SCP-7933
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59-デウカリオーン・チームより通達

SCP-7933が引き起こしたØK-クラス芸術的特異点事象が進行中であるため、当記事には潜在的な物語性のスクリーニング検査が行われました。当記事に対するSCP-7933汚染の恐れは23%と判定されました。慎重に読み進めてください。

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完全に汚染されたVHSテープ形式のSCP-7933実例のタイトルカード。

いや、まだ物語を持ち続けることはできる。例えばこのように。
アイテム番号: SCP-7933
昔々ある所に、沢山の猿がいた。
オブジェクトクラス: Keter
彼らは東方にとても重要な用事があった。
特別収容プロトコル: 2025/1/25に汚染率の閾値を超えて以来、SCP-7933は既に収容不可能です。現在、発生したØK-クラス芸術的特異点事象は2030/12/23までに地球全体を包括すると考えられています。
そこで、彼らは皆、東へと向かった。
このため、収容の努力は非常事態59-デウカリオーン及び59-ピュラーへと転換されました。
旅路は長く、過酷だった。
非常事態59-デウカリオーンに配属された職員は、SCP-7933の影響に対して脆弱な人類の芸術文化を、SCPSデウカリオーン1の最大積載量で許容される限り多く収集します。SCPSデウカリオーンは武装収容エリア-0005で待機します。最大積載量に達した後、SCPSデウカリオーンは最も近い隣接並行世界に無人操縦で送り込まれます。
しかし、そこから事態は複雑になった。
搭載されたセンサーがSCPSデウカリオーンの船内におけるSCP-7933汚染を検知した場合は、例えそれが最小限であっても、船内の核弾頭が起爆されます。この時点で、それ以上の保全の取り組みは放棄されます。
無毛猿たちは、有毛猿たちの進路に、自分たちの宝を落とし続けた。
非常事態59-ピュラーに配属された職員は、人類をSCP-7933の影響に順応させることに注力します。これは主に記憶処理によって行われます。
無毛猿たちはそんな事が起きているとは知る由も無かった。
説明: SCP-7933は起源不明の自己複製する物語性伝染現象です。2023年に発見された当時、SCP-7933はVHSテープにのみ影響すると考えられていました。実験の結果、SCP-7933は始まり、中間、終わりがある物語を含有する限り、あらゆる形態のデータストレージに感染することが判明しました — ここには書籍、音声ファイル、ライブパフォーマンスが含まれます。
これは無論、有毛猿たちが宝を砕かねばならないことを意味した。
SCP-7933に感染した実例が、まだ影響されていない物語の100m以内に接近すると、その物語は大幅に改変され、キャラクターが数百匹の激昂したマンドリル (Mandrillus sphinx) に虐殺される内容へと置き換えられます。
そして、それはもう酷いものだった。
媒体 影響
VHSテープの実写映画 物語中のランダムな時点で、マンドリルの群れが突然襲来し、登場人物を捕食・解体し始める。影響を受けたキャラクターは誰一人として自己防衛を試みず、最低限の抵抗だけを示す。ごく稀に、攻撃されたキャラクターはカメラを見つめ、「これは“いつ起きるか”の問題でしかなかった」または「猿でない私たちはこうなって当然だ」と発言する。
VHSテープのアニメ映画 ランダムな時点で、画面が突然フリーズする。その後、カメラ視点がずれて、凶暴なマンドリルに襲撃されている最中のアニメ制作スタジオを映す。
歌の.mp3録音 (注記: 物語性を含む、または暗示する内容の歌のみが影響を受ける。) ランダムな時点で、歌はマンドリルの襲撃を示す物音に中断される。
書籍 (フィクションか否かを問わず) 書籍は2つの章に分割される。第1章“猿が来る前の部分”は、本来の文章の1/3で構成される。第2章“猿が大勢来た部分”では、マンドリルの襲撃によって地球の全人口が殺戮され、マンドリルに取って代わられたことが簡潔に記述される。残りのページは白紙である。
生中継の報道番組 要5/7933クリアランス
SCP文書 要5/7933クリアランス
ウェブサイト 要5/7933クリアランス
絵画、視覚芸術、写真 数匹のマンドリルが左から右に向かって砂漠を歩く同一の画像に変化する。
秘めた思考 研究進行中

だが残念ながら、有毛猿たちは生来の戦士だった。
影響を受けた動画を最初から再生すると、“おさるのおーだん”munky x-ingというタイトルカードから始まる10分間の映画が流れます。この映画では、4,920匹2のマンドリルが画面を左から右に歩いて横断します。背景は様々ですが、通常は砂漠か、SCP-7933汚染前の映画の1シーンに類似します。改めて再生した場合の音声ファイルは、数百匹のマンドリルの呼吸を除いては無音です。
それに、猿たちの東方での秘密の仕事はそれだけ重要だった。
SCP-7933の伝播を放置した場合、ØK-クラス芸術的特異点シナリオが引き起こされると考えられています。
破壊されているものには大いに価値があったので、無毛猿たちは腹を立てた。

補遺1 - 事案-7933-859

だが、有毛猿たちには釈明する手段が無かった。
2024/5/5、SCP-7933物語パンデミックの第1波の最中に、シカゴ・リリック・オペラが開催した戯曲“リゴレット”の公演が、第1幕の途中で突然、オーケストラ演奏無しで歌われる新曲に中断されました。台本や楽譜も影響を受けていたものの、演者たちはそれまで問題の場面のリハーサルを行っていませんでした。
なので、無毛猿たちからすれば、それは無慈悲な行為としか思えなかった。
実際のマンドリルは戯曲に登場しなかった点に留意してください。マンドリルの襲撃に対する肉体的な反応は全てパントマイムでした。
そして、我々の部族の最後の賢者である私は、理解を求めて最後の一押しをした…

台本からの異常変化した部分の抜粋 (イタリア語から翻訳)

マルッロ: 大変な知らせだ! 大変な知らせだぞ!

合唱: いったいどうした? 教えてくれ。

マルッロ: これを聞けばきっと驚くぞ!

合唱、ボルサ: 教えてくれ、教えてくれ。

マルッロ: あぁ! あぁ! リゴレットが…

(突然、身なりの乱れたリゴレットが登場する。)

マルッロ: 静かに! 奴のいる場では話せない。

合唱: リゴレットだ! なんと怯えた顔付きか…

リゴレット: 神よ、俺たちをお救いください!

マルッロ: 道化ごときに神の何が分かるというのだ?

リゴレット: 奴らが迫ってくる! 猿どもだ!

公爵: 哀れな道化に慈悲を、ついに狂ってしまったか。私の邸に猿などおらぬわ。

マルッロ: この道化は鏡を見たのかもしれませんぞ!

合唱、ボルサ: ハハハ! 大した冗談だ! ハハハ!

リゴレット: 見ろ!

(誰もが猿たちを目にする。)

合唱: なんという恐怖! 猿だ!

公爵: 猿どもが駆け足で私の喉に飛び掛かる! 見よ、私の首から血が噴水のように流れ出る有様を! おお、私は死につつある。死ぬというのは廷臣たちの妻を寝取る時よりも気分が悪くなる。しかし悲しいかな、今やそれが私の為す事だ。なんという無情! 私は大いに死んでいる。

合唱: 猿だ、猿だ!

リゴレット: 奴らがまたしても俺を咬む! 俺は死ぬ!

合唱: 猿だ、猿だ!

マルッロ: 私もまた猿どもに両腕を引き千切られている。

合唱: 猿だ、猿だ!今や誰もが死んでいる。

(全員死ぬ。終幕。)

だが、それで何ができただろうか?
公演に続いて、演者全員が昏睡状態に陥りました。ジルダ役の女優のみが救命の試みに反応し、イタリア語で“猿に心臓を引き裂かれたから動けない”と主張しました。
私の言葉が届いたとしても、お前たちはそれを受け入れるだろうか?

補遺2 - SCP-7933に関する管理者の覚え書き (改訂版)

私にも失われたものの価値は分かるとも。


お前たちの落ち度でないのは理解している。

SCP-7933を生き延びることはできる。それ自体には希望が持てる。

(…そして勿論、分かってくれるだろうが、私はあの長ったらしい声明をまた一から全部書き直すような気分ではない。短くまとめればどうにかなるようだ — 少なくとも、今のところは。)

幸運を祈る。君たちにはそれが必要だ。

— 管理者

しかし同様に、我々の落ち度でもない。

恐らく、我々2つの部族は相容れぬものなのだろう。

ともあれ、重い心で私はお前に告げねばならない。

この文書とその中の全ては猿に食べられた、と。

そして、これを私の最後の切実な訴えだと取ってほしい。

いい加減に空気を読んで、

我々が通る道を空けろ。

東方に向かって、

さぁ、旅立ちの時だ…

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