クレジット
翻訳責任者: Tetsu1
翻訳年: 2025
著作権者: J Dune
原題: The Enforcer
作成年: 2022
初訳時参照リビジョン: 7
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7853
by J Dune
つけられてる
?
電話かけて
無理、通りのすぐ先にいる
誰につけられてるの??写真撮れる?
さっきやった。映らなかった。でも確かにあいつが見える
どういうこと
こっちまでタクシー使えば
いや。歩いてく。街の真ん中で白昼堂々殺しはしないと思う。俺を独りにしようとしてるんだと
一体何しでかしたのジョーイ??
おーい?
財団データベースからセグレト犯罪ファミリーに関するクラス4セキュリティクリアランス以上の情報を全部探してほしい
犯罪ファミリー??
まあ、わかった
見つけた。SCP-7853。2004年から更新されてない。画面送るね


SCP-7853、芸術家による解釈
特別収容プロトコル: SCP-7853の収容は現状実現不可能です。収容方法が発見されるまで、専門財団機動部隊N-77("モグラたたき")はSCP-7853及びセグレト犯罪ファミリーに関する情報の文書化、研究、調査に集中して取り組みます。
アメリカのマフィアに潜入しているN-77エージェント及び情報提供者は、積極的な情報監視を目的として生物工学的強化を受けています。このプロセスには、主に眼球領域における個別の聴取・記録装置の導入が含まれます。全エージェントは、SCP-7853の全体的な理解が達成されるまで、犯罪活動の積極的な妨害行為や注意を引く可能性のあるその他の行動を控えてください。
SCP-7853に関連する情報は機動部隊N-77隊員に制限されています。本文書が財団全体でアクセス可能となった場合[データ削除済]
説明: SCP-7853はGoI-027("セグレト犯罪ファミリー")がその活動を脅かす人物を暗殺するために採用した異常な処刑方法です。
SCP-7853の物理的証拠はまだ発見されていませんが、既知の被害者はアノマリーの構成要素である、トレンチコートを着てつばの広い帽子をかぶった大柄な人型存在という普遍的な説明を裏付けています。その顔貌は、赤く発光する目を除いて影によってほぼ隠されています。この実体はSCP-7853の標的となった人物以外には視認不可能です。
被害者は、この実体が一定のペースで絶えず自身に向かって移動していると説明します。彼らは自分の位置に対する実体の位置を常時完全に意識します。実体の進行を妨害したり遅らせたりする試みは無意味であり、被害者は実体があらゆる障害物を切り抜けると説明しています。物理的にSCP-7853を攻撃する試みは、恐らく非実体性のために必ず失敗します。報告によるとSCP-7853は自身の重心を維持する能力を有しており、進路が妨げられた際に壁や天井等の表面を歩行するという形でこの能力を実証します。
SCP-7853が完了すると標的となった人物は身体の物理的痕跡を残さず突然消失し、恐らくは死亡します。これはSCP-7853が被害者に到達した際に発生するものと思われますが、アノマリーの性質上、これを裏付ける検証可能な証拠はほとんどありません。
どのようにSCP-7853が機能するのか、遠隔操作されているのかそれ自体が知性を有するアノマリーなのか、どのように標的が選択されるのかは依然として不明です。SCP-7853に関連する全ての情報は、セグレト犯罪ファミリーに関連する組織犯罪システムに潜入している機動部隊N-77エージェントから入手されたものです。SCP-7853が関与していると疑われるないし実証された事件には、いずれもセグレト犯罪ファミリーと対立していた被害者も関与しています。
SCP-7853に関する情報に関わった人物は、アノマリーの標的となりやすくなる可能性があります。SCP-7853を認識し本文書の作成に関与したN-77エージェントは、実体の説明と一致する人物の目撃を報告していますが、追跡・尾行された人物はいません。
2004年3月時点で、SCP-7853の結果と疑われる財団職員の死は発生していません。
クソ
うん、助かる
これがつけてきてるやつ??
100パー
ほんとジョーイ何したの
駄目なとこに気を抜きすぎで首突っ込んだ
どゆこと
サイト-22にはとんでもない大問題があってどれくらい根深いのかわからない
セグレトファミリーにX-908を売ってる
俺たちのサイトは温床だ。X-908の大量合成、夜中に停まるトラック、クック博士のプライベートポーカーゲーム。穴を一つ下ると更に二つ見つかる。クックに直接話すってやらかしをした。まさかマフィア野郎が関わってるとは思わなかった
待って
X-908って?
合成血清。記憶処理薬を作るのに使うのと同じものからできてるけどそれよりずっと不安定。約1時間反ミーム特性を付与する。財団はスパイ作戦に使ってる
誰も使用者も、その顔も、それについての記憶も思い出せなくなる。めっちゃ強力なやつ。存在すらしなかったみたいに
それをここがマフィアに売ってるって?
サイトのワークフローと毎月割り当てられたリソースのどれだけがX-908の製造に向かってるか調べたときにピースをまとめ始めたんだが
考えてもみろ。マフィアはここ数十年大衆の注目を集めてきた。映画、テレビ番組、RICO法。X-908のおかげで小言すらデータ収集される時代でも組織犯罪が可能になってる。誰もいたことすら気付かないから奴らのやることは死ぬほど簡単になってる
でも何で財団はお金がいるの?
個人的な操作かもしれない。もしもっと大きな何かならこの豪勢な資金がどこから来るのか自問しなきゃならなくなる
ルッジェーロ管理官は知ってるの?
わからない。クック博士が先導してるのは確かだ。他数名の研究チームも。ハートマン、ヴォリンスキー。だが見たことない顔ぶれがたくさん。従業員名簿に見当たらない奴ら
ルッジェーロにこの情報を伝えてほしい。自分で行こうとしたがそしたらこの野郎が俺をつけ始めた
ルッジェーロが関わってたら?ジョーイを助けたことで私も狙われたりしない?
クソ
タクシー乗った。止まる気はないが考えないと
補遺がある。今送るね
SCP-7853は機動部隊N-77によるGoI-027の調査中に発見されました。当団体の財団諜報文書が以下に添付されています。
GoI-027("セグレト犯罪ファミリー")は主にペンシルベニア、ニューヨーク、ニュージャージーで活動している組織犯罪グループです。アメリカマフィア内での協力な地位のために非公式的に「第6ファミリー」とも呼ばれるこの組織は、その活動域での既知の犯罪活動の推定30%に関与しています。これにはギャンブル、恐喝、不正取引、窃盗等の標準的なマフィア活動が含まれます。
GoI-027は異常存在の知識と使用において知られています。パラテクノロジーの使用、既知の要注意団体の標的化、異常なオブジェクトの密輸、異常薬物の流通、居住者のいるネクサスでの活動といった出来事が文書化されており、これが当組織の要注意団体としての立場の根拠となっています。
GoI-027の構成員の一部は彼ら自身が異常であると考えられています。セグレトらは世界オカルト連合や財団のような組織の機密情報へのアクセスに成功しており、諜報員はセグレトが両団体の情報セキュリティ上の欠陥を利用したものと考えています。財団内部にセグレトの情報提供者が存在するかは現在調査中です。
GoI-027のリーダーは「公爵」と呼ばれる人物です。ファミリーの構成と構成員の素性の大部分は知られていませんが、全体的な起源は1940年代後期におけるGoI-001("シカゴ・スピリット")の折り畳みにまで遡る可能性が最も高くなっています。アメリカのマフィア文化はGoI-027に関して公然と語らないという伝統を守ってきたため、その歴史の大半は失われています。ファミリーに関する特定の詳細は情報源間で矛盾しており、財団側の情報提供者はSCP-7853の注意を引く可能性のために、GoI-027に関する情報を明かすことに恐怖を表明しています。
多数の機動部隊N-77隊員がGoI-027やそれと関わりの深い犯罪組織への潜入に成功しています。更なる諜報報告は機密解除待ちです。
N-77。聞いたことある?
多分初耳。財団自体の内部でマフィア活動を見つけてたなら更に深く潜入するかもしれない。それで名簿に載ってない
それは楽観的だな
奴が加速してるように思う。見えないけど5ブロックくらい先にいる
もっと速く動けるならこいつはサディストなんだろう。追いかけるのが好きなんだ。多分俺が今逃げてることを知ってる
今の全部データパケットに入れてる。ファイル、会話、全部。ジョーイが来て私の端末にログインしたら管理官に送信できる
グッドアイデア。俺がそっちのコンピュータを使った事実を除けばどんな言い訳でも通る
あとどれくらい
徒歩5分。飲み物用意しといて
以下はSCP-7853が関わる既知の事件のサンプルです。
日付: 1991/11/01
被害者: ロッコ・"ロッキー"・ロンバルディ
説明: 注目を集めたマフィアの消失。ロンバルディはセグレトのカポ・レジーム1の妻と性的関係を持ったと報告されていた。ロンバルディはSCP-7853の説明に一致する人物に追われているとパニックになって同僚に何度も電話を掛けた。兵士が彼の屋敷に立っていたが、ロンバルディが実体を直接指さしても襲撃者を視認できなかった。ロンバルディは逃走しようと彼の車で走り去り、1週間後に正式に行方不明と宣言された。SCP-7853の結果死亡したものと思われる。
日付: 1995/04/27
被害者: ニコストラト・マザンティ
説明: マザンティは東海岸で有名なカジノチェーンを所有していたが、収益をめぐる不和で数名のGoI-027関係者が死亡したことでセグレトの標的となった。マザンティはSCP-7853から逃れるためにアメリカからイタリアへ飛んだと報告された。SCP-7853の追跡は1週間以上にわたり、狂気に陥ったマザンティはセグレトの要求を黙諾した後に実体に捕らえられ、恐らくは殺害されたとされている。
日付: 1998/09/04
被害者: エンツォ・"ゾンビ"・ロシエロ
説明: GoI-027との先立つ対立の詳細は不明。ロシエロは非常に攻撃的な人物として知られ、頻繁な感情の爆発と散発的な殺人のために継続的な雇用はマフィアにとって多大なリスクと考えられていた。ロシエロは追跡されていると考え、白昼堂々襲撃者に攻撃を試みた。目撃者によると、ロシエロは数発空中に向かって発砲した後に弾がすぐに消失したと報告されている。苦闘の末、ロシエロは未知の力で路地裏に引きずり込まれた後に消失した。
これはもう読んだ?
最後のは興味深い。銃弾が本当に消えたなら実体がそれを取ったってことか?物体を透過できないなら物理的に作用できるかもしれない
奴に反応する時間がなかったのかもしれない
お願いだからこれとやり合おうとしないで
ファイルは準備できてるからなるはやでお願い
ジョーイ
ジョーイいるの
こちらエヴァン・ジョクノ、機動部隊N-77隊長。もう存在しない機動部隊の。
現在2004年3月13日。もう2日間も逃げ続けだ。俺は人生のうち過去10年間もセグレトファミリーを調査してきた。そして俺の記憶によると、俺はたった独りでこれをやってきたらしい。だがその記憶は間違いだ。思い出せない名前がいくつもある。俺の脳に登録されてない顔の奴らが。自分が書いてない成果が目の前にある。全員が切り取られた家族写真。俺を除いて。
俺が書いてない文書で最後なのは2週間前にアップロードされたやつだ。その2週間で機動部隊N-77、セグレト犯罪ファミリーを調査する77人の財団職員グループは一人まで削り取られた。そして俺は、一緒に命を危険にさらした奴らについて誰一人のことも、何一つも伝えられない。奴は俺たちを摘み取って、存在もしてなかったみたいにするんだ。そして俺の心はそれを信じちまってる。だがオフィスに眠ってる書いた記憶のない記録の山とか、俺にはどうやっても操作できない機器を見れば、それが嘘だってわかる。
俺が死ぬまでこれは止まらないだろう。このチームに残るのが、何年も誰も入ってない空き部屋と、誰もアクセスするクリアランスを持ってないファイルだけになるまで。
俺は今現場に潜伏してる。警備は寸分の隙もなく武装してる。彼らは何が起こるか知ってるが、そんなこと関係なく奴は俺の下に来る。そして俺が死んでしまえば、全員忘れちまう。自分が何を守るよう配属されたのかも、俺たちが存在したことも覚えてはいまい。俺があいつらを思い出せないのと同じで。
ファイルを機密解除した。レベル4クリアランス。もし混乱の中でこれを忘れ去ってしまったら、まずは疑問を思い浮かべるんだ。俺たちはみんな実在した。
ジョーイどうかこれ読んで
畜生
ねえちょっと大丈夫??
だいじょブ痛いだけ
やつをうった
ニューヨークの真ん中で発砲したの?なんて馬鹿なこと
近く来るまでまつた
そっちの建物あたり回ってた
膝撃って弾当たったけど明らか人が聞いてた
一人タックルしてきて足折った。噛んで逃げてった
そいつを殺したの??
いや戦車みたいに受け止めやがった
ジョーイさっき送ったの読んで
編集直後に差し戻された補遺がある。機動部隊隊長からの。ページに追加された最後のやつ
クソいてぇ一分くらいで着く
お願い。全く意味ないからどうか読んで
なんだこれ
ああそりゃもちろん
くそひとくなってる
異性体?
そう。前の問題はこいつが他の殺し屋みたく証拠を残してることだった。死体も証拠もないが人はまだ覚えてる
記憶も消せたらどうだ?X-908ならできる。マフィアは身を隠すために自分に使ってるがもし他人に使ったら
でも1時間しか続かないんじゃないの?
ああ、そうなれば現実に引き戻される。他全員の脳が再チェックして記憶が戻ってくる。何かを殺せば知覚できなくなって戻ってこない。その効果が残り続ける。なにももどつてこない
完全に消去されるのとほぼ同じ
ほんとこりゃいいや
何てこと。もうここにいるの?
今ロビー
227だよな
くそ
サラ
さら
いまうつた
ちんせいざいかなにか
ろびーいておれはま
なんだこれ
へんしんして
たまじゃないなにこれ
誰なの?
くそ
ねぇ、誰なの?
恐怖を落ちつけると同時に、ジョセフ・レン博士は自分が何で撃たれたのかを理解する。
ロビーの人々は彼を認識していない。したとしても、すぐに忘れてまた行ってしまう。SCP-7853が近付く。今はロビーの半ばにいる。相も変わらず、着実な歩み。レンは無駄だとわかっているが、できる限りの速さでエレベーターへと足を引きずる。
素早く3階へのボタンを押す。227。例の端末まで到達しないと。
頭の片隅で、SCP-7853が迫っているのを彼は知っている。奴は壁を歩いて上ってくる。レンは腰をなでる。ピストルはまだある。それを自分の口に突っ込んでやろうか。駄目だ。サラの部屋に行かないと。そうすれば、彼女が彼を覚えているかどうかなど関係なくファイルを送信できる。管理官に届けるんだ。サイト-22の従業員名簿に載っている全員に。あの野郎どもの計画をお釈迦にしてやるんだ。彼はもう死ぬことは恐れていない。ただ失敗を恐れている。
ドアが開く。レンは彼の全速力で廊下を駆け抜ける。あとたった数秒。彼は集中する。集中するあまり、背後の壁をSCP-7853がすり抜けてくることに一切気付けなかった。レンは取っ手を回すが、もう遅かった。叫び声さえも上げられなかった。
ゲームオーバー。ジョセフ・レン博士、そして友人や家族の心に確かにあった彼との思い出は、全て存在を消し去られた。
きしむ音を立て、サラ・カプラ次席研究員はドアを開ける。彼女は数分前に、何故自分がSCP-7853のデータをカタログ化しているのかに困惑してコンピュータをシャットダウンしていた。周辺に何かがいるのに気付き、彼女は顔に笑みを浮かべる。
サラ: 入ってきて、タフガイさん。ずっとあなたがどんな見た目か知りたかったの。
SCP-7853はドアをすり抜けて部屋に入る。二人は見つめ合う。
サラ: 恐ろしいこと。送ったことを思い出せない過去1時間のメッセージを見て、あなたが関わってるんじゃないかって気付いた。これは私の同僚だったの?
SCP-7853は返答しない。
サラ: (首を振る) こういうのには慣れてないな。X-908でこれをやってるなんて気付いてなかった。とっても見事なこと。恐ろしい付き合いじゃない? (停止) 多分私が彼をここまでおびき出す必要もなかったけど、クックは何も教えてくれやしなかった。
沈黙。サラは携帯電話を取り出してルッジェーロ管理官にかける。何度かの呼び出し音の後、管理官は電話を取る。
ルッジェーロ管理官: もしもし。
サラ: 管理官、ジョセフ・レン博士って知ってますか?
ルッジェーロ管理官: あー、そんな名前の職員は– あぁ…… (笑い)
サラ: 彼らがこんなとこに迫ってるとは知りませんでしたよ。怖くないです?
ルッジェーロ管理官: いつだってそうだ。この野郎どもはクソの奥深くまで足を突っ込んでる。事が済んだ後に奴らのことを思い出せたらいいんだがな。そいつはどこまで深く行ったのか。
サラ: 分け前はくださいよ。
ルッジェーロ管理官: 落ち着け。私たちの友人はそこにいるか?
サラ: ディック・トレイシー? ええ、今見てますよ。
ルッジェーロ管理官: よし。じゃあ、彼によろしく伝えといてくれ。公爵には次の発送で2倍送ると。またロイヤルな執行者で私たちを救ってくれたからな。
サラ: こいつ喋ってるんですか? 入ってきてからずっとだんまりなんですけど。
ルッジェーロ管理官: 私が知るわけないだろ。見たことないんだから。なんせそいつが見えるようになる条件は–
SCP-7853はサラ・カプラにX-908を発射する。弾の衝撃で彼女は怯む。何かを口にしようとするが、言葉が喉につかえて出てこない。彼女は電話を落とし、椅子から転げ落ちて、這って逃げようともがく。
SCP-7853は彼女に近付き、そして数秒後、彼女は息を引き取る。彼女が障害だったのかもしれない。そうでなかったのかもしれない。確かなのは、彼女がレンに送る文書を読んだということだ。彼女は嘘をつくこともできた。嘘をつくよう言われていた。だが今やそれは処理された。この作戦にやり残しは許されない。
別の場所では、ジュリアン・ルッジェーロ管理官が誰とも話していないことに気付いて困惑し、電話を切る。
SCP-7853は窓から退室し、部屋の側面を下っていき、どことも知れぬ場所へと帰っていく。
公爵は自分の庭をよく手入れするものだ。