特別収容プロトコル
SCP-7889-1実例群はサイト-97の安全な保管ロッカーに収容されます。
説明
SCP-7889はサイト-97にあるピーターソン博士の執務室に影響する異常現象です。毎日のおよそ11:59 AM、“愉快に死ね”Die FunnyというタイトルのDVD1枚、以下SCP-7889-1実例が、以下のメモを伴なってピーターソン博士の執務室に出現します。
拝啓、ピーターソン博士
あなたが落ち込んでいると聞いたので、私たちのチームが作った中で最も面白い映画の1つを贈ることにしました。あなたのお気に入りの俳優が全員出演していますし、きっとお楽しみいただけますよ。素敵な時間をお過ごしください!
敬具、
ヴィキャンデル=ニードの友人たちより
SCP-7889-1は表向き、ジョン・トラボルタとダニー・デヴィート主演のアクションコメディ映画とされており、GoI-5889 ("ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディア") が制作・配給しています1。SCP-7889-1はピーターソン博士を除く全ての視聴者に極めて強力な反ミーム効果を発揮します。
発見
SCP-7889は2022/10/4、ピーターソン博士によって最初に発見されました。しかしながら、彼はこれを報告せず、着実に増え続けるSCP-7889-1実例を文鎮代わりに使用するか、もしくはデスクに仕舞い込んでいました。
SCP-7889は2023/3/2、サミュエル・ゴールド博士によって思いがけず発見されました。ゴールド博士はその後、財団への報告をピーターソン博士に強要しました。
発見ログ
日付: 2023/3/2
対象者: ピーターソン博士、ゴールド博士
[抜粋開始]
ピーターソン博士とゴールド博士は、ピーターソン博士の執務室に座ってテレビ番組の話をしている。突然、1枚のSCP-7889-1実例がピーターソン博士のデスクに出現する。
ゴールド博士: ジャック、こりゃ何だ?
ピーターソン博士: ああ、何でもないよ。
ゴールド博士: ジャック、これはどこからともなくデスクの上に現れたんだぞ。
ピーターソン博士: いや…
ゴールド博士: 前にも同じ事があったのか?
ピーターソン博士: しばらく前からかな。大した事じゃないと思ったんだ。
ゴールド博士はデスクに歩み寄り、SCP-7889-1実例を調べる。
ゴールド博士: “敬具、ヴィキャンデル=ニードの友人たちより”。ジャック、お前だってVKTM絡みのブツは必ず報告しなきゃダメだと分かってるだろうが。いったい何故これを隠してた?
ピーターソン博士: VKTMのテープを観ても良い事は何一つ起こらないからだよ。
ゴールド博士: それが職務怠慢の言い訳かよ?
ピーターソン博士: VKTMの良いアノマリーを1つ挙げてみろ。待つから。
ゴールド博士は考え込む。
ゴールド博士: うーん、サイト-43のリリハンメルは随分と楽しい思いをしたようだぞ。
ピーターソン博士: じゃあ、神様とセックスできるチャンスがあるから危険なアノマリーに我が身を曝け出せってか?
ゴールド博士: そうは言ってない… いや、今の例だとまさにそういう意味になるな。まぁお前の言い分も分かるよ。
ピーターソン博士: それだけじゃないぞ。奴らは質の良いメディアすら作らないじゃないか。VKTMのテープなんか観る理由が無い。
ゴールド博士: まさかお前キレてるのか?
ピーターソン博士: 俺は真剣だぞ。奴らの社会論評ごっこはデタラメもいいところだ。“どうですか、私たちは資本主義を風刺してますよ!” バーカ! お前らがやってる事は全く特別じゃないんだよ! いいか、奴らが未だに営業してられる唯一の、たった一つの理由はNFTの流行に便乗して儲けたからだ!
ゴールド博士: 言いたい事は伝わってきた気がする。
ピーターソン博士: いやいや、まだだ。VKTMのテープを観るべき正当な理由がないことを示す他幾つもの根拠をまだ取り上げてすらいない。
ゴールド博士: でもこれは上に報告しとくから。
ピーターソン博士: マジかよ、サム?
ゴールド博士: そこまで酷くはないと思うぞ。
[抜粋終了]
実験7889.07
Dクラス職員による試験の結果、問題の映画は極めて強い反ミーム特性を帯びており、かつ明白な情報災害性はないことが、ウォズニー=ライネス式ミーム検出器によって断定されました。ピーターソン博士との潜在的な関連性、並びに彼の高い認知抵抗値を踏まえて、ピーターソン博士にSCP-7889の被験者を務めさせることになりました。
実験ログ
日付: 2023/3/4
被験者: ピーターソン博士、ゴールド博士
[抜粋開始]
ピーターソン博士とゴールド博士は試験室で着席しており、彼らの正面にテレビがある。SCP-7889-1実例がテレビに挿入されている。映画は00.01時点で一時停止されている。
ピーターソン博士: お前のせいだぞ。
ゴールド博士 いいからやれ。
ピーターソン博士: 分かったよ。
ピーターソン博士は映画の一時停止を解除する。画面にヴィキャンデル=ニードのロゴマークが表示され、静かなクラシック音楽が流れる。突然、音楽が大音量のロックンロールに変わり、巨大な文字が高速で画面前方に向かって飛来する。唐突な曲調の変化に驚き、ピーターソン博士が倒れ込む。文字は“FUCK YOU JACK”と読める。
未知の男性の声: (テレビから) 私たちヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディアは“VKTMのテープを観ても良い事は何一つ起こらない”などという誹謗中傷を歓迎いたしません。教訓を学んでいただければ幸いであります。
テレビの電源が自動的に切れる。
[抜粋終了]
追記: ピーターソン博士は娯楽メディアを視聴することが不可能になった。あらゆる試みは、彼がそのメディアをヴィキャンデル=ニード製品の広告として知覚する結果に終わっている。
事案7889.01
2023/3/14、ピーターソン博士は前回の実験結果を動機として、無許可でSCP-7889-1の実験を実施しました。
実験ログ
日付: 2023/3/14
被験者: ピーターソン博士
[抜粋開始]
ピーターソン博士はテレビの前に座っている。画面は実験7889-07の終了時と同一である。ピーターソン博士は非常に動揺しているように見受けられる。
ピーターソン博士: 悪かったって言ったじゃないか。俺にこれ以上何を望んでる?
テレビは反応しない。
ピーターソン博士: なぁ? “ベター・コール・ソウル”を最後まで観させてくれよ。
テレビは反応しない。
ピーターソン博士: お願いだからさ? あの言葉は取り消す! お前らはそこまで悪くない! “ミスフォーチュン・ゴージ”は爆笑ものだった! 頼むよVKTM、もう二度とあんな事言わない。本当に悪かった。
テレビは反応しない。
ピーターソン博士: 最後にもう一度だけチャンスをくれよ。
画面上の文字が“FINE” (よかろう) に変化する。突然、映像の内容は一般的な映画らしきものに変わる。ピーターソン博士は着席し、映画を視聴し始める。
当初は不安げだったものの、ピーターソン博士は徐々に映画に熱中し、コメントし始める。
ピーターソン博士: (笑う) こいつは結構面白いじゃないか。
[抜粋終了]
追記: ピーターソン博士は映画の具体的内容に関するコメントを拒んだが、“五つ星”だと評価した。ヴィキャンデル=ニードのスポークスマンは、ピーターソン博士が“赦された”と説明した。