クレジット
タイトル: SCP-7872 - 我思わず、故に我あらず
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2026
原題: SCP-7872 - Non Cogito, Ergo Non Sum
著作権者: NDHeckfire
作成年: 2023
初訳時参照リビジョン: 8
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7872
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| 配属サイト | サイト管理官 | 研究責任者 | 担当機動部隊 |
| サイト-400 | アダム・デズモンド管理官 | N/A | N/A |
空の部屋。これはSCP-7872の非存在により、彼の写真が無いことを示すためのものです。
特別収容プロトコル: 現任のサイト管理官の承認を得て、以下のメッセージが少なくとも1日3回、サイト-400の施設内放送システムで発信されます。
これは、財団にクリストファー・ロシーンという名前の人物が現在雇用されていないことを、職員各位に周知するための日次連絡です。
SCP-7872の存在を認知していない職員は、定期的にポスターや告知を印刷・掲示し、他の職員に対して彼が実際には存在しないことを再確認させるものとします。SCP-7872の存在 (より正確には非存在) に関する議論を私的な場で行うことは許可されていますが、関係者はある時点でSCP-7872が存在しないと結論付けます。
説明: SCP-7872は存在しないクリストファー・ロシーン上席研究員の指定名称です。病理学・生物災害研究部門はSCP-7872の存在を認知しておらず、従ってSCP-7872が緑色の目と金髪を有するオランダ系スコットランド人の白人男性であるということは全くあり得ません。
長期にわたる観察結果にも拘らず、職員が報告するかすかな足音やくぐもった囁き声は、改めて述べるようにSCP-7872は存在しないので、彼によるものではありません。これらの物音の発生源は依然として解明されていないものの、SCP-7872の行為でないことは絶対的に確実であり、異議は (彼は存在しないので) 非論理的です。
SCP-7872についての更なる情報は、明白な理由 (即ち彼の非存在) により、入手できません。
補遺7872-1: SCP-7872に関連する直近の議論
日付: 2018/10/03
関係者:
- エージェント カルロス・シエラ
- 次席研究員 デイビッド・コボルスキー
<記録開始>
映像には、携帯電話を持ったエージェント カルロス・シエラが一人きりで休憩室に座っている様子が映っている。休憩室のドアが開き、デイビッド・コボルスキー次席研究員が入室する。彼は室内を軽く見渡してから口を開く。
コボルスキー研究員: あー、えっと…
エージェント シエラ: (顔を上げる) よう、兄ちゃん。
コボルスキー研究員: やあ。 (身じろぎする) んー、ここは休憩室かい?
エージェント シエラ: おう。この時期は少し閑散としてるんだ。大抵の奴は食堂に行く。
コボルスキー研究員: あー、そうか。すまない、まだ新参でね。
エージェント シエラ: ほう? (立ち上がり、片手を差し伸べる) 俺はカールってんだ。アノマリー調査部門。
コボルスキー研究員: (エージェント シエラと握手する) デイブだ。ミーム・対抗ミーム研究部門。あー、数日前にここに転属になった。43から。
二人とも着席する。
エージェント シエラ: 43だって? あのサイトから異動となると、よっぽど派手にしくじったな。 (笑い) いやいや、冗談だ。水をマリファナに変えるとか、そういう異常性持ちなんだろ。図星か?
コボルスキー研究員: (神経質に笑う) ハハ、まあね… (咳払い) なあ、君はここに詳しいようだね。ちょっと、あー、質問してもいいかい?
エージェント シエラ: おう、いいとも。何でも聞いてくれや。
コボルスキー研究員: うん、それがだね。さっき聞いた館内放送についてなんだ。 (鼻をすする) いや、実は2回聞いてる。今朝1回、ここに来る途中でもう1回。確か、“財団に… クリストファー・ロシーンという人物は雇用されていない”みたいな内容だったかな。あれは、ん-、どういう意味なんだ?
エージェント シエラ: あー、はいはいはい。何のことか分かったよ。でも気にしなくていい。そういうプロトコルなんだよ、とあるSCiPのためのな。えーっと… 7872だったか? どうもまだ新しいポスターを貼り出してないらしい。
コボルスキー次席研究員は自分のSCiPhoneを取り出し、検索エンジンにアクセスする。数秒後、彼は検索結果を読み上げ始める。
コボルスキー研究員: “…関係者はある時点でSCP-7872が存在しないと結論付けます。” はぁ?
エージェント シエラ: どうした?
コボルスキー研究員: その、私の理解が正しいとすれば、私たちはこの… クリストファー・ロシーンとかいう男が存在しないってことを信じなきゃならないんだね? それとも、彼の存否を疑うことはできるけれど、最終的には実は存在しないという結論に至るのか?
エージェント シエラ: (肩をすくめる) そんなとこだ。
コボルスキー研究員: でも… 訳が分からない。この説明文の書き方だと、その男は存在しているように思える。容姿まで記載してあるじゃないか。
エージェント シエラ: いや、そいつが奴の容姿だとは書いてなかったはずだ。 (コボルスキー次席研究員の肩越しに覗き込む) ほら、ここだ。“SCP-7872がホニャララの白人男性であるということは全くあり得ません。”
コボルスキー研究員: でも… なんだろう。誰がこの報告書を書いたにせよ、彼が存在しないと思わせたがっているように感じるよ。
エージェント シエラ: それが… 要点だろ…? おい、大丈夫か?
コボルスキー研究員: いや、ちょっと言ってみただけ - 待ってくれ、私たちは同じ報告書を読んでるんだよな? (SCiPhoneに目線を戻す) ロックされた補遺とかがあったりする?
エージェント シエラ: 無いと思うがね。たかがレベル2制限文書だ。こいつにアクセスできねえのはDクラスとL-1用務員ぐらいだぜ。
コボルスキー研究員: うん、でも… ヤバい。こいつ… 反ミームかもしれない! “反ミームアノマリー”! そうだろ?
エージェント シエラ: ちゃんとファイル読めよ。反ミームなんて一言も書いてねえだろうが。
コボルスキー研究員: うん、でもそれが反ミームの仕組みだろう? 手遅れになるまで反ミームだとは分からない、というのがさ?
エージェント シエラ: じゃあなんでお前にはこいつが反ミームだって分かる?
コボルスキー研究員: それは、こう、うん… (溜め息) クソッ。
エージェント シエラ: 全くだよ。
コボルスキー研究員: どうにも… しっくりこない。
エージェント シエラ: アノマリーはみんなしっくりこないもんさ。だからこそ俺たちは奴らを異常アノマラスと呼ぶんだよ。あのな、お前がどう感じてるかは分かる。いや、本当に。新しい環境に不慣れで、場違いに感じてるんだろ? 実力を示したいんだろ?
コボルスキー研究員: いや、違-
エージェント シエラ: ほら、食堂になんか飲みに行こうぜ。お前みたいなカナダ人好みの品もきっとあるからさ。
エージェント シエラは立ち上がり、身振りでコボルスキー次席研究員に同行を促す。コボルスキー次席研究員は一瞬躊躇するが、やはりSCiPhoneをしまって立ち上がる。
コボルスキー研究員: わ、分かったよ。
二人とも休憩室を退出する。映像終了。
<記録終了>
監視映像ログ 7872/3810-WH
日付: 2018/10/05
<記録開始>
映像には無人の白い廊下が映っている。廊下の端には別区画へ通じる両開きドアがある。片方のドアが開き、デイビッド・コボルスキー次席研究員が廊下に入る。彼は神経質に周囲を見渡し、背後のドアを閉める。
コボルスキー次席研究員はゆっくりと廊下の中心へと進み出る。冷風が突然吹き抜け、コボルスキー次席研究員は反射的に両肩を抱き締める。彼は身震いし、何度か鼻を擦る。
コボルスキー研究員: (呼びかける) クリス… クリストファー・ロシーン? クリストファー・ロシーン博士? (鼻をすする) 病理学… えーっと、生物災害研究部門の? そこに… いますか?
返答はない。代わりに聞こえるのは、最大出力に設定された空調機の稼働音と蛍光灯のバズ音のみである。コボルスキー次席研究員はもう一度神経質に周囲を見渡す。彼は更にきつく両肩を抱き締める。
コボルスキー研究員: ハロー? (鼻をすする) 誰かいますか?
突然のチャイム音が響き、サイト-400施設内放送システムの作動を告げる。コボルスキー次席研究員はやや驚いた様子で近くのスピーカーを注視する。
PAシステム: これは、財団にクリストファー・ロシーンという名前の人物が現在雇用されていないことを、職員各位に周知するための日次連絡です。
再びチャイム音が繰り返され、サイト-400施設内放送システムの停止を告げる。コボルスキー次席研究員はスピーカーから目線を逸らし、床を見つめる。彼は後頭部を掻き、鼻をこすり、現在その様子を記録している監視カメラを直視する。彼は目を背け、一人で含み笑いする。
コボルスキー研究員: 何やってんだか。 (鼻をすする) 傍から見たらバカ丸出しだな。
再び冷風が吹き抜ける。コボルスキー次席研究員はまた鼻をすすった後、素早く肘の内側で鼻を覆い、くしゃみをする。
SCP-7872: おだいじに。
コボルスキー研究員: どうも。
コボルスキー次席研究員は白衣からナプキンを取り出し、鼻を拭う。彼は画面外へ歩み出て、廊下を退出する。映像終了。
<記録終了>



