アイテム番号: SCP-781-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-781-JPの周囲1kmはサイト-81██の管理下に置かれます。変装したセキュリティー担当者は一般人の侵入を阻止してください。
実験を行う場合は主任研究員である出洲博士の許可を得た上で、SCP-781-JPの敷地内に建設された臨時サイト-81██の実験棟で行ってください。なお、児童を利用した人体実験の際は倫理委員会の検閲を通過した後に実験の申請を行ってください。
SCP-781-JP内にいる児童の死亡が確認された場合、児童の戸籍調査を行い死亡扱いとなっているのかの調査が行われます。なお、2011年現在もこれらの状況に変動は見られないため、今後は裏付け調査のみが行われます。
追記プロトコル: 2012年現在、SCP-781-JP-1以外にも3体の実体が確認されています。実体の要求とそれに伴うSCP-781-JPの対応に関しては日本理事会とO5評議会の決定のより確定されます。
説明: SCP-781-JPは██県██市██町の郊外に位置する孤児院および孤児院を中心とした直径800m圏内の土地です。SCP-781-JPは2011年現在も通常の孤児院として運営されており、██市により1982年4月12日から正式に登録されている施設であると判明しています。建築物に使われている材木等には何ら異常性は見られず、通常の物品同様に損傷します。なお、建築業者などにも問い合わせたところ建物の設計図や建築記録の存在が明らかとなりました。しかし、これらの資料や記録、証言等には実際の現状と幾つか異なる点が見られ、SCP-781-JPに関連して発生する現象からも現実改変による歪曲された事象であると思われます。
外見や内部の構造は洋館を模した物であり、庭は遊び場、一階部分は食堂と勉強用の教室、二階部分は児童用の寝室(およそ5部屋、一部屋にベッドと勉強机が4つ設置されている。)として活用されています。
SCP-781-JP内部には一体の人型実体(以下、SCP-781-JP-1)と複数人の人間の児童が生活しています。なおSCP-781-JP-1に関しては頭部が奇蹄目ウマ科の生物、特にアラブ種の物と類似した特徴を有している頭骨に置き換えられているという特徴を有しており、その点を除いて対象の身体的特徴は通常の成人男性と大差はありません。しかし、SCP-781-JP-1を捕獲する試みなどは対象が透過する等の事象により成功しておらず、後述する異常性などからも高度な現実改変を発生させる個体であると予想されます。
SCP-781-JP内部の異常性は2段階に分けられ発生します。
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SCP-781-JP内で生活している児童 |
1段階目の異常は内部に人間の児童(年齢、人種などに制限は無いと思われる)が侵入した際に発生します。児童がSCP-781-JP内部に侵入した場合、その時点で外部への脱出が不可能になります。これらの原因には不可視の障壁や空間のループなどが挙げられ、SCP-781-JP-1に連れてこられた児童のみがこの影響を受けます。この影響を受けた児童は平均で2年間、最長で8年間をSCP-781-JP内で生活し、その間はSCP-781-JP-1による一般教養などの教育や食事、衣類の提供が行われます。なお、この現象の発生に関して児童は何ら異変を感じてはおらず、一般的な現象であると認識しています。児童の数はこれまでに最大で36人が確認されており、全員の戸籍調査をした結果、追加される児童も含めて全員が実在する個人であることが判明しています。
これらの児童はSCP-781-JP-1によって不定期かつ頻繁に連れて来られており、これには対象が所有する自動車が利用されます。現在、これの追跡は目標の消失などにより成功していません。
この期間が終了した場合、異常性は2段階目へと移行し、その時点でSCP-781-JP内で生活していた児童は例外なく全員が何らかの事象により死亡します。これらの事象に一貫性は無く、SCP-781-JP-1がこのプロセスに関与しているのかも未だ明らかとなっていません。
死亡した児童等に関してはSCP-781-JP内で死亡したと同時に戸籍上においても死亡したという記録が発生します。またそれに伴い、SCP-781-JP内で生活していた期間内でも本来の住居等で生活していた記録や証言、死亡したであろう地点には児童本人の痕跡や遺体が出現します。これに伴いそれらに関係する行政機関においても通常の事件同様に扱われる為、被疑者や関係者等も存在し、対象の逮捕とその後の裁判も問題なく行われます。なお、大半の被疑者はSCP-781-JP内で生活していた児童の親族であり、児童は被疑者の虐待によって死亡したと認識されています。
以下は確認された死亡原因の統計です。(なお、この統計は厚生労働省の発表している児童の死亡事件および事故案件の統計とは一致していません。)
窒息死 |
約1% |
この死因の場合、突如児童が倒れそのまま死亡するという現象が発生する。乳幼児の場合はSCP-781-JP-1が抱きかかえた状態でこれが発生すると思われる。 |
転落死 |
約3% |
この死因の場合、突如児童がその場から消失し直後上空から落下してくるという事象が発生する。 |
轢死 |
約7% |
この死因の場合、突如児童が不可視の物体による強い衝撃を受けるもしくは圧縮されることにより死亡する。圧死した場合、遺体には時たまタイヤ痕などが確認される。 |
凍死 |
約5% |
この死因の場合、児童はその場で突如しゃがみ込み、数時間後低体温症やその他の付随する症状により死亡する。この際、財団の職員などが保温処置などを行ったとしても一切効果が無く、死亡のプロセスは問題なく完了する。 |
溺死 |
約12% |
この死因に関しては2種類のケースが存在し、突如児童が空中に浮遊し水中で溺れた時と同様の挙動を見せるケースと後頭部を突如何らかの力によって押さえつけられそのまま溺死するケースが存在する。検死の際、肺の内部には河川や湖の物と思われる水と浴槽に使われたと思われる水が一個体ごとに確認された。 |
打撲や骨折に伴う内臓や脳の損傷 |
約15% |
この死因の場合、児童は突如何らかの力により全身を打撲、最悪の場合は腕、足、肋骨、頭蓋骨等を骨折するという重傷を負い死亡する。これらの症状に対し財団の医療班が治療を行ったが縫合や手術をした瞬間、容体が元に戻るという事象が確認された。 |
餓死・衰弱死 |
約57% |
大半の児童は餓死、またはそれに付随して衰弱死する傾向にある。これらの事象は食事や栄養投与を行わせたとしても発生し、一度これらが発生した場合、急速に症状が悪化し死亡する。 |
SCP-781-JP-1はこれらの事象が発生している間は側でこれを観察しており、死亡を確認した後、例外無く速やかに全ての死体を焼却処分します。その後、新たな児童をSCP-781-JPへと連れてきた後、その他の児童と同様に衣食住の提供を行います。
補遺: SCP-781-JPは2003年10月24日に行われたサイト-81██への通信を切っ掛けに発見されました。当時、サイト-81██には詳細不明の救助要請と思われる通信を受信しており、クリアランスレベル3以上の職員のみが利用できる緊急伝達用通信が利用されたためすぐさま財団諜報部が逆探知を開始しました。結果、SCP-781-JPの所在が判明し、後の調査によりこれらの通信がSCP-781-JP-1によって行われた物であったと判明しました。なお、この時点でSCP-781-JP-1はSCP-781-JPと児童の保護を要求しており、しかし前述の異常性により児童の移動が困難であった為SCP-781-JPに臨時サイトを建設することでこれを可能にしました。
SCP-781-JP-1は過去に█████・████という組織(SCP-781-JP-1は企業と証言)に所属しており、現在それらの組織から逃亡中であると証言しました。その為、敵対組織からの逃亡を確実な物とするため財団に救難要請を出したと予想されています。現在、SCP-781-JP-1は組織に関する情報を意図的に制限しており、インタビューに関しては全面的な拒絶を示しています。その為、組織やSCP-781-JP-1の全貌の把握には至っていません。
2011年現在も児童の出現と死亡は発生しており、異常性は継続しています。
以下はSCP-781-JP内で生活している児童に対して行ったインタビュー記録の抜粋です。
対象: ██ 朝美 当時10歳(以下、01)
インタビュアー: 出洲博士
付記: インタビューは孤児院内の応接室で行われました。
<録音開始>
インタビュアー: どうも。自分は出洲って言います。君の名前は?
01: ██ 朝美です。こんにちは。
インタビュアー: はい、こんにちは。早速だけど、いくつか質問をしてもいいかな?
01: はい!
インタビュアー: ありがとう。じゃあまず最初は…ここへ来た時の事を教えてもらえるかい?
01: …えーと…よく覚えてないけど、起きたら先生の車にもう乗ってて…。気付いたらもう玄関の前にいました。
インタビュアー: なるほど。それより前の事は覚えていないのかな。
[10秒間の沈黙]
01: …ごめんなさい。わかりません。
インタビュアー: そうか…。それを思い出すって言うのは難しい?
01: …はい。それをすると、いつも頭が痛くなるんです。
インタビュアー: そうなのか。うん、無理は駄目だね。ありがとう。…じゃあ、次は君たちの先生について教えてもらえるかな?
01: はい!
インタビュアー: 君は、いや、君たちは、先生の事をいつもどう思ってるの?
01: 凄く大好きです!
インタビュアー: それはどうして?
01: いつも優しくて、ご飯も作ってくれて、いろんなことを教えてくれるから!
インタビュアー: そうか。本当に君たちは彼の事が好きなんだね。
01: はい! 本当のお父さん、お母さんよりも好きです! …あれ…。
インタビュアー: ん? どうしたの?
01: …本当のお父さん…お母さんって、誰だっけ…。私、なんで本当のお父さんとお母さんよりも、先生の事が好きなんだろう…。なんで…[唸る]
インタビュアー: 大丈夫。大丈夫だよ。ごめんね、変な事を訊いちゃって。無理はしないで。もうこの話はやめよう。
01: …はい。
インタビュアー: じゃあ次の質問だけど…少し怖い事を訊くかもしれないけど、大丈夫かな?
01: はい。大丈夫です。
インタビュアー: じゃあ訊くね。君より前にここで過ごしていた子達についての事だけど…。ここから居なくなる時のことについて、君たちはどう思っているのかな。
01: …怖くない、悲しくない、あれは、これからもっと楽しいところに行くための準備なんだって、先生から聞いています。
インタビュアー: それはどういう意味なのかな。
01: よく分かりません。先生もあまり詳しく教えてはくれないので。でも、先生は皆にそう教えてくれてます。
インタビュアー: そうか。…怖くない、悲しくない所…。
01: それに、それを訊くと先生凄く哀しそうに俯いちゃうので、あまり訊けません。
インタビュアー: …つまり、君たちの先生はあれの事について、凄い思い悩んでいるってことなのかな。
01: はい。そうだと思います。
インタビュアー: そう…。もう一つ訊いてもいいかな。
01: はい!
インタビュアー: 君は、あれが怖くないのかい?
01: …怖くない、訳では無いです。でも、私は大丈夫です。
インタビュアー: それはどうして?
01: 先生が最後まで一緒にいてくれるからです!
<録音終了>
終了報告書: このインタビューの翌日、██ 朝美氏は突如頭部に大きな衝撃を受けたことによる頭蓋骨陥没が原因で死亡しました。その後、再度朝美氏の身辺調査を行ったところ彼女の母親が彼女の頭部をフライパンで殴打したことにより朝美氏が死亡、内縁の夫が遺体を遺棄したという事件記録が発見されました。また、事件発生時刻はSCP-781-JP内で朝美氏が死亡した時刻と同時刻である事も判明しました。
追記: 以下は事案781-JP-1-234に関する概要です。
概要: 事案781-JP-1-234は2012年5月11日に発生した3体の実体の接触事案です。当時、臨時サイト-81██では通常通りの業務が行われており、しかし突如SCP-781-JP-1と同様の実体3体が出洲博士のオフィスに出現するという事態が発生しました。これに際し、出洲博士は機動部隊へ向けた救難無線を発信、自身が携帯していたボイスレコーダーを使い実体との会話を録音しました。これに伴い、実体の証言からSCP-781-JP-1が所属していた█████・████の特使であることが判明しました。
また、証言内容からSCP-781-JP内にてSCP-781-JP-1以外の同実体が内部に侵入できないという事象が確認されました。これによりSCP-781-JP周囲の障壁、空間のループはSCP-781-JP-1と同様の実体に対抗する防壁であることが判明しました。その為、実体は主任研究員であった出洲博士の対して交渉を行うため彼のオフィスに直接出現したと思われます。
以下は█████・████の特使との間で行われたインタビュー記録です。
対象: SCP-781-JP-1-2、-3、-4(以下、781-1-2、-3、-4)
インタビュアー: 出洲博士
付記: インタビューは臨時サイト-81██内にある出洲博士のオフィスにて行われました。
<録音開始>
インタビュアー: …とりあえず自己紹介を。どうも、私の名前は
781-1-2: 貴様の名前などどうでも良い。即刻、あ奴を我々に引き渡せ。
インタビュアー: いえ、まずは貴方方と彼との関係性を教えていただかなくては
781-1-2: 貴様らに教えることなど何もない。迅速に、速やかに、素早く、あれをここに連れてこい。さもなければ
781-1-3: よせ。我らの我を通したとて事が上手く運ぶとは限らん。それに、今日(こんにち)は我らとて力を抑えることが条件でここに降り立つ許可が下りたのだ。暴れようものなら我らの方が罰則を受けるぞ。
781-1-4: …左様。
781-1-2: だがしかし…。いや、確かに貴様の言う事も一理ある。人間。我らは貴様らのような創造物風情とは違うのだ。一時の感情などに流されたりはせん。今回は特別だ。貴様の質問とやらに応えてやろう。
インタビュアー: …ありがとうございます。では早速…貴方方と彼は一体どういう関係なのですか?
781-1-2: 崇高な目的を達成する為、我らが主によって選ばれた類無き者達だ。
781-1-3: 正確には、我らは我らの雇い主によって集められた謂わば従業員の様な存在だ。彼も例外ではない。いや、正確には例外では無かったと表現しよう。
インタビュアー: 貴方方の目的とは。
781-1-2: 決まっている。我らの主が取り決めた完璧かつ崇高なる計略の元、貴様ら人間の生まれ出でし場所へと全てを還元する事だ。貴様ら愚かな人間は、己の人生全てが己自身の頭で決めた事なのだと妄信している。誠に滑稽極まりない事だがそれが事実だ。
781-1-3: 我らは我らの主が定められた予定に沿って職務を全うしている。…確か、人の世ではそれを運命…いや、宿命…違うな。なんだったか…
781-1-4: …死だ。
781-1-3: そうそれだ。つまりはそういう事だ。要は、貴様らが呼ぶ人の一生とは全て我らの掌の内にある。そして、我らはそれの導き手。この世を循環させるためには多大なエネルギーが必要となるのだ。しかし、それらも多すぎては毒でしかない。だからこそ、過剰に発生した無駄な物は全て削減していかねばならない。
781-1-2: 我々はそれらを彼の母なる部屋へと導き帰している。実に理に適った完全な務めだ。我らは我らが崇拝する我が主の名の元にこれを遂行しなければならない。無駄は省き、よりこの世を巡らせる存在のみを効率よく存続させる事こそが我らの悲願であり存在理由なのだ。…だというのにあ奴は…。
インタビュアー: 具体的に彼は何を。
781-1-4: …背いたのだ。…主の筋書き。…それを書き換えた。
インタビュアー: …書き換えた?
781-1-4: あ奴は言った。新しく生まれ出る命、それらが何故、早々に終わらなければならないのかと。何故生まれ出て、ただ死ぬためだけにその生を受けたのだと。…愚かしい。実に愚かしい。…あ奴の言う命など全てまやかしでしかないというのに。全ては宇宙を円滑かつ正常に循環させるだけの流れでしかないのだ。…激流の中で岸に外れ、その動きを止めてしまった小石如きに、一々気を取られるなど無意味にも程があるだろうに…。
781-1-3: 要は、あ奴は我らに課せられている規律に違反したのだ。これらは我らの問題であり、あ奴にはそれ相応の処罰が与えられなければならない。
インタビュアー: …なるほど。
781-1-2: さあ、我らはもう十分話した。我々の要求はただ一つ、あの裏切り者を今すぐここに連れてこい。そして、速やかにあ奴を我らに引き渡せ。
781-1-3: あれを抱えていたとて、そちらに一切得など無いだろう。厄介な物は切り捨てるに限る。それこそ、物事を円滑に循環させる為の最善の手段だ。
781-1-4: 左様。…さあ。…我らに言われた事を為せ。
[10秒間の沈黙]
インタビュアー: …いえ、その要求に関しては承認しかねます。
781-1-2: 何?
インタビュアー: この問題は私一人の一存では到底決められません。ですので、もう少しお時間を頂きたいと思います。
781-1-2: …人間。我々は相談をしに来たのではないのだ。これは命令だ。貴様ら創造物如きに、我らに何かを要求する権利、価値などあろうものか。
インタビュアー: ですが、我々も貴方方と同じ一組織です。そちら側の主張に正当性がない限り、こちら側としてもSCP-781-JPをそちらに引き渡す事は出来ません。彼のやっていることが貴方方の言う使命に何かしら悪影響を与えているのか、彼はあくまで児童たちをあの場に集めているのみであり貴方方の言う命の回収は問題なくこなしている筈なのではないのか。これに関する詳しい説明をこちらとしても要求します。
781-1-2: 結果ではない。問題はあ奴が我らが御主の定められた筋書を捻じ曲げている、それこそが問題なのだ。
インタビュアー: しかし、子供たちは現に本来そうなるべきだった最後を辿っています。貴方方の言う取り決めを守っている事に他なりません。確かにその間にある過程は異なるかもしれませんが、ですが結果が伴っているのであればそれは関係無いのではありませんか?
781-1-3: 我々は貴様ら創造物とは別の次元で生きているのだ。そちらの尺度で話を進められても我々が困る。
781-1-4: …たかが人間風情が、この場でしゃしゃり出るでない。
インタビュアー: …兎に角、SCP-781-JPは今私達の保護下にあります。彼がここにいることで発生する問題が明らかとなり、それに関する説明責任が全うされるまで、我々も貴方方の要求を飲むことは出来ません。私からは以上です。
[10秒間の沈黙]
781-1-3: 実に理解に苦しむ。
781-1-2: 木偶の極みだ。
<録音終了>
終了報告書: このインタビューの後、SCP-781-JP-1-2、-3、-4は消失しました。なお、消失が完了すと同時に機動部隊が到着。博士を保護し、オフィス内の調査を行いましたが何ら異常は確認されませんでした。
現在、日本理事会とO5評議会によってSCP-781-JP-1の対応についての議論が進められています。なお、異常性はいまだ健在です。