アイテム番号: SCP-810-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 現在、プロトコル"天の声"を不定期に実施する事により、SCP-810-JPの収容が維持されています。加熱イベントに関するあらゆる天文学的証拠は、財団エージェントによって秘匿・改竄されます。
説明: SCP-810-JPは、局所的な瞬間加熱現象に関与する二体の実体(SCP-810-JP-A、B)の総称です。
SCP-810-JP-Aは身長2.41m、体重 0.15kg、頭部に図案化された太陽の特徴を有している人型実体です。SCP-810-JP-Aは未知の言語1を用い、モールス信号に酷似した方式で意志の疎通を試みます。解析の結果、SCP-810-JP-Aが『第九の光』と名乗っている事、『愛する者の病を治す為に力を借りたい』と述べている事が判明しました。また、SCP-810-JP-Aは記憶の大部分を喪失しており、その原因について『恐らくは"カンバツ2"に巻き込まれた為』と述べています。SCP-810-JP-Aは財団職員に対し協力的な態度を示しています。
SCP-810-JP-Bは一切の生命兆候を示していない、白くひび割れた頭部のみの実体です。この頭部はSCP-810-JP-Aと同じく何らかの概念を表していると推測され、SCP-810-JP-Aにより"北風"、"月"、"雲"の三つのモチーフが挙げられています。SCP-810-JP-Aは、これらのモチーフの中から一つを選択し、『SCP-810-JP-Bはそこに宿る"精霊"である』と確信した振る舞いを見せます。また、その選択は頻繁に変更されます。SCP-810-JP-Bの表面温度は摂氏14度を維持しており、現在に至るまで変動は確認されていません。SCP-810-JP-Aは『暖める方法さえあれば間違いなく回復する』と繰り返し主張しています。
10日に一度、SCP-810-JP-Aは極度の興奮状態に陥り、SCP-810-JP-Bへの"頬擦り"と共に単一の名詞あるいは動詞と思われる信号3を発し始めます。最短で5分後、『SCP-810-JP-Bから最も近い位置に存在し、かつモチーフとされている対象』が瞬時に摂氏8000度付近まで加熱されます。この加熱の対象は自然界の物である必要はなく、ユニット内で小規模な"北風"、"月"、"雲"を再現する事によってリスクの回避が可能です。SCP-810-JP-Aは、一連の出来事について『全く記憶に無い』と述べています。
SCP-810-JPは、2005/██/██に愛知県███市上空で発生した"大規模なプラズマ爆発"の直後に発見されました。エリア-81██への移送後、"地球周回軌道上でのプラズマ爆発4"、"███博士のオフィスの消滅5"とSCP-810-JP-Aの"月"、"北風"への言及をきっかけに、加熱イベントの対象となる条件を特定する実験が行われ、現在の特別収容プロトコルが制定されました。
追記1: 2012/██/██の加熱イベントにて、ユニット-1、ユニット-3、ユニット-4の3ヶ所で"デコイ-C内部の温度上昇"が検出されました。この日を境に、加熱イベントの対象は3ヶ所へと増加しました。増加の原因を究明する試みは全て失敗に終わっています。
追記2: 2013/██/██現在、加熱イベントの対象は15ヶ所に及んでいます。対象の更なる増加に対応するため、プロトコル"天の声"が考案され、実施の是非について審議が行われています。
追記3: 2013/██/██、プロトコル"天の声"が実行に移されました。以下は、実行翌日にSCP-810-JP-Aが発した信号の翻訳です。
聞こえているだろうか?まずは謝らせてほしい。物言わぬ君を目の当たりにした時、私は深く絶望した。あの瞬間、君は愛する者であると同時に、得体の知れない存在でもあった。思い出せなかったのだ。愛する者だ、という事実を除いて何も。姿も、名前も、思い出も、私の中にありはしなかった。
そして私は君を取り戻そうとした。君の事を知らない私は、君でない物を君だと決め付け、届かぬ言葉を投げかけていた。届くはずもなかった。君は"北風"よりも、"雲"よりも、"月"よりも遠くにいたのだから。
昨夜、君の声が聞こえた時、私は夢を見ているのではないかと疑った。そして君に促され、記憶を無くして以来初めて、夜空という物を見上げてみた。そこには君がいた。白く儚げな光の帯。"天の川"。
きっと、君を取り戻すには途方もない時間がかかるだろう。だが私はやり遂げてみせる。そしてもう二度と、君を見失いはしない。
天の光は全て君なのだから。