SCP-8012は、2023/08/04にサイト-327のキッチンの中央に出現した、円錐形の魔法使い帽子を被った知性あるカエルです。
クレジット
タイトル: SCP-8012 - 英雄の旅 (Ft. 大魔導士ウィグルバート)
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2025
著作権者: IndustryStandard,
ParallelPotatoes
原題: SCP-8012 - The Hero's Journey (Ft. Wigglebert the Great)
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 30
元記事リンク: ソース
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SCP-8012の写真
特別収容プロトコル: SCP-8012はサイト-327のキッチンに収容されます。交流は1日2回の給餌の時間のみに限定されます。1
説明: SCP-8012は、2023/08/04にサイト-327のキッチンの中央に出現した、円錐形の魔法使い帽子を被った知性あるカエルです。出現に続いて、SCP-8012は“選ばれし者”との対面を繰り返し要請し、対象者が見つかるまではキッチンから出ないと主張しました。
留意すべき点として、SCP-8012は誰が“選ばれし者”なのか、また対象者が見つかった時に何が起こるかについての詳細を一切開示していません。このため、財団は“選ばれし者”の捜索を完全に断念しました。
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件名: キッチンのカエルについて
ハロー、クレメンス博士
採用時ブリーフィング資料に1つ抜けてる点があったようなので確認させてください。キッチンにいるカエルのプロトコルはどうなってますか?
なんか俺が「選ばれし者」で「今がその時」とかなんとか言ってます。あと、光ってるポータルが現れて、カエルはそこに俺を押し込もうと (?) してます。
ご面倒おかけしたくは無いんですが、カエルがさっき「サッサトポータルニハイラヌカの呪文を受けてみよ」って叫んだんでだんだん不安になってきました。
よろしくお願いします、
パブロ・スミス
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Subject: Re:キッチンのカエルについて
パブロ。
その状況は普通ではない。カエルとの交流を打ち切り、直ちにそこから退出せよ。
ダグより。
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Subject: Re:Re:キッチンのカエルについて
パブロ?
<映像記録開始>
パブロが、ドアの敷居に生じた黄色く光る裂け目の前を歩きながら、携帯電話に時折目を向けている様子が映っている。反対側からドアを開けようと試みている職員らの声が多数聞こえる。
SCP-8012: お分かりですか、殿! あなた様こそ選ばれし者! それゆえ、あなた様がこの“奇想と不思議のポータル”をくぐり抜けるのが肝要なのです!
SCP-8012はパブロの脛に向かって飛び跳ね、無益に体当たりし続けている。パブロはSCP-8012よりもかなり重いので、全く動じていない。
パブロが振り返り、しゃがみ込む。
パブロ: いいかい、おチビさん。君のオシャレポータルはそりゃ楽しそうだけど、俺はどうしてもこの仕事が必要でさ、そこの正体不明のポータルに勝手に入るとほぼ確実にご縁が無くなるんだ。
SCP-8012が飛び跳ねるのを止める。
SCP-8012: ですが殿、またとない機会ですぞ! 奇想の! 不思議の!
パブロ: もうこれ以上俺の人生に“奇想”とか“不思議”はいらないんだよ、おチビさん。分かってくれるね。
SCP-8012: もしポータルの向こう側に莫大な財宝が眠っているとすればどうですかな、殿? あなた様の想像を絶する、語られたことすらない富があるならば!
パブロ: あのね… 俺は語られたことない富じゃなくて、ちゃんと事前に話に聞いてる富が欲しいんだ。その富を手に入れるには、ある人と会ってお話ししなきゃいけないんだよ。
SCP-8012: そこはどうか拙者のためを思って…
パブロはこめかみに手を当てる。
パブロ: [小声で] なんでよりによって今日なんだよ…
パブロはベンチに腰掛け、軽くうつむく。
SCP-8012: 殿ぉ…
SCP-8012は苛立った様子で左右に飛び跳ねる。
パブロ: 今度は何だ?
SCP-8012: ご自分の領主に会わねばならぬと仰いましたが、殿、拙者はその者が殿をさほど幸せにできるとは思っておりませぬ…
パブロ: 別に俺は好きで -
SCP-8012: しかし、ポータルの向こう側に待ち受ける冒険は必ずやお気に召します! さぁどうか、殿!
パブロは顔を両手で覆い、そのまま話す。
パブロ: で、絶対にそいつを退けてくれないつもり?
SCP-8012: あなた様の方が拙者よりもずっと早く飢えることになりますぞ、殿。もしそういう趣旨の質問だとすればですが。
パブロが顔を上げる。
パブロ: 違うけど…?
SCP-8012: おや。失礼いたしました、殿。
パブロ: でも… どうしても退ける気がないなら、他に選択肢も無いよな。
SCP-8012がその場で小さく飛び跳ねる。
SCP-8012: 誠でございますかっ?!
パブロ: まあ… うん…
SCP-8012: 弥栄いやさか!
パブロが数歩前に出る。
パブロ: じゃあ… 普通に歩いて入るのかい?
SCP-8012: はい、殿、全く以て単純な仕組みでございます!
パブロ: よぉし… どうにでもなれ…
パブロが裂け目の中に踏み込む。
SCP-8012とポータルはその直後に消失し、花の小山が後に残される。
数秒が経過する。
停電。
<映像記録終了>
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ようこそ クレメンス博士
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待機状態が [ERROR] 時間継続しています
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/refresh
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クリアランス承認
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新規の補遺をロード中です
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2024/02/18、採用面接のためにサイト-327を訪問したパブロ・スミスがキッチンに入室し、SCP-8012との会話を交わした際、SCP-8012は彼を“選ばれし者”と呼び、キッチンの出入口に半ば安定した亀裂状のポータルを召喚しました。その後、パブロ・スミスがポータルに進入すると2、サイト全体で10分間の完全な停電が発生しました。
次の映像記録は23階のトイレから回収されたもので、電力の復旧直後から始まっています。
<記録開始>
パブロが天井から大きな音を立てて3番目の個室に落下する。SCP-8012が彼の頭上に出現する。
パブロ: いってえ。
SCP-8012: そして始まる我らのマジカルアドベンチャーっ! 吟遊詩人たちはパブロ・スミス卿と大魔導士ウィグルバートの物語を永遠とわに歌い継ぐであろう!
パブロは頭をさすりながらゆっくり立ち上がり、足を引きずってトイレから出ていく。
パブロ: うぅ…
<記録終了>
自動動体ログは、パブロ・スミスが次の映像に捉えられるまでの約10分間、サイトの廊下を徘徊していたことを示します。
<記録開始>
SCP-8012を肩に乗せたパブロがよろめきながら管理官オフィスに入室する。頭部の小さな切り傷から血が流れ始めている。
パブロ: ハロー? クレメンス博士?
彼は周囲を見回す。部屋は無人で、荒らされた様子がある。
SCP-8012: なんと不思議なことでしょうか、殿!
歩き回りながら床に落ちた様々な書類や鉛筆を拾い集めているうちに、パブロはコンピュータが作動しているのに気付く。
パブロ: ん…
彼はコンピュータに歩み寄る。
クレメンス博士のデスクトップ
パブロはコンピュータを見つめる。
SCP-8012: 殿?
パブロ: いや、えーっと…
SCP-8012: ウィグルバートでございます、殿。
パブロ: そっか… 君…
表情に変化が無いにも拘らず、SCP-8012は悲しげに見える。
パブロ: これは - 何かな?
SCP-8012: おお - 領主の幻視装置でございます、殿!
パブロはもうしばらくデスクトップを見つめている。
パブロ: うん…
彼はマウスを掴み、様々な“アプリケーション”をクリックしようと試みる。何も起こらない。その後、彼は “Security_Footage.Important” と題されたアプリケーションをクリックする。
パブロ: なんにも起こらないぞ、君。
SCP-8012: もう少々お待ちください、殿!
近くのプリンターが起動し、印刷を開始する。プリンターが通常発する音の代わりに、フルートの演奏音が聞こえる。
パブロは音に気付き、ゆっくりとプリンターに近付く。
パブロ: どれどれ?
彼は一番上の用紙を手に取る。
1枚目の印刷出力
SCP-8012: 何たることか、殿! ドラゴンです!
パブロは2枚目を手に取る。
2枚目の印刷出力
SCP-8012: ドラゴンが天守閣を襲いました!
パブロは最後の用紙を手に取る。
3枚目の印刷出力
SCP-8012: そして領主と、全ての廷臣たちを攫ってしまったのです!
SCP-8012はパブロを熱心に見つめる。
パブロ: これをどう解釈すればいいんだ?
SCP-8012: 明白ではございませんか、殿? ドラゴンが殿のご友人方を全員攫ったのです、助けに行かねばなりませぬ!
パブロはもう一度“保安映像”を見降ろした後、無表情でSCP-8012に向き直る。
約30秒間、両者は無言で立ち尽くしている。
SCP-8012: 心が躍りませぬか、殿? 探求の旅クエストですぞ!
更に30秒間、両者は無言で立ち尽くしている。
パブロ: 君さ - これは… 絵じゃん。
SCP-8012: どういう意味でございましょうか、殿?
パブロ: MSペイントで描いただろ。
SCP-8012: そんなことはどうでも宜しいのです、殿! このドラゴンを - あなた様にとって大切な人々を連れ去ったのが火を見るよりも明らかなドラゴンを - 見つけ出し、討伐せねばなりませぬぞ!
パブロは溜め息を吐く。
パブロ: オッケー、分かったよ。じゃあ、そのためにはどうすればいいって言うんだ?
SCP-8012が息を呑む。小さなリュートがSCP-8012の前脚に出現する。
SCP-8012: 拙者にはその完璧な伝え方がありますぞ!
SCP-8012: エッヘン…
SCP-8012はリュートをかき鳴らし始める。演奏するにつれて音楽が調子外れになり、一定のリズムに沿わなくなる。
SCP-8012: “世界中どこの英雄よりも偉大なる英雄に申し上げます、
なぜなら彼3は自分の友を一人残らず
卑劣極まる卑劣で醜いドラゴンに奪われてしまったのだから。
その卑劣なドラゴンの倒し方を拙者がご説明4いたしましょう。
おお、この地に三つの太古のアーティファクトが散らばりて5、
どこぞの奇人が企んだ巧妙な試練に隠されたる。
彼は史上最も偉大なる前代未聞の偉大な勇者となり6
かの卑劣で醜いドラゴンは当然の如く屠られよう!”
パブロ: よし、了解だ。行こう。
SCP-8012: 誠でございますか、殿? 弥栄!
パブロ: ああ。とっとと終わらせよう。
<記録終了>
上記ログの出来事に続いて、パブロはボディカメラを装備し、サイト-327の施設を退出しました。10分後、彼が近隣の小売店に入る様子が捉えられました。
次のログは、店舗内の監視カメラとパブロのボディカメラの音声・映像を組み合わせて編纂されました。
<記録開始>
パブロとSCP-8012が小売店に入店する。パブロがショッピングカートを押しており、SCP-8012はカートの子供用座席に乗っている。
SCP-8012: 成程、この“すぅぱぁすとあ”にはアーティファクトが実に豊富に揃っておりますなぁ、殿。
パブロ: ん~。
パブロは調理器具の販売コーナーに入る。
パブロ: 見ておくべき… “装備”が山ほどあるだろ?
SCP-8012: 大変に潤沢な物資がございますぞ、殿!
彼らは数分間、無言で商品を見て回る。パブロは各種の医療品やキャンプ用品をカートに乗せる。別のコーナーに移った時、SCP-8012が突然カートから飛び跳ねて降りる。
SCP-8012: おおっ、殿! あれをご覧ください!
パブロは事務用品が陳列された壁に目をやる。
パブロ: どうしたんだ、君?
太古の刃
SCP-8012は山積みにされた安全ハサミの上に跳び乗る。
SCP-8012: 太古の刃です! しかもこんなに沢山!
パブロは頷き、そっとSCP-8012を摘まみ上げてもう一度カートに乗せる。
SCP-8012: 壮観ではございませんか!
パブロ: そいつはあまり役に立たないと思うよ… さぁ、そろそろお会計しに行こう。必要な“装備”はこれで全部揃ったと思う。
パブロはカートを有人レジまで運び、レジ係に頷く。
レジ係: お探しの品、全部見つかりました?
パブロ: うん - これで全部だと思うよ。
レジ係: そりゃ良かった!
レジ係が各商品をスキャンし、カートに積み直す作業に取り掛かる。
SCP-8012: ピッ! ピッ! ピッ! ピッ…
1分間の“ピッ”の後、パブロが支払いを済ませる。
レジ係: またのお越しをお待ちしてますっ!
レジ係がパブロにクーポン券を手渡す。パブロはそれを見やる。
レジ係: 素敵な一日を!
パブロ: どーも。
彼はカートを押してレジから離れる。ドアに近付いた時、SCP-8012がパブロの腕に跳び乗る。
SCP-8012: その小さな札は何ですかな、殿?
パブロは手に持ったままのクーポン券に視線を戻す。
パブロ: ああ、大したことないよ。ただのクーポン券…
彼は目を細める。
クーポン券
パブロ: もし俺が… “3羽の野生鴨”?を回収したら“兜・オブ・兜ィング”が入手できるって書いてあるな。
SCP-8012: 成程、殿。これはサイドクエストですな!
パブロ: “兜・オブ・兜ィング”ってのはどういう意味かいまいちよく分からない… けど… 魔法のアイテムっぽい響きがあるね? 役に立つかな?
SCP-8012: 確かに有益かもしれませぬが、寄り道など、拙者としては -
パブロ: それに君、この先どうすべきかについて、ちゃんとした手掛かりを全然くれないし。だろ?
SCP-8012: ええ、その通りですが殿、安易な助言は冒険の魅力を損ないますゆえ -
パブロ: じゃ、そういうことで。サイドクエストの始まりだ!
SCP-8012: 殿がそこまで仰るならば…
彼らが退店する。
<記録終了>
小売店を退出した後、パブロは近所の公園に向かい、購入した網で3羽のカモを捕獲しました。店舗に戻った彼は、レジ係から“兜・オブ・兜ィング”と別なクーポンを渡され、そのクーポンを使ってポテトチップスの空き袋を“サクサク食感の籠手”と引き換えました。これに加えて、彼は次のような物品群をそれぞれ受け取りました。
| クエスト | 報酬 | ステータス |
|---|---|---|
| 州境を越えてより安価なガソリンを入手する。 | 吝嗇漢の胸甲 | 達成 |
| 無作為な人物10人の郵便物を盗む。 | シカゴ都市圏の脚絆 | 達成 |
| 死闘でハエ1匹を倒し、その死骸を回収する。 | とってもクールなブーツ | 達成 |
| 宝珠 | 達成 | |
| 500本の木から1枚ずつ葉を集める。 | ジョージ・ビッグマンの大剣 | 達成 |
| Funko Popフィギュアを全部集める。 | 信じ難き魔力の杖 | 未達 |
前述のクーポンを受け取ってから間もなく、小売店の駐車場で次のログが記録されました。
<記録開始>
パブロは頭から爪先まで光り輝く甲冑に身を包み、巨大な銀色の剣を装備して駐車場の中央に立っている。SCP-8012はパブロの肩の上で熟睡している。
パブロ: ねえ、君?
SCP-8012: すぴぃ… ケロロロロ… すぴぃ…
パブロがSCP-8012をつつく。
SCP-8012: わぁっ! 曲者 - あ、殿、あなた様でしたか。
パブロ: 他に誰がいると思ったんだよ。
SCP-8012: まあ、それは、殿 - いえ… どうかお気になさらず。ようやくクエストを再開する決意が固まりましたかな? 軌道修正の手助けが必要ならば、喜んであの曲をもう一度演奏させていただきます!
SCP-8012の前脚にリュートが現れる。
SCP-8012: エッヘン…
パブロ: 待った! ちょ、ちょっと待ってほしい。
SCP-8012が軽く首をかしげる。
パブロ: 実はね、ドラゴンと戦う用意がもうできたと思うんだ。
SCP-8012: そうでしょうか、殿?
SCP-8012はショッピングカートに目を向け、それから改めてパブロに向き直る。
SCP-8012: 殿はまだドラゴンと対峙するのに十分な装備が整っておらぬようです。
パブロ: なっ - 俺の持ち物、見えてるよね?
SCP-8012: 無論です、殿。
パブロ: 魔法の剣があるだろ? 鎧もさ?
SCP-8012: はい、殿。ただ -
パブロ: ねぇ君。俺は準備万端だ。行き先を教えてくれよ。
SCP-8012が小声で呻く。
SCP-8012: 本気でそうお考えならば… 拙者は… 殿、拙者は心配でなりませぬ。
パブロ: そうだろうとも、君、気持ちは分かるよ。
SCP-8012: そして万が一、拙者の怠慢ゆえに殿が傷付くようなことがあれば - おお神々よ - どうしてそこから立ち直れましょうか、殿!
パブロ: 君の気持ちはすごく有難いけどね、本当にこれだけあればきっと無事に -
SCP-8012が大きな声でケロケロと鳴く。
SCP-8012: 譲歩いたしましょう、殿。
パブロ: 譲歩? どういう譲歩?
SCP-8012: そのぅ… 殿がアーティファクトを少なくとも1つ携えてくださるならば、かの悪臭の洞窟の在処をお教えいたしましょう。それ以上は譲れませぬ。
パブロ: アーティファクト?
SCP-8012は小売店に目を向ける。
パブロ: あ! そうか、あの… 安全ハサミのことだね?
SCP-8012: 太古の刃でございます、殿。
パブロ: そう、それ。それなら問題ない。お安い御用だ。
SCP-8012が溜め息を吐く。
SCP-8012: おお、なんと有難いお言葉か、痛み入ります、殿。しかし、おお -
SCP-8012が身震いする。
SCP-8012: これほど早く悪臭の洞窟に近付くことになるかと思うと寒気がいたします、殿、しかしそれは脇に置いておきましょう! これはあくまでもあなた様のクエストであって、拙者のではありませぬゆえ!
パブロ: そうか。どうもありがとう。じゃあ、行こうか?
SCP-8012が深呼吸する。
SCP-8012: 勇猛果敢なる英雄よ、あなた様のお導きのままに。
彼らは小売店に入る。
<記録終了>
太古の刃を 手に入れた !
小売店で安全ハサミを購入した後、パブロ・スミスはSCP-8012が開示した“悪臭の洞窟”の住所へと移動しました。次のログは、ボディカメラと目的地の建造物内外の監視カメラの映像を組み合わせて編纂されました。
<記録開始>
パブロとSCP-8012が郊外の道路を歩いているのが見える。パブロは依然として甲冑を装備し、剣を振り回している。
パブロ: ちょうど… この辺りの… はずだけどな。
パブロが前屈みになり、呼吸を整えながら周囲を見回す。突然、SCP-8012が息を呑む。
悪臭の洞窟
SCP-8012: おおっ、殿! 悪臭の洞窟、まさか生きて目にすることになろうとは…
パブロ: へ? あぁ。
パブロは籠手に挟み込まれたメモ用紙に自ら走り書きした住所を見る。
パブロ: 家?
SCP-8012: 醜悪ではございませんか、殿?
パブロは目を細める。
パブロ: …まあ、確かにだいぶアレな匠が設計したっぽいけど、俺だったら“悪臭の”なんて名前では呼ばないね。
SCP-8012: 英雄の目は魔導士の目よりも遥かに寛大らしいですな、殿。
パブロ: ああ、そうかもな。じゃあ早速行くか。
彼は玄関ドアに歩み寄り、ノックする。
SCP-8012: 大胆に攻めましたな、殿。
彼らはしばらく待つ。
パブロは呼び鈴を鳴らし、窓越しに屋内を覗き込む。
パブロ: 誰もいないみたいだ…
SCP-8012: ええ、殿。ドラゴンの奴めはきっとこの恐るべき土地の奥深くに身を潜め、不当に蓄えた財宝を怠惰に微睡みながら護っているに相違ありませぬ。
パブロはドアノブを捻り、施錠されているのを確認する。
SCP-8012: 残念ですなぁ、殿。もしあなた様があの大いなる古代のアーティファクト、全ての鍵を統べる鍵、あらゆる錠前の友を手に入れてさえ -
ガッシャン
SCP-8012が息を呑む。パブロは籠手で窓を叩き割り、内側からロックを解除して押し開ける。
パブロ: さ、入ろうか?
SCP-8012: そうですな、殿…
SCP-8012が跳んで屋内に入る。パブロは完全に甲冑を着込んだ身体で窓枠を通過するのに更に数分を要する。
パブロ: [喘ぎながら] ううっ - で、ドラゴンの居場所はどこなんだ?
SCP-8012: 恐らくは…
SCP-8012はパブロの周囲に大きく円を描くように飛び跳ね、それから静止する。
SCP-8012: こちらの方角から闇のエネルギーを感じます、殿。辿りますか?
パブロ: うん…
パブロは大きく息を吸い、少しの間、目を閉じる。
パブロ: やってやろうじゃないか。
パブロは、慎重に廊下を飛び跳ね、角を曲がるSCP-8012の後ろをついていく。硬質の足音と金属のぶつかり合う音が屋内の広範囲に響き渡る。
SCP-8012: [囁く] もっと静かにしてくだされ、殿… あの恐るべき獣がいつ襲ってくるか分からぬのです!
パブロ: [囁く] 努力はしてるんだけどさ -
廊下に面したドアの1つの正面で、SCP-8012がジャンプ中に硬直する。
パブロ: どうした?
SCP-8012が空中で回転し始める。
SCP-8012: 奴はここです… 殿… おお、なんという - この… 得体の知れぬ不穏さ… 恐怖… せ、せっ、拙者は -
SCP-8012は落下し、ビタンという音を立てて床にぶつかる。数秒後、SCP-8012は立ち上がり、軽く身震いし、パブロの肩に跳び乗り、甲冑の中の安全な位置に引っ込む。
SCP-8012: 拙者はこれ以上あなた様を導くことはできませぬ。
パブロは頷く。
パブロ: 構わないよ、君。お、俺に… 俺に任せろ。
パブロはドアの正面に立ち、左手をドアノブに伸ばす。彼がノブを掴んで捻ると、ドアが軋む。
ガチャッ
掛け金が外れる鋭い音が響く。パブロがドアを引き開ける。
ギイイィィィィ…
パブロ: オッケー…
ドアを開けた直後、パブロは室内に突進し、部屋の中央に立って防御姿勢を取る。
彼は周囲を見回す。
パブロ: どこだ…?
SCP-8012: お、おぉ、神々よ! と、と、殿! すぐそこに!
ドラゴン
パブロは剣を下げ、警戒を解いてドラゴンの方にしゃがみ込む。
パブロ: ただの -
SCP-8012: 今こそドラゴン討伐の時でございます、殿! 武器を取って奴を屠りなされ、大至急! 早く!
パブロ: 君 - ねえ君。落ち着け -
SCP-8012: これがクエストの目的です、殿! 為すべき事を為さねばなりませぬ! さあ!
パブロは手を差し伸べてドラゴンを撫でる。ドラゴンは彼に噛みつこうとするが、籠手の指をかじるだけに終わる。
パブロ: ちょっとご機嫌斜めみたいだね - あ、もしかして!
ドラゴンがシューッという音を立て、また噛みつこうとする。
パブロ: きっとお腹が空いてるんだ…
パブロは周囲を見回す。
SCP-8012: いったい何をしておられるのですか、殿?
パブロ: ちょっと待ってくれ、君… おっ -
彼は窓台に鉢植え植物を見つけ、歩み寄る。青々とした葉の間に、鮮やかな赤色のイチゴが幾つも見える。
SCP-8012: 殿?
パブロはイチゴの1つを引っ張る。
パブロ: こいつを…
パブロが引いている蔓は張り詰めているが、千切れない。パブロは少し間を置いて再び引っ張るが、鉢植え、土、植物は全く動かず、蔓が切れる様子もない。
パブロ: どうなってんだ - これなら - うっ…
パブロは剣の刃で蔓を切断しようとするが、剣が大きすぎて窓台の空間に収まり切らないのに気付く。彼は様々な角度から取り組むものの、やがて溜め息と共に剣を下ろす。
パブロ: ハッ - ハハハ - やってられるか。
パブロは剣を取り落とす。剣が床にぶつかる音が反響する。
彼らは数秒間、無言で立ち尽くしている。
SCP-8012: うむ… いやいや… それは流石に…
パブロ: どうしたんだい、君?
SCP-8012: いえ - なんでもございませぬ、殿。続けてください… あなた様は十分に賢明です…
パブロが溜め息を吐く。
パブロ: ウィグルバート。何が言いたい?
SCP-8012: おお! 殿っ! い - いえ、実は…
SCP-8012が甲冑の中から跳び出す。
SCP-8012: 太古の刃を使うというのはいかがでしょうか?
パブロは考え込む。
パブロ: そんなの -
パブロは溜め息を吐く。
パブロ: いや。いいだろう。君のアイデアを試そうじゃないか、ウィグルバート。
表情に変化が無いにも拘らず、SCP-8012は非常に誇らしげに見える。
パブロは小脇に下げたポーチに手を入れ、太古の刃を取り出す。
パブロ: ダメで元々さ…
彼は太古の刃を掲げ、優美に身を乗り出して、あるイチゴの蔓を挟み込む。
プチッ
蔓が綺麗に切断され、イチゴはパブロが添えたもう一方の手の中に落ちる。彼はイチゴを顔に近付け、微笑む。
パブロ: やったぞ。
彼は振り向き、甘美なる果実を見せつけながら、慎重にドラゴンに近付く。
彼が近付くと、ドラゴンは口を開く。
パクッ
ゴックン
SCP-8012: 殿、奴が果実を受け入れましたぞ!
ドラゴンは小さく円を描いて回り、仰向けに引っ繰り返ると、脚で腹を数秒間軽く叩いてから、すぐさま眠りに落ちる。
パブロ: うーん、可愛いねえ…
パブロはドラゴンの腹をさする。
SCP-8012: 眠っている時は、獣もかなり扱いやすくなると見えます…
パブロ: さて… クエストはこれで完了?
SCP-8012は沈黙し、パブロとドラゴンを何度か交互に見る。
SCP-8012: どうもそうは - おお! あれをご覧ください。
SCP-8012が横に向き直る。パブロがそちらを見ると、布を被せられた不安定な物体がある。
SCP-8012: 実に謎めいておりますな、殿!
パブロが布を剥がすと、鳥籠が現れる。
SCP-8012: おおっ、これは魂の牢獄! しかし、あなた様のご友人方はいったいどこに?
パブロ: ちょっと待てよ。何か入ってるぞ…
パブロは鳥籠を開け、その中に手を差し入れる。
オキュウリョウ姫
パブロ: 何だこれ。
SCP-8012: おおおぉぉぉぅ… これも至極当然の流れでございます、殿! 囚われの姫を救出せずに終わるクエストがどこにありましょうか! おめでとうございます!
拍手が聞こえる。
パブロ: へっ?
SCP-8012: クエスト完了でございます!
パブロ: えっ、ちょ -
突然の停電。
<記録終了>
上記ログの終了直後、“悪臭の洞窟”の半径1マイル圏内に所在する全ての家屋で、10分間の完全な停電が発生しました。その後、全てのサイト-327職員がその半径内の無作為かつ安全な場所に出現しました。
特筆すべきことに、サイト-327管理官のダグ・クレメンスは、“悪臭の洞窟”と呼称されていた彼自身の地所の敷地内に出現しました。次のログは停電の解消から間もなくして記録されました。
<記録開始>
依然として全身甲冑に身を包み、両手にオキュウリョウ姫とSCP-8012を持ったパブロが鳥籠の前に立っている。やや無表情のクレメンス管理官が脇の椅子に座っているのが見える。
クレメンス: つまり、君の主張によると…
クレメンスは片手を額に当てる。
クレメンス: 君はサイトの建物から街を横切って郊外までファンタジーの大冒険をしに出掛け、そこでドラゴンを討伐することになっていたが、代わりにうちのリジーちゃんにイチゴを食べさせて目標達成ということにしたんだね?
パブロ: その通りです。
クレメンス: そして8012 -
SCP-8012: ウィグルバート。吟遊詩人ウィグルバートと申します。
クレメンス: うん… 8012、君はもう我々の保護下に留まることに満足しているんだね?
SCP-8012: 拙者がパブロ・スミス卿の叙事詩を語り続けられる限りは、はい。
クレメンスは左右を見ながら両手で様々な外向きの動作を示す。
クレメンス: そうか、それは素晴らしいね! おめでとう!
パブロ: え?
クレメンス: 財団へようこそ、若者よ。
パブロは言葉が見つからない様子である。
クレメンス: よし、私の家から出ていけ。
パブロ: あっはい、勿論です。申し訳ありません。ありがとうございます。申し訳ありません。
パブロは部屋から出ようとする。
クレメンス: カエルは置いていくように。
パブロ: あっ - はい。ほら行きな、ウィグルバート。
SCP-8012: 勿論ですとも、殿。引退し、吟遊詩人となったばかりのウィグルバートの唄の最初の聴き手をどうして拒めましょうか!
クレメンスは眉を吊り上げ、強張った笑顔でパブロを見る。
クレメンス: 後日連絡するよ。
パブロ: 了解しました。本当にありがとうございました。
パブロが退室する。
SCP-8012: では、始めると致しましょうか?
SCP-8012がクレメンスの肩に跳び乗る。
SCP-8012: エッヘン…
<記録終了>
上記ログで為された決定に従い、パブロ・スミスは財団に雇用され、SCP-8012の研究主任に任命されています。
SCP-8012はEuclidに再分類されました。

注記: 収容環境に留まる条件として、SCP-8012は“物語を正しく語り継ぐ”ために、本文書に様々な画像を添付することを許可されています。オブジェクトの感情を傷つける恐れがあるので、これらの画像を除去・批評することはご遠慮ください。よろしくお願いします。
- 研究主任 パブロ・スミス
本ページを引用する際の表記:
「SCP-8012」著作権者: IndustryStandard, ParallelPotatoes, C-Dives 出典: SCP財団Wiki http://scp-jp.wikidot.com/scp-8012 ライセンス: CC BY-SA 3.0
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ファイルページ: SCP-8012 / ウィグルバート
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公開年: 2024
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ファイルページ: SCP-8012 / ドラゴンの襲撃2
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公開年: 2024
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ファイルページ: SCP-8012 / 太古の刃
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公開年: 2024
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公開年: 27 May 2015
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公開年: 2024
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公開年: 2024
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公開年: 2024



