SCP-7658

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アイテム番号: SCP-7658 Level 3/7658
アノマリークラス: Keter Classified

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現実世界からのSCP-7658の消去に先立つサイト-41の唯一既知の写真


特別収容プロトコル: SCP-7658の回収は現時点では低優先度と見做されています。全世界の監視担当職員には、SCP-7658についての非公式な説明が行われます。これらの手順は他のアノマリーや逃亡者への対策と重複するため、本プロジェクトに充てるべき追加人員はごく僅かです。

サイト-41で発見されたSCP-7658対策の痕跡は当面保存されます。

説明: SCP-7658はかつてサイト-41に収容されていたアノマリーです。しかしながら、収容違反に続いて、SCP-7658は少なくとも人間の認知と財団の記録から消去されました。SCP-7658が実在したことを示す証拠は、そのようなアノマリーに対処する目的でサイト-41に配備された対策のみです。

サイト-41には、1989年から1992年にかけて建造された特殊な収容室が51室あります。これらの収容室は何層もの鉛、防音材、テレパシー遮蔽材で被覆されており、実質的に外部とのあらゆる接触を遮断できる構造になっています。対照的に、サイト-41には機械部品を有するSafe及びEuclidクラスのアノマリーのみが収容されており、ミーム系アノマリーの取扱いを認可された職員はほとんど在籍していません。

これらの収容室からは、一見すると共通点の無い様々な物品が回収されました。例として以下が挙げられます。

  • 1万5千枚以上の黒い紙。
  • 数十個の空の錠剤ボトル。ボトルのラベルは通常無記入だが、一部にはクラスW“記憶補強薬”[原文ママ]という表記がある。
  • 収容室の中心にワイヤーで吊るされた、ワイヤーと金属板から成る格子。収容室のうち47室にこの格子が配置され、うち5つは損傷が激しかった。
  • クモを中心とする数千匹の節足動物の死骸。
  • 収容室の全ての壁に設置された散水器。発見当時はまだ稼働していた。
  • 極めて複雑な装置の部分的な図面。完全な図面はまだ得られていないが、ミーム的な性質のものと思われる。
  • 3個のトラバサミ。

これらの収容室には建造後の記録がありません。建造自体は十分に文書化されています。財団の建造担当職員は、これらの収容室の工事に携わった経験があると証言したものの、誰が建造を命じたかを思い出すことができませんでした。仮に記録通りであるとすれば、これらの収容室はいずれも建造以降に使用されたことがありません。

発見: 2010/08/22、サイト-41 運営責任者のハロルド・ウッツが、横領スキャンダルに続いて軍法会議に掛けられ、解任されました。この時点で、横領の規模を明らかにするため、サイト内リソースの監査が実施されました。記録に基づいて、151室の収容室が未使用であると確認されました。これらの収容室のうち100室は実在せず、ウッツの個人銀行口座にサイトリソースを振り込むために捏造されたものでした。残りの51室は、あたかも特定のアノマリーを複数個体収容しているかのように、非常に似通った形式で構築されていることが判明しました。

サイトリソースを分析したところ、他にもSCP-7658との関連性が疑われるサイト-41の設備が発見されました。

  • サイト-41全体に100m間隔で消火栓と防爆扉を設置するプロトコル。
  • 全職員に殺虫スプレーの携帯を義務付ける規則。
  • サイトの地下階にある2ヶ所の化学薬品処理プラント。1993年の建造以来使用されていない。
  • サイト食堂の下方に設けられた巨大な水槽。この水槽にはいかなる水棲動植物も収容されていない。

これらの措置はSCP-7658を収容するために設けられたと仮定されています。SCP-7658についての説明が得られなかったことから、研究担当職員は速やかに収容プロトコルからSCP-7658の特徴を推測し始めました。当初の主流理論では、SCP-7658は各収容室に収容されていた昆虫やクモの集団だとされていました。研究者たちは、SCP-7658が現実に及ぼした影響と、財団が異常事象の証拠の隠滅に用いる“記憶処理”薬剤の類似性に注目しています。現在の作業理論では、SCP-7658は人間の認知から自らの存在を消去するミーム的アノマリーであり、収容室はその収容を目的として建造されたと考えられています。

財団にはこの種のアノマリーを収容する部門が存在しません。このため、記憶処理アノマリー対応機動部隊がサイト-41に発足し、SCP-7658の更なる調査に当たっています。


補遺.7658.1: 回収文書


調査中、記憶処理アノマリー対応機動部隊の研究員の1人が、これらの収容室は、その中心部 — 前述の通り、格子が配置されている場所 — が1個の球体表面における点となるように配置されていることを指摘しました。この球形空間の中心は、サイト-41食堂の水槽の直下でした。

水害防止のために排水が行われた後、研究員は水槽の床を透過しました。この結果、水槽の下にあった隠し部屋が発見されました。この部屋には、他の収容室よりも遥かに大きな格子1枚、乾燥した人間の死体1体、非常に複雑な装置1台が収容されていました。比較の結果、この装置は他の収容室で部分的に図解されていたものと同一だと判明しました。

1枚の手書き文書がこの部屋の壁に隠されているのが見つかりました。以下はその書き起こしです。

私たちは常に、深淵を覗き込めばいずれ自分たちも怪物になることを理解していた。私たちが何処まで突き進むつもりなのか、私には分かっていなかった。

私たちは歴史を、社会を、人間の行動を思いのままに捻じ曲げてきた。何のために? 憎しみと怒りの上に築かれる“普通の”社会のためか? 記憶処理薬の開発によって、人間の意識そのものを制御できるようになった。だが、それで私たちが何をした? 私たちは何千人もの人々を仮釈放無しで永久に監禁し続けている。私たちの手には世界に革命をもたらし得る技術がある。私はその開発に携わった1人だった。なのに、私たちはそれを閉ざされたドアの裏に隠し、夜な夜な母を求めて泣き叫ぶ獣に取り付けたままにしている。

考えれば考えるほど、財団はこれまで幾度も歴史の間違った側に立ってきたという結論から逃れられなくなる。だが、私たちこそが歴史の書き手である時、それは本当に重要なのだろうか? 果たして財団の原点がどんなものだったのか、私には推し量ることさえできない。

これは私の遺書だ。

O5司令部が下したがらない決断を下せるのが私だけなのは最早明らかだ。私の装置、記憶処理薬の製造機は逆転させることができる。装置はそれ自体を、私を、獣を忘却の彼方へと追いやるだろう。それが歴史に必要なことなのだ。

獣は逃げ出すだろう、私には分かる。獣は知っている、あれは私の思考と心を見透かしている。可哀想な奴だ。だが、私たちはこれまで散々怪物を生み出してきた。もう1匹逃げ出したとして、それがどうした?

この死体を発見する次世代の人々へ: 貴方たちがこの犠牲を思い出すことのないように、私は努力してきた。どうかこれを決して無駄にしないでくれ。


補遺.7658.2: 調査の結論


未確認生物学部門との協議を経て、記憶処理アノマリー対応機動部隊は、SCP-7658の正体に関する1つの仮説を導出しました。収集された証拠を基に、SCP-7658はAstropecten saturnalia、通称ドセイヒトデの大型の一個体だと考えられています。

この個体の大きさは通常の5倍という異常なものだったため、収容が必要だったと推測されます。また、この仮説は、大量に発見された節足動物や、恒常的な水分補給の必要性とも辻褄が合います。“格子”も同様にヒトデ仮説との整合性があり、ハンターやペット飼育者は、同様の構造にはドセイヒトデが現実世界を離れるのを防止する効果があると報告しています。ドセイヒトデの一部個体が記憶処理特性を帯びていることも広く知られています。

一般的なドセイヒトデは現実世界からごく短時間しか転移できず、すぐに帰還しますが、SCP-7658のように巨大な個体は努力次第で他の平行タイムラインに到達できると考えられます。しかしながら、人間の認知は物理的なオブジェクトを根付かせて転移を防止するため、SCP-7658の情報が財団内で広く認識されていれば、SCP-7658が逃げ出すことは阻止できたと推測されます。

上記文書で述べられた事件が真実である場合、SCP-7658はその存在に対して遥かに無防備な並行世界に逃亡した可能性があります。回収は現時点では低優先度と見做されています。

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