SCP-8067
評価: +14+x
blank.png
thatstupidhoss.jpg
SCP-8067-B (SCP-8067-A-3による芸術的描写)
アイテム番号: 8067
レベル4
収容クラス:
keter
副次クラス:
none
撹乱クラス:
keneq
リスククラス:
warning

特別収容プロトコル: SCP-8067-Aはサイト-59の標準的なヒト型生物収容室に収容されています。SCP-8067-Aは起きている間はいかなる脅威ももたらしませんが、強化拘束具と心電図モニタリング装置を備えた特注のベッドでのみ睡眠が許可されます。起床時、彼らが見た夢の内容は記録されます。

また、SCP-8067-Aの収容室には、プロトコル58-ゲリュオンに則って以下の対策が施されます。

  • ボール紙製の円 (直径0.5m) を床に6枚以上敷き、上向きの面に読みやすい字で“馬用罠”と書く。
  • 塩10グラムを魔法円の形に配置する。
  • 引っ繰り返した空の塩入れを、塩で描いた魔法円の隣に配置する。この塩入れには“粉末ウマバクハツカリウム - 注意! 馬が触ると爆発!”というラベルを貼っておく。
  • 高さ30cmのゴジラのポリ塩化ビニル製フィギュアを収容室のドアに向け、両手にプラスチック製のフォークとナイフを接着する。このフィギュアには“ジェレミー、馬を貪る者”と記した財団支給品のレベル1セキュリティクリアランスIDタグを着用させる。

(注記: これはプロトコル58-ゲリュオンの第16修正版です。現時点でSCP-8067の発生を45%減少させていますが、SCP-8067-Bは“定期的な予防接種”及び“基本的な問題解決能力 - おめえには分かんねえだろうな、ボケナス!”と称するものを通してこれらの対策に順応することが判明しており、58-ゲリュオンの更なる修正は現在も進行中です。)

全世界の民間法執行機関に潜入している財団職員は、SCP-8067-Aとの関連が疑われる犯罪活動を監視します。そのような犯罪の容疑者が有罪判決を受けた場合は、尋問及び潜在的収容のためにサイト-59へ連行します。

SCP-8067-Bの直接的な収容は現時点では不可能です。SCP-8067-Bに関する知識が公に広まった場合、潜在意識に起因する偽陽性反応者や悪意ある行為者がSCP-8067-A個体として収容される可能性があるため、SCP-8067-Bへの言及は財団ウェブクローラやその他の難読化手段でできる限り排除する必要があります。

説明: SCP-8067はカナダ、アメリカ合衆国、ウズベキスタン1の総人口の推定0.0148%に影響を及ぼしている現象です。SCP-8067の誘因は現時点で解明されていませんが、睡眠時遊行症2の病歴がある人物が影響されやすい傾向があります。

被影響者 (SCP-8067-Aと指定) は徐波睡眠に入った時点で、著しく暴力的かつ興奮した睡眠時遊行症の発作を起こします。SCP-8067-Aは影響されていない時には発揮不可能な力業を実行できます - 例として以下が挙げられますが3、これらのみに限られません。

  • 自らの体重の最大10倍の重量を持ち上げる。
  • レンガやコンクリートを噛んで破壊する。
  • 最高時速120kmで走る。
  • プラスチック、ガラス、排泄物、鋼鉄、砂などの通常は食用に適さない物体を消化する。

この被影響状態は正確に23分30秒間持続します。この間にSCP-8067-Aを覚醒させることは不可能です。覚醒したSCP-8067-Aは、他者から知らされない限り、現実世界において被影響状態で取った行動の記憶を持ちません。

サイト-59には現在10名のSCP-8067-A個体が収容されています。収容環境外でのSCP-8067-Aの生存率は低く、これ以上の個体の確保は困難であることが証明されています。SCP-8067-Aの最も一般的な死因は、道路への飛び出しによる交通事故です。

SCP-8067-Bは、SCP-8067を引き起こす夢の中に出現する実体です。SCP-8067-Bの外見描写は被影響者ごとに様々ですが、どの証言においても性別不詳のパントマイム馬であるという点で一致します。SCP-8067-Bは被影響者を侮辱し、殺意を煽ることが可能ですが、SCP-8067-Bの侮辱は通常、覚醒中の人物からそのような反応を引き出すことは滅多に無いと考えられる内容のものです - 例として「おめえは絶対にパン・穀類には分類してもらえねえぜ!」4、「そんなもんを灌漑農法だと思ってんのかよ?!」5、「どうした、小僧、自分の内臓をアルファベット順に並べる程度の男気もねえんか?!」6などがあります。

音声ログA-1-1
対象: SCP-8067-A-1、旧称 D-81747、男性、48歳
録音日時: 2024/4/10
事件発生日時: 2009/2/20
事件現場: テキサス州 フォートワース
注記: 対象は初めてSCP-8067を経験したことが直接の原因となり、15件の殺人で有罪判決を受けた死刑囚だった。彼はDクラス職員として自発的に財団に参入したため、死刑の執行を免除された。

<記録開始>

いやまあ、話すけどよ、できることなら綺麗に忘れちまいたいような事件だったからさ。分かるだろ? だからちょっと時間をくれ。…ありがとう。

2月20日のことだ。午前4時。俺は倉庫勤務のシフトを3連チャンでこなして帰宅したばかりだった。あんたたちからあれが“異常”だとかなんとか言われるまでは、眠気覚ましにがぶ飲みしたレッドブルがいけなかったんだとばかり思ってた。

俺は床で眠っちまった (と言うと聞こえが悪いが、カーペットがとにかく柔らかかったし、大体一人暮らしはどこで寝たって文句を言われる筋合いはねえんだ) 。夢を見始めるまでそう長くは掛からなかった。そもそも俺は普段、夢を覚えてたりしねえからよ、それでアル中だった時期に逆戻りしたんだとばかり。ただ、その夢はめちゃくちゃ鮮明だった。細かい所まで全部言える。…ああ、うん、どっちみち、そうするためにここにいるんだ。

俺はまだガキの頃、80年代に住んでたツーソンの家の子供部屋に戻ってた。ベッドは俺には小さすぎたよ。両脚が床に垂れ下がってた。ファミコンはテレビの横、部屋の隅っこにあったが、なぜかピンク色だった。外は妙に寒かった。雪が降ってたような気がする。

電子ドアベルの音が聞こえてた。玄関じゃない、俺の部屋のだ。それがまた耳に痛いほど甲高い曲でよ、あのアレ、こう、“ダララッタタタ・ダララッタタタ・ダララッタラタタタ・ダーッダーッ”ってやつ7 - まあ、そうなんだけど、それをぶっ壊れたグラフ電卓で演奏しながらリバーブをかけてるような音だった。しかもドアベルを押しても直前の曲は途切れなくて、新しい演奏が重なって流れるんだぜ。

で、廊下にいるバカはそのドアベルを連打してやがったんだ。

20秒ぐらいして、俺はもうその客を無視できなくなった。特に声を聞いた後はもう我慢できなかった。 「パブリッシャーズ・クリアリング・ハウスの訪問購読販売員サマのお出ましだ、チャーリー・ブラウン!」 その声自体も… 妙だった。信じられねえほどうざったい南部訛りの鼻声なんだが、男でも女でもなかった。イタチがカントリーバンドの歌手になったら多分あんな声だと思う。

とにかくドアベルを鳴らすのを止めさせるつもりでドアを開けた。あの野郎は止めなかった。ドアベルを叩き続けた。

“あの野郎”ってのは、つまり… オーケイ、昔、学校のお遊戯会で、生徒が2人でマヌケなポニーの衣装を着て、1人が前脚、もう1人が後ろ脚の役をしたことがあったんだが… 何の話か分かってくれるか? あんな感じのがいたんだよ。

二人羽織の馬の着ぐるみが俺を見つめてた。足はそれぞれ違う種類の靴を履いてた。人間の靴だ、馬の靴じゃねえ。1つはカウボーイブーツだったな。そいつは見苦しい出っ歯とどんより濁った目をしてて、こう、誰が衣装を作ったにせよ、“雄々しい名馬”を目指してたわけじゃなさそうだった。

奴は俺の目をじっと見つめた。

そして…

あの駄馬はこうほざきやがったんだ。「よっす、抜け作! ついさっきおめえのまつ毛をロシアンマフィアに売り飛ばしてやったけど、俺、お咎め無しで逃げ切ってやっから!」

人生であの時ほど腹が立ったことは無かった。…未だに頭にくる。なんでだよ?! まつ毛なんてどうだっていいだろうが!

…すまん。つまりだな、未だに自分でもよく分からない理由で、俺はその言葉にブチキレたんだ。あの馬の家族の前で奴の心臓を抉り出してやりたかった。奴の死骸を使って、馬相手にしか成立しない新種の戦争犯罪を発明してやりたかった。

そしてあの馬はそれを分かってた。ダフィー・ダックみてえにゲタゲタ笑いながらパッパカ走っていった。

俺は何時間にも感じられるほど長く、あのふざけたクソボケポニーを徒歩で追いかけ回した。視界は狭くなった。そこにあったのは俺と、馬野郎と、時々その間を遮るから素手で引き裂かなきゃならないぼやけた障害物だけだった。

ようやく奴に追いついたのは、トタン板でできた小屋の中だった。確か“まつ毛貯蔵庫”って看板が出てたはずだ。まつ毛をぎっしり詰め込んだどデカいメイソンジャーが沢山あった。どの瓶にもマーカーペンで何かキリル文字が書いてあった。

ポニーは見つからなかったが、少なくともサプライチェーンをぶっ潰すことはできると思った。そうすりゃ、ロシア人は“まつ毛をどこに隠しやがった”とかなんとか言ってあの駄馬の脚をへし折るかもしれない… 実際そうしたかもしれないだろ?

だから、瓶を持ち上げて壁に投げ付け始めた。1本目 - 爆発炎上した。2本目 - ネズミの群れに変わって、1匹残らず死ぬまで脱糞した。そして3本目を手に取った時 -

- 俺は隣町のマクドナルドで目を覚ましたんだ。後ろの壁には俺とちょうど同じ大きさの穴が空いていた。両手で抱えていたのはフライ調理人の生首だった。俺は全身、血とションベンとゲロにまみれていた。外からはパトカーのサイレンが聞こえた。

最初にやったのは、生首を落として自分の目に触ることだった。

(溜め息。)

…まつ毛はまだ全部残ってたよ、ありがたいことに。

<記録終了>

サイト-59のSCP-8067-A個体ログ:
番号 詳細 最初の被影響時の状況 注記
SCP-8067-A-1 男性、48歳 上記参照。 収容中にSCP-8067の発生頻度は3倍に増加している。
SCP-8067-A-2 男性、63歳 SCP-8067の発生以前、対象は武器を違法に備蓄していた過激派の自由主義者だった。SCP-8067は銃乱射事件を引き起こしたが、被害は対象が一人暮らしをしていた住宅内のみに抑えられた。合計5,398発が発砲された。 対象の友人たちは、SCP-8067-Bを派遣したとしてアメリカ政府を非難するソーシャルメディア・キャンペーンを開始した。財団による抑制の努力は部分的にしか成功していない。
SCP-8067-A-3 女性、32歳 対象はSCP-8067-Bを追跡して州間高速道路55号線に進入し、車両28台の玉突き事故を引き起こした。 「ああするしかなかった。あいつはパパモビルを盗んだのよ。」
SCP-8067-A-4 男性、12歳 対象は農場で生活しており、SCP-8067の被影響下で、家族が飼育している牛を数頭捕食しようと試みた。対象は当時5歳だった。その後幾度かの事件は、家族が当局からの隠蔽を試みたため、通報されなかった。 プロトコル58-ゲリュオンの初期案は、対象の協力を得て、彼がSCP-8067-Bを撃退するために用いた個人的な方法を参考に考案された。
SCP-8067-A-5 女性、24歳 対象はSCP-8067の被影響下で5階の窓から転落し、重傷を負った。その後、ごく僅かに残った体力で救急隊員2名の頸動脈を噛み切った。 対象は昏睡状態であり、従って常に拘束する必要がある。
SCP-8067-A-6 男性、31歳 対象は狂乱状態の後半を費やし、ダッジ・チャージャー2015年モデルの自家用車との肛門性交を試みた。 「証明のしようがないことは承知していますが、私は誓ってあの馬の妻からやってくれとはっきり頼まれたこと以外は何もしませんでした。」
SCP-8067-A-7 女性、40歳 対象は運送業者に勤務するセミトレーラー・トラックの運転手だった。ウィスコンシン州の休憩所に立ち寄った際、運転席で睡眠を摂り、SCP-8067-Bを追ってトラックを走らせようとした。休憩所は破壊された。 夢の中でSCP-8067-Bの殺害に成功したと主張する2名のうち1名。これはSCP-8067-Bが彼女の夢に再び出現するのを防止できなかった。
SCP-8067-A-8 男性、30歳 対象はUSS ███████の現役アメリカ海軍水兵だった。被影響時に艦の砲台の1つを操作し、通りかかった中国籍の貨物船を砲撃した。財団の介入によって、辛うじて国際的な事件には至らなかった。 「よく聞け、夢だろうとなかろうと、自分が何に砲撃していたかはちゃんと分かっている。あの馬は間違いなくテロリストだ。」
SCP-8067-A-9 男性、19歳 対象は狂乱状態の間に、アパートの自室を完全に破壊した。 報告によると、収容下での最初の夜に、対象がSCP-8067-Bを痛烈に侮辱したところ、SCP-8067-Bは泣き始め、やがて爆発した。対象はこれ以降SCP-8067の影響を受けていないが、再発の可能性が経験的見地に基づいて否定されるまでは観察下に留められる。
SCP-8067-A-10 男性、38歳 対象は大西洋横断中の飛行機内で睡眠を摂り、SCP-8067を経験した。狂乱状態を生き延びた乗客10名 - 飛行機の操縦経験があった対象自身を含む - の努力により、飛行機はニューアークへの緊急着陸に成功した。 収容以降、対象の精神状態は著しく悪化しており、毎晩SCP-8067の影響を受けている。下記参照。

インタビューログ - Re: 症状深刻化
質問者: ジョセフィン・アーランガー博士、サイト-59精神科部門長
回答者: SCP-8067-A-10
日付: 2024/8/30

<記録開始>

(SCP-8067-A-10はインタビューテーブルに着席し、居眠りするまいとしている。アーランガー博士が入室する。)

アーランガー: おはようございます、A-10。近頃よく眠れないと聞いていますが。

A-10: ん。

アーランガー: 我々としても力になりたいですが、もう少し詳細に話していただく必要があります。

(A-10は溜め息を吐き、皮肉っぽい笑みを浮かべる。)

A-10: “眠れない”というほどじゃない。どちらかと言えば“眠らない”んだ。

アーランガー: 詳しく教えていただけますか?

A-10: 睡眠断ちをしようと思ってね。どれだけ長く眠らずに済むか確かめるんだ。必要最低限に留めたい。

アーランガー: 健康に良くないのは分かっていますよね。

A-10: だろうな。しかし、私の考えでは選択肢は2つだ。その1: 倒れるまで起き続ける。その2: 予定通りに寝る。その後30分間、あのクソッたれのが並べ立てる忌々しい意見に耳を傾ける。追いかけることさえできない。

どっちに転んだってお手上げなのは変わらない。全ては神の思し召しかもしれないな。私が地獄に落ちる前の軽いプレビューだ。私が乗客たちにやったことを思えば、これも当然の報いだ。

アーランガー: いいですか… あの飛行機で起きたことは、いずれもあなたのせいではありません。どうすればあなたにも分かっていただけるでしょうね。それに、まあ、私自身は不可知論者ですが、もし神が存在するならば、裁きを下す前にあらゆる要素を考慮に入れると思います - あなたの意図、業績、意識の有無、魔法のポニーから加えられた侮辱、そういうものをね。

A-10: うん。

アーランガー: 先へ進みましょう - 例のパントマイム馬から影響を受けた人々の中でも、あなたは収容下で最も多くのSCP-8067状態を経験しています。木曜日の心電図が示す限りでは、1晩に8回発生していますね。脳卒中を起こさなかったのが不思議なほどです。なぜ自分が頻繁に狙われるか、心当たりはありますか?

[反応無し。]

A-10?

[反応無し。]

睡眠不足なのは理解していますが、インタビュー中は起きていた方が賢明ですよ -

[A-10が小声で呟きながら立ち上がる。目は虚ろである。彼は無秩序に手を振り回す。]

A-10: …遂に捕まえたぞ、馬公… 拘束具とはもうおさらばだ… 四本足の蹄付きのクソ袋め…

アーランガー: ああっ、マズい - 警備員!

[アーランガー博士はドアを開けたまま逃走する。]

A-10: …いや! うるせえ! 俺よりも沢山レモンのオモシロ豆知識を知ってる奴なんていやしねえ8… てめえはレモン学校に通ったことなんかねえだろう… 噓つきめ…

[A-10はテーブルの脚の根元に噛みつき、丸ごと口に入れる。]

[彼はテーブルの脚を飲み込む。]

…ここに戻ってこい… そのふざけたドアを俺の前で閉めるんじゃねえ… 開けろ…

[彼は開いているドアを閉め、それから破壊する。]

<記録終了>

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。