アイテム番号: SCP-770-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-770-JPは、保管サイト-8123の標準収容金庫に施錠保管されます。SCP-770-JPを使用する実験を行うときは、クリアランスレベル3以上の職員の承認と同伴が必要です。
説明: SCP-770-JPは一般的な形状のソープボトルに保持されている550mlの薄黄色の液体です。SCP-770-JPはそのソープボトルを併せて現在82本が収容されています。
SCP-770-JPは、水やエタノールによる溶剤、ラウリン酸(脂肪酸)、桃とマスカットのフレーバーの調合香料、乳化剤、合成界面活性剤、洗浄剤、保湿剤、制汗剤、その他一般的なボディソープの様々な成分に加えて、████、████-████████、█████████、██████████-█などといった化粧石鹸としては通常使用されない成分によって構成されています。SCP-770-JPは全体としては弱酸性を示します。SCP-770-JPの全成分の詳細については付属文書770-CTを参照してください。SCP-770-JP液からは桃とマスカットの香りが感じられ、一般にこれは「爽やか」「甘い」といった感想をもたらします。
SCP-770-JPの特異現象は現在第三段階まで記録されています。第一段階の特異現象は、SCP-770-JPボトルのポンプを押下して一般的なボディソープの使用量(ソープボトル3プッシュ程度;約10mL)の体積のSCP-770-JP液を取り出し、これをヒトの操作によって通常の液体石鹸のように泡立たせられたときに観察されます。この状態のSCP-770-JP液を通常の化粧石鹸同様に身体の洗浄に用いると、一般に販売されている様々なボディソープに比べてこれは高い洗浄効率と保湿効果を示します。また、SCP-770-JP液による洗浄後のヒトの肌には、表皮や真皮へ沈着したメラニン色素の減少、皮膚炎や粉瘤種の治癒が観察されました。
前述の効果の概論的メカニズムを観察したところ、泡立てられたSCP-770-JPの直径0.2mm程度の微小な泡が、ヒトの表皮に「浸透」;泡が球体を保ったまま真皮領域まで皮膚組織に物質・物理的阻害を受けることなく浸透してゆき、これらが表皮表面や皮膚組織内部の老廃物や病原体、死んだ細胞組織などを回収した後に、皮膚組織の外部へと表皮表面を目指して移動し「石鹸」としての働きを行っていることがわかりました。このふるまいは生体における白血球の性質によく似ていますが、対象としては皮膚組織に限定した効果をSCP-770-JPの第一段階は示します。この効果を引き起こす本質的なメカニズムは不明です。SCP-770-JP液の一度の使用量が凡そ20mL以下のとき、前述の効果の程度はこの体積に比例して向上していきます。これは泡の総量が増加することに拠っていると考えられています。
第二段階に分類される特異現象は、一度の使用量が20mL程度を境にこれを超えたときに観察されはじめます。このとき、SCP-770-JPの効果はより過剰なものへと変化していく様子が確認されています。具体的には、老廃物や病原体以外の正常な組織細胞までも攻撃し、その細胞の死骸をも回収する効果が挙げられます。この効果を受けているヒトは自身の洗浄中にはこの効果を一切知覚しません。第二段階の効果によって、ヒトの皮膚組織全体の0.03%から最大6%までの細胞が死滅します。この効果の対象はヒトの皮膚組織にのみ限定されているようです。以上の効果の程度は、SCP-770-JP液の一度の使用量体積に比例して向上していました。
第三段階の特異現象は、一度に30mL以上の体積のSCP-770-JPが取り出されたときに観察されます。このとき、泡状のSCP-770-JPがヒトの任意の組織に接触すると、その組織は泡と組織の接触した領域で半球状に刳り貫かれたように消滅します。観察の結果、これは第一・二段階でのSCP-770-JP泡の浸透・回収の速度がより高速になり、その効果対象の判別を行わずに組織の回収を行っていることが判明しました。現象中、SCP-770-JP泡が自然に割れて消失することはありません。また、ヒトの生体組織表面に付着したSCP-770-JP泡は組織を掘削するように消滅現象を及ぼし続けながら組織へと沈みこんでいきます。
この消滅現象に曝露されたヒトの組織の消滅箇所には、通常の外傷のような出血、汚染、疼痛などは一切発生しません。またこれによって消滅現象の作用対象のヒトの生命活動・意識活動の一切が阻害されることはありません。このとき、SCP-770-JPを用いて自身を洗浄しているヒトは一切SCP-770-JP泡による消滅現象を一切知覚しておらず、一方更に一層自身の身体の洗浄を熱心に行うようになり、自身の全身に隈なくSCP-770-JP泡を付着させます。このことから、活性化したSCP-770-JPはヒトに対するミーム的影響を持っていると推測されます。
SCP-770-JP泡は流水によって洗い流されることによって非活性状態へと戻ります。ヒトに対して消滅現象を及ぼしていたSCP-770-JP泡が洗い流され、SCP-770-JP泡の消滅現象が停止された場合、消滅現象によるヒトの組織の損傷箇所は通常の外傷と同様に出血や疼痛などが発生し始めます。尚、消滅現象中にその損傷からヒトの身体に病原体等が感染することはありませんでした。
付録文書770-LB
以下の文章がSCP-770-JPを保持するソープボトルの背面に貼られたラベルに印刷されていました。
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一度のご使用時には必ず適量(ポンプ3プッシュ前後;10mL程度)をお取りください。健康上の被害が出る場合があります。幼い子供による誤飲の防止の為、当製品を置く場所には注意して下さい。液体石鹸の詰め替えには必ず桃とマスカットの力でとってもビューティ!つめかえ用™を使用して下さい。液を入れすぎたり、他のものを入れたりしないで下さい。泡ができなかったり、ポンプが押せなくなることがなります。桃とマスカットの力でとってもビューティ!™はお子様への愛情のもとに購入・使用してください。これにもかかわらずワンダーテインメント博士の製品を危険に使用したことによる傷害、死亡などの身体的ダメージや、養育費や生活費などの経済的ダメージについて、ワンダーテインメント博士は一切の法的、道徳的、金銭的な責任を負いません。この注意書きを読み当製品を使用したことによって、貴方と貴方の家族は上記の条件に同意し、一切の抗議や訴訟などの権利を放棄したことと見なします。
楽しんでね!
Dr.Wondertainment
製造整理番号 第0182番
補遺: SCP-770-JPは、2015/██/██に██県██市内にて、「自宅で入浴していた████氏(当時10歳/男性)が突如行方不明になり、身元不明の赤子が浴室に出現した」という事案が同氏の家族により警察に通報され、同事案を先行して財団が調査した結果、当オブジェクトの異常性が認められ、収容に至りました。関係者にはAクラス記憶処理とカバーストーリー("心臓麻痺")の流布が行われました。当時████氏のいた浴室のシャワーからは湯が放出され続けており、SCP-770-JP泡群は既に洗い流されその異常性を喪失していました。
調査の結果、スポンジのように多孔状になりぼろぼろに崩れた状態のヒト組織が浴室の排水溝から発見されました。DNA鑑定の結果、このヒト組織は████氏のものと一致していました。当時、SCP-770-JPによる第三段階の現象が発現していたと考えられています。また、身元不明の赤子;出生から間もない年齢の新生児が浴室内に出現していましたが、体温低下により赤子の生命活動は調査時既に停止していました。赤子のDNA形質は当事案で死亡した████氏の両親のDNA形質を有性生殖的に受け継いだものとなっていましたが、████氏本人のものとは一致しませんでした。
現在第四段階以降のSCP-770-JPの特異現象は観察されていません。オブジェクト回収事案での赤子の出現はSCP-770-JPによるものなのかどうか現在研究が進行中です。SCP-770-JP使用者の年齢や境遇が関連しているのではという仮説があり、現在これを検証する実験が企画中です。一説にはありますが、これを確認するための実験は禁止されます。第三段階の特異現象に18歳未満の人員を曝露することは禁止されます。
████氏の母である█████氏は大手通販サイト[編集済]からSCP-770-JPを購入したと証言しました。通販サイト[編集済]を通してSCP-770-JPの販売を取り扱っていたとされる会社の足取りは上記事案後不明になりました。当事案の他に当時配送中・配送済であったSCP-770-JPを保持する計81本のソープボトルは財団のエージェントによって確保されました。付録文書770-LBの製造整理番号より、未収容のSCP-770-JPオブジェクトの存在可能性が示唆されています。機動部隊アルファ-4 ("ポニー・エクスプレス")によるSCP-770-JPオブジェクトの捜索が継続して行われています。