Info
SCP-7881:プロジェクト・ゴッドヘッド
Author: Zmax15
Original: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7881
翻訳責任者: broken-window
原題: SCP-7881 - Project: Godhead
翻訳年: 2026
初訳時参照リビジョン: 16
現実性部門より通達
あなたは、自身をTL-0016(「現行タイムライン」)と呼称する仮説宇宙#7881(旧称TL-20E62GKY)を起源とする文書を閲覧しています。この命名規則は相対的なものであり、この文書はあなた方各自のタイムラインを記述していません。
この文書が起草されたタイムラインは、わたしたちから見ておおよそ2023年6月1日に仮説化されました。起源となるタイムラインへの観察または通信を試みる行為は厳重に禁じられ、違反者は終了されます。
特別収容プロトコル: 全財団部門は、将来発生する可能性のあるAZK-クラス「普遍的非現実化」シナリオへの対策を行ってください。1 現実性部門は、当該シナリオによって生じうる影響をリストアップし、各部門に公開してください。
SCP-7881-Aは、サイト-300-14内、Z.マクシムシキン博士の旧執務室に位置し、存在力学的収容Ontokinetic Containment(OC)ユニット-10として指定されている、現行の位置を保って収容されます。OCユニット-10は、物理的・非物理的環境の変化を検知するため、現在設置されている映像監視装置、音声監視装置、気圧監視装置、およびカント計数機により監視されます。OCユニット-10は、施錠された状態が維持され、現実部門の職員と収容維持に必要な要員を除き、全財団職員の立入が禁止されます。
OCユニット-10は、気圧上昇を防ぐため、換気を必要とします。OCユニット-10の主要な換気経路はサイト-300-14外部に直結され、ユニットには3つのそれとは異なる換気経路が設置されなくてはなりません。第一経路は有害化学物質・放射線の濾過システムへ、第二経路は気体に関する玄妙除却システムへつながり、第三経路は気体の貯蔵および過剰なユニット内圧の解放に用いるものとします。SCP-7881-Aによる気体排出物は現時点で非異常とみなされていますが、その物理的・非物理的な組成の変化を継続的に観測してください。対象が有害ガスを排出し始めた際は、それらを代替の換気経路へ導き処理してください。SCP-7881-Aの物理的完全性を維持し、本体からいかなる断片も分離しないよう措置を講じてください。
OCユニット-10の周囲に4基のスクラントン現実錨を配置し、SCP-7881-B個体の収容を維持してください。SCP-7881-Bの個体が収容違反した場合、いかなる場合においても機動部隊ミュー-13を出動させ、それらを追跡し、直ちに無力化してください。機動部隊カッパ-3は、未確認かつ現在未収容のSCP-7881-B個体の特定、及び追跡を任務として割り当てられています。
SCP-7881が時空の安定性に及ぼす影響に関する調査は、追って通知があるまで、異次元研究部門、時間異常部門、異次元研究規制部門、現実性部門が優先事項として扱うものとします。
SCP-7881の収容、及びそれが及ぼす影響の軽減は、現実部門において最優先事項として扱われます。
説明: SCP-7881-Aは財団上級研究員ゼカリヤ・マクシムシキン博士の遺体です。SCP-7881-A表面の半分強を占める移動領域は異常に大きい範囲の電磁波(可視光の86%を含む)を吸収し、残り半分は地球の太陽と極めて類似した特性の電磁波を放出します。これらの領域は、SCP-7881-Aの中心点を基準として、縦軸に対して約23°の傾斜角で回転しています。SCP-7881-Aの皮膚は、1時間あたり約90kg(約200ポンド)の、大気と組成が同一の気体を放出します。SCP-7881-Bに指定される微小な擬物理的実体の集合領域が、SCP-7881-Aを取り囲み、内部にも浸透しています。
SCP-7881-Bは非物質的な不定形実体であり、通常大きさは10-300μmの範囲で変動していますが、その変形に有意なパターンは認められません。発見当初は、SCP-7881-A 周辺の領域を構成する SCP-7881-B は推定 20 億個体存在しました。2023年1月31日現在、その数は推定 4,000 個体まで減少しています。SCP-7881-Bは物質的に有害であり、接近、または接触すると予測不可能な物理的影響を発生させます。SCP-7881-Bの99.99999%が、現実性部門の具現化された仮構実体Instantiated Hypothetical Entities(IHE)に関する暫定的定義に該当すると推定されています。2 [データ削除済]
SCP-7881-Aは、2020年4月2日、現行タイムライン(TL-0016)と宇宙-81057A(以下、これをSCP-7881-Cと呼称します)との間で事前に予測されていた超物理的な衝突と同時に、異常な特性を示し始めました。SCP-7881-Cの存在は、2016年3月13日に施設-57のピアース=バスケス=アレイ3による超次元共鳴スキャンにより最初に特定され、その後間もなく、現行宇宙に向けて相対的に加速しながら移動していることが判明しました。4
SCP-7881-Cとの全宇宙的な衝突の際、財団が全世界で使用している次元外共鳴デバイス類は、安定的に検出することのできる宇宙間における超物理的距離の大部分にわたって、従来検出不能だった宇宙の異常な急速な出現と消失を発見しました。5この現象は、現行宇宙を起点とする超物理的波動として伝播したように観察されました。この「次元外インスタンス波」6は年間41SUUの速度で移動し、2021年5月1日以前に検知可能範囲から脱しました。共鳴デバイス類は、可視化された全超位置におけるそれら宇宙のシグネチャー濃度が次元外撮像機の解像度を超過したため、その数を計測できませんでした。
衝突以後、SCP-7881-Cは静止状態にあります。現在、SCP-7881-Cは全宇宙表面において、あらゆる利用可能な宇宙外スキャン及び共鳴マッピング手法に対して立体角202°の円形領域を遮蔽しています。
収容記録: 2017年10月以降、SCP-7881-Cは2020年4月2日に現行宇宙およびタイムラインと超物理的に衝突すると予測されていました。財団の上級研究責任者、サイト管理官、次元分野の研究者、次元外製図者の大半は警戒態勢に入り、4月2日に発生する未知の異常活動への対応を指示されました。
2020年3月22日、ゼカリヤ・マクシムシキン博士はサイト-300軍用奇跡論プロジェクトの研究責任者に任命されました。「直喩計画Project: Simile」はマクシムシキン博士を含む複数の研究者による共同提案であり、サイト-300部門長マシュー・チェン博士により承認されました。この計画は以前に上梓された研究において概説された原理に基づきます。7
3月25日、マクシムシキン博士のセキュリティクリアランスレベルがレベル2から3に引き上げられました。彼はサイト300-14研究棟のE223号室に配属され、3月26日から28日にかけて、同室へ私物・業務用物品その他を移送しました。
4月2日21時40分(UTC+7)、マクシムシキン博士は自室のコンピューターを用いて、サイト300-14の空想科学的共鳴装置Pataphysical Sympathy Engine(PSE)を直ちに起動するよう要請しました。この要請は21時56分にサイト技術者によって受理され、PSEは起動シーケンスを開始しました。
22時01分、SCP-7881-Cが現行宇宙にはじめて衝突しました。同時に、サイト300-14の警報が奇跡術的防護装置によって作動し、研究棟では一連の電気的異常及びヒュームの急増が発生しました。8 サイト職員は研究部門における収容違反の可能性の通報を受け、常設部隊Stationary Task Force(STF)ラムダ-12が種々の異常の震源地へ派遣されました。
この際、SCP-7881-B(推定2,100~2,300個体)がサイト-300-14内外に拡散し、同サイトに配備されていた複数の機動部隊がそれらの識別・無力化のため出動しました。サイト内の大半の個体は数分以内に自然消滅したとみられています。1,800体以上の個体が、サイト内で奇跡術的・存在力学的システムにより無力化されたことが確認されました。その後3日間で、機動部隊により300体以上の無力化が確認されました。不明な数のSCP-7881-Bが全ての収容措置を逃れました。
STFラムダ-12は、マクシムシキン博士の執務室を異常な気圧及び放射能測定値の発生源と特定し、SCP-7881-Aとはじめて接触しました。エージェント・クフシノフはSCP-7881-Aと口頭で会話し、当該実体は自らをゼカリヤ・マクシムシキン博士であると述べました。
22時26分、サイト300-14のPSEが完全に作動し、文書PS0278の出力が開始されました。
22時30分までに、サイト300-14研究棟におけるヒューム測定値は安定し、異常な電力サージは停止しました。
SCP-7881-Aへのインタビューは、2020年4月3日から4月10日にかけて実施されました。
SCP-7881-Aの生命の徴候は2020年4月11日に停止し、外的な分析により、その死因は放射線中毒と診断されました。SCP-7881の異常性は保持されました。
文書PS0278
以下は、2020年4月2日付のSite-300-14 PSE Mk. 2からの主要ログ出力です。括弧内の語句群は、エンジンが70%以上の信頼度評価に達できなかった概念を示しています。
落下
曲芸
罪禍
[穴/トンネル]
接続
窃盗
単独の陰謀
可能性あり
無限の陰謀
針の頭に奴隷化された百万の[天使/悪魔]
[天使/悪魔]の頭に存在する百万の[場所/世界]
可能性あり
征服
可能性あり
権力
可能性あり
[場所/世界]
可能性あり
可能性あり
落下
落下
落下
(反復パターン検出。PSE解除。ログ終了。)
インタビュー抜粋:SCP-7881-A
インタビュー記録 7881-01
対象: SCP-7881-A(インタビュアーはマクシムシキン博士と呼称している)
インタビュアー: エレナ・キース博士
序文: SCP-7881-Aに異常性が発現したのち、初期識別及び収容のため、常設部隊ラムダ-12が現場へ派遣されました。エージェント・ニキティンによる最初の報告の提出ののち、エレナ・キース博士がSCP-7881-Aへの聴取を担当することになりました。本インタビューは双方向音声システムを介して実施され、今後の全てのインタビューも同様の方式で行われます。
<記録開始, 2020/4/3,10:50より録音開始>
[SCP-7881-Aの音声デバイスからは風の音が確認される。]
キース博士: もしもし。聞こえますか、博士?
SCP-7881-A: [うめき声]
キース博士: スピーカーからこちらの声が聞こえるなら、記録のため自らの名前を述べてください。
SCP-7881-A: ああ、済まない。ええと、私はゼカリヤ・マクシムシキンだ。1978年3月24日生まれ。博士号取得。サイト300で勤務していた───少なくとも以前は。申し訳ない、ずっと…糞詰まりって感じでね。あれからどれくらい経ったんだ?
キース博士: どれくらい経ったか、ですか? 12時間か、14時間くらいでしょうか。まだあなたのオフィスに時計はありますか? 確認できますか?
SCP-7881-A: ああ、ああ。見えるよ。こう日が射してなきゃ見えるんだがね。老眼なもので。
SCP-7881-A: ああ、ああ。見えるよ。こう日が射してなきゃ見えるんだがね。老眼なもので。
キース博士: 博士、ご自身に何が起きているのか分かりますか?今、何が起こっているのですか?
SCP-7881-A: 私を収容しようとしてるんだろう?檻を準備しているんだ、それが君たちの役目だ。もうオブジェクト番号は付いたのか?
キース博士: いいえ───そうならないことを願っています、博士。自分に何が起きているのかわかりますか? あなたに影響を与えているこの異常現象の本質について、何か理解していることはありますか?
SCP-7881-A: [発声] 勿論知っている。それが今の私の全てだ。そうである、と自分でさえ思う。
キース博士: 博士自身の手によってこの状況が生じたのですか?何をしたんですか?
SCP-7881-A: 私がやったわけじゃない… [うめき声] ただ思いついただけだ。奴らが私にやった。だが、最早奴らも私もその一部だ。私の全てが。何もかもが見える。無数の目で世界を見ている。目を閉じていてさえ。[うめき声、罵声] 太陽が目の中に!
キース博士: 博士、もしあなたに起きている現象を自ら引き起こしたのなら……それは解雇事由に値します。博士、多元宇宙イメージングで検出されたものについて何か知っていますか?次元間研究が何を観測しているかについては?
SCP-7881-A: 解雇、実験、生体解剖。私が見ているものを君にも見せてやりたいね。君がけっして感じることのないこれを。私は決して…中国で太陽が昇っている。それは幻huànだ。週末になるとどれだけ気分がいいか解るかい? [うめき声]
キース博士: 博士、あなたは重大な財団規則違反を犯したようです───もしそれが宇宙地図と関係しているなら、あなたは全宇宙に影響を与えたんですよ。影響の全容は未解明です。聞こえていますか?
SCP-7881-A: ああ。聞こえている。理解している。[笑い] 見くびるなよ。
キース博士:あなたはふたつの宇宙を破壊した、と?
SCP-7881-A: [哄笑]
キース博士:インタビューを終了します。収容セルでの生活を楽しむことですね。
SCP-7881-A: [笑い、うめき声] そうするとも。
<記録終了、2020/4/3,10:56>
インタビュー記録 7881-08
対象: SCP-7881-A(インタビュアーにより暫定分類名SCP-7881として呼称されています)
インタビュアー: ルジア・ニキティン博士
序文: SCP-7881-Aは身体的健康状態の悪化の兆候を示しています。SCP-7881-Bが支援スタッフに及ぼす危険な影響のため、医療処置は制限されています。
<記録開始、2020/4/6,22:25より録音開始>
[OCユニット-10内で人工呼吸器の音が聞こえる。]
ニキティン博士: こんにちは、SCP-7881。あなたの健康状態について話したいんですが。
SCP-7881-A: え? ああ。//[うめき声、悪態] //気分が悪い、ただ眠りたい。それでいいだろう。
ニキティン博士: いえ、我々はあなたを健康に保つ義務があります。しかしながら、あなたの周囲に存在する領域場により、医療評価、および治療がたいへん困難になっています。その領域場を弱めたり、 それらの実体をなんらか制御することは可能ですか?
SCP-7881-A: 領域場…実体ってのは…ああ、成程。解らん。多分無理だろう。やつらは消えた、そしてここでは、存在していないのと同じだ。
ニキティン博士: どういう意味です?明らかに領域はまだあなたを取り巻いているようですけれど。
SCP-7881-A: ああ、つまり、ここの中ではな。以前はやつらと話せたけど、今は無理だ。そもそもやつらは、ここで自分を制御しようとも思っていないと思う───仮にできたとしても。でも向こう側では違うんだ。大半はもう地球にいない、去ったんだよ。残りは今や人間になったり、動物になったり、植物になったりしている。
ニキティン博士: なるほど。つまり彼らは別世界へ逃れたんですね。あなたが関与することになったそれへ。彼らがどこから来たのか、あなたがいつ異常存在と化したのかについて教えてくれますか?
SCP-7881-A: ここにいるのは辛い。私の半分は凍えるほど冷たく、もう半分は燃えるように熱い。もう二度と太陽を見ることはない───自分の皮膚の上を除いてはね。治してくれなくていいとも、ただ眠りにつくだけでいいんだ。
ニキティン博士: SCP-7881、去っていった存在とは?それらはどこから来たのですか?
SCP-7881-A: 話したくない。眠らせてくれ。
ニキティン博士: 答えてください、SCP-7881。答えさえすれば寝かせてあげますとも。その存在はどこから来て、そして何だったのですか?
SCP-7881-A: は…彼らは私だった。私になり得た存在だ。彼らは仕事を成し遂げた。私にそうした。彼らに会いたい。
ニキティン博士: ありがとう。それで、今回の件以前に彼らは存在していたんですか?
SCP-7881-A: そう思う。仮説上はね。[笑い]
ニキティン博士: わかりました、7881。理解できたと思います。ただ、あなたが自らこれを引き起こしたのではない、という主張だけは信じ難い。何故こんなことに及んだんです?
SCP-7881-A: 私がじゃない。やつらの一人が私にやったんだ。
ニキティン博士: へえ、それは実に虫のいい話ですね。つまり大本はあなたの提案であって、あなたの行動がわたしたちからすると宇宙を飲み込もうとしているように見えるとしても、あなたを責めるべきではないと?それが、君とあの物体を分離すべきではない理由だと?君の魔法の縫合糸を引っ張り始めるべきではないのは…
SCP-7881-A: 無駄だ。
ニキティン博士: なるほど、考えていたと。どれくらい前からそうしていたのですか?
SCP-7881-A:// [うめき声]// 止めろ。//[うめき声、罵声] //わかった。長い間だ。これが私の最初のプロジェクト案だったんだ。
ニキティン博士: それだけですか、その前は如何?直喩計画以前は?ただ別の宇宙を弄びたかっただけですか?プロジェクト監督官への説明から逃げた結果、こんなことになったとでも?
SCP-7881-A: [うめき声] 痛い。やつらは他の誰かにやらせたはずだ。取るに足らない誰かだ。Dクラスか、おべっか使いか、// [罵声] //クローンだ。これは私のアイデアだ。私のためのものだった。私が勝ち取ったんだ、私の血で代償を払ってな!
ニキティン博士: 違う、あなたは代償を払ってなどいません。
SCP-7881-A:: そうは思わんね、博士。世界中の誰だってそうするさ。
ニキティン博士: あなたの行動が、宇宙そのものを贖えるようなことであったはずがないでしょう。
SCP-7881-A: [笑い] 分からないのか? 私は宇宙そのものだ。このためにやったんだ。より偉大な存在となり、私より前には誰も成しえなかったようなやり方で世界を眺めるために。全てを一望したかった、そして今それが叶った。ここにいる誰もかもが私だ。お前には解らないだろうが、今の私は絶大だ。私の魂は宇宙そのものだ。
ニキティン博士: あなたの研究は連想についてでしたね?非物理的、間接的、超物理的な。さて、あなたは今や惑星のように輝いています。つまり、それがあなたの成し遂げたこと、ですか?
SCP-7881-A: さっき言ったろう。私は今、あまねく世界に遍在している。地球は私の皮膚でしかない。それそのものも愉快だが、私はもっと多くのものを感じ取れていて、はるか遠くまで広がっている。世界は闇と光に満ち溢れているが、恐ろしいものなんてない。全てが私の一部だ。それは…正しいと感じる。博士、私がこの計画にどんな名前を付けたか知りたいか?
ニキティン博士: [呟き] 結構です。あなたによる命名になど興味はありません。あなたが何をしたかと、必要なものがあるかどうかが知りたかっただけです。もし体調が悪くなり始めたら、あなたの発言は全て記録され、聴取されていることを忘れないように。
SCP-7881-A: 博士、私がプロジェクト:ゴッドヘッドだ。
ニキティン博士: インタビューを終了します、7881。
SCP-7881-A: [哄笑]
<記録終了、22:33、2020/4/6>
インタビュー記録 7881-26
対象:SCP-7881-A
インタビュアー: ルジア・ニキティン博士
序文: SCP-7881-Aの健康状態は収容期間中に急速に悪化しています。主な原因は、職員が安全に治療を提供できないことです。SCP-7881-Aは声に出して治療を拒否し、自らが治療や接触を受けることのないよう要求しています。また、面接の合間を縫ってあらゆる機会を利用して眠ろうとしています。
<記録開始、2020/4/10 15:15より録音開始>
[本記録の一部は、官話系統の中国語方言及び黄金世紀スペイン語から翻訳されている。]
[OCユニット1-0内で人工呼吸器の作動音が確認される。]
ニキティン博士: こんにちは、SCP-7881-A。話したいことがあります。気分はどうですか、聞こえますか?
SCP-7881-A: [中国語で] 何?どなたの声なのかしら?ここはどこ?
ニキティン博士: [発声] SCP-7881-A、聞こえていますか?私が何を言っているかわかりますか?
SCP-7881-A: [スペイン語で] 何故私は、こんなものを覚えているんでしょう?神よ、なぜこれほどの痛みを私に与え給うのですか? [発声]
ニキティン博士: ゼカリヤ!大丈夫か?
SCP-7881-A: ああ、それだ。 [うめき声]
ニキティン博士: それ、とは?
SCP-7881-A: いや、何でもないとも。ただ、私がここにいないときは、私は他の連中で在る、というだけだ。心配することはない。元気だよ。普通さ。
ニキティン博士: そのざまで、ご自分では正常だとでも?
SCP-7881-A: [笑い声]最高に気分がいいね。 [うめき声、罵声] 私の目! [罵声] 寝かせてくれなかったなあ!忘れさせてくれなかった。
ニキティン博士: いや、博士、あなたはまだ報いから逃れられてはいなません。本当に忘れたいと?神格存在に成り果てたと思っていましたが。
SCP-7881-A: [うめき声] 私のもとにはもう何もない。
ニキティン博士: 無理を言わないでください、SCP-7881-A。その主張には承服できかねます。財団はそうできないし、ゆえに私もできません。
SCP-7881-A: 私はとっくに自由だ。ここに居る必要はない。
ニキティン博士: ですが現にあなたはここにいますよ、7881。どこにも行けやしません。
SCP-7881-A: 私はどこにでもいる。
ニキティン博士: そうですか、それは結構。ともあれ、あなたがここにいるうちに、あなたの仮説とやらについて聞かせてください。以前、私が質問がある、と言ったのは聞いていましたか?
SCP-7881-A: [喘鳴]
ニキティン博士: なるほど。あなたが、自身を収容下に置くに至らしめるような「特性」を示す前には、他の実体は仮説上の存在だったということですか?
SCP-7881-A: そんなことは言っていないと思うが。
ニキティン博士:いや、あなたの発言について検討しているんです。あなたはあれらが「仮説的に存在していた」と言い、その後嗤いましたね。もう、わたしたちはあなたが何を意図していたかが解ります。あなたが何をし、その力をどこから得たのかも。仮説的空間から引き出したのですね?
SCP-7881-A: [発声] それは正しくない。
ニキティン博士: そうかもしれません。ですが、結局のところあなたはそれを実行し、成功させました。そうでしょう? ねえ博士、ゼカリヤと呼んでもいいですか? 7881、まだ終わっていませんよ。あなたは、いずれ全てを呑み込むような孔を開けました───もっとも、あなたがそれまで永らえる余地はなさそうですがね。
SCP-7881-A: お前は何もわかっていない。
ニキティン博士: まあ、あなたは間違いなくすぐに死にます。それによって事態が急迫しなかったなら、わたしたちに残された時間は、あなたが我々を「仮説空間」───あなたが小さな手下どもを得た場所───に呪い落としたと示すのには十分です。残念ながら。奴らはあなたを殺し、今や我々全員を連れ戻そうとしています。それが全ての「ありえたかもしれないもの」の末路だと? いつまでもそうなっているとは思えませんが。
SCP-7881-A: いや、そうじゃない。[うめき声、笑い] 彼らは永遠にそうなる。我々こそ不安定な存在だ。「ありえたかもしれないもの」はいつまでも消えやしない。彼らは必ず戻ってくる、再びそうあるために。全ては無限の中に在る。
ニキティン博士: それは……無限とは何だと?
SCP-7881-A: [笑い声] 私は無限と話した。それは私よりも大きい。あらゆる可能性よりも大きい。かつて存在した全てのものよりも。本当に今そこへ向かっているのか?[笑い] それはいい。そこに何があるかは想像がつくだろう?
ニキティン博士: それそのものを想像不可能なのが無限の本質ではないのですか?
SCP-7881-A: 全体についてはそうだ。だがその一部は我々と等価だ。[うめき声] 我々は常にあり得た可能性の、あり得る結果に過ぎない。想像できるか?完璧な財団というものを。
ニキティン博士: 空想のごっこ遊びは勘弁してください。
SCP-7881-A: [うめき声] 彼らはそこにいる。あらゆるものの奥底で、あらゆるものと戦い、あらゆるものを収容している。もちろん仮説的にだが。
ニキティン博士: なるほど。存在論的に考えていると。
SCP-7881-A: 私は明晰に思考している。[うめき声]
ニキティン博士: とはいえ、都合の良いように想像しているだけに思えますが。
SCP-7881-A: 何を… …[うめき声] 想像力とは、無限の中にありえない断片を見つけることではないのか?それらは全て、どこかに存在しているのではないか?見つかるのを待っているのではないか? [笑い声]
ニキティン博士: わかりました、7881。今日これ以上話す気にはなれません。何分かしたら、維持管理班が収容セルについて話しに来ます。
SCP-7881-A: [発声] やっと興が乗ってきたところなんだがな。
ニキティン博士: 研究者の誰かしらが興味を持つに違いありません。そうしたら、あなたが他に何を言い得たか想像力を掻き立てられるでしょうね。[笑い]
SCP-7881-A: [うめき声]
ニキティン博士: 痛みはありますか?
SCP-7881-A: ああ、当然。何ヶ月もずっと。
ニキティン博士: 来るのに一週間もかかってしまい、申し訳ありませんでした。
SCP-7881-A: [うめき声]いいさ。私はここにいなくてもいいんだ。さようなら、ルジア。
ニキティン博士: さようなら、ゼカリヤ。
<記録終了、2020/4/10 15:32>
現実性部門長によるクリアランスレベル4職員への警告
財団の全幹部職員各位
たいへん遺憾ながら、我々は宇宙規模の異常現象を目前にしていることをご報告せねばなりません。3日以内に、我々の宇宙、我らが母星はAZK-クラス「普遍的非現実化」シナリオを経験することになります。この阻止が現実性部門設立の理由でしたが、わたしたちは失敗しました。皆様には心よりお詫び申し上げます。しかし、遍く降りかかる悲劇の規模を考えれば、いかなる謝罪であれ不十分ではないかと思われます。世界の一端、宇宙の一単位に過ぎない私たちには、きっとこの失敗に相応しい感情を抱き表現することすらできません。
この事象は、宇宙の終焉や、我々が知る生命の終わりを意味するものではないことを理解してください。これが意味するのは、並行現実というより大きな構造において、我々の居場所が不確実となり、未来の可能性が計り知れないほど無限に広がるということです。AZK-クラスシナリオとは、我々の宇宙の状態と位置が、比較的に現実性を帯びたものから比較的に仮説性を帯びたものへと変化することを指します。
これまで我々が知っていたのは、高々数千種の現実が存在する局所的な集団の中にある、単一で測定可能な場所における安定した現実でした。我々の前にあった未来は(最良の場合で)一つだけでした。当該シナリオ以後、我々は激動する無限の現実群の中の一つの現実となり、宇宙のあらゆる可能な状態と、あらゆる他の可能な宇宙とのあらゆる可能な相互作用を包含する無限の未来を生み出すことになります。
宇宙がどれほど仮説的な存在になろうとも、私たちの周囲の全てはこれまでと変わらず現実であり続け、私たちはそれぞれ生き続けます。地球はこれからも回り、私たちの宇宙は存在し続けます。財団は、常にそうしてきたように、未知で危険な存在から私たちを収容、確保、保護しようとするでしょう。
我々すべてが無限に連なる因果の連鎖の一つを占めることになり、それが他のあらゆる可能性と同等に「現実的」であるとしても、それは自由意志の終焉を意味するわけではなく、何もしないことの言い訳にもなりません。我々はともに存在し続け、わたしたち相互の義務は自らそれを維持する限り、現実のものであるでしょう。楽観的に言うならば、我々は常に、文字通り最高の自己を実現する真の可能性をだれもが持つことになります。
あらゆる事物が非現実化されるまでは、我々を待ち受ける仮説的な未来がどのようなものかを知るのは単に不可能です。それまでの間、共に成長できる最後のモラトリアムをどうか楽しんでください。事が終われば、我々は新たな研究を開始し、そして以前のそれも継続するでしょう。最終的に起こりうることは必ず起こるのです。つまり、私たちの一部はそうなるでしょう。しかし少なくとも、私たちの過去が単なる仮説的なそれ以上のものであったことは理解できるはずです。
皆様のご健勝と幸運を祈ります。ごきげんよう。
現実性部門長
ルジア・ニキティン博士(PhD)


