クレジット
タイトル: SCP-7973 - 異常化
翻訳責任者: Tetsu1
翻訳年: 2025
著作権者: TroutMaskReplica
原題: Abnormalization
作成年: 2023
初訳時参照リビジョン: 22
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7973
| Umbra: アイテムは異常現象の発生に直接影響します。 |
| Erloschen: 現実に大きな変化を引き起こしえます。しかし、ヴェール状況の変化により、これらの影響は正常と見做されます。 |
特別収容プロトコル
現時点でSCP-7973は収容不可能であり、今後も収容は達成不可能な可能性が高いと考えられます。SCP-7973の包括的な理解が達成されるまで、異常現象を正常化する取り組みは追って通知があるまで継続されます。
説明
SCP-7973は異常現象が体系的に減少する現象です。この現象は、異常を一般社会から隠蔽・隔離する形而上学的障壁であるヴェールが完全に崩壊した後に観察されています。
異常現象の減少は財団の管轄区域に留まらず、世界的に、潜在的にはそれ以上に広がっています。異常コミュニティのその他の組織や独立した研究者らの報告もこの傾向を裏付けています。検証データは、SCP-7973がその起源や性質によらずあらゆる既知のアノマリーに影響していることを示唆しています。
初期の理論では、ヴェール崩壊により異常実体の継続的な存在を担う根底の形而上学的メカニズムが破壊されたものと示唆されています。ヴェールは異常と非異常の均衡を保つ安定化の力として作用していたという仮説が立てられています。それが除去されたことで、異常現象は平衡状態に戻り、宇宙を支配する自然法則に従ったように思われます。
SCP-7973は、ヴェール消滅後に発見されたまたは発生したアノマリーにのみ影響し、SCP-7973以前に記録されたアノマリーには影響しません。この理由は現状不明です。現在のモデルでは、新たな異常現象の発生は2071年までに完全に停止するものと予測されています。
SCP-7973及び異常存在全般をより良く理解するため、財団はティアナ・マーク・ローザンヌ博士を派遣し、複数の異常研究者/関連人員に対しインタビューを実施させました。このインタビューはアノマリーの性質について更なる洞察を得ることを目的としていました。以下のログはこれらのインタビューの転写と、関連する背景情報です。
ギアーズ博士
インタビュー対象: ギアーズ博士
インタビュアー: ローザンヌ博士
前記: 以下のインタビューはヴェール消滅から数週間後に実施され、当時はSCP-7973は理論上の存在にすぎませんでした。ギアーズ博士は現時点で新たな異常現象の主任研究員であったため、彼が対象に選ばれました。
<記録開始>
ローザンヌ博士が部屋に入ってくる。彼女はギアーズ博士に手を振り、彼の前に座る。
ローザンヌ博士: こんにちは、ギアーズさん! 30歳以下にしか見えませんね!
ギアーズ博士: 誰ですか?
ローザンヌ博士は静かに立ち上がり、再開する。
ローザンヌ博士: ティアナ・マーク・ローザンヌですよ。博士で、インタビュアーで……
ギアーズ博士: 失礼しました、話で聞いたのと印象が違ったもので。
ローザンヌ博士: ご心配なく! それで、ともあれ、何故あなたをここまで引っ張ってきたか疑問に思われているでしょうが—
ギアーズ博士: いえ、理由はよく把握できていると思います。統計について何かおかしいと聞いたのですが。
ローザンヌ博士: 統計と言うならそうですね。記録のために詳しく述べさせてもらいますが、お気になさらず。
ギアーズ博士: どうぞ。
ローザンヌ博士: では—統計部門の人たちはあんまり…… 愉快な気持ちではありませんでした、わかると思いますが。彼らは毎週発生するたくさんのアノマリーを調査して、きっとそれが…… 更に急増するものと予想していました。ヴェールがなくなったからですね。
ギアーズ博士: 違ったのですか?
ローザンヌ博士: 全くもって! 減り始めていたんです。一応、大きくではありませんが、トップ層の方々はみんな通常より約0.005%の減少だと同意しました。確かに4週間といったら普通はデータとして不十分ですが、彼らはもう何年もこれとにらめっこしてきて、一貫して減少することなどありませんでした!
ギアーズ博士: ふむ、なるほど。
ローザンヌ博士: そこで、一つ重要な質問をします。「異常」とは何だと考えますか?
ギアーズ博士: そうですね、単純に言いますと、アノマリーとは、自然界の現在の理解から逸脱し、物理法則や既知の科学原理に反するものだと私は定義しています。確かに、自然界こそ間違いなく変化してはいますが、それでも筋は通っているものと思います。
ローザンヌ博士: わかりました、メモしておきました。アノマリーは本質的に危険だと思いますか?
ギアーズ博士: いいえ。確かにアノマリーは危険や脅威を呈します。特に未収容であったり理解が進んでいなかったりすれば。しかし、アノマリー自体は本質的に善でも悪でもなく、異常というだけです。アノマリーが財団を助けるのも傷つけるのも見てきました。
ローザンヌ博士: しっくりきます。もしこの「SCP-7973」が存在するとして、それは何か大きな意味を持つと思いますか?
ギアーズ博士: これだけのデータでは何とも言えませんね。ですが私の意見としましては、現実の構造の根本的な変化のような、より厄介な問題の表れである可能性があります。あくまでも説ですが。
ローザンヌ博士: なるほど—更に情報が手に入ったらお知らせしますね! といってもそちらの方がずっと上なので既に知ってるかもしれませんが。
ギアーズ博士は頷く。
ギアーズ博士: わかりました。
<記録終了>
インタビューから数週間で、SCp-7973の影響は顕著に増大しました。7ヶ月間で、特定されたアノマリーのカテゴリは以下のみでした。
- 人型アノマリー16体
- 異常な野生生物24件
- 異常な物品38実例
- 記録された異常現象41件
- 異常と指定された場所12か所
- K-クラス"世界終焉"シナリオを引き起こしうるアノマリーの発生2件
アノマリーの劇的な減少を受け、SCP-7973のより良い理解のため複数の要注意団体にインタビューが実施されました。ゲーマーズ・アゲインスト・ウィードや壊れた神の教会のような一部の団体は、従来と変わらない方法で活動を継続しているのが観察されました。ほとんどのインタビューでは注目すべき情報は得られなかったものの、世界オカルト連合は同様のアノマリー数の減少を報告していました。以下はD. C. アルフィーネ事務総長へのインタビューです。
D. C. アルフィーネ
インタビュー対象: D. C. アルフィーネ
インタビュアー: ローザンヌ博士
<記録開始>
ローザンヌ博士は扉を開けて部屋に入る。D. C. アルフィーネは冷笑する。
アルフィーネ: あらま、こんなに重要なことだっていうのに、財団は一人ぽっち送ってくるなんて話もないと思いますがね。O5との会合を期待していたんですよ、セブンもそう言ってましたし。
ローザンヌ博士: すみません、彼らは現在手一杯なのです。私はローザンヌ博士です、初めまして。いくつか質問させていただきます、お時間は取らせません。
アルフィーネ: また北朝鮮で起きてる件じゃないなら、ご自由にどうぞ。
ローザンヌ博士: その、アノマリーについてです。手短に言うと、アノマリーは今…… 現れなくなってきているのです。
アルフィーネ: えぇ、気付いてますよ。最初はあなたたちが真っ先に手に入れてるのかと思ってましたが、その心配ぶりを見るに、そんな単純な話でもないんですね?
ローザンヌ博士: よく…… わかってません。
アルフィーネ: 役立たず……
ローザンヌ博士: しかし! しかしいくつかとっかかりはあって、それでここに参りました。まず最初に、お訊ねさせてください。あなたは異常をどう捉えますか?
アルフィーネ: 普通に言えば、脅威ですね。世界を終わらせられるものも何十と見てきましたし、数百人をあの世送りにしてきたものも山ほど。図書館が世界を終わらせたのだって見てますし、それがどれだけ危険なものかは嫌というほどわかっています!
ローザンヌ博士: はい、それは事実にしても、全てが危険というわけではありません。例えば、適当な例で言うと…… 大きな丸いスライムで、人を幸せにするのとか! ですから全部が全部—
アルフィーネ: ちょっと遮らせてもらう。確かに役に立つアノマリーも多少はいます。いえ、多数いると言っていいでしょう。しかし事実として、大多数は危険で致命的です。数が減ったことは驚きですが、もしかしたら良いことなのかもしれません。
ローザンヌ博士: 良いこと? 私はそうは思えません、例えば…… 致命的なアノマリーが一つ減るとして、その分役に立つものも減ることになりますよね?
アルフィーネ: 第一に、あなたたちは良いアノマリーがあったとしてそれを人のためには使わないので、その心配は無用です。そして第二に、アノマリーが減るということは財団はそれほど多くの人を雇用しなくてよくなるということです。殺人モンスターが1体減るにつき、少なくとも50人は他の仕事をできるようになります。
ローザンヌ博士は沈黙する。
アルフィーネ: どう? この…… アノマポカリプスを引き起こしてるのが何にせよ、関係はありません。結局は良いことなのですから。
ローザンヌ博士: インタビューを終了します。
アルフィーネ: そうですね。期待を壊してごめんなさい。
<記録終了>
注: ローザンヌ博士は非プロフェッショナル的な振る舞いのため懲戒を受けた。
更なる統計報告は、新規アノマリーの著しい減少傾向を示しています。初期の予測ではアノマリーは2071年まで継続して発生すると考えられていたのに反し、財団のアナリストは、これが極めて短い期間、今後十年以内に起きるものと予測しています。過去1年間で、異常な人型実体は3体しか記録されていません。SCP-7973の更なる理解のため、ローザンヌ博士は現在財団の管理下にある人型アノマリーへのインタビューの正式な要請を提出しました。
SCP-049
インタビュー対象: SCP-049
インタビュアー: ローザンヌ博士
前記: 偶発的ないし意図的な接触を避けるため、SCP-049はガラス壁の裏に配置された。ローザンヌ博士はマイクを通してSCP-049と会話した。
<記録開始>
ローザンヌ博士: おはようございます、サー。
SCP-049: サー?
SCP-049: 堅苦しいのはやめていただきたいね。
ローザンヌ博士: わかった。それじゃあ、ヴェールが壊れたってニュースは聞いてる?
SCP-049: ヴェール?
ローザンヌ博士: ああそっか、捕まってるから、失礼! 基本的には、みんなが異常について、そしてあなたみたいな人のことを知ってるってこと。残念ながらあなたは収容されたままだけど、触ったら死んだりなんだリするし…… でも交流の機会は増えるかも。
SCP-049: 面白い、何かがおかしいことは気付いていたが。朝鮮について不明瞭なおしゃべりがいくつもあったようだが、そのうち私に訪問させてほしい。私の治療を授けたい。
ローザンヌ博士: えぇ、うん—それより! いくつか話さなきゃいけないことがあって、中でも大事なのがあなたの異常に対する意見。あなたは「異常」をどう捉える?
SCP-049: あぁ、実に面白い質問だ。誰もわざわざ訊ねようとは思わなかったものだ。さて、学者の仲間よ。異常とは、君たちの脆弱な理解から逃れるものだと私は考えている。それは恐怖の核心であり、未知なるものの体現だ。そして私は、それを楽しんでいると言わざるを得ない。
ローザンヌ博士: まあ、そうだけど、でも例えば…… 闇だって未知なものと言えるけど、私たちは闇を収容したりしない。
SCP-049: あぁ、だが闇は秘密を隠しているだろう? 君たちは影の中に身を潜めるものを恐れる。背筋が凍るのは、ただ光がないからではない。何かが見ている可能性に、邪悪なものが深淵で蠢いている可能性を恐れているんだ。
ローザンヌ博士: その通りだと思う。それが正しいなら、私たちの理解してるものは全て説明できて、その全部の裏に理由付けがあることになる。でもあなたについては、悪くとらないでほしいんだけど、あなたの触れたら死ぬ手は科学じゃ全く説明がつかない。
SCP-049: ローザンヌ博士、信じてもらいたいが、科学的取り組みの限界はよく知っている。だが一つ訊かせてほしい。原始人が火を収容しようとしたか? 農民が大衆の詮索の目から隠しながら電気を利用しようとしたか? 君たちはまだ私の本質を掴んでいないが、私には目に見える以上のものがあるのだよ。
ローザンヌ博士: つまり、物事には私たちの科学的視点を超越した面があると? 知らないものを見たときに、それを脅威だと早合点してしまうと?
SCP-049: まさしくその通り。この世界には従来の知識の脆弱な限界を超えた力や現象がある。我々の限られた理解では見抜いたり制御したりできないというだけであって、それが無目的だとか意味の欠落だとかということはない。
ローザンヌ博士: よくわかった。いつかあなたもまた外を歩けるようになるかもしれない…… 時々気の毒に思ってる。
SCP-049: 同情などに苛まれないでほしい。私は忍耐強いし、孤独には独特の魅力がある、そう思わないか?
SCP-7973は進行し続けています。SCP-7973は1年 2ヶ月 4日以内に均衡に達すると考えられます。
O5-13に最後のインタビューが実施されました。
O5-13
インタビュー対象: O5-13
インタビュアー: ローザンヌ博士
<記録開始>
ローザンヌ博士は席上で身体を動かし、クリップボードを見下ろす。
ローザンヌ博士: 終わったのでしょうか?
O5-13: うん?
ローザンヌ博士: SCP-7973、あれは…… もう手遅れで、アノマリーはもう現れないのですか? 新しいアノマリーはもう—
O5-13: 必ずしも賛成はできないね、ティアナ。
ローザンヌ博士: しかし、サー、これをもう何年も追い続けてたんですよ! これは—
O5-13: サーなどと呼ばないでくれ。形式的なものは嫌いなんだよ。
ローザンヌ博士: はい、すみません! サーティーン、で問題ないですか?
O5-13は頷く。彼はポケットに手を伸ばし、タバコの箱を取り出す。それを1本口に当て、ライターで火を点ける。彼はローザンヌ博士に1本差し出す。
ローザンヌ博士: 遠慮しておきます。
彼は頷く。
O5-13: では、ローザンヌ。君は異常をどう捉える?
ローザンヌ博士: 私ですか? いつもは私が訊く側なんですけどね! ですが—わかりません。何かを実際よりも大袈裟に考えてしまったことは何度かあります。若い頃は理解できないものに恐怖していました。だから…… それで私はここに来たんです。わかりません。そちらはどうですか?
O5-13: 何でもないんだ。私は今のところ、心から異常だと考えるものは何もない。評議会に15年名を連ねて、確かに私は変わった。20代前半から喋るコンピュータと話すことを強いられていたせいでもあるかもなあ。
ローザンヌ博士: そうなのですか?
O5-13: うむ。かつてとても大きなアノマリーだと思われていたSCPが、目を覚ましてみればそんなことなかったと気付かれた、というのはどれくらいの数知っているかな?
ローザンヌ博士: 15? 22?
O5-13: 40以上だよ。振り返ってみれば馬鹿なものもある。テンポラリー・セクレタリーというものは聞いたことがあるかい?
ローザンヌ博士: はい、すごい変ですけど、割と好きです。異常なのですか?
O5-13: いや。全く。フォーはそう思っていたみたいだけどね。私たちの多くを説得してきたよ。異常な音楽を何時間分も聴いてきた私からして、もっと別のものだと思ったね。蓋を開けてみれば実にくだらなかった。
ローザンヌ博士: なるほど、でもそれはあくまで一つの例で、だからと—
O5-13: 毛の生えたマス、見事な場所、スロットゴブリン、人を狙う雷—まだ続けようか?
ローザンヌ博士: つまり何を仰りたいのですか?
O5-13: SCP-7973は存在しない。
ローザンヌ博士: 存在しない? しかし—そんなはずありません、あんなにも証拠が—
O5-13: 君の証拠に真っ向から矛盾する、新規の異常な人型実体を20は挙げられるよ。ヴェールが壊れて以降、財団は彼らを収容するために何もしていない。記録すらしていない。単にその必要がないからだ。ところで、SCP-001が何か知っているかい?
ローザンヌ博士: そんなこと滅相も、いえ。
O5-13: 正常性とは何かを説明したただの1枚の紙だ。色々変更されて、削除したり追加したりあったが、つい最近シュレッダーにかけてしまった。
ローザンヌ博士: 何をされたと? しかし—
O5-13: 焦るな! やる前に全員の同意は得た。必要ないと判断したんだ。本当に異常なものなどないのだから、ね。
ローザンヌ博士: そうかもしれませんね—しかし一つ気がかりなことが。これからどうすれば?
O5-13: やるべきことをやる。チームにファイルを更新して、休憩するよう伝える。それが命令だ。
ローザンヌ博士: わかりました、サー-
O5-13: サーティーンと呼んでほしい、どうか。



