特別収容プロトコル: SCP-7820は到達困難な遠隔地に存在するので、積極的な収容措置は不要です。

maritimusによる骨彫刻の一例。
SCP-7820から回収された工芸品は、多孔質材料の損傷を防ぐため、最低36時間かけて徐々に加温、減圧、乾燥させます。その他の点では、同年代・同組成の工芸品に適切な取扱いや手入れを行うものとします。
説明: SCP-7820は北極点から38km離れた場所に存在する北極海の海山です。この海山の頂上は海面下100mに位置しますが、上部の浸食は約10,000年前まで海上に突出していたことを示しています。
紀元前44,000年頃から紀元前39,000年頃まで、SCP-7820はHomoホモ neanderthalensisネアンデルターレンシス maritimusマリティムスの文明の拠点でした。
補遺1: 北極人
Homo neanderthalensis maritimusは、一般的なネアンデルタール人 (Homo neanderthalensis) よりも大きな手足、小さな臼歯、大きな犬歯で区別される亜種です。関連工芸品の芸術的な描写では、maritimusは毛皮に覆われた大柄な体格で表現されています。
既知のmaritimusの遺骨は全てSCP-7820に由来します。この種族がベースラインのネアンデルタール人の既知生活圏から数千キロメートル離れた場所に棲み付いた経緯は明らかになっていません。最初期の標本にも北極圏への適応が認められることから、超常古生物学者たちは、maritimus個体群がSCP-7820に定住する遥か以前にネアンデルタール人から分岐したと結論付けました。この分岐が発生した時期・場所は盛んに議論されていますが、超常古生物学界で最も有力視されているのは、氷河期にヨーロッパ沿岸地域から大西洋の海氷上に移住したネアンデルタール人がmaritimusの祖先であるという説です。
補遺2: 隕石の杖
SCP-7820から発見された中で、最も明白に異常なオブジェクトは、イッカクの牙で作られた華美な長杖です。牙の螺旋パターンに沿って、杖全体に文字が刻まれています。直径約17cmの鉄隕石が片方の端に取り付けられています。鉄は強い磁性を帯びており、海水に長期間浸漬していたにも拘らず、腐食の兆候を示していません。磁北に向けると、この隕石はオーロラに似た緑とピンクの光を放出します。この光は当初、無関係な研究遠征中の水中無人探査機に検出され、SCP-7820の発見に繋がりました。
補遺3: その他の工芸品
隕石の杖に加えて、骨や牙を加工した数百点の工芸品がSCP-7820から回収されています。各工芸品の機能は、ほぼ常にその起源となった動物との相関性があります — 武器や狩猟用品は専らホッキョクグマ、シャチ、ニシオンデンザメなどの大型捕食者から、道具は主にアザラシから、芸術品は牙や (大きな作品の場合は) クジラの骨から作られています。骨や牙を非常に精密に彫刻していることから、maritimusは金属製の工具 (恐らく隕鉄で作られたもの) を用いていたようですが、そのような工具は10,000年に及ぶ海水への浸漬に耐えられなかったと考えられます。
多くの工芸品 — そしてほぼ全てのmaritimusの遺骨 — には緻密な芸術的彫刻が施されています。それらの特筆すべき例が以下、大まかな年代順にまとめられています。放射性炭素年代測定で決定的な結果が得られなかった場合の年代は、工芸品と芸術的描写の相対的な複雑さから推定されています。
オブジェクト | 芸術的描写 | 注記 |
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ケナガマンモスの牙の欠けた先端部 | 海氷に囲まれた岩だらけの島 (SCP-7820と推定される) に向かって、未知のシンボルが記された流星が落下している。ヒト型の姿が折れた部分の端に部分的に描写されているため、牙の残りにも彫刻が施されていたと思われる。 | このオブジェクトがケナガマンモスの生息域から数百キロメートル離れた場所に移動した経緯は不明。最も有力な説は、最初期の入植者たちがSCP-7820に持ち込んだというもの。 |
maritimusの骨盤 | maritimusたちが踊っている様子。楽器を演奏する個体や、武器を持った個体も見受けられる。裸の個体もいれば、華やかな衣服や頭飾りを着用した個体もいる。 | 恥骨の分娩穴は、この個体が少なくとも1人の子供を出産した経験があることを示す。 |
アザラシの肋骨から作られた管楽器 | 複数のアザラシが遊び、狩りをしている様子 | 演奏すると、この楽器はアゴヒゲアザラシの鳴き声に似た音を生成する。肋骨の音響特性は本来このような音を生成するのに十分ではないため、この機能は少なくとも部分的に異常なものと考えられる。 |
シロイルカの頭蓋骨 | 大きな樹木 (約30m) が島 (SCP-7820と推定) から生えており、イグルーやユルトに似たシェルターの村に囲まれている。 | 流星に見受けられたものと同じシンボルが、この工芸品で再び、樹木の上に彫られている。 |
maritimusの大腿骨 | maritimusが大振りの枝に跨って、球形の果実を摘んだり、枯れた小枝を剪定したりしている様子。 | 骨には完治した斜骨折の跡がある。 |
セイウチの牙で作られた像、高さ28cm | 編み込まれた長い髭を生やし、甲冑と、海洋生物の図像で装飾された厚手のマントを着用している1人のmaritimus。 | SCP-6597を描写した像の可能性がある。 |
maritimusの下顎骨 | アザラシの幼獣たちと戯れるmaritimus。 | 残存している歯のうち2本に、何らかの歯科治療として穴を空けられた跡がある。 |
シロイルカの頭蓋骨 | 巨大な樹木 (以前の図と同じスケールと仮定すると~150m) がSCP-7820の頂上で成長し、大きな半球形の建造物群から成る小規模都市に囲まれている。 | 以前と同じシンボルが樹木の幹に描かれている。 |
イッカクの牙の輪切り | 片方の面に~40,000年前の風景と思われる夜空が描かれている。牙の中心の空洞は意匠に組み込まれており、当時の北極星であったベガを表しているように見受けられる。裏面には北極圏の粗雑な地図らしきものが描かれ、中心の穴が北極点を表している。 | 地図の面では、SCP-7820の位置らしき場所が樹木の図に見られるものと同じシンボルで示されている。 |
セイウチの牙で作られた小さな彫刻5個 | 彫刻のうち3個はmaritimusの小像である。1個目はクマの毛皮を着て棘付きの骨棍棒を振りかぶっており、2個目は厚手のマントを着て両手持ち式の槍を装備し、3個目は華やかな儀礼用の服を着て隕石の杖またはその類似物を持っている。4個目の彫刻は歩行杖を持った戯画的な骸骨である (上の写真を参照) 。5個目は各面に異なるシンボルが彫られた12面体である。 | これらのオブジェクトは非常に近接した状態で発見された。全てゲームの駒だった可能性がある。 |
maritimusの乳児の頭蓋骨 | 雪の結晶に似た複雑なフラクタル模様。 | 骨は栄養失調の兆候を示している。 |
シロイルカの頭蓋骨 | 都市と巨大樹がまた描かれている。樹木の高さは推定300mまで達しているが、葉が茂っておらず、数本の枝が折れている。都市はSCP-7820の地表全体を占めており、円筒形の高い塔で構成されているが、その多くは完全または部分的に倒壊している。 | 以前と同じシンボルがまだ樹木に描かれているが、今は上下反転している。 |
イッカクの肩甲骨 | マントを着用し、杖を持った1人のmaritimusが夜空に浮かぶ彗星を指差している。 | 彗星は生気があった頃の樹木と同じシンボルを帯びている。 |
長さ10mのオオツノクジラの牙 | 牙の端から端まで、螺旋に沿ってオーロラが彫刻されている。数千人のmaritimusが橋を渡るようにしてオーロラの上を歩んでいる。牙の根元の平坦な面には、SCP-7820のおおよその位置の上空から見た地球の、地理的に正確な図像が彫られている。牙の先端は取り除かれ、平坦な断面に彗星の図像が彫られている。 | maritimusの列は長杖を持った4人によって先導されている。同じような5人目の姿がオーロラの橋の下端に立ち、後に続こうとせずに他のmaritimusたちの出立を見送っている。 |
高齢のmaritimusの全身骨格 | 無し | これは回収された中で唯一、装飾が施されていないmaritimusの骨である。隕石の杖のすぐ横で発見された。 |