された) の人影から始まる。彼は大声で笑っており、足取りは明らかにおぼついていない。カメラの後ろでは、同様に酔っているPOI-7533-Aの声が聞こえる。
POI-7533-A: またひとつ居酒屋を制覇して、3軒⸺新記録まであと3軒になりました!いいですねえ、今どんな気分ですか?
POI-7533-B: なんか揚げ物が食べたいなあ。近くでいい串カツの店ないの?てかどこだろここ。なんでこっち来ちゃったの?
POI-7533-A: 言ったじゃん、タダでライトショーを見るって。酔って見るネオンサインってめっちゃいいじゃん。ちょっとしたらおいしい焼き鳥屋でも誰かに聞こう。
POI-7533-B: <ぶつぶつと> 串カツの後だったらもっといいと思うけどな。
POI-7533-A: コメ欄は見たいって言ってるから見に行くよ。
POI-7533-B: うわ、看板直した方がいいってこれ。ブンブンうるさいんだけど!こんななのこれ?!
POI-7533-A: なんもきこえねーよオイ。もう少しアルコール入れた方がいいんじゃない?あ、逆か <笑い>
動画がパンして、路地の両側にある数十のネオンサインを映し出している中、会話は続いている。ラブホテルへの招待、店の看板の点滅、矢印などのモチーフが、色彩豊かに暗い脇道を指し示している。対応する施設や店舗は確認されていない。
2人が路地を進むにつれて、サインの出現する頻度が増え、見えている色相が単一のピンク色へのグラデーションになっていく。
POI-7533-B: こんな看板が何だってんだよ。確かに「ライトショー」だけど、ラブホの宣伝ばっかじゃん。なに、何か言いたいことあるの?
POI-7533-Bはカメラに向かってキス音を立て、笑っている。
POI-7533-A: <笑い> バカ言ってら。けどラブホってのはもっとヤバいぜ。ハルが友達と女子会した所は、ウォータースライダー付きのプールと恐竜があったらしいって。
POI-7533-B: え?それマジ?ヤバいじゃん。<空白> 何のためにそんなの置いてんのさ?
POI-7553-Bはカメラから目をそらして、左方向を熱心に指し示している姿が見える。カメラは、明るく光って暴力的なまでに明滅するネオンの、遠く暗い小道を指し示す渦巻き状の矢印を映し出している。
POI-7533-B: あ、こっちがいい気がする。なんか、さっきからブンブン煩くて頭が痛くなってきたんだよな。
POI-7533-A: そんなの聞こえないけど—おい、待てって!
映像が揺れ動いて、POI-7533-Bが素早く方向を変えながら帳の降りた路地へ速足で歩いていく様子が映し出されている。POI-7533-Aは進路を変え、彼に追いつくために走り始める。
POI-7533-A: なあ、こっちには何もないぞ?どうせ今の時間帯は閉まってるって。何やって—
POI-7533-Bは空き店舗の前で突然立ち止まる。その空間は廃墟のように見え、ぼんやりしたピンク色の光が埃をかぶった窓に染み込んでいる。ドアに重なって別の渦巻き模様が見られる。POI-7533-Bはドアノブを回そうとして、瞳孔が著しく拡張して興奮した様子でカメラの方を見た。
POI-7533-B: 鍵が開いてる!見てみようぜ。
POI-7533-A: <不安がって> 知らねえよ。見るからに怪しいだろ。カツ食いたくねえの?
POI-7533-B: ビビってんなって。コメ欄のみんなはどうなの?俺がメシ食いまくってるのを見たいのか、このヤバそうな店を見たいのか?分かってるんだから何言いたいかは。
POI-7533-A: <溜息> 分かったよ。けど—
POI-7533-Aが話し終えるより前に、POI-7533-Bはドアを引いて中に入っていった。ピンク色の光が開口部から溢れだして、ドアが閉じると共に急速に消えていく。
POI-7533-B: 来いよ!ちょっとした冒険だぜ!
POI-7533-Aはためらいながらも、慎重にドアへと向かう。中に入ると、映像は使われていないその部屋を360度見渡して、ピンクの壁紙とそれにマッチしたタイルで統一された内装と、けばけばしいが一貫した色合いの小さなデスクチェアが映し出された。POI-7533-Bはカメラに背を向けて、少し入ったところに立っている。店の裏側は依然として影に覆われている。
POI-7533-A: いやピンクすぎるだろ!キモいけど嫌いじゃないけどね?<POI-7533-Bに向けて> そんな奥に行くなって!
POI-7533-B: <穏やかに> 落ち着けって。大丈夫だよ。ほら、売ってるやつとか見てみろって。こっちまでずっと続いてるぞ。
POI-7533-A: は?何が?
POI-7533-Bの姿は店の奥へと消えて、足音がどこか前方から聞こえる。声はカメラの位置から異常に遠く聞こえる。
POI-7533-B: 絶対見た方がいいって。変なアダルトショップかと思ったら、いろんな店が集まってる感じだわ。なんか、ミニ秋葉原とかそんな感じで…<声が途切れる>
POI-7533-Aは暗くなっている領域に近付く。カメラには開いた倉庫のドアが姿を現し、暗闇に包まれた別の開けた空間にそのまま入っていく。部屋の側面は鏡面のような素材で覆われており、きらきらと瞬くピンクのストリングライトが天井からいくつも垂れ下がっている。その結果、方向感覚を失うほどあらゆる方向に光の粒が輝いていて、表面的には無限の広がりを持っているように見えている。
POI-7533-A: ワーオ…
POI-7533-Aは左手の鏡面に目を向けると、映像は彼の背後のどこかから微かな光を捉える。それはカメラの映像が歪むと同時に、複数の場所にエフェクトが反映される。POI-7533-Bは映像に見えていないが、笑ったり独り言を言ったりしている様子が聞こえてくる。その数秒後、声が止んだ。
POI-7533-A: <大声で> どこにいるんだよ?!
沈黙
POI-7533-A: 順い—
POI-7533-Bは部屋内のどこかから大きな叫び声を上げる。
POI-7533-Aが何度も繰り返しPOI-7533-Bに呼びかけながら音の発生源に向かって突進したため、カメラの映像は不明瞭に遮られている。映像の歪みが増していく間に、暗い廊下の中央に螺旋階段が見えてくる。階段は下方に、不明な深さまで伸びている。
POI-7533-A: もう沢山だって、クソがよ!
驚いた叫び声がもう一度響き渡るが、すぐに途切れる。POI-7533-Aは階段を駆け下りながら自分自身に悪態をついている。大きな擦れた音がして視界が乱れ、カメラが落下し、下方にあったタイル張りの床面に斜めに着地する。震えた手がカメラを持ち上げている間、乱れた息遣いと罵声が聞こえてくる。通路の先にはピンクの光が見え、それがメンテナンス用の立坑であることが明らかになるが、それ以外に注目すべきものは何も見えていない。POI-7533-Aはトンネルの中を歩き始めた。
POI-7533-B: どこにいるんだよ?早く来いよ!
POI-7533-A: ここにいる!今行くから!お前、大丈夫か?
POI-7533-B: 落ち着けって。こっちには何もないぞ?
POI-7533-A: ケガしてない、のか?叫んでるのが聞こえたけど—
POI-7533-B: 大丈夫だよ。ビビってんなって。
次の交差点で、薄暗い壁に寄りかかっているPOI-7533-Bが映像に姿を現す。彼は横に身をかがめて、カメラに向かって手を振る。
POI-7533-B: 絶対見た方がいいって。こっちまでずっと続いてるぞ。
POI-7533-A: いや、さっさとここから出るぞ。そんで、俺を驚かした罰に一発殴らせろ。
POI-7533-B: キモいけど嫌いじゃないけどね?
POI-7533-A: <不安そうに笑う> ほら行くぞ、このバカ—
空間の光が揺らめいて歪み、SCP-7533が出現する。POI-7533-Bの胴体と手足は視認できない。代わりに、実体は巨大な歯の間に切断された彼の頭部を挟んでいる。幻覚の効果が薄れると、深い赤色の内臓が実体の周囲の壁や床に点在している様子が出現する。彼の頭部の表情が歪み、高く掲げられたランタンから発されるピンク色の光の中に波打つように沈んでいく。ランタンは催眠術のように前後に揺れている。POI-7533-Bの目が開いて周囲を見回し、POI-7533-Aをじっと見つめると、青白い顔に笑みが浮かぶ。それは伊藤の声を大雑把に真似て喋っている。
POI-7533-B: なに、何か言いたいことあるの?
POI-7533-Bは笑い、カメラに向かってキスするような音を立てる。
POI-7533-Aは叫び声をあげて後ろを向き、階段に向かって走り出す。映像は彼の歩幅に合わせて揺れている。SCP-7533のランタンが発するハム音が大きくなるにつれて、ピンクの光も強くなっていく。通路の壁に沿って、光を放つ標識が急速に増え、行き止まりや逆方向の交通標識、後ろ方向を指し示している矢印、POI-7533-Bの容貌の標識などが見られる。
POI-7533-Aが階段に到達してそれを昇る間、動画は動きと光の干渉で歪んでいる。彼はつまづき、携帯電話は再び下に転がって、今度は床にカメラが向いた状態で固いタイルの上に着地する。大きな騒ぎとパニックした叫び声が聞こえ、30秒後に静かになり、その後大きな破壊音が聞こえる。ライブ配信が終了するまで、映像は真っ暗のまま続く。
[ログ終了]
後記: 中村はこの記録の出来事の約40分後、地元当局によって発見されました。彼は発見当時、近くのごみ箱に隠れていて、異常な行動をしていたようです。財団のエージェントは警察の拘留から中村を救出して財団サイトに移送し、急性のカタトニアと精神症の治療を行いました。10日以内に十分な回復が認められたため、その後記憶処理されて一般社会へ戻されました。