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SCP-8019: 熊出没注意
著者: aismallard (著者ページ)
下書きを見てくれた smlt と
OptimisticLucio に感謝を。
タイトル: SCP-8019 - 熊出没注意
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2025
著作権者: aismallard
原題: SCP-8019 - Bear Danger
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 4
元記事リンク: ソース

SCP-8019境界領域。
アイテム番号: SCP-8019
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 前哨基地-533がSCP-8019の近隣に確立され、侵入者を検知するための監視設備が設置されています。必要に応じて、財団職員を前哨基地に駐留させ、民間人を退去させます。
SCP-8019-1との相互協定により、SCP-8019の反対側でも同様の措置が講じられています。SCP-8019を通過する際には、財団とSCP-8019-1双方の承認が必要です。
SCP-8019の原住民2体はSCP-8019-1の拘留下に送還されました。当該事件に関するカバーストーリーが流布されており、目撃者は既に特定されて、現在は記憶処理治療を受けています。
説明: SCP-8019はイエローストーン国立公園に存在する次元亀裂であり、通過することによって並行世界へのアクセスが可能です。この並行世界は、哺乳類の進化史に幾つかの相違点があることを除けば、ベースライン現実世界と概ね類似します。
SCP-8019-1はSCP-8019並行世界の主要な正常性維持組織であり、ベースライン現実の財団とほぼ同一の名称、組織構造、理念、プロトコルを有します。現時点では、財団とSCP-8019-1の関係は良好です。外交及び翻訳の手順に関しては文書-F0899-5を参照してください。
発見: イエローストーン国立公園に配備された財団エージェントらは、公園内における野生動物の攻撃についての報告から、潜在的な異常活動を示唆する不審な詳細情報を発見しました。これらの報告には、野生動物が二足歩行し、盗んだサル除けスプレーで民間人を攻撃し、自動車を強奪したと記されていました。
機動部隊カッパ-48 (“豚が飛んだら”) が出動し、公園当局と連携して道路を封鎖し、ヘリコプターで周辺地域の偵察を開始しました。3時間後、問題の生物2体は強奪した車両に乗って公園南側の道路に現れました。2体は抵抗やバリケードの突破を試みることなく停車し、無事に収容されました。
身体検査で知性以外の異常性は確認されませんでした。尋問 (言語の壁があるため、SCP-██を介して実施) の後、財団エージェントらは2体がキャンプをしていたと主張する区域を捜査し、SCP-8019を発見しました。越境後、SCP-8019-1との連絡が成立し、原住民2体の帰還計画が調整されました。
補遺8019-1: インタビューログ
帰還した原住民からの事情聴取を独自に実施した後、SCP-8019-1は書き起こしのコピーを提供しました。内容は次の通りです。
回答者: ジョン・モンロー
質問者: エージェント アーヴィン・ナッシュ
日付/時刻: 1998/07/12 10:21 山岳部夏時間<記録開始>
エージェント ナッシュ: あちら側でお二人を拘束していた方々が既にあらかたの事情を説明したはずですが、元の世界に戻ってこられた今、何が起こったのかをあなたの口からお聞かせいただきたい。
モンロー氏: 俺は別に構わんよ。丸く収まったとは言え、やっぱり他の人間と話す方がずっと落ち着くね。あの一連の騒動がどんだけ奇妙だったか、あんたには想像もつかないだろう。
エージェント ナッシュ: 全くです。さて、事件当時、あなたと奥様はどちらにいらっしゃいましたか?
モンロー氏: おう。イエローストーンで年1回のキャンプ旅行をしてたんだ、結婚してから毎年の恒例行事でね。ブレンダの父さんは昔、ボーイスカウトのリーダーだったから、あいつもよく一緒に遠足をしてたんだ。とにかく、俺たちはごく普通に過ごしてた。何も変なことは起きてなかった。
いつものハイキングコースを通ったが、どこかで道から少し逸れちまったんだと思う。いや、信じてほしいが、それほど遠ざかりはしなかった。どこでヘマしたかすぐ気づいて、正しい道筋に戻った。
そして、初めてあれを見た。クマだ! 道の先に! あの小道にあんなに堂々とクマが突っ立ってるのを見たのは初めてだった。あそこは普段、人通りがかなり多いコースなんだ。でも、どうすべきかは分かってた。ほら、音を立てるとか、身体を大きく見せるとか、そういうアレだよ。
でも、そいつの行動は俺が今までに見たどのクマとも違ってた。正直な話、俺たちがそいつを怖がる以上に、そいつの方が俺たちを怖がってるようだった。でも、こっちはそいつのおかしな挙動に震え上がっちまって、俺はクマ除けスプレーを出してそいつの顔面にぶっかけた。そいつは心底動揺して逃げてった。
エージェント ナッシュ: 成程。それからどうしました?
モンロー氏: うん、俺はパニクってたけど、ブレンダ、あいつはいつも冷静なんだ。俺を見て「なんか変ね」とかなんとかいった。だから俺も「ああ、そうとも」みたいに返したんだが、あいつはそうじゃないと言った。「見てなかったの、ジョン? あのクマは二本足で立ってたわ。それに服を着てたのよ。」
エージェント ナッシュ: 成程。どういう服でしたか?
モンロー氏: 実を言うと、俺はその時点では何も気づいてなかったが、ブレンダの言うことは信用できる。あいつの話によると、こう、カーキ色のエプロンかなんかを着てたそうだ。どうも人間の服っぽくはなかったらしいな。
あー、とにかく、俺たちは両方軽く取り乱してたが、ハイキングを終えた。ところがいざキャンプ地に戻ってみると、荷物がどこにもない。ああ、勿論探したとも。少なくとも1時間、辺りをぐるぐる回ったり、近場に足を運んだりして荷物を見つけようとした。
その後、ひとまず自然保護官パークレンジャーに会って、クマに襲われかけたのを報告すべきだと決めた。でも、道路に近付くと、そこにはもっとクマがいたんだ。みんな二本足で立ってて、妙な服を着てた。しかもそいつらときたら、まだ何もしてないってのに、俺たちに気付いた途端に慌てふためき始めたんだ。走って逃げたり、キャンピングカーの中に隠れたりした。普段ならパークレンジャーがいる小さいブースの中にも、ちっぽけな帽子を被ったクマがいて、そいつはどうにかして無線を、つまりトランシーバーを掴んでた。信じられなかったね! クマがトランシーバーを持つのを見たことあるか? おっそろしく器用な前足だよ。
何がなんだかさっぱり分からないし、そこら中にクマがいるんで超ビビったけど、クマ除けスプレーはまだ持ってたし、さっきも言った通り、向こうの方が俺たちを怖がってるように思えた。だからめちゃくちゃ困惑しちまって、ほとんど怖くないような気さえしたもんだ。まあ、怖かったけどよ。分かるかな、こんな言い方で。
エージェント ナッシュ: ええ、理解できます。次にどうしましたか?
モンロー氏: うん。とにかく、その時点ではただあそこから逃げ出したい一心だった。安全な文明社会に戻れるならキャンプ用品なんか諦めても構わなかった。特にあの時、俺はクマたちもエアゾール缶を持ってるのが見えてたからな、正直落ち着かなかったんだよ。スプレーを掛けられるのは御免だった。すると、制服を着たクマの一団が現れて、俺たちに近寄ってきた。お互いに唸り合いながらな。
いよいよ、ブレンダも俺も、そいつらがかなり賢いクマだってのを認めざるを得なくなった。計画を練って連携してるってことは、明らかにその辺の森にいる動物とは違う。だから大至急そこから逃げたかった。俺たちの車は見つかったが、見た目が微妙に違ってて、ドアが開かなかった。だから俺は「こうなりゃヤケクソだ」ってんで、窓をぶち割ってドアを開けてから、祈りながらイグニッションに無理やりキーをねじ込んでエンジンを掛けた後、全速力で走り去った。
二人とも夢を見てるのかと思った。だって、そうだろ? 最初のクマと遭遇して以来、俺たちは人間を一度も見かけてなかった。少し車を走らせても、やっぱり人間はいなかった、一人たりともだ。でも少なくとも、今は車の中にいると思えば気が楽になった。
10分かそこら、黙って車を走らせた。その頃になると、ブレンダは頭が良いから、色々と疑問を抱き始めた。「ねえ、ジョン」と言うから、俺も「どうした」と言った。
ブレンダは確かこう言ったんだ。「きっと私たちがクマなんだわ。」
普段ならバカなことを言うなって笑い飛ばすところだが、その時その場では、俺は妻が正しいと分かってた。つまり、そう考えると辻褄が合うじゃないか?
エージェント ナッシュ: 私の理解が正しければ、奥様はその頃にあなた方が拘留されたと仰いましたね。
モンロー氏: そうだ。何台かの車、銃を持ったクマ、それにイヌを連れたクマが道路を封鎖してた。道に敷かれたスパイク。ランプを光らせたパトカー。ブレンダも俺も、それを一目見てもうダメだと悟った。
1時間ぐらい経ってから取調室に連れていかれた。部屋の真ん中に鉄格子とかががあって、反対側に無愛想な面構えをした年配のクマが座ってた。他にも何頭か、傍に立ってメモを取ってるクマがいたはずだ。そいつが小さな紫色の機械をかざして唸ると、それが英語になった。呆気にとられたよ。
ある程度事情が呑み込めた後、俺たちは何が起こったかを説明した。クマたちはやけにあっさり理解してくれて、俺たちは礼儀正しくしたし、向こうも礼儀正しく応対してくれた。
エージェント ナッシュ: 成程。確かに彼らから受け取った記録と一致します。その後、彼らはあなた方を収容室に移し、各種の検査を行った後、一晩放置したのですね?
モンロー氏: ああ、その通り。あんたもあいつらと話したのか?
エージェント ナッシュ: 実は、彼らがあなた方の移管を手配しにこちらへ来たのです。あなた方の説明を手掛かりに、2つの世界を接続する… あー、ある種のポータルを発見できたと説明してくれました。
モンロー氏: へえ。まあ、あり得る話だよな。結局のところ、あいつらもプロだ。
モンロー氏は合間を置く。
それとな。あー… 部屋を出る前に聞いておきたいんだが、あんた、こう、向こう側の連中と連絡を取ってるか?
エージェント ナッシュ: ええ。
モンロー氏: 俺たちがスプレーを掛けたクマの話をしただろ? 俺にはあいつが男なのか女なのか分からないが、その、申し訳なかったと向こうに伝えてくれないか? 当時はちょっとビビってたし、混乱もしてたが、昨日の夜にブレンダと話し合って、俺たち二人ともあいつに悪いことをしたと思ってるんだ。
エージェント ナッシュ: 伝えておきましょう。
<記録終了>