SCP-804-JP
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SCP-804-JP-1内に陳列されたSCP-804-JP-3群

アイテム番号: SCP-804-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-804-JP-1の周囲100mは、カバーストーリー「林業会社の私有地」が適用され、対人センサー付きのフェンスによって封鎖されています。部外者が侵入した場合はセキュリティ担当者によって対応、必要があれば適切な記憶処理を行って下さい。

SCP-804-JP-2の挙動は、店外に設置された監視カメラによって24時間体制で監視します。通常のパターンと異なる行動を見せた場合は、直ちに研究班へ連絡して下さい。

SCP-804-JP-3を1日に最低10個は購入し、24時間以内にDクラス職員に摂食させて下さい。SCP-804-JP-3は専用のケースに入れて慎重に持ち運び、摂食以外では決して破損させないで下さい。SCP-804-JP-3を故意に破損させる実験の被験者は、Dクラス職員にのみ許可します。

説明: SCP-804-JPは、SCP-804-JP-1、-2、-3の3つの実体で構成されます。

SCP-804-JP-1は、ごく一般的なベーカリーの外見をした建造物です。平屋建てで、サイズは約10m×15m×3mです。正面入口の看板には「ベーカリー・Andersen」と記述されていますが、管轄地域の保健所、消防署、税務署等1には該当する店名は登録されていませんでした。電気配線や上下水道が通っていないにも関わらず、内部では電灯や水道が利用可能です。

発見当初は、███県██市の商店街に存在していましたが、初期の収容違反事例(後述参照)において、現在の所在地である██県██郊外の緑地帯へと転移しました。

SCP-804-JP-2は、若いコーカソイド系女性の外見をした人間型実体です。SCP-804-JP-1の店員として振る舞い、来客に好意的な態度で接します。氏名を尋ねると“ブレッド夫人”と名乗ります。質問には答えますが、氏名以外の答えは毎回異なる等、内容には信憑性がありません。具体例については、第█回インタビューログ804-JP-2を参照して下さい。

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SCP-804-JP-2

SCP-804-JP-2の行動パターンは概ね定形的で、毎朝9:00になるとSCP-804-JP-1を開店し、以降、接客、レジスターでの会計、店内の掃除などをして過ごします。食事や休憩等を行っている様子はありません。20:00になるとSCP-804-JP-1を閉店し、シャッターを閉鎖します。現時点では、SCP-804-JP-1外に出たことはありません。

SCP-804-JP-2に対して敵対的な行為を試みた人間は、即座に自失状態に陥ります。SCP-804-JP-2が勧めるままにSCP-804-JP-3(後述参照)を購入する以外の行為が取れなくなり、この状態はSCP-804-JP-1から退店するまで継続します。

SCP-804-JP-3は、SCP-804-JP-1内で販売されているパンです。原材料は小麦粉、乳製品、野菜等、一般的なパンと差異はなく、摂食も可能です。現在、2種類の異常性が確認されています。

第1の異常性は、摂食した人間の心理的性質を変化させるものです。デュセイ/エリックバーン人間性診断テストの結果、元の性質をベースにしつつも、自己主張の欲求が薄まり、社会的規律を重視するようになることが確認されています。また、特筆すべき点として、食料を粗末にする行為に激しい抵抗感を示すことも挙げられます。この効果はAクラス記憶処理で解除可能な他、個人差はあるものの時間経過でも強制力が薄れていくことが確認されています。被験者の臨床例については、第█回実験ログ804-JP-3を参照して下さい。

第2の異常性は、摂食に適さない状態にされた場合2、それを実行した人間と共に消失するというものです。Dクラス職員を用いた実験では、転移先は閉鎖型異常空間と推測され、GPS等を用いた位置特定は成功していません。消失した人間が発見された例は、現時点ではありません。詳細は█回探査ログ804-JP-異常空間を参照して下さい。

SCP-804-JPは2016/██/█、███県警察への、「兄がパンを踏み潰したら消えてしまった」という通報により発見に至りました。県警に潜入していたフィールドエージェントが通報者の児童から聞き取りを行い、現場に残されたSCP-804-JP-3を回収、購入したのが近隣の商店街に最近開店したSCP-804-JP-1であることが判明しました。この児童と近親者にはCクラス記憶処理が行われ、カバーストーリー「交通事故死」が適用されました。

財団は当初、SCP-804-JP-1の店員であるSCP-804-JP-2の確保を試みましたが、前述の異常性により失敗に終わりました。次善策としてカバーストーリー「改装工事中」を適用しSCP-804-JP-1の封鎖が行われましたが、5日後にSCP-804-JP-1がその場から消失、約700Km離れた現在の所在地へと転移しました。一定期間来客が途絶えることが転移のトリガーになったと推測され、これを防ぐためにSCP-804-JP-3を購入する手順が特別収容プロトコルに導入されました。

第█回実験ログ804-JP-3: 2016/██/█

SCP-804-JP-3の摂食実験ログより、実験後に被験者のDクラス職員D-7122へ行った聴取部分を抜粋

〈前略〉

D-7122: いやあ、美味いパンだったなぁ! パンで感動したのなんて、生まれて初めてだよ。

咲沼博士(当事案研究主任): 味以外に、何か特筆すべき点は? 見たところ、特に変化はないようですが。

D-7122: 変化も変化、大変化だよ! これまでの人生観が、すっかり変わっちまった!

咲沼博士: ほう、具体的にどのように?

D-7122: 気付かされたよ、俺達は他の生き物から、命を貰っているんだってことに。あのパンを口にした瞬間、ああ、俺は今、命を食べているんだ。この美味さは、命の美味さだ。そんな気持ちが、わーっと湧き上がってきてさ……。昔の俺は、自分一人の力で生きてると思い込んでた。傲慢だったよ。

咲沼博士: なるほど。そう言えば、あなたは実験後の夕食の席で、同僚と口論になったそうですね。何でも、彼が食事を残していることに、腹が立ったとか?

D-7122: [興奮した様子で]あ、当たり前だろ! 食いもんを残すなんて、命への冒涜だ!

〈後略〉

第█回インタビューログ804-JP-2: 2016/██/█

〈前略〉

※D-7122がSCP-804-JP-1に入店する。

SCP-804-JP-2: あら、いらっしゃい、加藤3さん!

D-7122: あ、ああ、こんにちは、ブレッドさん。

SCP-804-JP-2: 新作の根野菜カレーパンはいかがでした?

D-7122: めっちゃ美味かったぜ! いやあ、最初は肉の入ってねえカレーパンなんてと思ったけど、カブもゴボウも味がしっかりしてて……。

咲沼博士: 私語はそれぐらいに。前回インタビューと同じ質問を繰り返して下さい。

D-7122: あ、はい。ええと、ブレッドさん。あんたに、聞きたいことがあるんだが。

SCP-804-JP-2: まあ、何かしら? パンのレシピ以外なら、何でも聞いて!

D-7122: ええと、ここで店を開く前はどうしていたんだい?

SCP-804-JP-2: いえね、ここだけの話よ? 実は私、████皇太子と████・████4の隠し子でね。

D-7122: あんた、この前は「佐賀の農家の出身で」とか言ってなかったか?

※この後、自身の異常性や、SCP-804-JP-3を販売する動機、閉店後の過ごし方等について質問するも、ことごとく前回までのインタビュー時とは異なる内容の返答。

〈後略〉

探査ログ804-JP-異常空間: 2016/██/█

目的: SCP-804-JP-3を損壊した際に転移させられる異常空間の探査。

手段: D-4290にGPS付き通信機を装備させた上、SCP-804-JP-3を足で踏み潰させ、異常空間に送り込む。

結果: D-4290、SCP-804-JP-3を踏み潰した瞬間に、SCP-804-JP-3と共に消失。スーパースローカメラの映像を再生したところ、両者共に実験室の床に沈むようにして消失する様子が確認された。

GPS、消失後より位置エラー。

消失後、約3分後に実験室の通信機がD-4290からの通信を受信。内容は以下の通り。

〈通信開始〉

※映像は激しいノイズで判別不能

D-4290: [水が泡立つような音]すけて、助けてくれ!

咲沼博士: こちら調査本部。D-4290、応答して下さい。

D-4290: 光が、遠く[水が泡立つような音]浮かべない! パンが、重くて[水が泡立つような音]足に、くっついて[水が泡立つような音]

咲沼博士: 水中にいるのですか?

D-4290: ち、違う。水じゃな[水が泡立つような音]

[多数の人間の呻き声らしき音声]

咲沼博士: 他にも人間が?

D-4290: 大勢いる! みんな、浮かべな[悲鳴]お、お前は、俺が殺し[水が泡立つような音]は、離せ! ああ、沈む、沈[水が泡立つような音]なさい、ごめんなさい! もう、食べ物は粗末にしま[水が泡立つような音]

[地響きらしき音声。分析の結果マグマの噴出音と相似]

D-4290: そうか、ここは[水が泡立つような音]

咲沼博士: ここは?

D-4290: 地獄か。

[甲高い笑い声らしき音声]

〈通信中断〉

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