クレジット
ソース: SCP-7838
メタタイトル: 継ぎ接ぎの王と膚はだえ剥がれし廷臣たち
著者: J Dune
作成年: 2023
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by J Dune


SCP-7838-3、回収時
配属サイト | サイト管理官 | 研究責任者 | 担当機動部隊 |
エリア-179 | J・バロウ | K・カプリ | N/A |

SCP-7838-5実例のコレクション
特別収容プロトコル: 財団の諜報員は、ブラックマーケットや歴史保存会に重点を置いてSCP-7838実例の流通を監視します。
検出後、機動部隊シータ-98 (“すべて王の臣”) によるSCP-7838の回収活動が行われます。回収された実例は機械によって転写、要約されます。全てのSCP-7838実例は、財団確保施設エリア-179の資料庫-A12に保管され、それ以上のアクセスは禁止されます。
財団研究委員会の承認と特定のミーム接種が無い限り、SCP-7838実例の直接的な研究は禁止されています。研究の完了後には即時の記憶処理治療が求められます。
説明: SCP-7838は、“吊られた王”と呼称され、歴史上の人物として扱われている実体と関連する芸術作品の総称です。
SCP-7838に分類される作品は媒体・表現方法ともに多種多様ですが、いずれも共通して一定の要素を含みます。これらの要素には以下が含まれます。
- 吊られた王とその治世への直接的、または間接的な言及。これらは全て、いかなる国家の既知の君主制の歴史記録とも合致しない。
- 不詳の作者・出版社。
- 17世紀ないし18世紀のヨーロッパ、おそらくイギリスで制作されたことを示唆する印刷の質、歴史的な背景、方言などの指標。
- 朗読、鑑賞、または上演によって集団ヒステリーや暴力を引き起こす潜在的な異常効果。
- SCP-7838-Aの成長。
これまでに5種類の作品がSCP-7838として分類されており、現在も流通している文学作品や視覚芸術の総数は1000点弱と推定されています。
財団のデータモデルによると、これまで確認されたSCP-7838実例への関与の47%は、長期的な暴力の発作と自傷行為 — 典型的には自らの皮膚を剥ぐ行為 — に発展しています。この効果は、知覚に影響を及ぼさずに運動機能を抑制する標的型ミームエージェントを使用すれば打ち消すことができます。SCP-7838の研究の大部分はこの手法で行われています。しかしながら、SCP-7838-Aの発症は持続します。
SCP-7838-Aは、SCP-7838関連媒体に長期間関与した後に発症する炎症組織の塊であり、通常は尾骨、大腿部、鼠径部に極小の腫瘍として形成されます。SCP-7838-Aは不安定な速度で巨大化し、やがて皮膚の下に明確に見えるようになります。断層撮影によって、SCP-7838-Aは縄、毛髪、筋肉、胎盤、その他の胚や胎児の臓器で構成されていることが判明しています。
SCP-7838-Aの成長率は、被影響者がSCP-7838実例への関与を続ける頻度に依存しています。“吊られた王”、“膚はだえの宮廷”、“アラガッダ王国”に関する持続的な思索や執着もSCP-7838-Aの肥大化の要因となり、しばしば腫瘍の急速な発達を引き起こします。
外科手術やラジオ波焼灼療法でSCP-7838-Aの除去を試みた場合、SCP-7838-Aは可動性を得て迅速に別な身体部位へと移動し、他の臓器に内部損傷を及ぼすことがあります。現在のところ、SCP-7838-Aの成長に対抗できると確認された手法は、SCP-7838に関する不都合な知識を除去し、その想起を防ぐ記憶処理治療のみです。この治療法はSCP-7838-Aの成長抑止には有効ですが、腫瘍自体を完全に無力化することはできません。
末期段階に至ったSCP-7838-Aは最大直径80cmまで膨張することが判明しています。SCP-7838-Aは胸郭上部に移動して呼吸、嚥下などの機能に深刻な悪影響を及ぼした後、腫瘤の一部を咽頭部へと伸展させます。この時点で、被影響者は高確率で窒息、または気管の急激な捻転によるショック症状を起こします。
SCP-7838-Aの影響に完全に屈した人物の死体はアラガッダ王国に没収されます。
補遺.7838.1: 記録されたSCP-7838実例
SCP-7838実例と現在の収容ステータスの一覧は次の通りです。
SCP-7838-1 |
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題名: 不明
媒体: 絵画
説明: 木製のキャンバスに描かれた卵テンペラ画。SCP-7838-1は華やかな寝室で恐怖の表情を浮かべる男性貴族を描写しています。貴族は両腕を広げており、赤らんだ頬には涙が流れています。右下隅から、宝飾品で飾り立てられた、おそらく女性のものと推定される手が貴族を掴んでいます。
貴族の左側には開かれた廊下があり、農民や鎧を着た衛兵がひしめき合っています。彼らは貴族を指差して叫んでおり、室内に突入しようとしているように見えます。
人物らの服装や民族性、周囲の宮殿の装飾が多様であり、鑑賞者はそれぞれ異なる文化的要素を知覚するため、描写された文化圏を特定する試みは依然として実を結んでいません。40パターン以上のバリエーションが記録、観察されています。
SCP-7838-1を長時間鑑賞する人物は、呼吸困難や、気管を圧迫される感覚を報告しています。
収容ステータス: 1958年、フランスの一般的なオークションで入手。画家は不詳、複製品も出回っていない。絵具の質と技法は、SCP-7838-1が1600年代半ばに制作されたことを示す。唯一無二の作品と思われるため、収容を脅かす可能性は極めて低い。
- SCP-7838研究主任、ジュラ―ド博士
SCP-7838-2 |
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題名: 裏返り城の逆さま王
媒体: 童謡
説明: 1742年に出版されたイギリスの童謡集 “わらべ歌 第1版” に初めて収録された童謡。この歌の中心的なメッセージは、“立派な後継ぎ”になって、自分たちに命を授けてくれた両親に恩返しをすることを子供たちに促すものです。
歌は、もしそうしなければ、子供たちは“裏返り城”へと連れ去られ、かつては尊敬厚き統治者だったものの、今は過去の悪事の罰として“永遠に忘れられた”とされる実体、“逆さま王”に面会することになると警告します。
王は子供たちに、自らの素性も含めて、それまで知っていた物事を全て忘却させ、宮廷での隷属を命じます。その後、子供たちは家名に相応しくない振舞いの罰として、貴族たちが楽しむための“服や床や壁”に変えられます。
収容ステータス: 重大な脅威を呈する。この実例は繰り返し、往々にして編纂者の与り知らぬところで、未知の手段によって様々な童謡集に掲載され、オンライン上に複製され続けている。財団は4,323冊の出版された実例を所蔵しており、アクセス可能なオンライン上の痕跡は現存していない。
- SCP-7838研究主任、レッドホール博士
SCP-7838-3 |
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題名: 不明
説明: 彫像
説明: 2人の人物を象る大きな大理石の彫像。一方は特異性の無い盛装の男性で、もう一方は妊娠した女性です。
女性は両腕で腹を抱え、描写の外側、上方にある何かに意識を向けているように見えます。地面から見ると、男性の表情は満足げかつ穏やかで、目線は横を向いています。しかしながら、頭と同じ高さから見ると、男性の表情は明らかに蔑んでおり、目は女性を直視しています。
時折、娩出した胎盤が女性のドレスの下から滴り落ち、彫像の台座に溜まることがあります。細胞検査の結果、胎盤の組織は壊死していることが確認されています。
収容ステータス: 低脅威度。取得日時は不明、財団前身組織 “全米確保収容イニシアチブ” (ASCI) より継承。唯一無二の作品と考えられる。
- SCP-7838研究主任、ロッソ博士
SCP-7838-4 |
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題名: 吊られた王の悲劇
媒体: 舞台劇; 演劇
説明: SCP-701を参照。
収容ステータス: 収容への活発な脅威。下位指定“SCP-701”を付与。
SCP-7838-5 |
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題名: ベネファルティの苦悶について
媒体: 文学
説明: イタリアの架空の都市、ベネファルティを舞台とする124ページの戯曲。かつて貿易と芸術の拠点として栄えていたベネファルティは、厚い煙霧に覆われ、外界から隔絶されつつあります。この都の見晴らし台に、“放逐されしものどもの国” アラガッダ王国の正体不明の統治者 “吊られた王” の廷臣である上塗うわぬり郷紳一族の邸宅があります。
ベネファルティの民衆には物覚えが悪いという欠点があり、郷紳一族の命令を受けても働くことができません。農民たちは吊られた王の勅令で無秩序・無計画な建設作業に従事させられますが、それらはすぐに忘却され、わずか数時間で廃墟と化します。都にはこのような崩れた記念碑や構造物が立ち並び、民衆が次々に建設計画を進める中で互いに重なり合っていきます。
郷紳一族の家長である“上塗の父”は、真相を知られて罰を受けることを恐れるあまり、吊られた王とその“膚の宮廷”に対して、ベネファルティは華やかな都であるという嘘を吐き続けます。ある日、何の前触れもなく、吊られた王は大使たちを連れて、自らのために建立された記念碑を見にベネファルティを訪れ、即座に真実を見抜きます。自らの遺産が認知されておらず、民衆が自身を見分けられないことに激怒した王は、上塗の父に対して、残りの郷紳一族を絞首縄で公開処刑することを強要します。死体は飢えた農民たちに投げ与えられ、引き裂かれて食べられます。
吊られた王と廷臣たちはベネファルティを一望する邸宅に押し掛け、そこに数ヶ月逗留します。王は下界の民衆に苛烈な政策を課し、罰として彼らを膚の宮廷に隷属させ、王の壊死した身体に肉を捧げ続けることを職務として命じます。女性たちは頻繁に側室として連れ去られますが、王の世継ぎを生む者は一人も現れず、肉の塊だけを出産します。憤慨した王は、ベネファルティの全ての女性に対して、彼女たちの“不出来な胎”を切除し、それによって生じた組織の塊を彼の身体に縫い付けることを命じます。
ベネファルティの最後の住民が殺害されると、王は自らの遺産が忘れ去られたままであること、自身がアラガッダの牢獄以外では君臨できないことを知って涙を流します。吊られた王と廷臣たちは、都が崩れ落ち、塵と化すのを見届けながらベネファルティを去ります。
収容ステータス: 著者と版元は不明、1600年代初頭に発行されたと思われる。138冊を財団が所蔵。発行部数の推定は不可能。しばしばブラックマーケットに流通する。うち17冊は手書きだが、いずれも未完成。転記者はSCP-7838-Aの影響を受けたと思われる。当作品が寓話である可能性については歴史部門に照会中。収容への脅威は中規模。
- SCP-7838研究主任、マッキンリー博士
補遺.7838.2: 供述集
1956年に回収活動が始まって以来、SCP-7838の研究責任者は頻繁に入れ替わっています。記憶処理治療がSCP-7838-Aの成長抑止に有効と証明されている一方で、研究主任の地位に就いている人物には、急速かつ不可解な腫瘍の発達が確認されています。
プロジェクトからの離脱前に実施された元・研究主任たちの心理学的評価の一部を以下に掲載します。
名前: カリーナ・キャロル (SCP-7838研究主任)
供述: 心理評価当時、キャロル博士のSCP-7838-A腫瘍は左大腿下部にあったが、ほとんど目立たなかった。これにも拘らず、キャロルはSCP-7838の発症に自責の念を示し、SCP-7838及び関連現象に対して研究目的での接触以上の関心を示していたことを認めた。彼女は文書の形態を取っている実例の寓意的背景を解明するため、イギリスの君主制の歴史を調べ始めていた。キャロルは最長5時間に及ぶ深刻な失神や、夜間に長時間研究を進めた後の記憶の欠落を経験したと報告し、また自傷行為によって自力でSCP-7838-Aを切除する試みが幾度か失敗したと述べた。
ステータス: キャロル博士はSCP-7838から異動となり、完全な記憶処理治療を施された。SCP-7838-A腫瘍の大きさは変化していない。
名前: リチャ・アグラワル (SCP-7838研究主任)
供述: アグラワル博士のSCP-7838-A腫瘍は右足にあり、皮膚の下で複数の足爪と交差していた。500冊以上のSCP-7838-5実例の目録化を担当していたアグラワル博士は、SCP-7838への明確な恐怖心を表明し、プロジェクトからの異動を要請した。アグラワルの不安は、吊られた王の解釈を自分の頭の中で構築してしまうことに根差しており、彼は推測するだけでも実際の概念と同じ役割を果たすと主張した。アグラワルは、SCP-7838-Aの成長や、幻覚・被害妄想・睡眠状態の悪化が、SCP-7838についての思索と相関して発生していると指摘した。心理評価中、アグラワルはSCP-7838や関連現象について語る際に著しく敬虔な態度を取っていた。
ステータス: アグラワル博士はSCP-7838から異動となり、完全な記憶処理治療を施された。アグラワルのSCP-7838-A腫瘍は、急速に縮小し、肉眼では確認できなくなるという前例の無い症例を示した。この現象が発生した理由は不明であり、再現されていない。
名前: カイル・カプリ (SCP-7838研究主任)
供述: 大きなSCP-7838-A腫瘍がカプリ博士の左前腕に位置し、皮膚を著しく膨張させていた。カプリ博士は研究以外でSCP-7838に関与していないと主張し、その研究自体も過去に記録されていない実例の回収時アーカイブ作業に限られていた。SCP-7838や関連現象から明確に距離を置き、記憶処理治療を受けたにも拘らず、カプリ博士は腫瘍の成長が悪化し、短時間の幻視・幻聴を経験していると報告した。幻覚には周辺視野 (通常は隙間や隅) における“マントを着たヒト型実体”の目撃や、患者自身が泣き声に似ていると説明したトランペットの音などが含まれる。
ステータス: SCP-7838-Aへの対抗手段や更なる理解を得るために、財団が既存の文書や研究資料を再検討している間、カプリ博士はSCP-7838プロジェクトからの離脱を認められている。強度の記憶処理治療にも拘らず、カプリ博士のSCP-7838-A腫瘍は成長し続けている。
追って通知があるまで、SCP-7838の研究主任の職務は免除されます。活動は収容プロトコルの施行と資料庫の管理のみに限定されます。
補遺.7838.3: インタビューログ
以下は、現在のSCP-7838研究主任 カイル・カプリ博士の最初の心理評価から程なくして行われた、カプリ博士と財団心理学委員会代表者の会話の書き起こしです。1
(確保施設エリア-179、ムンラン管理官の執務室)
巨大なSCP-7838-A腫瘍がカプリ博士の右前腕にあり、袖で隠せないほどに膨張している。
カプリ博士: さっさと異動させてくれ。
ムンラン管理官: 努力している。上の連中は、収プロを修正するまで誰も公式にプロジェクトから離脱させないつもりだ — 何か見落としが無いか確かめている。しかし、君がそれに関わる必要はない、私が保証する。
カプリ博士: 死体がどうなるかを突き止めるところから始めるべきだ。
ムンラン管理官: 死体?
カプリ博士: 説明にあった。“SCP-7838-Aの影響に完全に屈した人物の死体は喪失したものと見做されます”。追記されたのは… 1973年。編集箇所は1ヶ所だけ、添付された研究資料はアクセス不可能、担当研究員とは連絡が付かない。機密施設に勤務してるか、メールに返信しないかだ。
ムンラン管理官: 私の推測でいいか? 倫理委員会発足前のファイル、人体実験。私からRAISAに命じて調べさせることもできるが、彼らも独自にその線を洗うだろう。そういう書類は決して表沙汰にならない。
カプリ博士: どうして俺たちがそれを知らない?
ムンラン管理官: 物事は忘れられがちだ。実際、かなりあっさりとな。
カプリ博士: ふん、あと3週間でこいつはバスケットボール大になって俺を窒息させるんだ、みんな早く思い出した方が賢明だぜ。
ムンラン管理官: まだ膨張が続いているんだな?
カプリ博士: 完全な記憶処理を2回受けた。過去6ヶ月をそっくり消した。さっぱりダメだ。
ムンラン管理官: 幻覚は?
カプリ博士: 俺たちが話し始めてから、ずっと廊下の端に立ってる。あそこのドアの間だ。狭い隙間。 (身振りで指す)
ムンランは振り返り、デスクの後ろにある窓を一瞥する。特に変わったものは見えない。ムンランは再びカプリに向き直る。
カプリ博士: 何だよ? お前には見えないだろ。
ムンラン管理官: うむ、それは確認済みだ。薬は効いているか?
カプリ博士: ああ、うっかりイボの上に寝返りを打たない限りはちゃんと眠れてる。お前がくれた例の薬は飲めばすぐさまグッスリだ、夢抑制剤も問題ない。問題はむしろ起きている間だ。そっちには別な厄介事がある。お前は心理学者だよな。皮肉過程理論。
ムンラン管理官: ピンクの象か。
カプリ博士: ピンクの象について考えるな。吊られた王について考えるな。記憶処理を受ければいい、それで解決だ。でもな、象が視界の隅にずっと座り続けてるんじゃ、記憶を消したって何の意味も無い。そいつは自分がそこにいる理由を意地でも考えさせようとする。思い出せないから、想像で隙間を埋める。そして振り出しに戻る。
ムンラン管理官: 私たちもそれは想定している。記憶処理を受けているのなら、君はそもそも象が見えないはずだ。
カプリ博士: 見えないさ。でも、そこにいるのは分かるんだよ。
補遺.7838.4: 事案報告書
2023/7/13、超常現象の考察と議論を専門とする画像掲示板ウェブサイト、Parawatch.netに以下のスレッドが投稿されました。
Anonymous 2023/07/13 (月) 16:54:32 #8238223
庭園の客人。
自宅で行うこと。
必要な物:
>箱
>目隠し
>ロープ
やり方:
>暗闇で準備を始める
>箱にテープで封をする
>ロープを結んで自分の首が嵌まるぐらいの首吊り縄にする
>家の全部の窓、クローゼット、キャビネット、引き出し、ドアをできるだけ大きく開けて、そのまま放置する
>照明はどうでもいい、どうせ目隠しを付けることになる
>目隠しで目を覆う
>首吊り縄を首にかけて背中側に垂らす
>両手で箱を持つ
>次の文章を暗記して復唱し始める
>「継ぎ接ぎの王の庭園に客人がいる、
>忘れられしものの宮廷への貢ぎ物がある。
>そこに王はおらず、玉座を継ぐに相応しき
>高貴にして公平なる嗣子もまたいない。
>我が首を取り巻くはこの誓約、
>我が背後には伝令の瞳、
>我はアラガッダの夜に仮面を被り、
>膚の協定が結ばれる。」
>歩き始める
>詠唱を繰り返すのを止めてはいけない
>目隠しを外してはいけない
>開けておいたドアが閉まり始める
>伝令が到着した証拠だ
>音に従う
>どれだけ重くなっても箱を持ち続ける
>後ろからついてくる足音が聞こえても歩き続ける
>音を追って部屋から部屋へ移動する
>もう持ち運べないぐらい箱が重くなったら足元に置く
>一番近くのドアが閉まったらじっとしている
>箱に乗る
>首吊り縄が持ち上がって引き締まるのを感じてもじっとしている
>首吊り縄が落ちてまた背中に当たったら箱から降りる
>継ぎ接ぎの王の庭園に客人がいる
この投稿は財団ウェブクローラにフラグ付けされた後に消去され、パラウォッチのアーカイブ収集を行う複数の民間ウェブサイトからも1時間以内に削除されました。しかしながら、パラウォッチの利用者数の多さが原因となって、投稿は迅速な収容の取り組みにも拘らず拡散され、世界各地でSCP-7838関連現象を引き起こし、約5,000~15,000人に影響を及ぼしました。観察された事件の要約は次の通りです。
- SCP-7838実例をミーム接種無しで鑑賞した場合と一致する暴力の大量発生。
- 幼い子供を持つ親が重篤な見当識障害を発症し、子供の存在を忘却した。この結果、その後3週間にわたって児童の餓死、事故による負傷、車内での窒息死などが複数確認された。
- 政治家や政治団体に深く関わる人物が首を吊って自殺し、発見された時点で遺体の皮膚が剥がされていた事件が7件発生した。いずれも近日中に子供が生まれる予定の男性であった。
- 様々な歴史資料の信憑性を巡って、多数の統治者や王朝が実際には存在しなかったとする突然の論争が勃発し、学術的な環境での暴力沙汰に発展した。
- スレッドの投稿から削除までの間 (38分) に記録された人間の出産は、全て臍帯が気管を圧迫したことによる死産だった。
- 59件の舞台劇が公演中に突然SCP-7838-4 “吊られた王の悲劇” を演じ始め、暴力事件を引き起こした。
- 想像妊娠 (偽妊娠) の患者が毛髪、歯、奇形の軟骨で構成された大きな腹部腫瘍を出産する事例が複数確認された。これらの腫瘍は廃棄されるまで発声し続けた。
- 野生や飼育下の動物の群れ (一般的には家畜) が、集団で自らの皮を剥ぎ取った。これは液状化した皮膚を身体から剥離させるという形式を取った。
- 君主制の歴史がある国家の人物らが、居住者のいない僻地の屋外環境へと移動し、必死に素手で穴を掘った。幾つかの穴は最深45mにも達し、穴を掘った人物は失踪した。
幾つかの機動部隊による全世界的な収容試行が速やかに開始され、翌月を通して大規模記憶処理と隠蔽工作が実施されました。
パラウォッチのスレッドの削除後、投稿者のIPは記録され、SCP-7838の元・研究主任 カイル・カプリ博士の自宅があるペンシルベニア州ランカスターまで追跡されました。
機動部隊Θ98 (“すべて王の臣”) がカプリ博士の自宅に派遣されましたが、博士は発見されず、特筆に値する物品も回収されませんでした。
帰還後の調査で、前日の夜、カプリ博士はライブ通信映像を介して、エリア-179のSCiPNETサーバに動画をアップロードしていたことが判明しました。書き起こしは以下の通りです。
映像の焦点が合う。カプリ博士はベッドに腰掛け、声をあげて泣いている。彼のSCP-7838-A腫瘍は著しく膨張しており、現在は胸部上方、喉の近くに位置している。膨らんだ腫瘍は脈打ち、鼓動している。カプリは呼吸するのに苦労している。
カプリ博士: こんな事はやりたくなかった。やりたくなかったが —
カプリは喘ぎ、咳込んで大きな血痰の塊を床に吐き出す。
カプリ博士: 話せない。
彼はベッドから立ち上がる。絞首縄が彼の首に掛けられ、天井から垂れ下がっているのが見て取れる。
カプリ博士: 独房に入る気はないよ。悪いな。
カプリは身動きに困難を抱えているが、足を使って段ボール箱をベッドの足元に寄せる。
カプリ博士: 少なくとも、これから何が起こるのか、お前らは知ることができるはずだ。
カプリは箱の上に立ち、姿勢を正した後、箱を蹴り飛ばして足元から外す。短時間もがいた後、彼の身体から力が抜ける。腫瘍はまだ脈動しており、より大きく膨張して彼の胸部から突出する。カメラ — 携帯電話 — が床に落下し、カプリ博士の遺体は見えなくなる。
何も映らない。45分間の沈黙の後、配信は携帯電話のバッテリー切れで終了する。
補遺.7838.5: 回収された資料
カプリ博士の自宅の最終調査と差し押さえの際、財団は当該物件の包括的な視察を実施しました。カプリ博士の寝室のカーペットが緩んでいることに気づいた財団の捜査員がこれを取り除いたところ、過去に確認されていないSCP-7838実例1点が発見されました。
SCP-7838-6は“最も恥ずべき客人”と題された全4ページの原稿であり、演劇の舞台演出の概要が記されています。用いられた皮紙の分析によって、この原稿の素材は人間の皮膚であると判明しました。遺伝子解析でまだ決定的な結果は得られていません。
書き起こしは以下の通りです。
最も恥ずべき客人
場面
無学者の宮廷
用意。 [大きさ、広さともに壮大な大聖堂。華美な柱が立ち並び、色調は濃い茶色である。上階のバルコニーからは未知の紋章をあしらった旗が吊り下げられている。部屋の広さと開放感は、複雑な模様が描かれた大理石の床と天井によって強調されている。]
合唱隊が入場する。
合唱隊。 世にも絢爛豪華な砦、真まことの姿を隠す檻、
アラガッダの地、此処こそが我らの舞台、
人目から遥か遠く引き離されし終焉の館が
穢れた地を踏む客人をもてなす。
合唱隊が退場する。
博士が入場する。
用意。 [ここにいる全ての者と同様に、博士は仮面を付けているが、膨れ上がった腫瘍が首の下から垂れさがり、赤く充血している。腐敗した胎は彼の呼吸をいたぶり、固く締め付ける。この動く死体に解放の時は訪れない。]
博士。 俺は継ぎ接ぎの王の庭園の客人だ。
ファンファーレ。伝令が入場する。
指示。 [博士は涙を流すが、伝令に顔を向けない。]
博士。 頼む。どうかお願いだ。こいつを俺から取ってくれよ。俺はあれを書いた。記憶処理薬の服用も止めた。お前の望み通りにしたじゃないか。
動作。 [伝令は両手で博士の腫瘍を包み込み、その重荷を愛撫する。伝令は博士の耳元に身を寄せる。]
伝令。 この泣き喚く声が聞こえておりますか? この幼子が。それとも忘れようとなさいますか? この客人を。こやつは忘れられしものを忘れようとしております、陛下。それでも尚、こやつは貢ぎ物を携えてやって参りました。
博士。 貢ぎ物なんて —
動作。 [伝令は金切り声を上げて博士を地面に投げ倒す。]
伝令。 口を開くな。
動作。 [博士は再び立ち上がる。彼は伝令を見ようとしない。]
指示。 [博士の腫瘍から叫び声が響く。幼児の泣き声である。]
伝令。 歩け。
動作。 [博士は先へと歩く。全員退場する。]
終。
場面
吊られた王の玉座
用意。 [蝋燭の灯りで照らされている、皮膚に覆われた部屋。壁や床の顔面は恐怖の表情で口を大きく開き、身悶えし、呻いている。中央には、帷帳の最上部と並ぶほどの高さの玉座がある。この玉座は一枚の布で覆われ、その下の演者は隠れている。]
博士が入場する。伝令が入場する。
伝令。 陛下、努々お忘れなく。この蔑みに満ちた治世は続けられねばなりませぬ。これは全ての腐れた嗣子が胎から叩き出される時まで続きます。しかし、全ての胎は腐れた嗣子を宿している。不可能な遊戯、この悲劇。
動作。 [博士が膝から崩れ落ちる。腫瘍はより大声で叫び、荒々しく脈動する。]
伝令。 陛下、恥ずべき客人が参りました。大勢の者どもがそうであったように、こやつもまた、心の内に陛下の威光を再現しようと考えました。今、こやつには見えております。ええ、見えておりますとも!
動作。 [布が取り払われる。演者の姿が現れる。吊られた王が玉座に腰掛けている。]
用意。 [王は巨体だが痩躯である — たるみ、体色した皮膚からは瀕死の骨が見て取れる。身体はほつれた縫合痕で覆われ、縫い目ははち切れそうになっている。肩には頭皮で作られたローブを羽織っている。首に掛けられた絞首縄は天井から垂れ下がっている。頭には巨大な血塗れの冠を載せている。その目はえぐられており、代わりに萎びた眼窩が金鎖で貫かれ、縄で吊り上げられている。]
動作。 [博士が恐怖に圧倒され、泣き叫ぶ。]
伝令。 膚はだえの協定が結ばれます。こやつは陛下をご覧になり、邪悪な嗣子を授かりました。こやつは嗣子を身籠っておりますぞ、陛下!
動作。 [王が身動きすると、その皮膚が骨から剥がれる。縫合痕が裂け、骨ばった指が博士の腫瘍に差し伸べられる。幼児の泣き声が大きくなり始め、指は皮膚を破る。]
動作。 [博士が泣き叫ぶ中で、血に濡れた王の爪が胎を穿ち、床に胎盤を撒き散らす。腫瘍は今、博士の喉の内側に繋がる絞首縄の形をした臍の緒でぶら下がっており、叫び続けている。王は一挙動にして腫瘍を爪で刺し貫き、床に固定する。生まれざる嗣子は重圧で弾け、臓腑が四方八方へ、そして観客席へと飛散する。]
動作。 [これによって、王の皮膚の一部が腕から剥がれ落ち、僅かばかりの細い筋と腐った組織に包まれた、ひび割れ黒ずんだ骨が露わになる。皮膚は床に落ち、王はそれを引き裂いて隅に投げ捨てる。]
膚はだえ剥がれし廷臣たちが入場する。
動作。 [左右から数十人の演者が現れる。彼らは全裸であり、皮膚を欠いている。彼らは肉片の前に跪き、それを引き裂いて、皮膚を剥がれた自分たちの身体に戻そうと試みる。伝令は堪え切れずに笑い始める。]
動作。 [王は博士を宙に持ち上げ、自らの空の眼窩と同じ高さまで運ぶ。博士が痙攣し、身悶えしている間に、王は博士の額に指を添える。慎重に、王は爪で切り込みを入れ、更に深く押し込み、博士の皮膚を剥ぎ始める。]
動作。 [膚の協定が結ばれる。]
終。