SCP-8140

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特別収容プロトコル:

SCP-8140実体へのアクセスは適切な研究職員に限定されており、7日間毎に1実例のみを取り扱えるよう制限されています。加えて、各暦月内に検査できるのは3実例のみです。どのような状況であっても、月に3回以上物理的に扱った人物は、サイト-91医療センターの安全病棟に拘留され、トラウマや、自分自身や他者への潜在的な危険がないか心理評価されます。



内務事後デブリーフィング
2004年12月12日



自分の言葉で、何が起きたか教えてくれないか?

どこから始めたらいいかわからない。

「なぜ」からはじめたらどうだ?

私は起きたことに耐えられなかった。何も役に立たなかった。変えねばならなかった。

いつからこの感情がプロジェクトに入り込むようになったんだ?

ファイルは読んだだろう、どうやってそうなったかは知ってるはずだ。

いいから頼む。





説明:

SCP-8140は、アナトリア南東部に位置する紀元前8000年頃に放棄された集落、ギョベクリ・テペの遺跡外部の発掘現場から発掘された異常な遺物の総称です。

この遺物は、遡及的な経験的存在論的効果を示します。初めてSCP-8140実例を手作業で取り扱う人物は、遺物の元の所有者の経験からなる現実感の強い幻覚を経験します。これらの経験の対象とされる期間は大きく異なり、ごく僅かな瞬間の記憶を包含しているものもあれば、数年分の情報を含んでいるものもあります。幻覚の継続中、SCP-8140実例を扱っている人物はあたかも自身が元の実体であるかのような記憶を経験します。これには、視点主体の目を通して記憶上の出来事を経験することが含まれますが、観測者は常に自身の自己同一性を認識しているため、完全な解離はありません。

存在論的効果は、情報/経験の非時間的転送からなります。主観的には、SCP-8140実例取り扱う人物は発生した各記憶を経験します。客観的には、経験の伝達にかかる時間はごく僅かで、通常は1分未満です。主観的な経験から基底現実への移行は、全てではなくとも、以下の副作用の一部を引き起こします。

  • せん妄。
  • 倦怠感。
  • 動揺。
  • 認知力の低下。
  • 限定的な失語症。
  • 相貌失認。
  • 現実感喪失。

これらの副作用は数分間継続します。遺物から取扱者への経験の異常な伝達は、顕著な記憶補強性を示します。記憶処理では、伝達された記憶を消去することに一切成功していません。発見された各遺物は低レベルのアキヴァ放射線を放出しており、識別のための基準値が作成されています。

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ギョベクリ・テペの以前に発掘されたエリア。

これらの遺物は、初期ダエーバイト文明および別の不明な文化の文化的識別子を示しており、紀元前9000 年+/-100年頃のものであり、ギョベクリ・テペ外部の近傍の平野に存在するこれまで未発見の層に由来します。以前はこの場所から異常な遺物は産出しませんでしたが、2004年11月前半の定期考古学発掘により、これまで未知の層が明らかになりました。遺物の異常性は、SCP-8140-1の発掘時に初めて発見されました。その際、一人の大学院生がそれを扱った後に精神異常と説明できる症状を経験しました。

サルク・バカンル1に潜入していた財団エージェントは考古学者の症状を報告しました。財団部隊はメタン堆積物のカバーストーリーの下で現場を隔離し、イスタンブールの病院に入院中の大学院生にインタビューしました。記憶処理は一切効果がないことが判明し、この大学院生は上級研究員ニルス・リンドクヴィストを補佐するためにプロジェクトに雇用されました。財団は発掘現場を差し押さえ、研究チームの他のメンバーに記憶処理を施しました。



サイト-91医療センター
2003年10月2日

あいつはどこだ?

誰かにその頭の傷は見てもらいましたか?

私がお前に質問したんだ。

サー、血が出ていますよ。助けてもらいたいのであれば、落ち着く必要があります。お座りください。

私は座ってたくなんかない。知らないとならないのはどこに私の-

お止めください。私はあなたをお助けしようとしているのです。しかし、診察できるように座っていただくか、そうでなければあなたを鎮静させるかのどちらかです。

わかった。でももしもう一度落ち着けなんて言ったりしたら、お前の顔面を殴るぞ。

そんなことは夢にも思いません。ではそちらの大きな切り傷を診てみましょう。





リンドクヴィスト博士の個人研究ログ
2004年11月14日.



マルコムはベールの向こう側の生活に適応するのは難しいと感じたが、彼の選択肢は限られていた。記憶処理の効果がないのに、財団は彼が何をしたのかを知りながら自由にうろつかせることはできなかった。他の選択肢としては、彼をイギリスの自宅に軟禁するというのもあったとは思うが、現場での直接の経験とアノマリーの発見を考慮すると、彼に仕事を与えたほうが生産的であるように思えた。結局、私もほぼ同じ方法で採用されたんだ。

SCP-8140-1は奇妙だ。表面上それは鉄器時代の剣に似ているが、その起源は旧石器時代後期に遡り、全体が数百万年前の木の化石の破片から形作られている。私が「形作られている」と言ったのは、それが伝統的な方法で構築されたのではなく、この形に成長するよう慎重に操作されたように見えるからだ。柄頭は普通の人間の手で容易に扱うことができるよりも大きく、損傷した状態でも重さは30キロ近くあり、扱うには重すぎる。一番奇妙なのは何だろうか。刃は時間と圧力によって磨耗しているが、皮膚を断つのに十分な鋭さを保っている。マルコムが強化収容グローブを使用してそれをしまっていたとき、彼は手を滑らせ、刃が手袋を突き抜けて掌に刺さった。

何世紀も前の木の化石で作られた剣が、数百ポンドの圧力と放射線に耐える手袋を突き破り人間の皮膚を刺した。たとえ記憶の転送がなかったとしても、それだけで驚くべき異常だろう。

マルコムの異常な記憶についての説明にはまだ不十分な点が多く残されている。彼はその経験にはほぼ混乱している。私は彼に発掘チームを率いて、他にアキヴァのホットスポットがないかエリアを調査してもらう。私自身も記憶転送を体験してみることにした。


2004年11月15日.



私が想像していたものとは全く違った。私はそれだった。それは私だった。誤解しないでほしいのは、私は自分の人生を思い出すことができ、妄想していたわけではないということだ。だがその瞬間は、私は彼(それ?)の感じたもの全てを感じた。

よし、まず始めに。説明: 戦闘時の見晴らしからして彼の身長は3メートル近くあったと推定される。信じられないほど強く、あの剣を保持するほど強く、彼はそれを振るえた。ああ、それを振るうことが本当にできたんだ。ここは大規模な軍事行動の場所だった。何千人もの戦闘員が、石斧や槍、そしてより多く私のような、あるいは私であったものを使って戦っていた。ややこしい。

副作用はすぐに消えたが、記憶はどこにも消えない。私は私自身、それ自身、彼自身、何であれその臭いを嗅ぐことができた。濡れた肌と毛皮。おぞましい狼男のようだがそうではなく、間違いなく霊長類なのだが、巨大だ。彼/私は、私と同じような姿の他の2人と一緒に、小さなゴブリンのような生き物と戦っていた。人型だが泥と草と血で作られていたのだろうか? わからない。彼らは将軍、あるいは指揮官に従っていたので、彼らが何であるかは問題ではなかった。流れるような深紅のローブ、金色の頭飾り、火山ガラスで作られた槍を身に着けた女性で、そしてその目は…… 彼女の目は燃えていた。念のため言っておくと、文字通りの意味ではない。まさにそのような怒りで輝いていた。どうして彼女を攻撃できるというのか?!?! そんな軽蔑。彼女が何を言っているのか私には理解できなかったが、私たちが彼女に対立し、彼女も私たちに対立していることはわかっていた。私(彼/それ?)はこの小さな人型実体を何十体も殺したはずだが、私たちが彼らを統御する女性に近づいたとき、彼女は掌を切り、私たちに血を浴びせ、その飛沫は大砲のように私たちに向かって突撃し、そして暗転。

ヴァルガ管理官と話す必要がある。これらの経験を記録する何らかの方法が必要だ。誰かの夢を記録できる装置について聞いたことがあるが、もしかしたら使えるかもしれない。細部まで話すのは難しいから、記録できればより理解を深めるのに役立つだろう。

私が見た女性がダエーワであることはほぼ確かだ。これこそ私の待ち望んでいたものかもしれない。仕事に戻る唯一の理由がこれだったんだ。他は何も関係ない。





サイト-91管理官オフィス
2003年10月2日

これはあなたのせいじゃない。

当然そうだ。お前のせいだ。

それはフェアではないわね。

一切フェアなんかじゃない。私に残されたのは腹に空いた焼け付く穴と憤りだけだ。お前の選択の結果何が起きたか見てみろ。

カウンセリングを考えてもいいんじゃないの。

そんなものは必要ない。出ていけ。

これは提案じゃない。あなたはちゃんと働けていない、そして私たちはあなたに働いてもらわねば困るの。ここで私たちが何をやっているかお忘れないよう。

このアノマリーたちをろくに真面目に理解しようともしないしょうもない仕事をか。

あなたがそれを信じられないのはわかる、ここであなたがやってきた仕事の手前は。

私が何を信じているかもわからない。私がわかるのは、これがどれだけ永遠に感じるかだけだ。最後の日に戻ってあいつを追い返すためならなんだってする。

本当にごめんなさい。

そんなことされても何の役にも立たない。





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SCP-8140-5 & -6。

最初の発見から1週間以内に、他にも多数のSCP-8140実例が発掘されました。研究目的での高い将来的な有用性を考慮して、リンドクヴィスト博士にはプロトタイプの脳感覚可視化記録 (OVR) 装置2の使用許可が発行されました。彼は間もなく遺物の中に保存されているさまざまな経験を目録化し始めました。

実験ログ

アノマリー: SCP-8140-5
説明: ダエーバイトのルーン文字が刻まれた石製の鏃
参加職員: ニルス・リンドクヴィスト博士
日付: 2004年11月18日


[記録は主観的視点から始まる。金とトパーズの腕輪で装飾された女性の腕が、完全に泥と血と草で形成されたように見える人型の像3の額にダエーバイトのルーン文字を刻んでいる。ルーン文字が完成するとゴーレムは目覚め、ダエーバイトの女性祭司が腕で支えてゴーレムを立ち上がらせる。被験者の視点から武器で満たされた木製の棚の近傍に立つ別の女性へと切り替わる。女性は赤いローブを着ており、漆塗りの木の板を金と貴石で覆った胸当てを付けている。もう一人の女性のベルトには長い石製の儀式用両刃の短剣4がぶら下がっている。女性は実体に弓矢を差し出し、実体は彼らを連れて部屋の外へ歩いていく。]

何だこれは?5

[視点が切り替わると、対象は庭園を見下ろす1階の窓まで歩く。庭園のはずれでは、別のダエーバイトの女性祭司が実体らを約40体の実体からなる2つの小隊に集めているのが見える。]

不明: 進展はどうですか?

理解できた。6

[もう一人の女性祭司に視点が切り替わると、彼女は窓際の対象に近づく。]

対象: 草の子らのこと?

女性祭司: そう、でも守備全般に関して。

対象: 想定通りうまくいくと思う。構築物を作れるだけの才能を持っているのは私だけというを考えると、ご覧のとおり、進捗は遅い。アディトゥムからの援軍を待った方がいい。7

こんなものは無用だ。ゴーレムの作り方は知らなくていい。

女性祭司: 時間がありません、もうすぐ奴らが来ます。

対象: 少なくとも彼らの木の戦士の一人には会える機会がある。ずっと一人自分用に欲しかったの。想像してみて。命ある木の幹部が私たちの前衛を村に導くの。すごいことじゃない。

女性祭司: それはまたの日に、族長。今日私たちは兵士を増強するためにもっと草の子を作成する必要があります。ここにいるわずかな徴収兵では、夜闇単独すら撃退できません。

対象: そうね、わかった。

女性祭司: 族長、率直に聞いていいですか?

対象: 今回だけね。

女性祭司: どうしてあなたとお姉さまの将軍は儀式を使うことを排除したのですか?

何の儀式だ? それについて教えてくれ!

対象: 準備ができてないの。彼女は頂点を目指して努力してるけど、それは当てにできない。

女性祭司: それが救ってくれることもあるのでは?

対象: そうかもしれない。でも、私たちはお互いと徴集兵に頼らなければならないの、娘よ。泉は野蛮人を押し返す力として、彼女の人生を肯定する活力を私たちに貸してくれるはず。

女性祭司: 泉は加護を与えてくれます、族長。

対象: その通りよ。

[対象のPOVはテーブルに戻り、粘土、草、血の混合物から別の体を作り始める。彼女は独り言をささやく。]

対象: でもそれで十分なの?

記録終了





サイト-91心理学者オフィス
2003年10月21日


前回のセッションでお話ししたことについて考えましたか?

やめろ、俺は子供じゃない。ああ、当然考えた。精神的な休暇を与えられた、他にすることはない。

それで結果は?

……私は実際にはヴァルガを責めていないということ。

ええと?

現実を直視するよりも彼女を責める方が簡単だった。

では、その現実とは何なのですか?

私が自分を責めるということ。

どうしてそのように感じるのですか?

あの日私たちはサイトに来る予定ですらなく、ただ自分の宿舎からものを取りに行く必要があっただけだった。もし忘れていなかったら、多分……

そのような考え方はおやめください。それは起きたのです、今更変えることはできません。

その通りだ。でももしそうだったらと願ってしまうんだ。





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SCP-8140-8。

実験が開始すると、リンドクヴィスト博士は彼が経験した視覚記憶をダエーバイト人の唯一の歴史的記録と比較するためにSCP-140へのアクセスを要求しました。いかなる拡大の発生も阻止するために警備下でのみに制限することを条件にアクセスが許可されました。リンドクヴィスト博士は本文とSCP-140が財団に最初に収容されて以来発生した変化の記録を相互参照し、以下の複数の結論に達しました。

a) SCP-140は、これらの遺物の起源である時期の前後のアナトリア南東部地域での戦いについて言及していた。

b) ダエーバイトの歴史におけるこの出来事の記録は、以前はSCP-140内の証拠にはなかった。一方、以前はこの本は帝国初期の歴史についてかなり曖昧だった。これはダエーワ史に最近新たに追記されたが、記録されていなかった。拡大の原因となった人物は不明。

ダエーバイトの魔法とSCP-140

財団は、出来事の結果を改変することで敗北から勝利へと奪回することを意図して作成された少なくとも2つのアノマリーを発見しました。哲学的には、ダエーワは時間の概念にほとんど関心を払っていませんでした。彼らは、少なくともダエーワ自身にとっては、出来事は日常生活において可変のものであると考えていました。どのようにしてか、数千年にわたる歴史の中で、帝国の支配階級は奇跡論儀式を利用して出来事を書き換え、結果を遡及的に改変することができました。

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SCP-140実例。

特に注目すべきはSCP-140 - 「ダエーワ年代記」と題された歴史書で、これもまた強制的に読者にダエーワの歴史を拡張させる逆因果的アノマリーです。

本の内容が拡張されるたびに、遡及的に本の拡張内容を反映するよう現実が歪められます。拡張イベント後の本における兆候が発見された後、考古学者は以前はそのような層が存在しなかった場所でダエーワの証拠を発見しました。

ダエーワは多数の異常なアイテムや儀式に関連していますが、彼らの文化の存続に最も本質的に結びついていたのは、逆因果的奇跡論儀式でした。リンドクヴィスト博士は、SCP-8140の異常な記憶の中においてダエーバイトは、この儀式を達成しようとしているのではないかと推測しました。


実験ログ

アノマリー: SCP-8140-8
説明: 直径約1.3メートルで全体が木の化石で作られた盾。
参加職員: ニルス・リンドクヴィスト博士
日付: 2004年11月20日


[他の実験と同様、記録は主観的視点から始まり、今回は考古学的発掘現場の周囲に類似した風景の、低木やまばらな木々の中で開始する。視点は地面から少なくとも2メートル離れており、視覚は毛皮で覆われた複数体の大きな霊長類をその中に収めるようにパンする。対象は木の槍を持った腕を掲げ、約500メートル離れた神殿群と周囲の村を指差す。8]

対象: [理解不能。]9

[他の霊長類の1体が木に向かってさえずるような声を上げる。木々は動き始めて伸び、概ね人型に類似した形をとる。そのような8体の樹状実体が腕を上げ、毛皮で覆われた実体の呼びかけに応答する。]

これはSCP-3140を想起させる。なんてことだ、あれは以前は異なる文化が創ったものだったのか?

[視点対象はSCP-8140-8を掲げ、それに槍を打ち付ける。村の方向に、対象に向かって走ってくる人影の集団が見える。さらに数体の霊長類が対象の横に整列し、樹状実体とともに前進を開始する。被験者は左を見て、次に右を見て、40頭以上の大型霊長類とさらに十数頭の樹状実体が存在することが判明する。彼らは一塊となり、村と神殿に向かって走り始める。村から飛び出してくるもう一方の勢力に向かい、別の霊長類が空中を飛び跳ねる。それは明らかにSCP-8140-1に似た剣を持っている。その容姿は、以前に確認されたものと同種の人型ゴーレム約80体であることが判明する。ゴーレムはそれぞれ、槍、棍棒、弓などの石製の武器を持っている。]

対象: [叫び声] [理解不能。]

[両軍は衝突し乱戦となる。草製実体の槍が対象の胸を刺すが、対象は槍を引き抜き、盾をゴーレムに叩きつける。対象より小型の実体は地面に倒れる。対象はゴーレムを空中に持ち上げ、腕と足を掴んで真っ二つに引き裂く。戦闘は数分間続き、霊長類と樹状の仲間たちは草製ゴーレムを圧倒するが、数人の死傷者を出す。対象が首と胸に数本の矢を当てられ、土の中に倒れると記録は終了する。]

記録終了


リンドクヴィスト博士の個人研究ログ
2004年11月21日.



新しいビジョンを観るたびに、ますますそれは暴力に満ちていく。あまりにもたくさん同じ繰り返しの記録が含まれるファイルは省略する。霊長類実体の動機が何にあるのかは、記録から彼らの発言を識別することができないため言葉には表せない。彼らは戦略的に組織し、武器を使用し、知性と文化の明らかな兆候を示している。

私はそれよりもダエーワの方に興味がある。彼らの歴史にそのような紛争があったとは誰も知らなかった。ということは、SCP-140の最新の拡張以前にはそれは起きていなかったということか? それとも拡張によって、これまで知られていなかった歴史が明らかになったのだろうか?

彼らは私を魅了する。彼らの要求に応じて歴史を書き換える。戦いに負けた? 変えればいい。ついてない日? やり直せばいい。その力を手に入れられるなら何だって捧げよう。あの一日だけを変えるために。

きっとダエーワには、この苦しみがいつ終わるのだろうかと考えながら天井を見上げる夜はなかったのだろう。

私はこの苦しみがいつ終わるのだろうかとは思わない。残されたのはそれだけなんだ。もしもうそれが失くなってしまったら、あいつはどこにいるというんだ?





サイト-91心理学者オフィス
2004年6月19日


私はあそこにいるべきだった。

いえ、いるべきではありませんでした。もしいたとして、どうするおつもりだったのですか?

病院のベッドに屈んで泣いてるよりも役に立つことだ。

この話は以前もしました。あなたはこの世界に向かって怒りをぶつけ続けているわけにはいきません。

何を言えばいい? いい取引なら喜んでやる。

私たちはまだその段階にいるとは思いません。

私たちはどんなとこにもいない、先生。 私は これに対処してる一人だ。

あなたは友人方に連絡を求める必要があります。

それがどれだけ助けになるかわからない。

助けになるだろうと思うのは一つだけだ。

それは何でしょう?

もしも時間が戻ったなら。





デブリーフィング転写
2004年11月22日

ヴァルガ管理官: こんなにも早く来てくれてありがとう、ニルス。

リンドクヴィスト博士: 問題ない、とにかくただ目録化に着手するだけだ。

ヴァルガ管理官: それこそが私が話したいこと。

リンドクヴィスト博士: SCP-8140?

ヴァルガ管理官: 遠回りにだけど。先週あなたが記録した実験ログを確認したんだけど、複数の点からこの会議が不可欠なことがわかった。SCP-1000についてご存知?

リンドクヴィスト博士: いや、知らない。

ヴァルガ管理官: このプロジェクトのあなたのクリアランスレベルを上げるわ、博士。私がこのことを伝える理由は、このファイルに関する情報を知らない職員には何も明らかにできないから。

[ヴァルガは机を跨ぐように厚いマニラ紙の封筒をリンドクヴィストに渡し、彼は紙をめくり始める。]

簡潔化のため10分間省略。

リンドクヴィスト博士: なぜ最初からこれを知らされてなかったんだ?

ヴァルガ管理官: 実験結果を確認するまで、それはアノマリーとは無関係だった。今は関係がある。

リンドクヴィスト博士: 言葉を失うな。有史以前に別の種族が築いた文明、そしてその全体をどういうわけか完全に忘れてしまったと?

ヴァルガ管理官: そう、飲み込むのが大変なのはわかる。

リンドクヴィスト博士: SCP-1000から得られたあらゆる考古学的記録を見直してみたいと思う。

ヴァルガ管理官: それが問題なの、ニルス。何もないの。私たちは、夜闇の子らが創り出したと確認された遺跡を特定したことはない。

リンドクヴィスト博士: 何も?

ヴァルガ管理官: [首を振る。]古代の人類は、世界的規模の、ある種の現実改変による一掃という仕事を徹底的に実行しすぎた。彼らが存在したことを知っていて、文明が世界中に広がったことを知っているけど、彼らは跡形もなく消え去って闇に葬られた。だからこそ、このサイトがいかに重要か理解してもらえたと思う。彼らは何世紀にもわたって人類の周縁で暮らしてきて、そしてこれは古代からの彼らの行動についての初めての本当の洞察といえる。

リンドクヴィスト博士: だがファイルによると、それは石器時代に起きたそうじゃないか。

ヴァルガ管理官: そのお陰でこのアクティブな部隊がどうやって初期ダエーバイトに軍事行動をとったのか、って疑問が生じるの。それをどう判断したらいいかわからない。

リンドクヴィスト博士: 私にはわかる。

ヴァルガ管理官: 何ですって?

リンドクヴィスト博士: SCP-140だ。それが現実を逆因果的に変えたんだ。どうにもダエーワに対してだけではないらしい。

ヴァルガ管理官: じゃあ、誰かがSCP-140の内容を拡張してより未来へ夜闇の子らの影響を広げたっていうの? どうして?

リンドクヴィスト博士: SCP-140がどのように機能しているかはわからない。本の中の何らかの異常性がそれ自体の目的を追求しているのか、それとも歴史を拡張する人物が自らの使命に従っているのかはわからない。私たちがわかっているのはこうした拡大が及ぼす影響だけだ。この後、SCP-1000に関する考古学的データが更に発見されたとしても私は驚かない。

ヴァルガ管理官: それなら、SCP-8140を通して彼らについて何ができるか見つけ出すことが一層不可欠になるわね。

リンドクヴィスト博士: ああ、もちろん。だがSCP-140とダエーバイトの奇跡論が因果全般に対しどんな影響を与えうるか理解するのになおのこと興味がある。可能性を考えてくれないか?

ヴァルガ管理官: ニルス、なりません。タイムラインをいじくることはできません。SCP-140の実験はO5自身に至るまで厳格に禁止されています。

リンドクヴィスト博士: そうだな、当然だ。さっき言ったことは忘れてくれ。

記録終了


リンドクヴィスト博士の個人研究ログ
2004年11月22日.



馬鹿野郎どもが。

もしあいつらにほんの少しの勇気があれば、私たちは暗闇の中で死ぬ必要はないかもしれない。もしかしたら守るにふさわしい人々を守ることができるかもしれない。





サイト-91、リンドクヴィストの個人宿舎
2004年6月30日



待って、何を言ってるの?

あれがどんな風に起きたかを受け入れなきゃならないなんて誰が言った?

言っている意味がわからない。

あんな風に起きる必要はなかった、なんで変えないんだ?

薬はちゃんと飲んでる?

私の話を聞け! 私たちの生活を見てみろ、狂気と魔法が私たちの毎日だ。やれる方法はごまんとある。

本格的に君のことが心配になってきたから、もう行くよ。起きたことを受け入れようとしてみてね…… これじゃ本当に健康に良くないよ。




こんな形じゃなくったってよかった。





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SCP-8140-A、文書化可能なグリフのみ特定。


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SCP-8140-11。

2004年11月23日、発掘現場でこれまで文書化されていなかった地下室(SCP-8140-A)が発見されました。SCP-8140-Aには壁全体にダエーバイトの奇跡論の印章が複数刻まれていますが、記憶補強剤の適用下であっても、そのうちの1つを除き一切知覚できません。室内の図像は、岩肌に刻まれた印章の99%が理解不能かつ、写真上ではぼやけて見えることが多いなど、オントキネティック特性を示しました。上の写真に写されたそれ以外の印章は、SCP-2140を構成するものと顕著に類似しています。この印章のみ観察者が知覚可能です。

10程度の新たなSCP-8140実例が室内で回収され、これまでに発見された異常遺物の中で最も密集していました。


実験ログ

アノマリー: SCP-8140-11
説明: 木の化石で作られた、腐食した浅浮き彫りの胸当て。
参加職員: ニルス・リンドクヴィスト博士
日付: 2004年11月28日


[視点の対象は直径約15メートルほど木をくり抜いて作られた住居に立ち、SCP-8140-11を見下ろしている。木の葉が胸当てのすぐ向こう側にあり、木の内側表面から直接生えているように見える椅子の隣にある。対象はSCP-8140-11を手に取り、胸に取り付け始める。対象はSCP-1000実体である。]

[対象は扉の役割を果たしている草で編まれたカーテンを押しのけ、住居から退出する。何千もの木々が対象を取り囲んでおり、その多くは家ほどの大きさがある。それぞれから1体または2体のSCP-1000実体が出現する。何千もの霊長類が一団となって一つの方向に移動する。対象は、仲間の実体とともに大きな円形の空き地に到達するまで数分間森の中を行進する。この空き地は、幅約100メートルの土にできた窪地と、競技場に似た下っていく岩の露頭層で構成されている。窪地の中心で、一体のSCP-1000実体が盛り上がった土の演壇の上に立っている。対象は石の上に座ると、ゆっくりと何千もの他の実体に囲まれる。円形の空き地が座っている霊長類で満員となると、壇上の実体が轟き渡る声で話し始める。]

SCP-1000指導者: 夜闇の子らよ、歓迎する。我々はもう何年もの間、これほど大人数で顔を合わせるのは初めてだ。花の夜以来、我々の数は何世紀もの間減少しており、そしてここはかつて偉大であった文明の残された数少ない前哨基地の1つだ。

何だ? 今回は彼らの言葉を理解できるのか?10

SCP-1000指導者: それでは、集まっていただき感謝する。我々の時代が過ぎたことはわかっており、人類が山火事のように拡がる一方、我々が育んできたこの惑星で我々は存在の周縁に追い込まれているが、この会議は我々が失ったものについて話し合うためのものではない。我々は今日、戦争について話し合うために集まったのだ。

[多数のSCP-1000実体は息を呑むか、各々で話し始める。視点の対象は何も言わず、周囲を見回すことなく、代わりに壇上の指導者に熱心に目を合わせる。]

SCP-1000指導者: 頼む! 我々全員が人類との戦争で苦境にあるのは理解している。私も苦しい。だが聞いてくれ。

[円形競技場は再び静まり返る。視点の対象は胸当ての端を両手で握り、木の化石に緊張を込めている。]

SCP-1000指導者: ここからそう遠くない地、東方と北方で、人間の一連の都市国家が結合して帝国を形成している。奴らは他の人間とは異なり、その技術と儀式は一線を画す印象を与えるかもしれない。お前たちの多くは、この人間どもがもたらす危険に気づいている。だがそうでない者のために言うと、奴らは自らをダエーワと呼ぶ。奴らは自らを生命の守護者と呼びながらも、血の崇拝者でもある。奴らは影響力が増大する中で、遭遇する全ての文化を奴隷化する。そして奴らは子供たちを我々が想像もできない神への生贄に捧げる。

[対象の周囲からざわめきが聞こえる。それは、SCP-1000個体群が駆り立てられるように互いにささやき合っている小集団に変わる。かろうじて怒りを抑え彼らは沈黙する。対象は壇上に注意を戻す。]

SCP-1000指導者: 我々こそがこの地球上の生命の守護者であり、これまでもそうであった。人間どもは触れた全ての土地を略奪する。しかしこの人間どもは、我々が世界の他の地域で見てきた小村よりも悪しき者どもだ。これらは、我々から奪い取ったマントを主張しながらも、死に自らを捧げる帝国だ。間もなくこの帝国が私たちの領土に侵入するだろう。今でも奴らは、まさにこの場所からわずか数日行進した先にある神殿を中心とした植民地を築いている。

SCP-1000指導者: もし奴らが我が国民の最後の砦を脅かしていないのなら、私は集会でこのような懇願はしないだろう。だがこのままでは、この帝国は数年後には我々の森に入り込み、その忌まわしき儀式のために森を犯し、我々の子供たちを殺すことになるだろう。我々が苦しんできたことはわかっている。ここに残っているのが数千人だけだということはわかっている。だがお前たちに尋ねる、お前たちはこの帝国が我々の生得権を強奪するのを傍観して待っていられるのか? 敵がまさに我々の敷居へと迫っているとき、お前たちは縮こまっているというのか?

[円形競技場はしばらく静まり返る。それから視点の対象が立ち上がって叫び、その声が円形競技場に轟き渡る。]

対象: 否!

[さらに多数のSCP-1000実体が立ち上がり、叫びに同調する。]

SCP-1000指導者: 血と金に身を包んだ人間の女どもが石のナイフをお前たちの隣人に向けるとき、お前たちはただ懇願するというのか?

大勢の声: 否!

SCP-1000指導者: ではお前たちに乞う、家に帰り、木の守護者たちを目覚めさせ、武器を取り、明日の夕暮れ時に森の北端で私に会いに来てくれ、そして我々は地滑りが如く奴らの巣の上を行進しよう。

[壇上のSCP-1000指導者が自らの剣を掲げる。]

SCP-1000指導者: 我々の森を脅かすダエーワの最後の一匹が岩壁のシミとなるまで、私と共に行進してくれ。私と共に行進し、もう一度戦いというものを知ろう

[何千ものSCP-1000実体が歓声を上げ、円形競技場から自らの家に向かって列をなし始める。]

SCP-1000指導者: ならば戦争だ。

対象: [囁く。]遂にか。

記録終了





内務事後デブリーフィング
2004年12月12日



プロトコルを無視し始めたのはいつだ?

職務復帰から1週間以内。

どのように?

研究ログをつけ始めたが、ファイルには記録しなかった。持っていた古いタイプライターを使った。

それは知っている。

まあ当然そうだろうな。

他には?

遺物もファイルに記録せず目録化を始めた。

遺物全部を?

いや。全部ではない。私が望むものを与えてくれるかもしれないものに目を向けた。

ではあなたは何を望んでいたんだ?

私が何を本気で望んでいたかは知ってるだろう。

頼む、記録のためだ。

過去を変えたかったんだ。





実験ログ

アノマリー: SCP-8140-A111
説明: 遺跡の下で見つかった部屋内の岩肌に刻まれたダエーバイトの印章。
参加職員: ニルス・リンドクヴィスト博士
日付: 2004年11月28日


[視点の対象は、黒曜石のアセイミーでダエーバイトの印章を岩の表面に刻んでいる。彼女が印章を完成させるにつれ、映像はぼやけていく。12部屋の天井は大部分がすでにぼやけており、反ミーム性を有する印章の存在を示している。]

何をしているんだ?

[視点の対象は敏速に向きを変え、最新の印章の下に新しい印章を刻み始める。赤い布をまとい、両腕に精巧な金の腕輪を下げ、頭には金の髪飾りを被ったダエーバイトの女性祭司が部屋に入ってくる。]

女性祭司: お姉さま、準備はいかがでしょう。

[対象は額を拭う。岩の削り屑や塵が視界の前に落ちる。]

対象: 進んでる。攻撃は始まったの?

女性祭司: いえ、しかし私たちの偵察隊はかなりの兵力の部隊を特定しました。数千頭の類人猿が村の壁に近づいています。

対象: リネッサは草の子らと上手くやってる?

女性祭司: 数千体ほど創られました。兵力は同程度になるでしょうし、我々にはまだ奴隷戦士もいます。

対象: それならきっと大丈夫ね。

[対象は壁への作業に戻る。]

女性祭司: いえ、類人猿たちは非常に強力です。それにこれ程の数になっているのは見たことがありません。ですが、その一人一人は3、4人の武装した男性や草の子らであれば容易に匹敵する程度です。

対象: じゃあ私が完了させるのは必須と言う訳ね。

それにどんな役割があるのか見せてくれよ、畜生! 何をしているんだ?

対象: まだここにいるのね。

女性祭司: 族長、率直に申し上げます。ですが私たちに時間はほとんど残されていません。儀式はあなたの約束を果たせるでしょうか?

対象: 果たせる。

女性祭司: 我々の命を守ってくれるでしょうか?

対象: ええ、そのためなら時間の枷を破ってでも。今は独りにして。

これがそれなのか? どんな役割があるんだ?

[対象は自分の作業の跡を調べ、埃や岩の破片を払い落とす。彼女は現代でも認識できる印章に取りかかっている。]

記録終了





サイト-91管理官オフィス
2004年11月10日


それで、あなたは自分が戻って来る準備はできてると思うの?

当然。そうでなければこのオフィスにはいない。

心理学報告書だとあなたは職務に適任となってるけど、まだいくつか懸念がある。

あなたは誰かを失ったことがあるか?

ええ。

例えば?

前に収容違反で同僚を失った。そういうことなしにキャリアのここまで来るのは困難よ。

同僚か。

同じことじゃないのはわかってる。

全く違う。

じゃあどうして今戻るの?

閉所性のイライラ。疲労困憊。また生産的になる必要性? 好きなのを選んでくれ。

トルコで考古学の発掘があって、そこで何らかの異常活動が起こっていると考えられる。それはあなたを安心させて元に戻す一種の再開口かもしれない。

引き受けよう。





実験ログ

アノマリー: SCP-8140-11 [続き]
説明: 木の化石で作られた、腐食した浅浮き彫りの胸当て。
参加職員: ニルス・リンドクヴィスト博士
日付: 2004年11月28日


[対象は泥と石の小屋で構成された小さな町の通りを移動している。それはSCP-8140-1に似た剣を携行している。数体のSCP-1000実体がそれと共に歩いている。彼らは切り傷にまみれ、毛皮は血で覆われている。それぞれが対象と同様の胸当てを着用している。]

対象: 前へ進め、神殿を確保せねばならない!

[SCP-1000実体の1体が付近の樹状実体の集団に向かって動き、曲がり角に進み始める。突如として彼らは後退し、通りの両側にある小屋の後ろに隠れる。数十体のゴーレムと数人の武装した人間の兵士が武器を持って角を曲がる。対象は咆哮を上げ、目前に向かって剣を振り下ろし、ゴーレムを真っ二つに切り裂き、人間の兵士の胸を蹴って後方へ吹き飛ばす。小屋の後ろに後退していたSCP-1000実体と樹状実体は、敵の小集団の側面に位置取り、刃と槍を持って敵の集団に突っ込む。樹状実体はゴーレムを引き裂き、その残骸を近くの小屋の壁に投げ込む。]

対象: 圧力をかけ続けろ!

[ゴーレムと人間の奴隷戦士が少数のSCP-1000実体を取り囲む。ダエーワの兵力約15名に対し、武装した霊長類は5名。対象は兵士の顔に向かって叫び、剣で男を突き刺して死体を脇に投げ捨てる。]

[石の矢が対象の胸に命中し、胸当てをかすめる。別の矢が霊長類の太腿の肉に埋め込まれる。対象は傷を無視して回転し、上方への斬撃で別の兵士を捉え、内臓を飛び出させる。他のSCP-1000実体の一体が矛に突き刺されて倒れる。別の一体は対象と同じ剣を持って前方に向かって進み、一撃でゴーレム2体を仕留める。また別の一体は、胸当てのすぐ下の腹部に矢を受ける。痛みで咆哮しながらも槍を投擲してゴーレムの胸を突き破り、背後の人間の兵士を貫いて二人を地面に釘付けにする。]

[ゴーレムの小集団が通りを駆け抜け、その後に深紅のローブを着た女性が続く。彼女は樹状実体を指揮するSCP-1000実体をアセイミーで切りつける。儀式用の長いナイフで霊長類の喉を切り裂くとそれは跪き、血が通りの押し固まった土に流れ出る。]

女性祭司: 奴らに恐怖を見せるな。泉の加護がある!

[周囲での戦闘が収まる中、一体のSCP-1000実体が対象に接近する。]

SCP-1000実体: あの女はなんと?

対象: 知ったことじゃない。[周囲の他のSCP-1000実体に目を向ける。]奴らを全滅させろ!

[戦闘はさらに7分間続き、その間にSCP-1000実体は全てのゴーレムと人間の兵士を殺害する。彼らは自身の勢力を2体を除き全て失う。対象は負傷し疲れきっており、跪いているダエーバイトの女性祭司に近づく。彼女は片手で脇腹の傷を押さえ、防御のために彼女の前に刃を突き出す。対象は祭司のナイフを強打し、刃が大通りを滑っていき、彼女の手首は折れる。彼女は苦痛にうめき声を上げる。対象はローブのひだに手を巻き付けて彼女を立ち上がらせ、彼女の傷口から血が噴き出す。対象はその顔を彼女に近づける。]

対象: 我々はお前たちよりも優れている。我々のために戦う奴隷など使う必要はない。お前たちは生命の守護者ではない。

女性祭司: 野蛮人め。屑どもめ。たとえ私が死のうとも、泉は加護を与えてくれる。お前など何でもない。

対象: お前の言っている言葉はわからない。

[対象は大きな手を彼女の頭の上に置き、捻る。彼女の首の椎骨が大きな剪断音を立てて裂ける。対象は死体を土の上に落とす。ここでようやく太腿から矢を抜く。もう一方のSCP-1000実体は圧定布を持ってきて、傷口に草で編んだ包帯を巻く。]

対象: これで十分だ。神殿へ。

SCP-1000実体: 増援を待つべきでは?

対象: いや。この女どもは何か企んでいる。神殿に近づくにつれ奴らの戦力は苛烈になる。

SCP-1000実体: 奴らはそれを防衛しているのですね。

対象: あるいは誰かを。では我々はそれを奪う、奴らの巣から。





サイト-91心理学者オフィス
2004年11月24日


なんで私はまだあなたの下に来てるんだ? 適任だともう宣言されたぞ。

ええ、しかし管理官が安心してあなたを仕事の生活へと復帰させたいと考えているのです。

侮辱的だな。

きっとそんなつもりはありませんよ。

いや、そんなつもりだろう。

かなり進展はしましたが、この類のトラウマを振り切るのは困難なのです。

俺は問題ない。

そうですか? 悪夢についてはどうですか?

ほぼなくなった。

ほぼ。

ああ、完全にではない。

それについて教えてください。

何を教えたらいい? それは時々起きるが、以前ほど頻繁じゃない。

どのくらいの頻度で?

週に2、3回。

それはまだ睡眠の妨げとなっていますか?

そんなにひどくはない。

それは良いですね。それでは、あなたは起きたことを受け入れたのですか?

確実に。過去は変えられない、だな?





リンドクヴィスト博士の個人研究ログ
2004年11月30日.



どこだ? ここにあるはずだが。それが何であれ洞窟の中にはあるが、どんな役割を果たすものなのかはわからない。

ダエーワから直接学ぶこれ以上の機会はない。彼らが見たのと同じものを見て、彼らの儀式を直接体験する。適切な遺物がまだ見つかっていないだけだ。探し続けなければ。





サイト-91医療センター
2003年10月2日


もうあいつに会えるか?

ええ、もうあなたは待合室の床中に血をまき散らしていませんから。こちらです。

あいつはどうしてる?

嘘はつきたくないので言いますと、妹さんは深刻な怪我を負っています。

ジーザス、交通事故に遭ったみたいだ。どうしてこうなったんだ?

詳細は存じませんが、収容違反の最中に起こったようです。彼女は重大な鈍的外傷を負い、身体の20%以上に第一度熱傷を負っています。

なんてことだ。信じられない。

大変だとは存じますが、彼女の病歴についていくらか詳細をお聞きする必要があります。

もちろん。できるならどんな手助けだってしよう。妹は大丈夫なのか?

まだ答えは出せません、あなたに誤った希望を抱かせたくはありません。彼女にはまだ内出血しており、我々が今夜手術して対処する予定です。

この辺の機械は何だ?

予防措置です、彼女は自力で呼吸していますが、容態が変化した場合に備えて挿管して監視しています。



おい、今の音は何だ?

看護師! 緊急カートを! コードブルー!

何が起きてる?!?

用務係、リンドクヴィスト博士を出してくれ。

手を離せ! 何が起きてる?

ああクソ。ああクソ。畜生。何が起きてるか教えろ!

先生?

頼むよ。





2004年12月1日、リンドクヴィスト博士の助手マルコムがサイト-91を訪問しました。彼はリンドクヴィスト博士の精神状態について懸念を表明し、博士は2日間眠っておらず、1日に何度も遺物を目録化していたと主張しました。公式ファイルには部分的な記録しか作成されておらず、多数の記録が意図的に報告書から省略されていることを示していたため、このことはヴァルガ管理官に警告されました。警備員は警告を受け、ヴァルガ管理官が現場に到着するまで当該博士を確保するよう求められました。

インシデントログ

2004年12月2日


02:35

[リンドクヴィスト博士は現地に仮設された特別遺物保管室にいる。壁には棚が並び、SCP-8140遺物のラベルが貼られ密封された箱が収められている。彼は鋼製テーブルの前に立ち、ダエーバイト製の飾り壺を指で握り締めている。彼はテーブルからよろめき、飾り壺を手放す。彼の手は震えており、記録で確認できるほど彼は薄く汗で覆われてる。]

リンドクヴィスト博士: クソッ。駄目だ。

02:38

[2人の警備エージェント、エドワーズとカルスが実験室に入る。1人は結束バンドを持ち、2人ともベルト上のホルスターに入った携行武器に手を掛けている。彼らが入室するとリンドクヴィスト博士は顔を上げる。]

エージェント・カルス: サー、遺物から離れていただく必要があります。手を背中の後ろに置いてください。

リンドクヴィスト博士: 誰だお前らは?13出ていけ!

エージェント・エドワーズ: 博士、ご存じでしょう。ヴァルガ管理官はプロジェクトを評価できるまであなたを確保するよう命令しました。

リンドクヴィスト博士: お前らなんぞ知らない。こんなことしてる時間はないんだ!

[リンドクヴィストが目に見えて大袈裟に腕を振ったり動かしたりしている。彼はその手首を掴もうとするエドワーズを押しのける。リンドクヴィストはエージェントを鋼製テーブルに押し倒し、彼を驚かせる。カルスはホルスターから武器を抜く。]

エージェント・カルス: 博士、落ち着いてください。武力を行使させないでください。

リンドクヴィスト博士: 一体お前らはどこのどいつだ? 私の研究が狙いか? お前らにそれは得られない。これにあまりにも必死に取り組んできたんだ。私はこれがいるんだ。邪魔をするな。

[エージェント・エドワーズは立ち直り、ベルトから折りたたみ式警棒を取り出してリンドクヴィストに接近する。]

エージェント・カルス: どうか、落ち着きましょう。

リンドクヴィスト博士: くたばれ!

[エドワーズはリンドクヴィスト博士を掴もうとするが、彼は慌ててその場を離れ、付近のテーブルから両手でSCP-8140-1を拾い上げる。エドワーズは伸縮式警棒を博士に向けて振るが、博士は防御のために剣を振り上げて警棒を切断し、その後エドワーズの胸を切り裂いてその腕をほぼ切断する。血しぶきが博士とカルスに飛び散る。]

[カルスは携行武器を発砲して博士の脇腹に命中させ、よろめかせる。彼はテーブルにぶつかる。リンドクヴィスト博士はカルスに叫び、エージェントに剣を投擲する。カルスは再度発砲するが、重い剣の柄が彼女の顔に当たり、彼女は倒れる。彼女は意識を失っているようである。]

02:43

[リンドクヴィスト博士はSCP-8140-16とラベルが貼られた収容ボックスを抱え、よろめきながら保管エリアから退出する。彼はまだOVRを装着しており、負傷した脇腹を押さえて、大量に出血している。博士はよろめきながら発掘現場を通ってSCP-8140-Aの入口に向かう。]

記録終了

SCP-8000%20Tunnel.jpg

SCP-8140-Aに繋がる石造りのトンネル。


SCP-8000%20knife%20hilt.jpg

SCP-8140-16。

上記のログにおける出来事から3時間後、ヴァルガ管理官と警備隊が発掘現場に到着しました。現場は直ちに確保され、職員はベッドから起こされデブリーフィングのために連れて行かれました。リンドクヴィスト博士はSCP-8140-Aに指定された控えの間で発見されました。彼の心拍数は危険なほど低く、数パイントの血液を失っていました。博士はイスタンブールの安全な医療施設へと空輸され、傷の治療を受けました。彼は14時間手術を受け、危篤状態だったもののその後3日間は安定していました。エージェント・カルスは脳震盪の治療を受けましたが、エドワーズはSCP-8140-1が齎した傷による左上肢からの大量出血により死亡しました。

発見時、リンドクヴィスト博士はSCP-8140-16を握りしめ、OVRを装着した状態でした。データは復旧され、記録された内容のログは以下の通りです。

実験ログ

アノマリー: SCP-8140-16
説明: 人間の肋骨でできたナイフの柄 - ダエーバイトの印章が刻まれている。
参加職員: ニルス・リンドクヴィスト博士
日付: 2004年12月2日


[視点の対象は儀式的なアセイミー14でSCP-8140-Aに指定された石室の床に溝を彫っている。対象は溝を掘り終えると、それを広い円の中で結び付ける。彼女が手招きすると、一人の奴隷が近づいてくる。]

対象: 膝をつきなさい。ここに。

[彼女は床に掘られた溝の隣を指さす。奴隷は躊躇するが、対象と目が合うと従う。彼は震えている。]

対象: 真の血の姉妹たちの命のために。あなた方の栄光のため、我らの神殿を守り抜きますよう。あなた方の摂理の祝福が続きますよう。生命の聖霊よ、万物の創造主よ、我らが存在の泉よ、この贄を捧げます。我らをお守りください。

そうだ。私が知らねばならないものを見せてくれ。

[対象は奴隷の喉を切り裂いてゆっくりと体を下に横たえ、彼の血液が溝に満たされるようにする。彼女は理解不能な独り言をつぶやき始める。血が流れ出すと奴隷の体がバタバタと跳ね始める。対象は後頭部にナイフを素早く確実に突き刺し、脳幹を破壊する。彼の動きが止まる。溝は血液で満たされており、血液は溝内を脈動しながら円を描くように移動する。以前の記憶の中で彼女の前に来たダエーバイトの女性祭司が部屋の入口に再び現れると、対象は見上げる。彼女は傷を負い、埃をかぶっている。]

女性祭司: [彼女の膝元に倒れる。] 奴… らが… 来る。

[対象は入口の周囲に立っている奴隷とゴーレムに身振りで指示し、彼らはトンネルへと列をなして進む。その直後、戦闘音と奴隷たちのしわがれた叫び声が聞こえる。獣のような咆哮がトンネルに響き渡る。数分後、SCP-8140-11を装備したSCP-1000実体が足を引きずりながら部屋の入口に現れる。それは重傷を負っており、戦闘の初期に受けた大腿部の傷からだけでなく、左前腕と目の横から頭蓋冠に沿って後退している深い切り傷からも出血している。大型の霊長類は足を引きずって前に進む。]

SCP-1000実体: お前は終わりだ。お前たちの民と奴隷たちは完敗した。お前の姉妹は誰一人生き残っているまい。この血の魔法で何を手にしたかったんだ?

対象: お前の言っている言葉はわからない。

[対象は霊長類の胸を切り裂き、胸当ての留め具を切断し、胸当ては部屋の床に叩きつけられガタガタと音を立てる。霊長類が剣を振り終える前に彼女は再び切りつけ、肘の内側を切り裂く。受けた負傷にも拘らず剣は空中を移動し、対象の胴体の左側、腰より上の部分に当たり胸骨を切り裂く。彼女は息を切らし、血を噴き出して窒息する。]

SCP-1000実体: では死ね。

[霊長類は剣を落とし、逞しい腕で彼女に手を伸ばす。その指が対象の喉を掠めると同時に、彼女はアセイミーを上方に振り上げて霊長類の喉に突き刺し、その顎を貫き、脳に突き刺す。SCP-1000実体は奴隷の血で満たされた開いた溝の上にそのまま倒れる。対象も同様に倒れ、霊長類の体の上に横たわる。彼らの血が溝の中に混ざる。対象の目が閉じまいと耐える中、黒曜石のアセイミーの刃は劣化し、粉々に砕け散る。ダエーバイトの印章があたかも焼印で燃やされたかのように、その柄に沿って現れ始める。15柄は土に落ち、場面は暗闇に溶ける。]

記録終了

インシデント事後分析:

  • 関連する記録を見直した結果、リンドクヴィスト博士が重要な目録化活動、特にダエーバイト起源の遺物を財団から隠蔽していたことが判明した。
  • さらに、リンドクヴィスト博士は特定の目的で何らかのダエーバイトの儀式奇跡論の知識を得るためにこれを実行したことが判明した。
  • リンドクヴィスト博士は、SCP-8140-Aにいたダエーバイトの女性祭司は歴史を書き換えようとしていたと推測した。サイト-91の奇跡論学者や歴史家と相談した結果、ヴァルガ管理官は別の結論に達した - ダエーバイトの祭司は、自身と同種の文化を有する人々が後に見つけられるよう、彼らの苦闘を保存することを意図していた、というものである。この異常には逆因果的側面はなく、単に紛争の記録を保存しようとしただけである。
    • 最終ログの最後の瞬間は、SCP-1000の血液とSCP-8140-Aで機能している儀式が混合していることを明らかにしている。ダエーワが重視していなかった文化の記録を保存する意図があったとは考えにくいため、これがSCP-1000の記憶もまた保存された理由であると理論付けられている。

リンドクヴィスト博士の個人研究ログ
2004年11月30日.



ダエーワは、何度もその文明全体の終焉の形を変えた。壊滅的な喪失と革命の結果を避け、悲惨な戦争を持ちこたえ続けた。何もかも、何千年も遡及して。

私が望むのは一つの出来事を変えることだけだ。たった一日違う展開を見せれば、あいつはまだ生きているだろう。そんなに難しくないはずだ。


リンドクヴィスト博士は回復後、その行為の暴力的な性質のため一連の心理検査を受けました。SCP-8140実例の継続的な取り扱いが彼の精神に累積的な影響を及ぼし、遺物発見の1年前に彼の妹が死亡したことによる心的外傷後ストレス障害をより悪化させたことが判明しました。

遺物の取り扱いによる累積的な副作用の危険性を考慮して、収容プロトコルはそれに応じて調整されました。

デブリーフィング後、リンドクヴィスト博士は記憶処理を受け、警備員の監督の下でSCP-8140の作業に復帰しました。遺物からの異常な記憶の転送は消去不可能でしたが、リンドクヴィスト博士の人生における出来事は消去可能でした。彼の経歴の性質上、仕事への復帰能力を保証するため、SCP-8140との関わりに至るまでの記憶を、彼の妹の喪失に至るまで消去する必要があることが適切と判断されました。16彼女は機密セキュリティ下にある別の施設への移送されたとするカバーストーリーが適用されました。



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