クレジット
翻訳責任者: Tetsu1
翻訳年: 2025
著作権者: Dino--Draws
原題: THE PYROCLASM PROTOCOL
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 22
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-8007
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財団による掘削以前のセント・ヘレンズ山火山噴火口、SCP-8007の一部が見える。
特別収容プロトコル: SCP-8007は1980/3/20にそれが発掘された、セント・ヘレンズ山のカルデラ内に残置されます。カルデラ自体へのアクセスは封鎖され、成層火山の噴火口に無許可の個人または組織が立ち入らないよう監視します。
現在、掘削チームがカルデラ内でSCP-8007の更なる発掘を試みています。セント・ヘレンズ山での財団の活動は、3月20日のプリニアン噴火1に続く地質学調査、及び山の北側が崩壊した際に形成されたクレーターの探査と説明されます。
説明: SCP-8007はセント・ヘレンズ山のカルデラ内部に存在する、サイズ未特定の竜型実体です。直接検査と特殊化したGPR2の使用を通して、SCP-8007はヨーロッパのドラゴンの描写と部分的に類似しており、6本の体肢を持ち、うち2本は翼であることが判明しました。SCP-8007の体長は現状不明ですが、翼幅は全開時で概ね3キロメートルと推定されています。
SCP-8007の最初の発見後、遺骸を更に調査・発掘するため、財団主導の探査が実施されました。ヘレン・ギブス博士をプロジェクト主任、メアリー・ネリス博士をフィールド研究主任とし、53名のチームは4ヶ月にわたりSCP-8007の掘削と調査を行いました。初期の調査結果の概要は以下の通りです。
初期フィールド分析レポート
1980/7/22、掘削サイト-8007 サラ・リンジー博士による記録
収集されたサンプル:
組成: SCP-8007の身体からは珪長質から中性岩までにわたる様々な組成の鉱物や岩石が回収された。現在確認されている鉱物サンプルには、石英、斜長石、輝石、普通角閃石、普通輝石、黒雲母が含まれる。3
質量: SCP-8007の質量は現状特定不可能。回収された鉱物の質量は極めて多岐にわたる。
分析:
サンプルの年代を特定するためにネリス博士が実施した奇跡論儀式により、それらは最近の噴火時に掘り起こされたセント・ヘレンズ山に天然のサンプルと一致することが判明した。これらの物質はSCP-8007の外縁部で結晶化し、鱗と同様の方法で互いに層になっている。結晶化した物質の層の厚さは数メートルと推定されている。
ペグマタイト水晶の結晶がアノマリーの頭部を覆い、ギザギザとした鬣たてがみを形成している。これらの結晶構造は顎、吻、首後部の一部を覆っている。これらの鉱床はいずれも、これまで地球上で発見された最大の結晶クラスターの大きさを上回る。
SCP-8007の背部に沿って2列になった4つの突起部が見られる。これらの巨大な突起部は完全に空洞であることが確認され、基部周辺における岩石の亀裂は、それらが何らかの形で移動可能であったことを示している。突起部の構造は成層火山に類似しており、独自の小型化されたクレーターと溶岩溜りがある。
SCP-8007の表面はセント・ヘレンズ山の周囲の地質構造よりも低温であると測定されている。
考察:
堆積物質の量から、SCP-8007は生前であってもほぼ静的であったと考えられる。ネリス博士の奇跡術能力を利用した実験と、アノマリー上の堆積物のサイズから、SCP-8007は身体上で異常に速い結晶化と鉱物の成長を促進していたと判断できる。
岩石の亀裂と特有の層は、それが移動可能であったことを示している。ただし、SCP-8007の生前の可動範囲がどの程度であったかは不明。
ペグマタイト水晶の一つの採取を試みた際、それを叩くとSCP-8007全体の他の水晶と共鳴することが判明した。共鳴はアノマリー全体に劇的な振動を引き起こし、複数の職員が立っていられなくなるほどのものだった。充分なエネルギーがあれば、動的またはその他の方法で、更に大きな振動を生み出すことが可能と理論付けられている。
解剖レポート
1980/7/26、掘削サイト-8007 ルディ・ウェラー博士による進行中の記録
観察:
SCP-8007の死を引き起こした可能性のあるものの痕跡はほとんどないが、その身体的生物学記録は作成されている。
現時点で、SCP-8007の胸部は完全に掘り起こされている。アノマリー胸部の下側は完全に露出し、開いている。これにより完全に胸郭が見え、内部は完全な空洞になっていることがわかる。SCP-8007の骨は、現状未発見でかつ自然に形成されたタングステン合金でできているようである。これがどのように発生したかは不明であり、したがってSCP-8007の異常性の一部と考えられる。更にSCP-8007の胸部からは、爬虫類または鳥類の心臓に類似した、部分的に硬化した構造の残骸が発見された。動脈のような構造の固化した残骸は、心臓がSCP-8007の胸部内に吊り下げられていたらしいことを示している。心臓の一部は依然として極めて高温であり、部分的に融解していた。心臓の構造には、極めて高濃度の純鉄が含まれており、アノマリーの骨と類似した合金と混合していることが判明した。
SCP-8007の口には歯があるにも拘らず、目に見える消化系はない。
SCP-8007の外表面は周囲と比べて著しく低温であったが、SCP-8007内部の一部のエリアは人間の健康にとって危険と考えられるほど高温であった。
分析:
SCP-8007の内部構造、及びその欠如の背景にある目的の分析は、発掘の継続と共に現在進行中。
考察:
部分的に融解した心臓から、SCP-8007の死はセント・ヘレンズ山の噴火と近い時間枠内に発生したと考えられる。これが、SCP-8007はプリニアン噴火で死亡したという現在の理論につながった。ただし、死因に関するこれ以上に有用な情報は現状存在しないため、調査は進行中。
| From: | mnerys@scp.int |
|---|---|
| To: | hgibbs@scp.int |
| 件名: | 奇妙な発見 |
あの、レポートに追加したいことを見つけたんです。
8007の内部空洞を突っついてたとき、私の年代特定をやり直してみたいと思ったんですが — 骨も地質学的だったから。金属だったですよね? そこで自分の出した数字を見直してみた方がいいかと思ったんです。鉱物が堆積したのは骨自体とは違うタイミングかもしれませんから。それかヤドカリみたいに岩を被っただけかもしれない。それでまた儀式をセットして、骸骨に集中して、そしたら……
このドラゴンは38億歳だったんです。
地質学部門
確保、収容、保護
| From: | hgibbs@scp.int |
|---|---|
| To: | mnerys@scp.int |
| 件名: | RE:奇妙な発見 |
神に誓って言うけど、これは見るたびにどんどん奇妙になっていってる。そうなると、こいつの存在は冥王代辺りまで遡ることになる。
本当にこれが死んだのは最近なの? 知っている範囲では、何かが37億年前だかどこかで死んで、噴火でそれが地表に出てきたことにみんな大喜びしてるってことなんだけど。確かに心臓はまだ部分的に溶けてる状態だけど、それは過去数か月間取り組んできた火山の内部も同じ。
地質学部門主任
確保、収容、保護
| From: | mnerys@scp.int |
|---|---|
| To: | hgibbs@scp.int |
| 件名: | RE:奇妙な発見 |
全くもって本当のことです。実は、そこからまた別のことが見つかったんです。
今日の初めに私たちは内部空洞のもっと奥深くに行って、そこでこの…… 穴?を見つけました。測定したところ直径は5~10メートルでした。死骸のいろんな部分に開けられていました。
「開けられて」と言ったのは、それが完全に円形で、滑らかでもあったためです。自然にできたとは思えません。心臓の裏側にも一つ見つかりました。その一部を切り取ってました。
当初の理論では、セント・ヘレンズ山の噴火で死んだというものでしたが…… この獣の命を終わらせた、全然違う何かの痕跡を見つけたんじゃないかと考えます。
地質学部門
確保、収容、保護
| From: | hgibbs@scp.int |
|---|---|
| To: | mnerys@scp.int |
| 件名: | RE:奇妙な発見 |
容疑者の痕跡はある? 足跡とか、印とか、何か生きてるものの存在を示すものは? それとも、誰かが私たちより先にこの死体に到達したのかしら?
地質学部門主任
確保、収容、保護
| From: | mnerys@scp.int |
|---|---|
| To: | hgibbs@scp.int |
| 件名: | RE:奇妙な発見 |
考えられる中で一番あり得そうな推測としては、別の何かしらの異常生物がいたというものです。私は生物学者じゃないですが、8007にばかりちょっと気を抜かして見逃してたかもしれない変な痕跡がないか、ちょっとカルデラ周りを見てみます。
地質学部門
確保、収容、保護
| From: | hgibbs@scp.int |
|---|---|
| To: | mnerys@scp.int |
| 件名: | RE:奇妙な発見 |
わかった。最新情報を伝えるように、いい?
地質学部門主任
確保、収容、保護
1980/7/29、掘削チームによってセント・ヘレンズクレーターの大規模な調査が実施されました。調査中に以下が発見されました。
- 異常に高いEVE4の測定値がカルデラ全体に飽和しており、最も高濃度なのはSCP-8007自体の周辺である。この痕跡にも拘らず、奇跡論儀式が実行された痕跡はない。5
- 磁鉄鉱はセント・ヘレンズ内の鉱物として知られるが、カルデラ全体で異常に大きな破片が発見された。最大の破片は直径5メートルであり、深刻に損傷しているものの、円盤状に見える。磁鉄鉱はこのように自然に結晶化することはないことに注意。
- カルデラ内で発見された磁鉄鉱サンプルは、周囲と比べて高いEVE値を有していた。加えて、鉄への異常な引力を示した。
- SCP-8007内で発見されたものと一致するおよそ10メートルのトンネルが、成層火山の内部構造全体で見つかった。
- セント・ヘレンズ山の溶岩溜りにはマグマが一切存在しない。このような現象は他に1件しか発見されておらず6、この発生の唐突性は特異なものと指摘されている。
この発見から間もなく、セント・ヘレンズ山は地質学的に活動を停止したものと見做されました。現在、SCP-8007の死はこの出来事に関連していると理論付けられています。
| From: | hgibbs@scp.int |
|---|---|
| To: | mnerys@scp.int |
| 件名: | RE:奇妙な発見 |
ねえ、
サイトの荷物をまとめてもらいたい。あなたたちのチームはカムチャッカ半島のトルバチクに移動する。
地質学部門主任
確保、収容、保護
| From: | mnerys@scp.int |
|---|---|
| To: | hgibbs@scp.int |
| 件名: | RE:奇妙な発見 |
えっ? 何故です? まだ8007の発掘プロセスの途中ですよ。トルバチクなんて5年前に噴火してから何の活動の痕跡もないじゃないですか。
地質学部門
確保、収容、保護
| From: | hgibbs@scp.int |
|---|---|
| To: | mnerys@scp.int |
| 件名: | RE:奇妙な発見 |
まさにそれが見に行ってもらわないといけない理由。セント・ヘレンズも死んでたでしょ。
別のが見つかったの。
地質学部門主任
確保、収容、保護
補遺8007.1:
1980/8/11、ロシア、カムチャツカ半島、楯状火山であるプロスキー・トルバチクの噴火口において2体目の死亡したSCP-8007実例7が発見されました。この実例は、地質学部門が偵察チームを派遣し、噴火口を空中から概観した際に発見されました。この際、SCP-8007-2の頭部と前足の一部が特定されました。
発見時に露出していたSCP-8007-2の一部。
SCP-8007-1の発掘クルーと地質学部門のその他の職員からなるチームが、新たな実例の発掘のために派遣されました。
生物学的・地質学的評価により、SCP-8007-2は、外部被覆の組成こそ異なるものの、セント・ヘレンズ山カルデラ内の実例と肉体的に類似していると判断されました。SCP-8007-2は主に玄武岩などの苦鉄質鉱物・岩石や、様々な噴気孔鉱物の結晶体に覆われています。これらの発見物は、プロスキー・トルバチクの最後の噴火時に露出した鉱物と一致します。
最初の実例と同様に、SCP-8007-2とその周辺地域では地層内に一連のトンネルが存在することが発見されました。これが実例の死因であると判断されました。この地域のEVE測定値は以前の発見と同様に一致しています。
補遺8007.2:
1980/8/30、3体目の死亡したSCP-8007実例が発見されました。
SCP-8007-3はプロスキー・トルバチクに隣接する成層火山であるオストリー・トルバチクについて、2つの火山のマグマ溜り8の状態に関する情報を得ようと発掘チームがスキャンした際に発見されました。この実例はオストリー・トルバチクの地下約6キロメートル、現在空からのマグマ溜り付近に埋没しているために到達は不可能ですが、以前の実例及び近隣の母岩から、SCP-8007-2と同様の組成を有しているものと想定できます。スキャンでは他の現場で発見されたものと同じトンネルの存在が示されており、SCP-8007-3の死因は以前の2実例と一致します。
更なるSCP-8007の実例を発見するため、地質学部門のヘレン・ギブス博士は、環太平洋火山帯9に沿った全ての火山系を全面的に調査するプロジェクト案を提出しました。
1980/8/30時点で、「プロジェクト・パイロクラズム」と通称されるこのプロジェクトはO5評議会により承認されました。
補遺8007.3
以下はプロジェクト・パイロクラズムの進行中に発見された実例の要約リストです。
実例#: 6
場所: ポポカテペトル — メキシコ、プエブラ
実例ステータス: 生存、無傷
エリアスキャンから作成されたSCP-8007-6の背部突起の輪郭。

付記: SCP-8007-6が存在するエリアの調査中、一連の小さな揺れがポポカテペトルで発生した。突然の噴火を恐れたチームは発掘現場から避難し、周辺地域には警報が発令された。
噴火は起こらなかったが、揺れはおよそ3時間継続した。これらの振動の破断点は実例自体、後頭部に沿った点であると判明した。
実例の背中に沿って堆積した結晶構造の異常なレベルでの共鳴が以前に観察されていたため、SCP-8007はこれらの結晶マトリックスを通して地震を引き起こすことが可能と結論付けられている。
プロジェクト・パイロクラズムを通して、SCP-8007現象が特定の地質学的地点に特有のものなのか、地球全体に広がっているのかを判断するため、環太平洋火山帯外部の地質学的地域の複数の火山構造が調査されました。
SCP-8007-447は発見された最後の実例にして、環太平洋火山帯に直接位置していない唯一のSCP-8007実例です。SCP-8007-447はハワイ州マウナ・ロア内の地質学的地域の中心に隣接するように存在します。
マウナ・ロアは地球上で最大の活火山であり、12この実例の位置が外れ値であるため、要注意領域と見做されました。
更にスキャンにより、SCP-8007-447はマグマ溜りに直接通じる火山内の一続きのトンネルを通って真に到達可能な最初の実例であることが示されました。
探査ログ8007.1:前記: SCP-8007-447が到達可能であると判明した後、マウナ・ロアのマグマ溜りに降下するよう小規模チームが派遣された。
チームはヘレン・ギブスが主導し — 司令部として活動 — メアリー・ネリス博士、サラ・リンジー博士13、ルディ・ウェラー博士14で構成される。
SCP-8007-447とのコミュニケーションの性質のため、ネリス博士は転写に編集を施した。
3名のチームは入口の外に立ち、小さな物資を下ろして火炎近接スーツを装備する。
ウェラー博士: 本当にこれで…… 大丈夫になるのか?
リンジー博士: もちろん! 防護スーツとこの子たちがあるからな。[小さな石の装飾品を掲げる] 120のとこの子たちが送ってくれたのさ。ちゃんと身に着けてて、壊れたりしない限りは実質的に火炎耐性を付与してくれる。とはいえマグマに足を突っ込むのはやめときなよ、直接の接触から守ってくれるとは思えない。
ネリス博士: [クスクスと笑う] あちゃあ、午後のプランが終わっちゃいました。
リンジー博士は頭を後ろに反らせて笑い、屈んで物資袋を拾う。
司令部: こちらギブス、みんな聞こえる?
ウェラー博士: はっきりとね、ええ。
司令部: よしよし。では降下の準備を。
ネリス博士: やりますよ、ボス。
リンジー博士が熱心な表情で先導する。3人はマグマチューブに入り、歩き始める。直径はおよそ10メートルで、時折小規模な変動がある。
リンジー博士: ファイルにはマウナ・ロアのことが書かれてたけど、キラウエアもこのモンスターが関わってると思う?
ネリス博士: 恐らくは。クラカタウ実例は、1803年の噴火で全部空高く吹き飛ぶまで、そのエリアの4つを担当してたと理論付けられています。面白い事実を知りたいですか? その噴火の音は地球を3周したんですよ。
ウェラー博士: 面白い事実でもないな。それはただの事実だ。
リンジー博士: いやいやいや、確かに面白い事実だよ。[一瞬沈黙]……うなり声みたいに聞こえたんじゃないかな。
ウェラー博士: それは恐ろしいことだな。
リンジー博士: かもね! でもこの手の獣に対処するってのはそういうことだ。しかもこいつは文字通りに獣だってわかってる!
ウェラー博士はため息をつき、首を横に振る。
ウェラー博士: 嫌なことが起きたらどうする? つるはしとライフルと、落盤時用の起爆剤はあるが、こういうのはブヨみたいに引っ付いてくる気がするんだが。
ネリス博士: 死に物狂いで逃げる。他にできることもないです。
ウェラー博士: それは結構。
リンジー博士: じゃあ、こう考えてみなよ。わざわざブヨをひっぱたいたりはしないだろ?
ウェラー博士: 大抵の人はすると思うが、時々。
リンジー博士: 時々ってだけだろ! 時々ってだけ。数キロサイズのドラゴンをイラつかせでもしない限りあたしらは安泰だ! それに、彼らはあんまり動くようでもないからね。
ウェラー博士: それが確かかはわからない。
ネリス博士: これらの実例たちをほぼ5年見てきました。彼らはほとんどの時間を休眠状態で、自分を通して溶岩を送り出して過ごしてるようです。噴火のためか、怪我したときだけ目覚めるんでしょう。知る限りの知識に従えば、あの部屋に行っても-447が眠ってるのを見つけるだけですよ。だあああい丈夫ですよ、ルディ。
リンジー博士: ちょっとかわいいかもね。
ネリス博士: 起きてることを願います。想像できます? あんなにデッカいのが動いてるのを目にすることを?
ウェラー博士: わかった、わかった聞こえてる。私は…… うん。
ネリス博士: 多少神経は使いますが、そこには集中しないようにします。
ウェラー博士はただ頷き、岩壁をちらりと見て一瞬そこに手を走らせる。石は濃い灰黒色で、時折白とオフホワイトの結晶がある。
ウェラー博士: ソレアイト玄武岩の見た目はずっと前から好きだ。ここの内装はすごいもんだ。
リンジー博士: ほんとにね! きっと例のドラゴンもそういうので覆われてるか、最低でもごく普通の玄武岩くらいはついてるはずだ。おーぅ! マグマ鉱床だって見れるかもな! 幾つかの骨ん中からは金属が見つかったからね。
ウェラー博士: 部門は死亡実例の発掘活動を行おこなってるところだ、と言っておこう。
ネリス博士: そりゃまあするでしょう! 巨大なドラゴンに、見たことない規模の鉱床ですよ? 一部の人が示唆してるみたいに、私は死体の採掘に完全に賛成してるわけじゃないですが、でもこのドラゴンたちと、彼らがどれだけ速く堆積物を得てるかは、私たちの研究方法に大変革をもたらしますよ。[一瞬の沈黙] 少なくともヴェールのこっち側では。
リンジー博士: 全員居場所はわかったから、彼らに試せるテストはまだごまんとある。
ウェラー博士: 可能性の話はさておき、我々の現時点での懸念は、何が彼らを殺しているのかということだろう。こいつも傷つけられると思うか?
リンジー博士: スキャンだとちっっっちゃい傷が見つかったんだっけ? はっきりしたことは何もわからんけど、ただ! [バッグの中を探り、野球ボールほどの大きさの金属製のオブジェクトを取り出す] この子を一つ連れてきた。
ウェラー博士: ネオジム? そいつはデカいな、一体いくら払ったんだ?
ネリス博士: そっか、そうですね! 磁鉄鉱の破片がずっと見つかって—
リンジー博士: 部門が負担してくれた、知りたくなかったかもだけど — とにかくご明察! ドラゴンを傷つけてる奴は、磁鉄鉱片を残してってると考えられるんだ。だから何か痕跡があれば、それをこれで見つけられる。運が良ければ犯人野郎にもたどり着けるかもな!
ウェラー博士: そいつがちっさいことを祈りたいな。
ネリス博士: まあ、少なくとも5メートルくらいであってほしいですね。
ウェラー博士: [ため息をつく] 5キロメートルよかマシだな。遭遇しても対処できる。
チームがマウナ・ロアの奥深くに降下するにつれて、更に無関係な会話が増加する。周辺の空気の温度が急激に上昇し始める。
約50分間降下した後、ネリス博士は痛みを表明する。
ウェラー博士: メアリー、大丈夫か?
ネリス博士: クソ— EVEレベルが急上昇したに違いありません。この場所は…… 確実に奇跡論エネルギーにまみれてる。超が付くほど頭が痛い。
司令部: それだったら、気を付けて。
リンジー博士: 気を失いそうになったら大声で叫びなよ! 岩の上にぶっ倒れて頭カチ割ってもらうわけにゃいかない。
ネリス博士はかすれた笑い声を出す。
ネリス博士: 了解、了解。
ウェラー博士: EVEレベルが上昇してるということは、つまり近付いてるってことでいいか?
リンジー博士: だといいけど!
司令部: 確認できた。近付いてる、頭を上げて目を開け続けて。
ネリス博士はゆっくりと頷く。
ネリス博士: じゃあみんな…… みんな行きましょう。
チームは1時間以上かけて目的地に到達する。空気の温度は摂氏約100度にまで上昇している — 奇跡術保護と装備は無傷のままである。
チームは巨大な溶岩溜りに入る。彼らの立っている尖塔のような露頭は、マグマの穴から約250メートル上に位置している。それは数百メートルにわたって延び、苦鉄質岩の壁と交差している。ネリス博士は額を擦り、未だ苦痛の表情を見せている。
リンジー博士は振り向いて、彼らの出てきたトンネルの周囲の壁を見つめ、息を呑む。
リンジー博士: えっとこれは…… ふむ!
司令部: リンジー、何を見てるの?
リンジー博士: 柱だ、ギブス。ニュージーランドでスキャンしたやつは誤解じゃなかった。
壁には一対の双柱が彫られており、厚さは数メートルあり上方に伸びている。それらは洞窟と同じ玄武岩で、全体に捩れて曲がりくねった模様が描かれている。洞窟の暗さのため、壁の上部は見えない。
ウェラー博士が近付く。
ウェラー博士: そこに光っぽいものがあるな、サラ? 壁のもっと向こうに何か見えるような—
一方ネリス博士は、露頭とその向こうにあるものに、巨大な壁に注意を向ける。リンジー博士は肩越しにバッグの中を引っ掻き回している。
ネリス博士: 間違ったトンネルに来てしまったんでしょうか? 開けたマグマ溜りでないとおかしいんですが。
リンジー博士: ……合ってると思う。
突如明るいオレンジ色の光が現れ、チーム全員が目を覆う— 洞窟内のマグマよりも遥かに明るい。
光源は一つの目である。カメラからの推定では直径53メートルである。
ネリス博士のボディカメラにより撮影。
ネリス博士: おぉ。
SCP-8007-447は頭部をチームに向けて、持ち上げる。もはや隠されることなく、洞窟の全容が見えるようになる。
リンジー博士は興奮した表情で露頭の端に近寄る。ウェラー博士はネリス博士に心配した表情を向ける。
ウェラー博士: なんてこった。向こう側すら見えない。ガスと煙だけだ。
SCP-8007-447の翼の上部は遥か遠くに見え、洞窟の天井に押し付けられている。背中と背部突起は山のように見える — 洞窟を二分し、天井を突き破っている。
ドラゴンの頭部は濃い黒色の石で覆われており、堆積物の大部分はパホイホイ溶岩に外見が類似している。火山ガラスの破片が頭部の、捩れ湾曲した角にかぶさっている。吻の先は、鋭いギザギザとした黒曜石となっている。
リンジー博士: すっごい! ハワイのこの場所じゃ黒曜石すら見れるはずないのに、こいつを見てみろ! それを被ってるって言ってもいい。
ウェラー博士: メアリー、大丈夫か? 何だかまだ—
ネリス博士: この場所は…… 奇跡論エネルギーに馬鹿みたいに染まってる。頭が爆発しそう。ここまでの集中は感じたことない、[一瞬弱弱しく笑う] けどこういう場所での経験が浅いだけかもしれません。
SCP-8007-447が大きく息を吐くと同時にチーム周辺の空気の記録された温度が一瞬急上昇する。
[荒れ狂う炎。燦燦と煌煌と。突き出す。好奇。燃焼。]
ネリス博士は崩れ落ちる。
リンジー博士: メアリー!
司令部: そこで何が起きてるの!?
リンジー博士: メアリーが倒れた! 待った—
リンジー博士とウェラー博士はネリス博士に駆け寄る。彼女は呻き声をあげ、彼らの助けを借りて起き上がる。火炎近接スーツのフェイスシールド越しに、鼻から血が流れているのが見える。
SCP-8007-447は目に見えて引き下がる。
リンジー博士: メアリー? ちょっと、大丈夫?
ネリス博士: 畜生—ちょっとだけ待って—
ネリス博士は座って、約30秒間喘鳴する。
司令部: ネリス博士、何が起きたの?
ネリス博士: ……私に……コミュニケーションしてきたように思います。
ウェラー博士: どうやって? 君はただ倒れて—
ネリス博士: イメージ。感情。言葉は無くて印象だけ。でもあれは強く大きく— がっ。私の頭が。
[メスの鳴き鳥が頭を持ち上げて鳴く。声は低い。陰鬱。]
ネリス博士はSCP-8007-447を見返し、眉をひそめる。アノマリーの頭部は僅かに下を向いている。
ネリス博士: ……大……丈夫。ちょっと……多かっただけ。
ネリス博士はリンジー博士の助けを借りて立ち上がる。
リンジー博士: じゃあ彼らには知覚があるってことか!
ウェラー博士: そうみたいだ。良かった…… 正直良かった。
リンジー博士: 潰されはしないって言っただろ。
ネリス博士は、眉をひそめながらまだSCP-8007-447を見つめている。
ネリス博士: ギブス?
司令部: はい、ネリス博士?
ネリス博士: アノマリーとコミュニケーションを続ける許可もらえます?
司令部: 承認するわ。
SCP-8007-447は頭部を僅かに横に傾ける。
リンジー博士: どうしてあたしとルディは何も聞こえない?
ネリス博士: 多分…… このコミュニケーションは奇跡術師限定です。道理は通ってます、前の現場のスキャンでは、実例が高EVEの原因だったんで。
ウェラー博士: ……はぁ。[SCP-8007-447を見上げる] 何を…… 尋ねようか? 知覚ができるって以上、この獣たちについてもっと知れるチャンスではあるだろうが。
ネリス博士: あなたは…… 何です……?
SCP-8007-447は低く震える轟音を出す。
[マグマ。遥か下の洞窟。火炎。泡立つ熱。]
ネリス博士: [ブツブツと] この文法的解析は難しいでしょう。[咳払い] あなたは…… 炎の下の者たちですか? 地面に?
[パチパチと音を立てる炎]
ネリス博士: 炎の下の者たち。
リンジー博士: ぴったりだと思う! こいつに名前はあるだろうか?
[波に追われるものの、揺れたり崩れたりはしない山。雨にも拘わらず燃え盛る森に囲まれた、幼竜を守る母竜。]
ネリス博士は動きを止め、少し考えているように見える。
ネリス博士: 恐らく彼女は、「絶え間なく立ち続ける悠久の炎の護り手」と呼ばれるようです。
[炎の暖かさ。]
ネリス博士は微笑む。
リンジー博士: 興味深い!
ウェラー博士: 改めて、あなたにお会いできて光栄だと考えています、絶え間なく立ち続ける悠久の炎の護り手。
リンジー博士: あたしらも自己紹介した方がいいな!
ネリス博士: 向こうも心がこもっているように感じます。[SCP-8007-447に振り返る] 私はメアリー・ネリスです。
リンジー博士: それじゃあ! あたしはサラ・リンジー。
ウェラー博士: ルディ・ウェラー。
SCP-8007-447は挨拶に返すかのように、首を軽く振る。
リンジー博士は2人に笑顔を向けるためにSCP-8007-447に背を向ける。彼女は目を見開き、頭を上げる。
リンジー博士: ねえあんたら? 今クソデカドラゴンと話しててそっちに気を取られてるのはよくわかるけど、あたしみたいに振り返ってもらうことはできる— 今すううぐに。
ネリス博士とウェラー博士は振り返る。
SCP-8007-447の目からの、そして洞窟を覆い隠していたところを動いた場所からの光が、今度はチームが現れた方の壁を照らしている。
そこは巨大で複雑な彫刻に覆われている。
トンネルの入口の真上には、SCP-8007実例に類似した3体の巨大なドラゴンの彫刻がある。それらは、それぞれ溶岩と火を表すように見える鋭い岩と流線に座っている。中心のドラゴンにはSCP-8007-447と同様の角がある。その上には、煙った空気の中を飛ぶ小型の実例らの彫刻がある。
ネリス博士: ……あなたが彫ったんですか、悠久の炎……? 真ん中のはあなたですか?
[石を削る爪。捩れた角を持つ遥かに小さな黒いドラゴンが巨大な洞窟に身をゆだねている。その溶けた爪が壁に形を焼き付ける。螺旋状の黒い角が頭に乗っている。]
ネリス博士: 美しい手仕事をなされたんですね。
[誇り。]
司令部: 意味は判断できる?
リンジー博士: こっちにまだあるぞ!
リンジー博士は露頭の左端に立っている。彼女は爪で引かれた線で区切られた彫刻を見上げる。
殴り書きのように彫られた、多数の体肢と歯を持つ、巨大な炎を燃え盛らせる巨大な生物。
隣に小さく彫られた山々を破壊し、ドラゴンを攻撃する実体。
ドラゴンはこの歯と爪の塊に上から炎を吐いたり、山をその上に落としたりする。
巨大な実体は地中に埋められる。煙と炎が立ち上る。
数体のドラゴンが円を描いて立っている。SCP-8007-447に類似した個体がそれらを導くようである。次の彫刻では、数体のドラゴンが地下に潜っている。
実体は爪を上に伸ばし、まだ埋もれている。それを囲う炎はドラゴンと繋がるように彫られている。
実体の周囲の炎は弱まる。その目は閉じている。
ウェラー博士: ……どういう?
リンジー博士: 物語だ! すごい!
ウェラー博士: だが何の?何かしらのモンスターか? [彫刻内の不明な実体を指さす]
ネリス博士: 多分そうかも? まるで彼らが…… 何かを埋めたみたい。
SCP-8007-447は雷鳴のようなうなり声をあげる。3人全員が身体をビクッとさせる。
[引き裂く。叫ぶ。地震。火山が噴火する。ドラゴンが岩と溶岩に潰される。炎を纏った不明瞭な姿の生物が行く手の全てを破壊する。]
ネリス博士は顔を深く歪め、洞窟の熱さにも拘らず震える。
リンジー博士: まあ何にしても、こいつはデカいな。ドラゴンよりも更にずっとデカい。
ネリス博士: ですね。そしてそれが…… 心配です。ドラゴンもこれに比べたらド小っちゃいんで。
ウェラー博士: どうやったらこれが…… わからないが— 芸術的誇張じゃないって判断できる?
ネリス博士: [頭の側面を擦る] そうではないと思います。
ウェラー博士: それはいい。それはいい。
リンジー博士は彫刻の一つの下部を手でなぞる。足元で微かな震えが轟くと、彼女は一瞬下を見る。
リンジー博士: この彫刻に描かれてる環境はまず間違いなく現代のものじゃない。土はまだ…… 融けてるみたいだ。
ウェラー博士: じゃあ私たちが話してるのは…… 何だ? 冥王代? その時間枠は地質学的記録すら持ってないぞ。
リンジー博士: 骨の年代はそれと一致するだろう。彼らは本当に何十億年と生きてるんだ。
ネリス博士は未知の実体が埋められる描写の場面を見つめ、眉をひそめる。
ネリス博士: ギブス、ちょっと頼まれてもらえます?
司令部: どうしたの?
ネリス博士: 構造プレートをスキャンしてください、熱測定でもなんでも — 太平洋構造プレートに。環太平洋火山帯用のを。地下深くを。
司令部: 分析範囲が広すぎる、ネリス博士。
ネリス博士: 海岸沿いの地震観測点からやってください。データが三角測量されるはずです。部門のデータベースにサーマルグリフについての私のメモがあるはずです。正しく読み取れれば、推定はできるはず。
沈黙。
司令部: やってみる。待機してて。少しかかるから。
リンジー博士: もし何かが下にいるとして、それはつまり…… ドラゴンの死体が、傷が見つかったこととどう関係してくる?
ウェラー博士は眉をひそめながら彼女を見つめる。
ネリス博士: 良いことではないです。
ウェラー博士: 行動の音頭を取ってるのは悠久の炎みたいだな。
ネリス博士: 多分本人だと思います。それなら彫刻がここにあることに説明がつくでしょう。[SCP-8007-447に振り返る] あなたがこの全てをするという選択をしたのなら。何についても…… これを。
[燃え上がる炎。黒き石の上ににじみ出る岩と融けた石。大地が震える。爪が土を引き裂く。遥か、遥か下。翼。盾。護れ護れ護れ。山に溶岩の波が打ち寄せる。]
ネリス博士: 護る?
リンジー博士: 何のために? 彼らが埋めたものはクソ長い間そのままずっと埋まってるみたいだけど。
SCP-8007-447はうなる。
[烈火。圧力が上昇する。窒息。亀裂。炎が鼓動する。マグマが地下深くから汲み上げられる。流れ出る。流れ出る。弱まる。炎が消えてゆく。圧力が解放される。]
ネリス博士は息を切らして壁にもたれ、目を強く閉じる。彼女はしばらくそこに留まり、リンジー博士とウェラー博士は心配した様子でそちらを見る。
リンジー博士: 何て言ってた……?
ネリス博士: 多分…… あれがまだあそこにいるのはドラゴンたちのおかげ。まるで彼らが…… 排水してるみたいに?
リンジー博士: そいつの炎を食ってるってこと? [一続きの最後の彫刻を指さす] それがこの場面の意味なの?
ウェラー博士: それが逃れられないように火の恐怖を餌にしてるのか? それが全てを破壊しないように?
ネリス博士: もっと良い用語はなさそうですかね。そうだと思います。まるで…… そいつが暴れまわるのを阻止するという古代の義務みたいです。
ウェラー博士: じゃああらゆる活動は — 地震とか火山とかのは — このドラゴンたちがそいつのエネルギーを食ってることで生じてると?
リンジー博士: ……そして今、彼らは死んでいってる。
ネリス博士: クソ。
チームは数分間沈黙して動かないでいる。リンジー博士は彫刻を見つめ直す。ウェラー博士は腰を下ろす。この数分の間に、小さな揺れがまた始まり、収まる。SCP-8007-447は僅かに身を引く。
司令部: チーム、聞こえる?
リンジー博士: はっきりとなギブス、何が見つかった?
司令部: 構造プレートの真下で、熱エネルギーと圧力がこれまで見たことないほどに最大級に集中してる。地下に何かある。
ウェラー博士: 大きさは?
司令部: この推定合ってるの? これ、太平洋全体の地中に広がってる。ちょうどマントルの中に。
ウェラー博士: なんてこった。
司令部: 好奇心から、20年ほど前のデータセットでも同じことを実行してみたんだけど。やっぱり明らかに何かそこにあったけど、圧力の蓄積は全然こんなにひどくなかった。
ネリス博士: 事態は悪化してるってことですね。
リンジー博士: 同じ何かがドラゴンを殺して、傷つけてる。
ネリス博士は心配した顔をSCP-8007-447に向ける。
ネリス博士: あなたも傷つけられたのですか? 一体何がこれを引き起こしているかわかりますか?
再び揺れが起こる。SCP-8007-447はうなり声と泣き声の混ざったような低い音を出す。それから、雪崩のようなパチパチという音を立てて咆哮する。実体が後ずさると、首の下部に穴があり、融けたマグマが滴っている。
[鱗に穿たれた穴。マグマが血が如く流れる。心痛。ハゲワシがトカゲの死体を引き裂く。ベッコウバチの幼虫が麻痺したタランチュラを貪る。]
ネリス博士は叫んで頭を抱える。ウェラー博士とリンジー博士はSCP-8007-447の咆哮に怯む。揺れは大きくなっている。
司令部: その揺れは何?
リンジー博士: こっちが知りたい!
ネリス博士: 悠久の炎じゃない—
ウェラー博士: じゃあ何なんだ!?
リンジー博士は目を見開く。彼女はSCP-8007-447を見上げる— その傷を見て、それから自分のバッグに手を伸ばす。轟音が接近する。
彼女はネオジム磁石を取り出す。
リンジー博士: 例の犯人野郎だ。
チームから数メートル離れた位置の岩壁の一部が崩れ始める。
SCP-8007-447は金属同士がこすれ合うような甲高い声を上げる。
[狼が警告を吼える。]
ネリス博士: しゃがんで!
壁の一部が崩れ、外側に爆発が起きる。洞窟に突入してきた実体は、頭部の代わりに幅3.5メートルの金属の円盤が存在することを除けば、純粋な火でできたヘビのように見える。
ネリス博士とリンジー博士は叫びながら、実体の出現と同時に瓦礫が直撃するのを間一髪で避ける。
ウェラー博士は背中からライフルを取る。
ウェラー博士: 何だあれは!?
リンジー博士: トラブルの元凶じゃないか、多分!
ヘビは首を横に振り、リンジー博士の方向に突進する。彼女は悲鳴を上げて進路上から身を投げ出し、地面に倒れる。ウェラー博士は実体に向けて発砲するが、銃弾は傷つけることなく火を貫通するだけである。実体はただシューシューと音を立てる。
実体はリンジー博士に狙いを定め続けている。彼女はうなる実体から後方へと急いで離れる。
ネリス博士: 金属の円盤— 前に見たことがあります。
ウェラー博士: はん?
ネリス博士: セント・ヘレンズです! あんな感じの破片がありました! 奇妙な形態の磁鉄鉱で— 何てこと— サラ! ネオジムを!
ウェラー博士は再度実体に発砲するが、今度は円盤を狙う。銃弾は金属の音を鳴らして凹みを残し、実体は金切り声を上げて後ずさる。リンジー博士はふらふらと立ち上がるネリス博士を見る。ネリス博士が叫ぶと、リンジー博士は目を見開く。
リンジー博士: 磁石か! この—
リンジー博士は力一杯ネオジム磁石を投擲し、数メートル先に重々しく落下する。ヘビの頭部はそちらに向きを変え、突進する。実体は地面に激突して穴を掘り、ネオジム磁石の半分はその際に熔けて粉々になる。
リンジー博士はその場から走り去って二人のもとへ向かい、激しく息を切らす。
ネリス博士: あいつは出てった!?
リンジー博士: そうは思わない! この洞窟にゃ磁石が多すぎる!
ウェラー博士: 何があるんだ!?
リンジー博士は荒々しくSCP-8007-447を身振りで示す。
リンジー博士: 心臓だ! ドラゴンの心臓— あれ鉄だろ! セント・ヘレンズで見つかった磁鉄鉱は異常だった!
ウェラー博士: 私たちは巨大な磁石野郎と戦ってるかもって言うのか?
再び揺れが起こる。SCP-8007-447は動揺して見え、顎が開いて鋭い歯がむき出しになっている。
リンジー博士: あぁ、「かも」どころの騒ぎじゃない!
司令部: 誰か怪我はない?
リンジー博士: 今は大丈夫だが、もしアレが近接スーツに穴開けたとしたら、追加のお守りがどれだけ助けてくれるかはわからん。
ウェラー博士: わからないままでいられるといいな。
揺れが更に激しさを増す。
ネリス博士: クソッ! 戻ってくる!
ウェラー博士: 一体どうやってこいつを倒す?
リンジー博士: 円盤を壊せばいいんじゃないのか、知らないが! あんた機動部隊のトレーニング受けてるだろ、あたしは岩のことならわかるが、火のヘビはわからん!
ネリス博士: 集中してください!
ウェラー博士: メアリー、君の奇跡術は武器に使えるか?
ネリス博士: わ— 私はほぼ分析側のことしか知りません! 岩を投げるくらいはできるでしょうか?
地面が揺れる。
ウェラー博士: じゃあ岩を投げ始めてくれ。円盤を狙って。
炎のヘビが自分であけた穴から再び現れる。その注意は現在SCP-8007-447に向いているようで、旋回してドラゴンを見つめる。
ウェラー博士は金属の円盤に発砲し始め、すると実体は方向感覚を失うように見える。ネリス博士は奇跡術を使用して瓦礫をヘビの下に送ろうとするが、外れる。彼女は悪態をつく。
ヘビは金切り声を上げ、SCP-8007-447に跳びかかろうとする。
SCP-8007-447は咆哮を上げ、吻で岩の天井を切り裂く — それによりヘビ型実体に泥と岩が落ちていく。実体の炎は揺れ、傷ついたかのように叫び声を上げて素早く滑って離れる。リンジー博士は石の塊に当たるのを辛うじて避ける。SCP-8007-447は低い音を立てて後ろによろめく。
ネリス博士: 火だ! 火を消してください!
ウェラー博士: 時間を稼いでくれ! 弾薬を準備したい! もっと大きく崩壊させられれば奴を倒せる!
リンジー博士は、半分熔けてスラグになっているネオジム磁石に駆け寄って回収する。
リンジー博士: おいお前! [ネオジム磁石を振る] これが欲しいのか? あぁ?
ヘビ型生物はうなり声を上げ、頭部を構成する金属の円盤をリンジー博士に向ける。
リンジー博士が実体の注意を引く中、ウェラー博士はバッグから遠隔起爆薬を取り出して壁に設置し始める。
ネリス博士は崩れた岩の塊を掴んで、リンジー博士に接近する実体に向けて投擲する。岩は実体の尾を貫通して炎を渦巻かせる。実体は大きなシューシューという音を立てて首を振り、リンジー博士とネリス博士とを交互に見ているようである。
ウェラー博士は爆発物を固定し、リモコンを手に露頭の端に向かって逃走する。
ウェラー博士: 壁に向かわせろ!
リンジー博士は足を引きずって横に出て、弾薬のセットされた場所に近付く。手が震える。
リンジー博士: 来いよ! 目ん玉— ディスクはこっちに向けとけ、この野郎! こいつが欲しいんだよな? 欲しいか?
実体の頭部が彼女を追う。
リンジー博士: じゃあ取ってこい!
ネオジム磁石が投擲され、ヘビから約2メートル先の地面に落ちる。シューシューと音を立て、実体は前方、そちらの方向に向かう。リンジー博士は露頭の先端に向かって走り、ネリス博士もそうする。
ウェラー博士: 吹っ飛ばせ!
リモートチャージが起爆する。それにより壁に亀裂が入っていき、大量の瓦礫が火のヘビの上に落ちていく。岩と粉塵が降り注ぐ中、実体は火がパチパチと鳴るような金切り声を上げる。その火は弱まり、更に落ちてきて壁が部分的に崩壊する。それにより彫刻の一隅が失われる。
実体の金属の円盤が地面にぶつかってカチャカチャと音を立てる。
沈黙がある。リンジー博士はうずくまって膝に手を置き、息を荒くしている。
リンジー博士: あたしの歳食った心臓が爆発しそうだ。
ウェラー博士: ……正直上手くいって驚いたな。[呼吸による間] アレは…… どことも知れない場所からここまで、ずっと穴を掘ってきた。まさかこんな簡単にやられてくれるとは。
ネリス博士: 思うにあの円盤が…… 盾みたいになってたんでしょうか? それを使って掘ってたんだと。
ネリス博士とリンジー博士は円盤に接近する。
リンジー博士: これは磁鉄鉱だな、よし。[円盤に拳を打ち付ける] それにすごい厚い、と。まあだろうな。ちょっとウェラー! こっち来てライフルで叩いてみて。ヘレンズのと同じ変なのか確かめたい。
ウェラー博士: やってみる。
ウェラー博士も円盤に接近し、円盤にライフルの銃口を軽く叩きつける。銃口は貼りつき、磁気を帯びているかのように、引きはがすのに抵抗がある。
ウェラー博士: そうっぽいな。
リンジー博士: ビンゴ。殺竜犯を見つけた。
ウェラー博士: ここ以外に…… どれだけこいつがいると思う?
リンジー博士: 5体の死んだドラゴンと無数の傷から判断すると…… まあ大量だな。
ネリス博士は円盤に手を置いて集中する。低いハム音が空気を満たす。
ネリス博士: これはきっと何かしらの構造物だったのではないでしょうか? この円盤は…… 錨みたいなものだった。唯一実体のある部分で、残りはただのエレメントの投影なんです。
ウェラー博士: エレメンタルな構造物だとして、誰が造ったんだ? こういうのは作者がいるはずだろう?
ネリス博士: ええ。そうです。
SCP-8007-447は路頭に頭部を近付け、低い轟音を立てる。
[引っ掻き。歯。下で燃え盛る炎。子グモと共に這う母グモ。千の邪悪な爪の痕のある金属の円盤。焦土。泣く赤子を囲むコヨーテ。]
ネリス博士: おぅ。
リンジー博士: どうした?
ネリス博士: じ…… 地面の下にいるもの。彼らが投獄してるもの。た…… 多分悠久の炎は、それがこのようなものを造ったんだと伝えてきてるんだと思います。
ウェラー博士: つまり捕らえた奴らに報復してると?
ネリス博士: はい。なおかつとても効果的です。こいつらはドラゴンがちゃんと対処するには小さすぎます。
リンジー博士: この可哀想な子たちは…… なすすべなく内側から引き裂かれてる。
ネリス博士: ……助けになってあげないと。
ウェラー博士: うん?
ネリス博士: ドラゴンたちをです。炎の下の者たちを。助けてあげなければ。
リンジー博士: そんなの考えるまでもないと思ってた。
司令部: ネリス博士、具体的にどうしたいと?
SCP-8007-447は吼える。洞窟が震える。
[灰で満たされた空。煮え立つ海。燃え盛る世界。融けた炎の獣が天に向かって吼え、進路上の全てを打ちのめす。火砕流。大変動。]
ネリス博士: [歯を食いしばり、震える声で] これに対処する方法を考案できないかと提案しています。最低の最低でも、この構造物に。さもなきゃ私たちがやられるだけです。傷の酷い、瀕死の実例も数体見つかってます。もっと死ぬようなことがあれば—
リンジー博士: -彼らが幽閉してた大陸サイズのモンスターが出てくる。爆発的に。あたしらはこの星がこれまで見たことない噴火みたいなものの話をしてる。どれだけ大きいことか。どれだけ圧力があることか。
ネリス博士: そしてそんなことがあった場合何一つ生き延びる方法はありません。
リンジー博士: そして、あたしらの下で彼らが獣につけてくれてる、ほんのちょっとだけ隠喩的な鎖は、5体が死んだことでかなり弱まってる。
ウェラー博士: つまり財団側でも真剣に何か行動しようと提案しているわけか。にしても一体何をすればいい? 環太平洋火山帯は監視するには巨大すぎるぞ。実例も400体以上。
司令部: これはとんでもない状況みたいね。戻ってきて、チーム。情報を整理したい。
ネリス博士: その後は?
司令部: その後は上層部にこの問題を提出する。現状は予想をはるかに超えて切迫してるとわかった。
ネリス博士: それがいいですね。
リンジー博士: えっと…… 2時間歩く間にブレインストーミングするってことでいい?
ウェラー博士: そう思います。
ネリス博士はリンジー博士の助けを借りて震えながら立ち上がる、3人はSCP-8007-447に振り返る。ドラゴンは沈黙して彼らを見つめている。
リンジー博士: じゃあ行くけど — あなたたちのことは助けるから、いい? 世界が燃える光景を見せはしない。
ウェラー博士: 何か言っておくとすれば、君たちは自分たちだけで戦わなくていい、ってところか。
SCP-8007-447は喉を鳴らす振動に酷似した低い音を立てる。
[か弱い鳥を囲うように丸まるドラゴン。パチパチと鳴る小さく穏やかな炎。暖かさ。]
ネリス博士は微笑む。
ネリス博士: 嬉しいみたいです。
後記: チーム3名は問題なく地上に帰還することができた。実体との遭遇において負傷者はいなかった。
ギブス博士は議論、及び今後の行動計画のため地質学部門との会議を要求した。
| From: | hgibbs@scp.int |
|---|---|
| To: | overwatch.command@scp.int |
| 件名: | SCP-8007再分類提案 |
通知
当該アノマリーに関する発見のため、上記ファイルは古いものと見做されています。変更内容の性質上、SCP-8007改訂版へのアクセスはレベル5に制限されています。



