クレジット
ソース: SCP-7601
メタタイトル: 制止できない無限アヒル
著者: Akzal1231
作成年: 2022
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シカゴ上空で目撃された後、インターネット上に流出したSCP-7601の画像。撮影者不祥。
アイテム番号: SCP-7601
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-7601は暫定的にサイト-198の鋼鉄で補強された収容室で飼育されます。SCP-7601を収容する手段は現在調査中です。
説明: SCP-7601は異常な雌のペキンアヒルです。SCP-7601は自らの首を無制限に伸長させることが可能であり、記録された最大長は~4,520kmに達しました。SCP-7601が首の伸長に必要な物質をどのように取得するかは不明です。この現象の発生中も、SCP-7601の身体と頭部の大きさには変化がありません。その巨大さにも拘らず、SCP-7601が首を空中に維持し続けられる理由は解明されていません。また、SCP-7601は英語を話すことができますが、この能力は1回しか観察されていません (事案7601を参照) 。SCP-7601は通常兵器に対する耐性を有しますが、影響を全く受けないわけではありません。
事案7601: SCP-7601は2011/05/06に発見されました。事案を目撃した全ての民間人に記憶処理が施され、アメリカ空軍による抜き打ち飛行訓練の虚偽記憶が植え付けられました。以下は事案7601の時系列です。
<11:43> カナダのマーカムにあるマクドナルドの店舗外監視カメラが、SCP-7601が青い1999年製フォード・フィエスタの屋根に乗っている様子を捉える。
<11:45> SCP-7601は首を急速に伸長させ始め、頭部が5秒以内に上空200mに達する。車の屋根が陥没し、車体と周囲のコンクリートが地面にめり込む。
<11:46> 衛星画像は、SCP-7601の首が湾曲し、上部が地面と平行な向きになる様子を捉える。SCP-7601の頭部は上空3.4kmにあり、移動速度は秒速110mと推定される。
<11:47> 民間人によるSCP-7601の目撃例がYouTubeにアップロードされる。動画はSCP-7601の首が空を横切って飛び、水平線の向こうへ消える様子を捉えている。目撃者たちはSCP-7601の正体を特定できていない。
<11:49> 財団ウェブクローラが様々なソーシャルメディア・プラットフォームで、SCP-7601関連動画をフラグ付け・削除し始める。サイト-198の財団レーダーが、秒速およそ247mで上空を飛行するSCP-7601を検知する。軌道解析の結果、SCP-7601はサイト-19に向かっていることが判明する。O5司令部に状況が報告される。
<11:50> SCP-7601はシカゴ上空で音速の壁1を突破する。財団職員が記憶処理薬の展開に動員される。
<11:52> SCP-7601がアメリカ軍基地の上空を通過する。基地はSCP-7601を飛来物と見做し、17発の地対空ミサイルを発射する。17発中15発が命中するが、SCP-7601に損傷は見られない。
<11:53> マーカムでは、SCP-7601の伸長による下方への力で車両が破壊され、深さおよそ14m、幅およそ9mの陥没穴が形成されている。近くの消火栓が砕けて空中に水を噴き出している。現地の救急隊が現場に到着する。
<11:57> シカゴの地元ニュース局がSCP-7601に関する情報を放送し始める。SCP-7601の頭部の画像がオンラインで拡散され始める。財団ウェブクローラが画像を削除する。
<12:01> O5評議会はSCP-7601を無力化するため、戦闘機の出動を投票で承認する。
<12:10-18> 戦闘機群がSCP-7601と接触する。8分間で29発のミサイルがSCP-7601に命中するが、いずれも効果なし。交戦中、SCP-7601はミサイルの回避を試みなかったものの、移動速度が著しく上昇する。交戦前の速度は秒速564m、交戦後の速度は秒速1,286m。戦闘はSCP-7601の頭部が財団戦闘機の速度を上回った時点で終了する。2 SCP-7601の首への射撃には効果が無い。
<12:21> O5評議会は、化合物Y-5623をSCP-7601の進路上に放出する提言を承認する。カンザス州西部の僻地が攻撃地点として選択される。
<12:24> SCP-7601はミズーリ州ジェファーソンシティを秒速1,351mで通過する。財団職員が記憶処理薬の展開に動員される。
<12:27> 財団航空機がカンザス州西部に到着し、2,700m3の化合物Y-562を空中散布する。
<12:28> SCP-7601が化合物Y-562の雲を通過する。
<12:29> SCP-7601が減速し始める。
<12:31> SCP-7601は秒速823mまで減速する。
<12:32> SCP-7601の速度は秒速607m。
<12:33> SCP-7601の速度は秒速244m。
<12:44> SCP-7601が停止する。
<12:44-54> SCP-7601が10分間にわたって咳込み、嘔吐する様子が捉えられる。
<12:56> SCP-7601は快復し、サイト-19に向かって首を伸長させ続ける。
<12:57> SCP-7601の速度は秒速126m。
<12:58> SCP-7601が負傷しているうちに戦闘機で交戦するという提言がなされる。この案は、以前の交戦がSCP-7601を加速させたことを根拠に、O5評議会によって却下される。
<13:01> O5司令部は、SCP-7601がコロラド州の無人地域上空を飛行している間に、財団機動高出力レールガン砲4 (FOHERB) を用いて終了することを指示する。FOHERBが発射に向けて調整を開始する。
<13:02> SCP-7601はサイト-212上空を秒速1,041mで通過する。
<13:04> SCP-7601がコロラド州に入る。全ての非必須職員がサイト-19から退避し、財団所属の奇跡術師たちがサイトの周囲にエネルギー場を形成し始める。
<13:08> SCP-7601は山に衝突する。移動速度に影響なし。
<13:11> FOHERBが交戦準備を完了し、30分以内に、コロラド州ホーショア5の1.3km北方に差し掛かったSCP-7601を砲撃するように指示される。財団職員がホーショアに到着し、ガス漏れを装って住民を避難させ始める。
<13:37> ホーショアの全住民が爆心地から安全な距離まで移動する。
<13:41> FOHERBが砲撃する。SCP-7601の頭部は地面に叩き付けられ、首がほぼ90度の角度で下向きになる。SCP-7601の頭部の周囲に直径759mのクレーターが形成される。
<13:42-47> SCP-7601は5分間、クレーターの中で身動きしない。
<13:48> SCP-7601はクレーターから首を引き戻し、頭部を数回降る。SCP-7601の頭部に少量の血液が付着し、また炎上しているのが見て取れる。炎はSCP-7601がサイト-19への移動を再開した時点で消える。移動速度は秒速928m。
<13:50> SCP-7601はロッキー山脈を抜け、30分以内にサイト-19に到着すると予測される。移動速度は秒速1,443m。
<14:12> 奇跡術エネルギー場がサイト-19を完全に覆う。SCP-7601の頭部は高度を下げつつ加速し始める。移動速度は秒速1,989m。
<14:13> サイト-19のミサイル防衛システムがオンラインになり、SCP-7601への攻撃を準備する。
<14:15> サイト-19のレーダーがSCP-7601の接近を検知する。全ての残留職員が地下掩蔽壕に退避する。移動速度は秒速2,276m。
<14:16> ミサイル防衛システムが作動する。12発のミサイルがSCP-7601に向けて発射されるが、対象が高速移動しているため、1発を除いて全て外れる。移動速度は秒速2,612m。
<14:17> SCP-7601は秒速3,147m6でエネルギー場に衝突する。エネルギー場は衝突部分で内向きに歪曲するが、持ち堪える。SCP-7601はエネルギー場に頭部を押し付け続ける。
<14:18> 奇跡術師たちはエネルギー場の維持が困難だと報告し、SCP-7601との接触箇所周辺には小さな裂け目が生じる。
<14:20> エネルギー場が崩壊し始める。奇跡術師たちはSCP-7601の反対側にあるエネルギー場の半分を放棄し、エネルギーを崩壊箇所に集中させる。大きな破裂音・亀裂音はサイト-19から3.4km先まで聞こえる。
<14:24> エネルギー場に亀裂が生じ、破裂音が大きさを増す。奇跡術師たちはSCP-7601が1~4分以内にエネルギー場を突破すると警告する。サイト-19内の全職員は衝突に備えるように指示される。
以下は、SCP-7601のサイト-19襲撃に対する防護策として使用されていた掩蔽壕-14の監視映像ログです。
<記録開始>
掩蔽壕内には研究員12名と保安職員5名がいる。亀裂音・破裂音が上方から聞こえ、次いで耳をつんざくような爆発音が響く。
メイウェザー博士: おい、まさかバリアが破られたんじゃないか?
ジョンソン研究員: そんな馬鹿な、私はヘイリー7をよく知っています。突破できるはずがない。
ヨリス司令官の無線から空電音が聞こえる。ヨリスは無線を顔に近付ける。
無線: 実体がエネルギー場を破り、サイト内に-
掩蔽壕の鋼鉄補強されたドアに何かが当たり、大きな金属音が響く。ドアには大きな内向きの凹みが生じている。
ジョンソン研究員: ファック!
エージェント リーヴズ: ヤバい、ヤバいヤバいヤバいぞ。
2度目の衝突でドアが更に内側に歪み、金属に幾つかの小さな亀裂が生じる。ヨリス司令官はアサルトライフルを手に取り、ドアに向ける。
ヨリス司令官: 全員落ち着け! ハロルド、ドアにC4爆薬を貼り付けて、奴が侵入した時に爆破できるよう準備しろ。アンナ、そこの頭でっかちどもに銃を配って使い方を説明しろ。それ以外全員、発砲準備!
エージェント オタウがドアに走り寄り、床にC4爆薬を設置する。エージェント ノースが財団の標準支給拳銃を室内にいる研究員のうち4名に配る。
メイウェザー博士: 司令官、我々ができる限りの手を尽くした後、たかが数丁の銃にどんな効果が望めるだろう?
ヨリス司令官: だったら座って嵐が来るのを待つか?
ドアが蝶番から外れ、掩蔽壕の奥まで吹き飛ばされる。ドアはフリント研究員に衝突し、彼の片腕を骨折させ、肩を脱臼させる。SCP-7601が室内に首を伸長させる。
ヨリス司令官: 今だ、ハロルド!
ドアがあった場所の正面に設置されたC4爆薬が起爆し、煙が入口を覆い隠す。保安職員5名全員がアサルトライフルで発砲し始める。SCP-7601が無傷で煙の中から現れる。武装した研究員たちが拳銃で交戦する。
20秒間の発砲後、全ての保安職員が弾薬を使い切り、再装填のために手を止める。SCP-7601はギュンター次席研究員を直視し、首を彼に向かって伸ばす。ギュンターはSCP-7601の頭部から後ずさりし、その過程でつまづく。彼は床を這って後ずさりし続けるが、やがて掩蔽壕の隅に追い詰められる。
ギュンター次席研究員: やだやだやだやだ、俺をどうする気だ!?
SCP-7601は、壁に身を寄せてすくみ上がるギュンターにゆっくり接近する。SCP-7601はギュンターの顔から2cmの位置で静止する。以下の画像はギュンターのボディカメラが捉えたものである。
SCP-7601: こんにちは。お車の延長保証についてご連絡させていただいております。
ギュンター次席研究員: え- えっ?
SCP-7601: あなた様のお車の延長保証は失効しております。既に我々からこの件をお知らせする手紙が郵送されているものと存じます。ご返答をいただけないようでしたので、今回をあなた様の手続きを終了する前の最後のご連絡とさせていただきます。お車の保証の更新をご希望ですか?
4秒の沈黙。
ギュンター次席研究員: えっと、結構。です。
SCP-7601はギュンターを6秒間見つめる。
SCP-7601: 了解しました。今後、お車の延長保証の更新を改めて希望する際には遠慮なくお申し出ください。それでは良い一日を。
SCP-7601は秒速およそ90mで首を室内から引き戻す。これによって室内に突風が吹きこむ。
<記録終了>
上記ログに続いて、SCP-7601は平均秒速1,200mで首を引き戻しました。3時間47分後、SCP-7601の首は非異常なアヒルに典型的な長さまで縮退しました。収容チームは、ゴミ収集箱の中でハンバーガーのバンズを食べていたSCP-7601を問題なく捕獲できました。首の伸長を止める方法が考案されるまで、SCP-7601は暫定的にサイト-198に収容されています。財団と世界オカルト連合の共同で大規模記憶処理作戦が進行中です。
事案7601以降、SCP-7601はいかなる異常性も示していません。








