SCP-7664
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ローワン・ラスター研究員が描画した、SCP-7664の外見のデジタル再現図。染色図はこちらをクリックして参照

アイテム番号: SCP-7664

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-7664はサイト-433の小型無菌収容室に保管され、部屋の最奥部に配置されています。実験中、研究員はSCP-7664から安全な距離を保ち、必要に応じて目を覆う必要があります。SCP-7664の外見のいかなる変化も直ちに報告しなければいけません。

実験中にSCP-7664と接触して間もない職員は、感染リスクを避けるため、除染室に入るように勧告されます。吐き気を催しやすい職員はSCP-7664担当業務に配属されません。実験以外の理由でSCP-7664の写真を撮影することは認められません。

SCP-7664から細菌感染した人物は、症状が沈静化するまで防疫室に隔離されます。治療を試みるのは実験中のみとします。尋問目的でのSCP-7664の活用について研究が進行中です。

過去にSCP-7664から細菌感染した人物は報告の対象となり、懲戒審問に際して状況が考慮されます。

説明: SCP-7664はアニメ “おひつじランパス”1'2 のキャラクター、“ダンディ・ドゴーン”を模した、高さ約209cmの段ボール製等身大パネルです。3 ダンディは慎重に右側の空気を嗅ぎつつ、緊張気味に左側に目線を向ける様子が描かれています。SCP-7664を構成する段ボールには染み汚れ4があり、数ヶ所が破れていますが、それを除けば比較的良好な状態です。SCP-7664の質感はきめが粗く、一部のDクラス職員から“ごつごつして”、または“ざらついて”いると表現されています。

SCP-7664を長時間にわたって見つめている人物は、ダンディのイラストが瞬きするのを見たと主張します。この特定の現象はまだ捕捉されていません。

SCP-7664は表面に付着したあらゆる細菌の増殖を急激に促進する異常性を帯びています。また、SCP-7664は様々な、通常は最も近接している人物が個人的な5不快感を抱く臭気を発します。6 この臭気の正確な発生源はまだ特定されていません。臭気への長期曝露は、これまで確認された限りでは、被験者のヒステリーの発作、吐き気、強烈な罪悪感を誘発しています。これが異常な影響による反応か否かは十分に理解されていません。

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SCP-7664の拡大画像。認識災害要素は編集済。

近距離からSCP-7664を観察する時、腐敗と汚染の形跡は異常なほどに増加します。0.6mの距離まで近付くと、ダンディ・ドゴーンのイラストは識別できなくなり、代わりに、SCP-7664は観察者ごとに固有である[データ削除済]の非常に細密な壁画のように見え始めます。7 この外見の変化は写真でも観察可能です。壁画の一部を完全に理解した人物は、例外なく激しい嫌悪感を抱きます。その他のよく見られる反応には嘔吐と気絶が含まれます。これは部分的に認識災害によるものと考えられます。

壁画は極めてトラウマ的な内容で、過去に心的外傷を負った人物にPTSDの症状を誘発することがあります。記憶処理治療の効果は限定的であり、現時点では、これらの症状を完全に緩和する手段はアートセラピーを介した治療だけのように見受けられます。被影響者が制作する芸術作品は、潜在的に不穏なものである反面、壁画のような認識災害特性を帯びません。作品を完成させた被影響者は安堵、受容、軽快さといった感情を表明しています。

SCP-7664の第二の異常性は、人間がその表面の細菌に感染すると発現します。7664感染者は未知の原理で下品な容姿へと変形します。この奇形化は、感染者自身が最も不安を感じている特徴を誇張します。また、感染者は衝動を十分に抑制できなくなり、芝居がかった粗野な態度を取り始めます。一部の感染者は、衝動を制御するのが精神的にも肉体的にも過酷な作業であり、極端な場合には偏頭痛や筋肉痙攣を引き起こすと述べています。感染者は、通常は伝染性であったとしても、他者に自らの病気を広めることができません。

SCP-7664から感染する病気は多様で、必ず既存の疾患として発現しますが、その症状は長期化し8、しばしば過剰に増幅されます。これらの症状は減退しないため、7664感染者は絶えず深刻な不調に苛まれます。また、感染者は大袈裟なまでに屈辱的、劇的、もしくは滑稽であると見做される状況に高確率で巻き込まれる傾向を示します。感染者の周囲にいる非感染者は、感染者への不快感や嫌悪感、もしくは強烈な他者の不幸への快感シャーデンフロイデを表明します。

感染者の疾患を治療する試みは、感染者の身体の更なる奇形化と、疾患の長期化を招きます。多くの場合、異常な形式で誇張された症状の再発がそれに続きます。

このプロセスは、感染者に極度の身体的負荷をもたらすにも拘らず、決して致命的ではありません。

SCP-7664感染者は典型的に治療を拒み、自らが受けている苦痛は自業自得だと主張し、しばしばその苦痛を“罰”と呼びます。感染者は頻繁に、後悔している、または恥ずべきことだったと考えている過去の行為を悔悟する様子を見せます。また、感染者は治療が更なる害を及ぼすことを強く自覚します。

不定な期間を経て、SCP-7664感染者の病状は回復します。症状は急速に治まり、身体の変形は完全に消失します。この変化に続いて、認識災害現象が元・感染者とその疾患を認知している人物らに影響を及ぼします。この認識災害の影響を受けた人物は、それまで好意的でなかったとしても、元・感染者が罰を受けたことを理解し、突然親しくなろうと試みることがしばしばあります。多くの人物は、元・感染者が過去に犯したあらゆる悪行を (前以てそれらの事件を知っていたか否かに依らず) 許します。より広い社会環境では、元・感染者は、同様の背景を持ちながらSCP-7664の影響を受けていない人物と比較して、周囲からより尊敬され、公平に扱われているように見受けられます。

発見: SCP-7664が発見される以前、“おひつじランパス”の監督・制作者 サイモン・クラリーは、複数の論争と疑惑の的となっていました。特筆すべき論争には以下が含まれます。

  • “おひつじランパス”制作中の、スプートニク・スタジオのアニメーターや声優に対する虐待。
  • インターネットで匿名告発された2件の性的暴行疑惑。
  • サイモンが制作に携わった“おひつじランパス”のエピソードは本質的に特殊性癖が絡んでいるという言説。12
  • あるインタビューで、サイモン・クラリーが骨相学を真摯に信じていると表明したこと。
  • サイモン・クラリーが“おひつじランパス”のインターネット上のファン層に対して示した全般的な敵意。

この時期にサイモン・クラリーとの交流があったインタビュー対象者の多くは、当時の彼の振る舞いに強い苛立ちと猜疑心が表れており、多くの論争への関与について訊ねると敵意を剝き出しにするほどだったと証言しています。

その後、サイモン・クラリーは突然スプートニク・スタジオを退社し、“おひつじランパス”はあっけなく打ち切られました。これに際して、サイモンのソーシャルメディア・アカウントの多くも速やかに削除され、彼が世間から距離を置こうとしていると解釈されました。この間、サイモン・クラリーは自宅に引きこもっていたと考えられています。

数ヶ月後、911通報を監視していた財団は、サイモン・クラリーの自宅から“バンシーみたいな人間離れした金切り声”が聞こえるという通報を傍受しました。警察官を装ったエージェント数名が現地に派遣され、建物に入りました。

“金切り声”の発生源は、寝室で苦悶の表情を浮かべ、下腹部を押さえながら絶叫している全裸のサイモンであることが速やかに判明しました。多くのエージェントは、サイモンの骨盤の内側から、数本の鋭いギザギザの突起が延伸していることにすぐに気付きました。サイモンの寝室には、破損し、インク切れしたイラストレーター用のペンが数本、サイモンを円形に囲んでいる他には何もありませんでした。

発見直後、サイモンの体内の塊は、彼の尿道を経由して骨盤から抜け出そうと試み始めました。サイモンの悲鳴は高まって異常な音量に達し、エージェント数名が聴力を喪失しかけました。サイモンの尿道は延伸して、解剖学的にあり得ないほど広い空洞になり、やがて全体が腎臓結石で構成された肉球のある手がそこから這い出してきました。

サイモンはエージェントたちとの意思疎通を試み、息を詰まらせながら幾度か不明瞭な声を発しました。その後、彼の骨盤の前面が外側へと膨らんで破裂し、性器を完全に切断しました。この直後にサイモンは脱力しました — ショックと失血に起因する即死と考えられます。

自律運動する腎臓結石は、遺体の骨盤から這い出しました。撃ち込まれた弾丸はそのまま消失し、恐らく構造物の一部として取り込まれたと思われます。完全に露出した当該実体はダンディ・ドゴーンと似通った形状であることが明らかになり、血液、内臓、尿にまみれて光っていました。実体の「まーたやりゃあがったな」gone and done it again13という発声に続いて、その身体は平坦になり、段ボール製のパネルへと変化しました。

パネルは即座に異常性を示し始めました。SCP-7664を回収し、サイト-433に移送する前に、エージェントたちが目撃した事象から立ち直るには約1時間を要しました。

サイモン・クラリーの住居を調査したところ、暖炉から発見された夥しい量の灰と、前述の通りに配置されていた破損したペンを除いて、私物が驚くほど残されていないことが判明しました。バスルームで発見されたサイモンのパーソナルコンピュータは、破壊されて複数の破片になり、溢水したトイレに押し込まれていました。コンピュータの内部データは完全に復元不可能になっていました。

サイモン・クラリーの検死解剖では幾つかの異常性が認められました。破断した骨盤と性器以外の奇妙な点として、瞳孔及び光彩の消失、回復不可能なほど損傷した声帯、全体が完全に結石化した腎臓、大量のペン用インクを含む胃などが挙げられます。また、遺体は未だに腐敗が進行しておらず、目からは時折、発生源不明の尿が漏出します。サイモンの遺体は現在、サイト-433の遺体安置所に保管されています。

サイモン・クラリーが異常な状況で死亡したことを受けて、彼が数多くの論争の影響から逃れるために失踪したというカバーストーリーが流布されました。

インタビューにおいて、サイモン・クラリーの唐突な退社の理由を訊ねられたGoI-411 (“スプートニク・スタジオ”) 構成員の大半は困惑を示しました。しかしながら、ごく少数の従業員は、サイモン・クラリーの退社前の最後の活動は、ある広告企業との個人的な打ち合わせだったはずだと記憶していました。

調査はまだ、この広告企業の正体や実在性を明らかにしていません。

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