アイテム番号: SCP-785-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現代社会において、SCP-785-JPは一般人の会話から発生し得る存在となっています。SCP-785-JPを抑止する方法としてSCP-785-JPおよびそれに近い言動や考え方を否定する情報の流布が続けられていますが、確実な成果は上げられていません; SCP-785-JP(-2)を遠因とした有益な事例が継続して発生しているため、否定的情報に強い説得力を持たせることが困難となっているためです。
現在、SCP-785-JPへの対処法は、SCP-785-JPが異常な現象の発生源になるという情報の抑止が中心となっています。SCP-785-JP関連現象の第1段階に相当する情報が確認され次第、関与した人物への記憶処理と情報の隠ぺいが行われます。
SCP-785-JP関連現象の第2段階が発生している対象者Bの実例は、発見され次第、まずは監視の対象となります。対象者Bの収容や保護が必要と判断された場合は、強制的な拘束といった、SCP-785-JP-2による反発を招くような対応は控えてください。
説明: SCP-785-JPは会話中の発言です。発言をした対象者Aとそれを聞いた対象者Bが特定の人間関係にあり、その発言内容が特定の主旨に該当していたならば、その発言はSCP-785-JPとなります。発言内容において重要な要素はその主旨であり、その発言をSCP-785-JPとして成立させるにあたって、特別な言い回し等は必要ありません。
SCP-785-JPが発言された場合、最大で2段階の特異な現象が発生します:
SCP-785-JP関連現象 - 第1段階: 対象者Aは、SCP-785-JPを発言して1年以内の就寝中に、警察署で取り調べを受ける夢を経験します。どの夢の事例でも取り調べの担当者は共通の人物: SCP-785-JP-1であり、SCP-785-JP-1は非常に高圧的な態度で、対象者Aが本当にSCP-785-JPを発言したのかどうか、執拗に追及します。SCP-785-JP-1は取り調べの中で拷問器具を見せびらかし、身体的な刑罰や死刑を示唆する発言を行う等により対象者Aを脅迫します。
対象者Aが取り調べに対して明確な回答を行うことで、夢は終了します: 対象者AがSCP-785-JPの発言をはっきりと認めた場合、SCP-785-JP関連現象は次の段階へ進みます。発言の事実を否定した場合、この段階で特異な現象は終了します。
SCP-785-JP関連現象 - 第2段階: 対象者Aの死後、第2段階の現象が開始されます。なお、現在までに対象者Aの死とSCP-785-JPとの因果関係は認められていません。
第2段階においては「一定の」人物が、対象者Bの周囲に現れる対象者Aの姿: SCP-785-JP-2を視認するようになります。SCP-785-JP-2は基本的に、対象者Aの死亡時点よりも若い頃の姿で観測されます。例外なく、SCP-785-JP-2は口から大量の血を流していると報告されています。下顎が完全に欠損しているSCP-785-JP-2の実例も少なくありません。
SCP-785-JP-2を観測することのできる人物には、対応する対象者Bに憎悪や害意を抱いているという傾向が見られます: 記録によれば、前述の悪感情が強ければ強いほど、その観測者はより鮮明にSCP-785-JP-2を認識するようになり、またSCP-785-JP-2が「睨んでくる」「近づいてくる」等と主張するようになります。
[データ削除済]
なお、1件のSCP-785-JP関連現象における対象者AとBが1名ずつとは限りません。同じ対象者Bに複数体(多くは2体)のSCP-785-JP-2が観測されるケースも確認されています。
以降の情報は専門の研究人員や上級職員の他に、対象者Aの候補となった職員に対しても閲覧権限が与えられます。
注意: 通知を受けた職員は、必ず下記にアクセスしてください。
SCP-785-JP研究室長からの通達
個別の通知を受け取った方へ
まずは、おめでとうございます。
あなたに新しい家族ができたことを、心より祝福いたします。あるいはもう既に、その腕に抱いてあげた事があるのかもしれませんが。
ところで、あなたはとても幼いころ、「死」というものに対して過剰な恐怖を抱いたような経験はありませんか?自分が死ぬ事はもちろん、いつもそばにいてくれるパパやママが死んでしまって、いなくなってしまう事を想像してしまい、どうしようもないくらいの不安に苛まれたりしたことはありませんか?
そして当時のあなたは、すぐそばであなたを見守るパパかママに、こんな事を尋ねたりはしませんでしたか?
「ねえ、パパ/ママも、死んじゃうの?死んじゃいや、お願い、死なないで」と。
もし、その時に、あなたのパパかママが――あるいはあなたが、あなたの指をぎゅっと握って見つめてくるその子に向かって、「大丈夫。パパ/ママは死んだりしない」と答えたとしたら?あるいは、身体は無くなってもお星様になって見守ってあげる、なんて回答でも構いません。
それが、SCP-785-JPです。
SCP-785-JP-1は夢の中で、次のように対象者Aに迫ります: もし本当にそんな無根拠な「嘘」を言って、いたいけな子どもを騙したというのなら、それは重大な罪であると。そして巨大なペンチを振りかざし、こいつでお前の舌を引きちぎってやる、安らかに死ねると思うな、等と脅してくるわけです。
それでも対象者A――つまり対象者Bの保護者が、SCP-785-JPの発言を認めたのであれば、その死後、その姿が、愛し子の近くに現れるようになるのです。その子に危害を加えようとする者にしか通常は見えない、口の中をずたずたに破壊されたような、その姿で。
ここまで聞いた時点で、検閲の中身に気づいた人もいるかもしれません。SCP-785-JP-2、あれは「ただの」人間に対しては脅かすくらいしかできません。SCP-785-JP-2が鮮明に見えていながら、その眼前で対象者Bに対する殺傷や略奪を成し遂げた犯罪者の例は枚挙に暇がありません。
しかし、SCP-785-JP-2は逆に、あれと同じような超自然的な力には、ある程度の対抗能力を持つのです。といっても元は基本的にただの人ですから、1体あたりの力はたかが知れています。偶然あれがKeterクラスのオブジェクトと対峙する破目になった記録が残っていますが、あれは対象者Bが踏みつぶされようとするのをたった1秒だけ遅らせて、彼を逃げ延びさせる程度のことしかできませんでした――それも自身の消滅と引き換えに。
それでも、このSCP-785-JP-2の能力のために、SCP-785-JPの扱いについては今でも大きく意見が分かれてしまっています。
オブジェクトの保護という観点からは、他のオブジェクトに危害を加えかねないSCP-785-JP-2を生み出すSCP-785-JPを野放しにはできません。先述の、SCP-785-JP-2を目撃した犯罪者に関連する隠ぺいのコストも、軽視することはできません。ですが一方で、SCP-785-JP-2を有用なものとして注目している勢力も我々の中には存在しています。中には機動部隊("子煩悩")なんていうものを計画している職員もいるようです。
我々の基本方針を考えれば、あなた方への正式なアナウンスは「SCP-785-JPを発言しないでください、もし発言してしまっても、SCP-785-JP-1に対してはその事実を否認してください」といった内容になるでしょう。しかし前述の状況により、まだそれを強要すべきとも決まってはいません。
あなたの大切な人を対象者Bにするかどうか、その最終的な判断は、現時点では、あなたの方で決めてもらって構わないのです。
そもそも異常性を差し引いた一般的な話として、SCP-785-JPを発言することに異を唱える方もいることでしょう。どんなに幼くても、「死」については真実をはっきりと教えるべきだと。その考え方も勿論、尊重されるべきです。(あるいは我々のたゆまぬ収容努力によって、そういう考え方になってくれたのかもしれません)SCP-785-JP-1も、SCP-785-JPは罪だと非難していますしね。ちなみにSCP-785-JP-1の夢を見た後の対象者Aは多くの場合、ハムスターや虫のような短命のペットだとか、「死」について教える絵本なんかを子どもに買い与えるのだそうです。
ただ、意見は色々あるでしょうが、こういうものが世の中にあるという事は、知っておいて損は無いと思いますよ。
未来へ遺すものを持つことになった、あなたのような人にとってはね。
それでは、あなた方の今後ますますのご活躍を、お祈りしております。