SCP-7743
評価: +3+x

アイテム番号: SCP-7743

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-7743に割り当てられた職員は、共感評価尺度 (Empathy Assessment Scale, EAS) のスコアが2未満でなければならず、どのような感情的な関係および長期的な所属関係等も有してはなりません。

説明: SCP-7743はワシントン州モンローに所在する1軒の住宅を中心とした空間領域です。当該地域は、一貫性のある社会的な絆に非常に敏感に反応し、社会的な交流中に生成される共感性の場によって拡大します。

SCP-7743は1998年3月15日に開催された、血縁、婚姻および同棲関係によって繋がりのあった14名の個人 (SCP-7743-1) が参加した会合の痕跡にその関連が固定されています。

この会合において、不明な感情的閾値への到達によって再帰的な社会災害的フィードバックループが引き起こされたことで、空間内に存在した全ての対人的ダイナミクスが単一の自己強化的・反社会的ボイドへと崩壊しました。この作用は現在も当該区域とその内部に送り込まれた全ての個人に影響を与え続けています。

以前考えられていたものとは異なり、SCP-7743の犠牲者 (SCP-7743-1) はその存在を消滅させてはいません。そうではなく、社会的・共感性的に無力化されることになります。感受性の最も高い共感能力を持つ個人でなければ、そのような実例は完全に無視されます。そのような例外を除いたほとんどの人物は、言語的な躊躇や間接的な社会的合図1を除いて、犠牲者について話したり存在を認めることを単純に拒否します。

この社会的閉塞は現代社会において急速に危険を増加させます。SCP-7743-1は周囲の行動によって頻繁に負傷2し、そのような振る舞いは焼却後の遺体にまで継続して発生します。

そのため、共感的な介入なしには意思疎通および救助活動は不可能です。財団によるフィールド・エンパスの雇用開始以来、歩行者空間で踏みつけられていたり、階段から不明な理由で転落して重傷を負った行方不明者が複数発見されています。

2023年にモンロー市域で「見えない人々」に関する情報が報告されたことで、SCP-7743は財団の注意を引きました。情報源を調査した結果、かつてSCP-7743に居住しており潜在的な社会共感者3であるPoI-7743 (リラ・F) が特定されました。

同人物は尋問のため現地に連行されました。

<開始>

インタビュアー: もう3日になります。ここまで2日間、あまり何も話してくれませんね。協力していただけないでしょうか。

PoI-7743: こんな所にいたくないですし、あなたに教えられることも何もないですよ。

インタビュアー: やるべきことが終われば、すぐに出ていけますよ。私の目標は貴方が私は貴方が必要以上に病棟に留まる事が無いように、合理的な時間で手続きを進めることが目的でここに来ています。手続は通常、最大で2時間です。

PoI-7743: 私の健康を気遣うふりなんてしなくていいですよ。

インタビュアー: 貴方を説得しようだとかそういうつもりではないですよ。貴方と同じような人がここには大勢いて、私は彼らの全員に同じことを言っています。そして貴方にも。私は貴方の敵ではありません。誰かが貴方をここに押し込めるようにしただとか、そのようなこともありません。貴方自身が原因で、貴方はここにいるのです。私たちは貴方の後始末をしているのです。

<PoI-7743は黙ったまま、インタビュアーから目線を外している。>

インタビュアー: それで、あの日の晩のパーティーについてですが⸺

PoI-7743: パーティーじゃなかった。

インタビュアー: なるほど?

PoI-7743: 単なる…夕食会だった。誰かが死んで、私が知ってる誰かじゃなかったけど、私は知ってるみたいにしなきゃいけなかった。

インタビュアー: それで、何が起こったんでしょう?

PoI-7743: 気持ち悪かった。私たち全員が1つの部屋に押し込まれて、互いに見つめ合ってました。あの人たちの頭の中で、感情的な思考が形になるのを感じたんです。期待の重みが…まるで、その通りにしないと悪化するみたいな痒みみたいでした。

だから、私は無意識に反応してたんです。背筋を伸ばして座って、笑って、それで縮こまったんです。大抵は、その方が安全ですから。

<PoI-7743は長い髪を耳の後ろに押し込むかのようなジェスチャーをした。髪は短く、つまり何も起こらなかった。>

インタビュアー: それはつまり、貴方にとってはいつものことだったと?

PoI-7743: 物心ついた時からずっとです。皆の型に十分に、そして素早く当てはまらなければ、誰もあなたの⸺私のことを真に見てはくれない。そういう期待に応えて今まで生きてきました。

<PoI-7743はテーブルに肘を置き、引っ込める。それから手を膝の上に置いて、また肘を合わせる。何度もそれを繰り返す。>

インタビュアー: その夜は、貴方はそれに “応えた” んですか?

PoI-7743: いえ。あの人たちが望むような、ありのままの私というやつにはなれませんでした。十分な余裕が…十分な私自身がありませんでした。私はこの私でしかなかったんです。その時に、あの人たちがどれだけ私のことを知らなくて、知りたがってもいないかに気付いたんです。

<インタビュアーはペンを落とす。PoI-7743の身体がびくっと反応し、2人は同時に「すみません」と言った。PoI-7743は床のタイルからペンを拾い上げて、インタビュアーに渡した。>

インタビュアー: ありがとう。

PoI-7743: いえ、どうも。

<PoI-7743は顔を赤らめて俯く。3秒間の沈黙。>

インタビュアー: <咳払い>⸺えー、それで、その後は?

PoI-7743: <間> しばらく緊迫した感じで…それから、静かになりました。少しの間、誰も動かなかったんだけど、それからみんなパニックになった⸺お互いに誰の姿も見えなくなったから。気付いた時にはもう手遅れでした。おじのジャレドは外に飛び出してしまって、トラックに轢かれてしまいました。遺体は見つからなくて、赤いシミがずっと続いているだけの状態でした。

インタビュアー: お悔やみ申し上げます。

PoI-7743: 彼はアルコール中毒で嫌な奴だったけどね。それよりも、見つかってない人のほうがずっと気になっていて。

インタビュアー: 見つけた人のことは?

PoI-7743: <うんざりした様子で> ひとは無視されるようには出来てないんですよ。とりわけこんな風には。そうなった暁には、ひとは壊れていきます。私の町で、独り言を言いながら徘徊している人を何人か見ました。おばのキラは店で足首を壊しました。他人がまだ見えているかのように生きようとしたんです。結局その後も良くはなりませんでした。

<PoI-7743は姿勢を正して、手で口と鼻を覆った。部屋の外で誰かが大きなくしゃみをした。>

PoI-7743: 失礼しました。

インタビュアー: それ以来、同じような経験はありますか?

PoI-7743: いいえ。いま私は私の見えたいように見せています。それを否定する人はもう誰もいない。でしょう?

インタビュアー: ええ、貴方はとても素敵な人だろうと、私も思いますよ。

PoI-7743: そういうことを聞いてないんですけど。

インタビュアー: 個人的な好みの表明は互いの関係性の証拠として扱われ、つまり協定に違反します。面接担当が3人もいて、誰の名前もあなたが教えられていないのも同じ理由です。

PoI-7743: ふん、私は特に何も思っていないと言っておきますよ。

インタビュアー: 貴方からのフィードバックも協定に違反しますので。

PoI-7743: それでどうやって私のサポートをするつもりだったんです?

インタビュアー: 我々にいくつか考えがあります。期待できるものです。

PoI-7743: そうですか。ですが一方、私はここでじっとしている。それはあなたがさっき屈んだからで、もし私がバランスを取らなかったら、私はテストに落ちたみたいに思ってしまう。それで、あなたはきっと私のことをあの人たちと同じように見るんでしょうね。私がなにか言い過ぎた時みたいに。あなたはまさに今そうしているから。

インタビュアー: 私は何もしていませんよ。

PoI-7743: あなたは何をする必要もないんです。

<PoI-7743は足を組んだり戻したりして、明らかに不快そうな態度を取っている。>

PoI-7743: あなたがそうしたいと思えば十分です。

<数秒間の沈黙。インタビュアーはペンをテーブルにトントンと打ち始めたが、しばらくして固まった。>

インタビュアー: すみません、何か言いましたか?

PoI-7743: 私が?

<ドアが開いた音がする。受付担当の看護師が、様々な軽食を積んだカートを押して入室する。>

受付看護師: 待たせてしまって済みませんね。もうすぐ面談が始まりますから。待ってる間に何か飲み物はいかがですか?

PoI-7743: ええと、はい。じゃあジュースはありますか?

インタビュアー: ちょっと、インタビューはもう始まって⸺

<看護婦はカートを押してインタビュアーの太腿にぶつけ、彼を床へと転ばせた。>

インタビュアー: わあ!なあおい、すごく痛かったんだが⸺

受付看護師: オレンジ、りんご、それとグレープジュースがありますよ。けどオレンジは止めといた方がいいですね。電池みたいな味がするんですよね。

PoI-7743: じゃあ、りんごジュースで。

<看護師は騒ぎの中で床に落ちた、インタビュアーのペンを拾おうと屈みこんだ。立ち上がろうとした時に、看護師は偶発的にインタビュアーの頬を刺した。看護師はすぐに手からペンを放して、困惑したように手を振って、それからその全部に無関心になった。インタビュアーは顔からペンを取る。血がまっすぐに滴り落ちる。>

インタビュアー: なんなんだよこれは……どうやったらこんなことになるんだ?!

受付看護師: <PoI-7743に向かって笑いかける> ごめんなさいね。今日は手が震える日みたい。りんごジュースで良かった?氷は入れる?

PoI-7743: 氷もお願いします。

<インタビュアーはよろめいて、手を頬に当てながら体勢を立て直す。彼はもう片方の手でカートを掴んでいる。同時に看護師が、付属のクーラーボックスに手を伸ばし、蓋を勢いよく閉めて彼の指を挟みこんだ。彼は叫ぶ。看護師はカートに体重をかけて、蓋をしっかりと閉めようとする。このためにインタビュアーは、骨がひび割れる音と共にさらに大きな悲鳴を上げることになった。インタビュアーが手を振りほどいて自由になるまでこの抵抗は続いた。手の怪我は重傷に達している。>

インタビュアー: やめろ!やめ⸺俺を見ろ!ここにいるんだぞ!

<看護師はPoI-7743の目の前のテーブルに紙コップに入れたりんごジュースとナプキンを置く。看護師はカートに戻る途中でインタビュアーの体側面に体をぶつけ、彼は後ろに倒れた拍子にひっくり返った椅子に押し倒される。彼は近くのテーブルの角に頭をぶつけ、金属に赤い筋を残した。>

受付看護師: お待たせしてすみませんね。すぐに担当者が来て、面談を始めますから。

PoI-7743: <うなずく> お気になさらず。

<インタビュアーは息を切らし、体を引きずり、手を握りしめながら椅子に座り込んだ。看護師は立ち去り、彼らの後ろ側でドアを閉めた。PoI-7743はカップを軽く回し、ストローでジュースを一口飲む。その後、部屋の隅で激しく震えているインタビュアーの方をちらりと見る。>

PoI-7743: 大丈夫ですか?

<終了>


注記: 両者の間に形成された社会的共有場に、相互作用を通じて極端な変動が認められました。インタビュアーの低い感情容量は、完全ではないものの、異常な社会的影響に対して部分的にしか抵抗することができませんでした。

PoI-7743には抗運動薬が投与され、強迫行動と運動的行動の間の、社会災害的フィードバックの発現に必要な記号的リンクを破壊することに成功しました。

これ以上の措置は必要ありません。

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