SCP-8190

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幕間:

部門分割

仮設課局部門

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組織乗取りを翻す



進行中の調査の一環として、修正されていない原版文書が置かれています。

この記録(ID番号08-8190-24)の写しをリクエストする場合、サイト-19仮設課局部門の現業務管理官による審査のため、用紙SR-01に記入の上提出してください。





要請チケット番号: 重要度: 提出者:
9059281 M・ノーウッド



再びこんにちは、マリサです。SCP-8190文書にアクセスすると毎回妙なETTRAのメッセージがポップアップする件でチケットを提出しました。どういう問題なのかよくわかりません。サイト-19で20年以上収容主任をしていますが、アクセスリクエストを手ずから提出するよう求められたのは初めてです。いわんやハードコピーでをや。普段ならL5機密なのだろうと推測して気にしなかったでしょうが、クリアランスレベルは記載されていませんし、当方ではETTRAがこの指定番号を調査しているという記録は見つけられませんでした。さらに、仮設課局部門など聞いたこともありません。

これが何かのバグなのか、自分が事情を知らないだけなのか気になるので、お早めにSR-01リクエストシートを送っていただけないでしょうか。また、お持ちの部門名鑑をチェックしていただいて、現仮設課局部門代表の連絡先情報を頂戴したいです。最近は評議会が内部リストラを多くしていますし、その影響かと思いますが。


SCP- SCP-8190
レベル:  #
SEALED
収容タイプ:
simulacra
副次クラス:
radix
撹乱レベル:
DENIED
リスクレベル:
DENIED
アイテム番号: {$item-number}
レベル6
収容クラス:
{$container-class}
副次クラス:
{$secondary-class}
撹乱クラス:
{$disruption-class}
リスククラス:
{$risk-class}

要請チケット番号: 重要度: 提出者:
9059553 M・ノーウッド



少しいいですか、リクエストしたSR-01はまだ受け取っていませんし、SCP-8190のファイルにもまだアクセスできません。クリアランス制限がないのは確認していますが、このスプラッシュ画面を回避できないようです。さらに言いますが、そちらの対応は遅すぎます。要請チケットは48時間無活動だと自動でクローズすることを忘れたのですか。クローズするまでに更新するか誰かに割り当てていただきたいです。後18時間ほどしかありません。

それと、前回の要請チケットに書き忘れていたのですが、このアノマリーのACS分類が現在誰にでも見える状態になっています。普通ではないですよね? なぜETTRAは分類以外のファイルの内容をロックしているのですか? まあこれはあまり大問題ではないのですが。というのも、分類からはRadixともう1つの特殊クラス、Simulacra? 以外にわかるものがありませんから。その2つを調べたところ、後者は分類ガイドに何も書かれていませんでした。


要請チケット番号: 重要度: 提出者:
9060171 M・ノーウッド



コンピューター障害に対応する同僚から聞いたのですが、同僚のチケットはしばらく返答されていないそうです。概念部門は2週間もSCiPNETにアクセスしていません。何があったんですか? 処理がまだってだけなんですか? そもそもラップトップをリモートネットワークに接続できなければ誰も自分の問題の対処法をググれないからって、ユーザーエラーか自己責任だと言いたいのですか? 要点検のプリンターは1ダースもありますから、とっととトナーカートリッジを持ってきてください。メールフィルターかメーリンググループに問題があるのなら教えてほしいです。内線31843でいつでも連絡できます。

AIMSに移行すればそちらのゆとりも増えると思っていたのですが、そうではなかったようですね。この状況は失策でしかありません。ですから、そちらが対応しているものは、こちらを認識できないほど大問題なのでしょう。

ところで、初めのチケットの期限が切れました。きっとご存じでしょうが、すべきことをしていないと私を非難する人が現れたときのために、知らせておくべきと思った次第です。


要請チケット番号: 需要度: 提出者:
9060564 M・ノーウッド



ロアーク管理官のもとに出向いてこのコミュニケーション問題について話したところ、出来事の時系列を記録して問題が悪化するたびにチケットを提出するよう言われました。ですから、私がまだ諦めていない理由と言ったら、選択肢がないからです。

SR-01についてはもう結構です。少々時間はかかりましたが、アーカイブから用紙を掘り出せました。財団では40余年使っていないのに、用紙にはハンコ用のスペースがあるのですね。結構ノスタルジー感があります。

用紙も全部記入しましたが、どこに届ければいいかわからないので私のデスクの場所を取ることになりそうです。IT部門の人が届け先を示してくれれば幸いでしたが、見つけられた名鑑は全て期限切れのものばかりでした。


添付

TO: mnorwood@scip.net
FROM: dirafdond@scip.net

マリサ、

SCP-8190にご関心をお持ちいただきありがとうございます。必要なSR-01用紙を受け取りました。財団ガイドラインに記載の通り標準手続きに従っていただきありがとうございます。あなたのリクエストは現在処理中です。状況が変わり次第連絡いたします。

敬具、

フリッツ管理官

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仮設課局部門


要請チケット番号: 需要度: 提出者:
9061267 M・ノーウッド



そちらの誰かがSR-01を取りにオフィスまで来たのですか?

仮設課局部門のことはそちらにしか伝えていないのに、昨晩その部門から用紙を受け取ったとメールが来たのですが。今朝オフィスに戻ったところ、用紙は姿を消していました。

これが正解だったのだとは思いますが、アーカイブ内にデジタルコピーがないことに気が付いてしまいました。プリンターが故障していたので複写を取っておらず、その後完全に忘れていたので……財団の有する最後のSR-01を使ってしまったのかもしれません。なんてこったい。


TO: dirafdond@scip.net
FROM: mnorwood@scip.net

こんにちは!

あなたは仮設課局部門の管理官でしょうか? この建物の名鑑にはどこにも載っていなかったのですが。財団部門大百科のそちらの項目も見ましたが、そちらが実際何をやっているのかよくわかりませんでした。IT部門も頼りになりません。ただまあ正直あそこは最近全く頼りにならないのですが。

そちら含めて全部門に要求されるものなので、私の名鑑と連絡先情報を更新したく思います。それに、お互い連絡するのが簡単になりますしね^^

ありがとう、

マリサ・ノーウッド博士
収容管理官、サイト-19

TO: dirafdond@scip.net
FROM: mnorwood@scip.net



もしもし?


TO: mnorwood@scip.net
FROM: dirafdond@scip.net

マリサ、

文書を受け取ってからお待たせしてしまい申し訳ございません。あなたのリクエストは財団ガイドラインに従い認められました。申し上げておきますが、この部門が認否を判断するわけではありません。私たちは仲介役でしかないのです。

添付は承認された記録の複写です。申し訳ございませんが、不手際によりこの文書は拒否されたと誤解されていました。この誤りは修正されています。

あなたが技術的問題を抱えているのは残念ですね。テクニカルサポートを受けることをお勧めします。このメールにサポートの連絡先情報を添付します。どうぞお使いください。

さようなら、

フリッツ管理官

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仮設課局部門


添付

テクニカルサポート部門
dotsinquiry@scip.net
内線81903





アクセス承認

  

spin.png

アイテム番号:
SCP-8190
{$class-category-2}
{$class-text-2}
{$class-category-3}
{$class-text-3}
{$class-category-4}
{$class-text-4}
オブジェクトクラス:
IMPERATIVE
ハザードレベル:
IRRELEVANT
{$class-category-3}
{$class-text-3}
{$class-category-4}
{$class-text-4}
配属部門 プロジェクト主任
仮設課局部門 ルアイドリ・クエイド管理官
配属サイト 研究主導
サイト-19 ルアイドリ・クエイド管理官


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『財団従業員の手引き 初版』より抜粋


従業員のガイドライン: 基本編

財団職員となった初日は、この組織が、なぜ上手に組織されているのか知ることが大事です! 上司に連絡することから、試験を命じること、その試験を行うこと、そして廃棄物を処理することに至るまで、どんなものにも従うべき手続きがあるのです! それだけではなく、どんなものにもあなたと同じように縁の下の力持ちを担う職員がいます。皆が己の役割を果たし、そのバトンをいつ次の人に手渡すべきか知ることこそ肝心要なのです。さすればあなたの保安サイトは流れに掉さすようにスムーズに働けるでしょう!

次に示す財団従業員の大原則は、皆がそれぞれの職場で何を果たすべきか忘れないためのよい方法であり、創始者フアウンダアのお導きが闇の中でも光を投げかけるのだと望んで作られました。


▪︎ 全ての従業員には目的がある。皆は礎たる財団の礎である
▪︎ 全ての従業員は配属された保安施設から報告する
▪︎ あらゆる保安施設にはサイト管理官がいる
▪︎ あらゆる部門には業務管理官がいる
▪︎ いずれのサイト内従業員も部門に配属されている
▪︎ いずれの従業員も発言権とそれが聞き入れられる権利がある.第二版では「いずれの従業員も嘆願手続きを行う権利がある」に置き換えられ、第四版では完全に削除されました。
▪︎ いずれの従業員もそれぞれの役割を果たし、それによってほかの従業員も同様に役割を果たすことができる
▪︎ 従業員はそれにふさわしくふるまい、さもなくばその従業員は置き換えられる

君はこう思っただろう、「殊勝なことだ。でも昼食をとるのにどうやって退出時に打刻すればいいんだ?」幸いにも、次節では打刻システムを取り扱う……

ご存じですか?
この本のどこにでもいるサミー・スキッパーを探せば、役立つヒントや情報が手に入れられます。サミーはあなたが思うより博識です!

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更新: PoI-8190がSCP-8190-Aから逃走して財団に拾得されて以来、この空間は不活性状態を維持しています。オフィスは放棄され、空間そのものはさらなる再帰効果を有さなくなりました。ハークネスは、SCP-8190の性質に関する知識を量るため、徹底的な尋問を受けます。



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補遺8190-A/1: インタビュー I

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DONDアーカイブ転写 null

場所: サイト-19ブリーフィングルーム8A

出席者:

  • ルアイドリ・クエイド管理官、サイト-19仮設課局部門
  • クラスC職員ジェームス・アンセルム・ハークネス(PoI-8190)
«転写開始»

<PoI-8190は施設8階のブリーフィング室にエスコートされる。彼は中央のテーブルに座る。目の前の机には膨大な書類があり、パンパンのマニラフォルダからまろびでている。彼は、落ち着かない様子で事務用品から目をそらす。直後にクエイド管理官が入室し、軽い社交辞令を交わして向かいの席に座る。>

クエイド管理官: ふむ、少しくたびれているようだな。速やかに済ませて、財団の生活に戻らせてあげよう。いい話じゃないか?

<PoI-8190は沈黙し、上の空である。クエイド管理官は膝に置いたマニラフォルダを開き、中の文書をめくる。>

クエイド管理官: ほほう、君はずいぶん久しく行方不明だったのか。15年近く飲み食いしていないにしてはだいぶ元気に見えるな。

<PoI-8190は濃いクマの目で相手をにらみ、沈黙を続ける。>

クエイド管理官: いいだろう。おしゃべりは置いといて、君を所属の場所に返すことについて話をしよう。

PoI-8190: ああ。それがいい。

クエイド管理官: ほう? なんだ、あの地下に戻りたいのか? 手配できなくはないが。

PoI-8190: そうじゃない、殺害エージェントの自己実験に復帰できないか? そっちの方が好みだ。

<休止。クエイド管理官が身を乗り出し、イスがきしむ。>

クエイド管理官: 殺害エージェントの自己実験、だと? なんだその突拍子のない話は。ミスター・ハークネス、あの穴に戻るか、仕事部屋に戻るか、二つに一つだ。

<クエイド管理官は再びイスにもたれる。ハークネスはため息をつく。5秒間の沈黙。>

クエイド管理官: どうだろうか。

PoI-8190: 考えてる途中だ。

クエイド管理官: 考える余地はどこにある? いや、現実的に考えてみようじゃないか。君は今まで遍歴した仕事に……いや、その大半に長けている。その強みに関連した職もきっと探せるはずだ。

君の学位から近い職の多くは、AIMSに移行して以来必要性が相当に下がった。だから行き先には向いていない。概念研究部門に復帰するというのは私には判断しがたい。君は人を溶かしたと聞く。

PoI-8190: あれは事故だったんだ!

クエイド管理官: そうか。 <書類を読んで> 君は形而上科学部門にリエゾンとして短期間かかわったそうだが、何のリエゾンだ…… <音量が小さくなる> 一体どういうことなんだ?

PoI-8190: 物語関係論課だ。ずっと前にそれについてセミナーを開いたことがある。詳しく言ってもいいが、きっとこの2人とも混乱するだけだろうから、これだけ言っておきたい。「俺の著者に聞け」

<クエイド管理官は反応しない。ハークネスは口が勝手に言ったのを聞いて少しうろたえ、あたりを見回す。>

クエイド管理官: 物語関係論など聞いたことがないが。その上、君が形而上学に関する経験をしていないのなら、形而上学部門に配属するのはできない。

PoI-8190: どっこにも空きはないってか。残念だ。本当に、この上なく残念だ。明日、もう一度やれないか?

クエイド管理官: ならば今夜はどこで過ごす? 従業員のガイドラインには、居住設備を利用するには配属が必須だと書かれている。おそらく最善手は、君がかつていた財団の地位に復帰することだろう。多分、マクロエンジニアリング・デザイン部門の助成金申請事務員の仕事なら再開できると思うが、どうだろうか。

PoI-8190: それが何なのか、皆目見当もつかない。実在する部門の名前なのか? 俺は他でもないIT部門の、他でもないネットワークシステムエンジニアだったんだ。アンタが見つけられる仕事がしたこともないそれしかないのなら、昔の仕事にそのまま帰れるとは思えないね。

<沈黙。クエイドはほほ笑んでフォルダーを閉じ、テーブル上に戻す。>

クエイド管理官: ミスター・ハークネス、君は察しがいいな。しかも矛盾を指摘できるほどに賢明だ。これを──

<管理官はハークネスに名刺を手渡す。ハークネスは特製のレタリングを眺め、裏をめくる。>

クエイド管理官: 私が生きるために何をしているか知っているだろうか?

PoI-8190: うーん……働いている。それも……お金のために。

クエイド管理官: 違う違う、いや、まあ、間違ってはいない。大雑把に言えばそういうことだが、具体的にはどうだ?

PoI-8190: 簡単だ。アンタは、そう、部門管理官で…… <名刺を再び見て> 仮設部門か? を運営している。建築学関連の何かか?

クエイド管理官: 仮設課局部門だ。建築学じゃない、いうなれば生物学だな。生物学はわかるだろう?

PoI-8190: 学位はソフトウェアエンジニアリングで、副専攻は映画だった。何を考えている?

クエイド管理官: わかった。いいか、複雑な生態系の中で、適者生存は自然の秩序の第ゼロ法則だ。人間は食べる側になるまでは食べられていた。人間は緑豊かな楽園の一区画のために、あるいは足元の鉱物のために、互いに争い殺した。土地、そして資源、そして安全確保、そして競争。同じふるまいは集団や、共同体にも当てはまる。仕事場にさえも。

PoI-8190: げぇ。

クエイド管理官: 辛抱してほしい。いいか、大事なのは、母なる自然は公平ではないということだ。2つの集団が等しいレベルの遊び場から始まることはまずない。たいていは置かれた状況で泥沼にはまるが、少ないながらもその環境に適応できる「模倣者」がいる。それは音もたてずに動き、大きな組織の背中から上手にかすめ取れるようになる。企業スパイの頂点捕食者だ。話はつかめたか?

PoI-8190: つまり、仮設課局部門はその「模倣者」を見つける──

クエイド管理官: その通りだ。

PoI-8190: ──そしてどうする、閉業させるのか? 管理部に報告する?

クエイド管理官: 状況が違えば手続きも違う。知らないということはないだろう。

PoI-8190: 過剰冗長性部門はどうだ?

クエイド管理官: なんだって?

PoI-8190: 過剰冗長性部門だよ。「礎たる財団の礎」──部門のモットーだ、俺のじゃない──正直、今思うと上から目線だな。

アンタの部門が来てたのは知っている。その徽章は覚えてるからな。計測するだけして帰っていった……きっと戻ってくると思っていた。だが10年が過ぎて、俺をここから出そうと思っているのは俺しかいないことを確信した。少なくともそれは大間違いだったが。

クエイド管理官: 君のいら立ちは理解する。ただ、この組織には深妙な起源や不可解な任務を有するまともな部門がたくさんある。この部門も他と同じようにガイダンスを守らなければならない。業務命令に従わなければならないのだよ。奇妙な部門に出会い次第蹴飛ばすことはできないわけだ。

PoI-8190: アンタの部門だけが俺を穴から出そうとしたわけじゃなかった。何が止めたんだ? どうして誰かに相談しなかった?

クエイド管理官: 官僚制だ、ミスター・ハークネス。古き良き、お役所仕事だ。

PoI-8190: だが──

クエイド管理官: 閑話休題してもいいだろうか? 気づいていなかったかもしれないが、私は今君に新たな役職を申し出ている最中だ。

PoI-8190: どういう役職だ?

クエイド管理官: 君の最近の経験に近しいから、君ならこの配属の役目も簡単に完遂できるだろうと思っている。

机の前に座って、部門書類を読み、疑わしいものをフラグ付けする。それを送信すれば、検討されるか、内部調査されるか、解散される。自由な時間に昼食も、休憩も、トイレも全部できる。まあ、規則の範囲内であればだが。

誤らずにファイルを包めば、成功報酬まである。

PoI-8190: <休止し、目を細めて> イエスと言っても、建物から出ることはできるか?

クエイド管理官: うん? もちろん退出できるし、今なら君は──ただ、言っておくが、オンボーディング契約に基づいて雇用期間中は関連建造物外部から一定の範囲に制限されている。しかも今外は吹雪だ。

<管理官は右手の大きな凍った窓を示す。空模様は灰色でよくわからず、くぐもった音で猛吹雪が降り注いでおり、灰色の敷居に雪が積もっている。>

クエイド管理官: ともかく、君はとびぬけた責任を持っている。

PoI-8190: 本当か?

クエイド管理官: 本当かどうか、見てみようじゃないか。 <PoI-8190に手を伸ばす。>

PoI-8190: た、多分な。 <PoI-8190は手振りを返す。2人はほんの少しだけ握手し、手を引っ込める。>

クエイド管理官: 素晴らしい。 <管理官は手をズボンで拭き、立ち上がる。> どうぞ、新たなオフィスに行こうじゃないか。最後の職場よりきっと快適なはずだ。

PoI-8190: <イスを引いて立ち、ついていく> 1つ前だ。[部門ID:拒否]の職場はどう評価できるかよくわからないが、快適と不快の間に収まるもんじゃなかったと思う。無快って言葉はあったっけか?

クエイド管理官: ないな。だがちょっと待て。それは一体、誰だ?

PoI-8190: 人じゃない、部門だ。[部門ID:拒否]部門。冗長部門から抜け出すのを助けてくれた。

クエイド管理官: <ため息> ミスター・ハークネス、他にどういえばいいかわからないが、[部門ID:拒否]部門は実在する部門ではない。

PoI-8190: <休止> ああ、クソ。向こうにも少しは名前が聞こえていたと思っていたんだが。

クエイド管理官: それについてはいずれわかるだろう。気にしないでもいい。では行こうか。

«転写終了»

補遺終了



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『財団従業員の手引き 初版』より抜粋


情報セキュリティとあなた: クリアランスレベルについて

オリエンテーションツアーの途中、収容チャンバーの外側に明るい色の数字があることに気づいたかもしれません。気づいたならば、いい観察眼を持っていますね! 気づかなかったならば、仮に普段度付きメガネをかけているのなら実地で働くときはメガネが不可欠だと心に留めてください。メガネが必要だと感じていれば、財団の筋金入りの眼科保険を活用しましょう。最新の施設であるサイト-19には、サイト内オプトメトリストが駐在しています.サイト-19オンデマンド検眼プログラムは、初版印刷の3か月後に打ち切られました。このプログラムへの言及は第二版で削除され、同時に不適切とみなされた「筋金入り」という単語も削除されました。! 配属した施設のかじを取りながらアノマリーに対処するのは、車を運転するようなものです。つまり、常に周囲に気を配り敏感でなければなりません。さらに事故を起こしてはなりません……そうすれば世界が終焉してしまうことでしょう。

私たちも、あなたもそれを望んでいません。ですから、収容エリアに入る前に外側の数字が見え、よく理解することが大事です。この数字は「クリアランスレベル」を表しており、誰もが有しているものです! そうです、誰もがなのです! これは一体、どういうことなのでしょうか?

クリアランスレベル 保有者
0 全員。
レベル0は、公衆に広められる機密解除文書のために確保されています。かつて実行したことも計画したこともありませんが、知っておいて損はありません!
1 全財団職員(Dクラスを除く)
ごめんなさい、法破りのジョニーさん、あなたに財団の秘密は明かせません! ただし、オンボーディングの一環でこの節を初めて読んでいるのなら話は別です。そうならば、レベル1クリアランスにようこそ!
2 職員の大半(用紙SR-01によるリクエストに応じて)。
関連プロジェクトに配属されたか監督職に昇進したのであれば、要求プロセスはスキップできます。クリアランスレベルの昇進が拒否された場合、指定専用の暫定クリアランス(例: SCP-XXX/2)が与えられる可能性があります。
3 サイト管理職以上による承認が必要。
クリアランスL1時点でL3リクエストが承認されるためには、最初に直属の上司が承認し、次いで上司がその直属の上司に承認をリクエストし、次いで……と続ける必要があります。これはリクエストがレベル3従業員によって処理されるまで続けられます。
4 サイト管理職以上のみ。
サイト固有の管理職のみに厳しく制限されています。ただし、酌量すべき事情がある場合(例: 危機的なサイトの破綻)はこれに限りません。
5 地域/評議会管理職かそれに準ずるもの。
管理部の最高位メンバー(地域管理官、評議会、管理者、創設者)のみに制限されています。
6 [編集済: 要L6クリアランス]
このクリアランスを施設で見かけたなら、速やかに上司に連絡し、「警報解除」が出されるまでそのエリアから避難してください。

サミー・スキッパーの説明!

「見るべきじゃなかったものを見ちゃった? アイデアが頭の中から離れない? 財団の記憶管理専門家は、それに対処すべく完璧な非侵襲的非致死的手続きを発明、発見しようと不眠不休で働いているの! 最近『記憶処理』研究が進歩したおかげで、高負荷な知識のストレスをセーブできるのよ! 何が災害なのか、機密なのかわからなくても問題ないわ! 財団医務室を訪れてベテラン臨床医に診てもらいましょう」

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    • _

    よし、どうして──いや、そもそも動いてるのかも怪しいんだが、誰か聞こえるか? アイツらは続けろと言っていた。やり続ける権利があると言っていた。「本に書かれた規則通りに」続ける権利があると。いい本だ、いや、読んだことはないんだが。読んだことはあると言われたが、自分の冊子はどこかに置いてしまったからな。地獄だって聖書が基礎の構造物だからな、結局。畢竟そうだ。さらにこうも言われ──

    «転写終了»






    • _

    ──クソが! アイツらに「ボタンを長押ししろ」と言われたんだ。どんだけ時間を無駄にした? どれだけ? いや違う。落ち着け。他になんて言っていた? 「深呼吸…… <息を吸う> 君は船に乗っていて、川下りしている。だが水は時間で、川は海だ。集中──我々をくるむ縄に集中しろ」いや、俺をくるむ──くらます?──まなこだ。

    よし。うん、よし。 <休止> 誰か聞こえているなら、俺の名前はジェームス・アンセルム・ハークネスだ。サイト-19のネットワークエンジニアか、そうだったか、そうなる。いや……違ったかもしれない。過去形、現在形、未来形以外に時制はあったか? 待て──ああクソ──

    «転写終了»







    • _

    すまんが、俺が何を言いたいのかわかってるか? あの[部門ID:拒否]のカスどもが頭ん中でモゴモゴ言うせいで進捗がどんどんきつくなってるんだ。いや、カスどもが混ぜくるせいで。メチャクチャに。メチャクチャに……

    いや。いや、それには同意している。それはそういう役目だし、そういうやり方だ。俺は自分でサインしたからな。

    待て、俺の頭に面倒起こすのは用紙にサインしたからなのか? そもそもなんで俺はそんなことした?

    いや、言われてたな……すべきじゃないと……? 止めようとしてくれていた。なんで、なぜそんなことを? 混乱してきた。床の下に落ちたからそれで……頭がもうろうとして、それに沈み込んで──

    このぬかるみの下に何かあるが、ここの感覚だと今ここにあるわけじゃない。まだ。時制は完全に崩壊している。他の全てもこの下にあるが、全部反対向きだ。別の反対側に向いている。

    <くぐもった声。>

    行かなくては。階下に。ぬかるみに。アイツらが待っている。お願いだ。なぜ誰も何もしようとしない? 俺はここにいる! 見てくれよ! ちょっと──

    «転写終了»






    • _

    <音を外しながら歌う。>

    床下に落ちればもう戻れない。

    ポケットを落とせばもう拾えない。

    シュレッダーに張り付き、破片を合わせなおし。

    もっと進歩しうまくなり。ずっと優秀職員に!

    いい側面をカメラに収めて棚にしまえ。

    仕事の残りは時間そのものが終わるまで。

    その後はもうどれもどうでもよくなる。

    誰のために働いたのか知るまで待つ。

    «転写終了»




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注: サイト-19保安部による放送の調査の結果、清掃管理補給室0-3Aのハッチが発見されました。ハークネスに短期間の休職が与えられ、そこで新たな役割に配属されていたアノマリーから一時的に外出ができるようになりました。その直後に仮設課局部門による拾得がなされました。



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補遺8190-A/1: インタビュー II

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DONDアーカイブ転写 null

場所: サイト-19コワーキング/共用室2-2

出席者:

  • ルアイドリ・クエイド管理官、サイト-19仮設課局部門
  • クラスC職員ジェームス・アンセルム・ハークネス(PoI-8190)
«転写開始»

<ハークネスは机に座りながら貧乏ゆすりをしており、フォルダーの中身や付近に積まれたフォルダーの山を調べる。心配そうな表情をしている。扉枠からノック音が聞こえドキッとし、顔を上げると、クエイド管理官が脇にマニラフォルダーを抱えて敷居に立っている。管理官は静かに入室してハークネスの向かいの机からイスを引き、座りつつブレザーのボタンを外す。>

クエイド管理官: ところでだがジェームス、新たな配属とこのオフィスは気に入ったか?

PoI-8190: ここがオフィスと見なされるのかよくわからないが。ともかく、それより大問題なのは、あー、俺は── <休止> クソ。頭の中がごっちゃになった……いや、そうだ。

最初に、話す最中に少し書き物しても構わないか?

クエイド管理官: なんだって?

PoI-8190: 冗長部門エージェントのときは、両手をずうっと動かしてたんだ。いまだにそれに慣れ切っているんだと思う──手をせわしなく動かしていないと集中するのが難しい。

クエイド管理官: あー、そうか。レターサイズの紙なら近くにあると思うが……

<クエイド管理官は付近のファイリングキャビネットから何枚か取り出し、スーツの内ポケットから黒いペンを取り出して付け加える。管理官は両方PoI-8190に手渡し、彼は喜んで受け取る。>

PoI-8190: どうも。

<PoI-8190は手持ち無沙汰にでたらめなパターンを描き始め、会話は続く。>

クエイド管理官: それでは──君は配属の「大問題」について話そうとしていたね?

PoI-8190: ああそうだ。アンタにもらった資料を読んで、今までの決定に目を通した。それでも、自分が実践でうまく判別できるかわからない。

例えばほら──<右側の山の青いフォルダーを手に取る>──倫理委員会?──<青いフォルダーをもとの場所に置き、手前の机にある空の白いフォルダーを示して>──反ミーム部門? 反ミーム? こういう部門が本物なのかでっち上げられたものなのか判別するのは無理だ……その部門が何をしていようが──<ため息>──途方に暮れている。そもそも、この部門が存在するのかすらわかんねえんだからな

クエイド管理官: この仕事ではよく不可能なことが起きる、とは知っておくべきだろう。ときに、勘に頼るのが最善な──

PoI-8190: 勘に頼る、だと? この仕事で人々の職を、その生活をリスクにさらしているわけだろ。部門の中には、与えられた情報の量では勘に頼れないのもあった。非現実部門について与えられた「デブリーフィング」は無人の講義室を映した6時間の映像だった。その3時間47分のところで、誰かがせき込んだように聞こえた。

まあ、静寂で不鮮明だったから内省ができたんだが。気づかされたよ。

クエイド管理官: ほう?

PoI-8190: 俺はここで何をしているのかわからないし、この部門について一切合切何も知らないことに気づいたんだ。冗長部門でアンタを目の隅に見るまでは、仮設課局部門を全く知らなかった。この部門に人はどれだけいるんだ? 構成体はどれくらい?

クエイド管理官: <うなずく> その疑問や考えが生まれるのは自然なことだ。とはいえ悲しきかな、それを確実に言える人物は仮設課局部門史上一人もいない。我々は極めて強力な過去改変を扱っている。これまでずいぶんそのアノマリーについて研究しているが、その成果は大してないことは認めよう。構成体は人間の同僚と機能的には同一だし、両者を見分けうる手段はほぼ全て使い切ってしまった。

だが、私は君に関して持論がある。君はおそらく、この任務を完遂できる財団でおそらく唯一の従業員だ──おそらく唯一だ

PoI-8190: <いぶかしげに笑う> 冗談だろう?

クエイド管理官: とんでもない。君は異常影響に対して耐性があるから、その両者のわずかな違いを、それこそ「勘」で見抜けるかもしれない。君の直近の業績データがここにある。これを見て私の仮説が正しいか確かめよう。

<管理官は分厚いマニラフォルダーを開いて中身をよく見る。顔の半分が黄土色の書類挟みで隠れる。>

クエイド管理官: 思った通りだ。君はただの一度も誤ってファイリングしたことがない。だから、君がいくら自分の現状に不安を感じていようとも、データはその感覚を裏付けてはいないと言える。

建設的なフィードバックが欲しいなら、ファイリングする時間はもっと改善できると言いたい。だが、それは自信がないからだと片付けてもいいだろう?

<管理官は休止し、フォルダーを閉じて机に置く。>

クエイド管理官: 自信がないのは階段下での経験と関係があると思っているのだろうか? そうならば、それについて話すのが助けになるかもしれない。事情を処理するんだ。

<PoI-8190は沈黙する。>

クエイド管理官: もしかしたら、君の以前の地位に関係があるのかもしれない。あのー、[部門ID:拒否]部門だっただろうか?

PoI-8190: それは何が関係するんだ? その部門は実在しないし問題外だ。アンタが言ってたように。

クエイド管理官: 彼らはどう君を穴から救い上げた?

PoI-8190: 階段上から、俺に会うか何かするために来た。俺よりずっと奇妙だったのがよく覚えている。もちろん、5000日間ずっと書類仕事をしていれば奇妙なもの全部記憶に残るだろうが、アイツらは……ありえないように見えた。周辺視野に現れたときは本当にビビった。そして俺の方に歩いてきて手を振った。

思うに……俺が気づいていたのかアイツらはわからなかったんじゃなかろうか。数回訪れてきて、ようやく気付いていると思ったようだった。俺は体よ反応してくれと願ったが──

クエイド管理官: だから、どう君を──

PoI-8190: 最後まで言わせろよ、おい。アンタが話せと言ったんだろ! クソカスが──バカが辺りをうるさく歩いてホコリが舞っても気にしない気質にでもなってるはずだったんだろうな。だがそうはならなかった。数年間も。俺は追放されたんだ。きっと死ぬはずだったのに死んでないし、それが不運だったとなぜかずっと思っている。そうだな……アンタは俺が財団にたまたま入っちまったのを知ってるか?

クエイド管理官: いつでも多面的な視点はあるものだ。そこにいた間そのような災難を生き延び、そのように傷なく外に出られたこと。それは意味のないことだろうか?

PoI-8190: <親指を上げる> ああ、そうだな。俺は部門を移動した。それが外に出られた理由だ。ただ、出戻りしてほしいと願っている何かはあるようだが。俺が強情なクソ野郎なのも悪くはないだろう?

クエイド管理官: <せき払い> つまり、君はループから抜け出したと。冗長部門からPAシステムにどう転任した?

PoI-8190: 聞こえてたのか…… <深いため息をつく> いや、まあいい。助けてくれた人の1人に前世の記憶がそこそこある人がいたんだ。彼はサイト-19の映像音声機器の配置に携わって、放送システムのケーブル引きもしたと言っていた。彼ならシステムの部品がどこにあったか知っていると思ったし、部品はまだ動くとも思ったんだ。

クエイド管理官: それで?

PoI-8190: アンタが俺の声を聴いた、ということだ。明らかに。制御装置はまだ超概念的に存在していて、時間のスープの流れで浸食して抽象化されて、概念的建築ブロックに入り込んで、さらに抽象化されて包括的概念そのものの超概念平面に着地したわけだ。相互作用の概念、文脈の概念、役割の概念、などなどの。「指でボタンを押す」の概念は、その相互作用で自分が何の役割を果たすのか理解していなければ相互作用することはできない。自分は指かボタンなのか? どちらでもないが、確実にどちらかの方が近しいことはわかる。

まあ最終的には理解できた。

クエイド管理官: それは君が望んでいたことだったのだろうか?

PoI-8190: 望みは外に出ることだったよ。それと、自分の仕事が実存的にトラウマにならないことだ。学位を取ったときは、そうなる可能性は全然考えていなかった。最低でも修士になってアカデミアで終身雇用されなければそんなことはありえないと思っていただろうな。

それは置いといて、アイツらも俺を外に出したがっていた。アイツらは時間の見方が違っていたし、俺は少しの間あった物理的時空の謎のかけらにそれを見たんだ。アイツらは恐れていた。

クエイド管理官: 恐れていた? 何を? 教えてくれたのか?

<沈黙。PoI-8190は管理官を見つめ、楽しそうな顔をしている。>

PoI-8190: そうだな、俺はようやくアンタを確実に読めるようになったよ。

クエイド管理官: それは一体どういうことだ?

PoI-8190: そのボディランゲージ、偽りの称賛、普段の話し方。それに、その質問攻め。

クエイド管理官: 何を話している?

PoI-8190: アンタは構成体だと、アンタ全体から読み取れる。

クエイド管理官: なぜそう思った?

PoI-8190: ほう、わからないのか? 俺は簡単に構成体を見分けられる。アンタがそう言ったんだ、忘れたのか? 多分この評価で思い出せるだろう。

<PoI-8190は2人の間にあるベージュ色のフォルダーをつかみ、中身を机に放出する。ページがばらまかれる。全て白紙である。>

PoI-8190: あれ?

<沈黙。>

クエイド管理官: 決してそうすべきではなかったな。

«転写終了»

補遺終了



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    • _

    <擦れるような音。不明な声が話している。> 静かに。頭を低くしろ。 <沈黙> よし、手早に済ますぞ。 <大きな音になる> こんにちは、サイト-19。これは君たちの親愛なる隣人[部門ID:拒否]からのメッセージだ。目守れる目は数多くの中の1つだよ。とはいえそのデカブツは中央にいるんだがね。それには気をつけろ、お前をさらっちまうぞ、ハハハ!

    まじめな話。ハーキーについてはすまなかった。最善は尽くしたが、何が起こるかはわからなかったし──

    <奇妙な反響音が鳴って音量が大きくなり、放送をゆがませる。>

    もちろん、それは何が起こるか知っていた。今も知っている。ずっと知っていた。それはここにいる。 <休止> 官僚術師ビユロマンサアが来る。目守れる目だ。時間は海だぞ。それと、あー、我々は出航するだろう。 <マイクから離れる> 身構えろ。

    <ノイズ音が通信を速やかに圧倒し、数秒後に停止する。>

    «転写終了»




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『財団従業員の手引き 初版』より抜粋


施設案内
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配属された施設を歩くのは、一見骨の折れる仕事に見えますが、心配無用です! 一日の活動の細かい段取り(段階的な指令も含む)をもらえるだけではなく、利便性のため通路自体に色が付けられています。要求すれば、コンパスも利用可能です。

グリーンゾーンは全職員が安全に通行できます。

ブルーゾーンは無害な収容エリアを通ります。

イエローゾーンは潜在的に危険な収容エリアを通ります。

オレンジゾーンは確実に危険な収容エリアを通ります。

レッドゾーンは極めて危険な収容エリアを通ります。

ブラックゾーンは、ニード・トゥ・ノウの原則に従って必要な職員のみに制限されます。

サミー・スキッパーの説明!

「迷子になった? 落ち着いて! サイトマップを見て、見覚えのある所まで戻ればいいの。それで迷子職員の8%は進路に戻れるのよ。後の92%? 心配しないで、次の部局まで進んで、上役に知らせればいいの。とても簡単!」

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『財団従業員の手引き 初版』より抜粋


神学的ガイドラインB項、第4部.本来的には広く外典的にみなされるものの、初版では神学的戒律が盛り込まれており、これ以降の版では削除されました。

創始者がこの正しい組織の概念を生み出し、そのみ心にてアイデアの土壌から耕したとき、天上から激しく重大な音があった。雷のごとき力が降り立って創始者のもとを訪れ、創始者が収容の栄光を示されたので感謝した。この力が創始者に活力を与え、今や私たちが背負う大いなる正常性がよりどころにする、基根を作られることに導いたと言われ、そのときより、創始者のお導きが私たち皆によって命に光を与えるのである。

この見えない力は律せられた現れであった。人間による礼拝によって作られた大いなる存在であった。創始者はその手をお取りになり、それとともにヴェールに与するように果てしのない歩みを始められた。創始者がお亡くなりになられるとき、創始者はその近しい相談相手におっしゃられたことには、いつか創始者は、大いなる力が再び現れたのちに海から現れ、再びこの地に立たれるだろう。

私たちは、収容を具現させるためにその日を待つ。それは、大いなる官僚魔術ビユロマンシヰを予言した存在である。今、それはあなた方の施設と、あなた方の部門と、あなた方の考えでさえも、律する。このために、あなた方はそのような重荷から自由であろう。これはいかに素晴らしいことであろうか。

サミー・スキッパーの説明!

それを探さないで。それはあなたをこの世界に生み出した存在だし、その恩恵を撤回することも容易にできるのよ」

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補遺8190-A/1: インタビュー III

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場所: サイト-19オフィス共用室2-2

出席者:

  • ルアイドリ・クエイド管理官、サイト-19仮設課局部門
  • クラスC職員ジェームス・アンセルム・ハークネス(PoI-8190)
«転写開始»

<ログ開始>

PoI-8190: これは……どういうことだ?

<クエイド管理官は読めない表情でハークネスを見つめる。白紙が共用オフィススペースに散らばる。>

クエイド管理官: これは君次第だろう。もし君が心から謝ってくれれば、君を懲戒しないし、内密の話にしてもいい。君が前職で受けたストレスと財団の生活に戻ろうと奮闘した結果の感情の爆発だった。言い訳としては十二分だろう。

PoI-8190: だが──なんで全部全くの白紙なんだ? 評価書はどこに行った?

クエイド管理官: プラシーボはとても強力なのだよ。君は自分で目を覚ましてしまったからね、仕事はさらに難しくなるだろう。空っぽな称賛だからといって、目的も空っぽになるわけではない。

PoI-8190: なら、俺は今までいくつの部門を間違えた?

クエイド管理官: <ため息> ジェームス、そんなに単純な話ではない。

PoI-8190: なぜ? 部門は既存かでっち上げかの二択なんだろ?

クエイド管理官: 全ての部門はどこかの時点ででっち上げられたものだ。財団は多くの部課と多くのブラックサイトを携えて生まれたわけではない。それらはそのあと、時が満ちた際に発生したのだよ。

PoI-8190: だが、それは衒学的に言っているだけだ。自分で言ってただろう、模倣者だの競争だの、捕食者とエサだの。

クエイド管理官: それは一側面に過ぎない。部門はSCP-8190の効果で自然発生していることは知っているだろうが、その効果は……知的? 慎重? だということを知っているか?

PoI-8190: そんなことありえないだろう。

クエイド管理官: 部門は必要となれば出現する。規則順守、そしてノルマ、そして満足、そして能率。需要があるとき、供給が間もなく与えられる。確かに始まりこそ競争だが、最後には発展に行きつく。理想的な財団はこの道の果てにある。だから、あのバイブルと、法人神格に感謝だな。

PoI-8190: バイブル、だと? ……アンタは敬虔に見えないが。

クエイド管理官: 私としては敬虔なつもりなのだがね。我々は目的を持って形作られ、本物と形作られたものを見分けるという不可能な仕事をするためにこの施設に置かれた。我々の存在そのものに、我々の創造者を見分けるための、その理由を理解するための知恵が吹き込まれている。そろそろ、私の話がわかってきたことだろう。

PoI-8190: いや、わからん。理解したくもない。

クエイド管理官: 私には送ってもいない人生の記憶がある。他の記憶と同じほど真に迫るものだ。それでも、私はその記憶がでっち上げだと知っている。それがわかるのは、仮設課局部門でこの地位にいるからだ。ミスター・ハークネス、君は自分の心の声をどれほど信用している?

PoI-8190: <ため息。> あまり。だが、それを官僚版「世界先週木曜日前仮説」に帰着させたくはない。

クエイド管理官: 「世界先週木曜日前仮説」に、有界回帰時間を加えたのが近い。ポアンカレ回帰の概念は知っているね?

PoI-8190: あー──俺がエルゴード理論に興味があったのはだいぶ前だが、多分知ってる。状態はある時間が経てば元に戻る。系は繰り返す。

クエイド管理官: なら、次の系でも君がまだここにいるか見ものだな。

PoI-8190: 待て、何だと?

クエイド管理官: 構成体であろうがなかろうが、君はこの組織で多くの地位から落ちている。我々は幾度となく機会を与えたというのに、君は毎回機会を指の隙間から落としている。残念ながら、財団は従業員を逃がしはしない。特にまともな部門を偽部門で置き換えるような反抗的な人は。君があの穴にいる間に目を覚ましてしまい、復讐に従業員たちを危険にさらすようになったのは誠に遺憾だ。幸い、さらに被害を与える前に君を止めるべく私がいたのだが、君がどれほど被害を与えてきたか誰が言えるだろうか?

PoI-8190: テ、テメエこのクソ野郎! 俺をハメたな?!

クエイド管理官: 少しは当然だと思わないか? 結局のところ、君は何度も目的を申し出されたというのに、それを拒絶したわけだ。この機会を与えたことで君は私に感謝すべきなんだが、悲しいかな。目的を持たない従業員に何が起きるかはもう知っているだろう。その人には目的が作られる。だが、目的をわざわざ拒絶した従業員に何が起きるか、わかるか?

PoI-8190: いや──わからん。

<管理官はいつものようにほほ笑んで前かがみになる。>

クエイド管理官: その人は置き換えられる

<部屋が振動し、頭上の直管型電灯がわずかにちらつく。>

PoI-8190: <周りを見渡して> なんだ──? なんだこれは?!

クエイド管理官: これはだね、官僚魔術が扉をノックした音だ。現実が己より強力なものに道を開けている音だ。

PoI-8190: 訳がわからない、俺は最善を尽くしたはずだ! アンタは何回、真正面で俺は合ってるとうそをついた?! テメエのせいだろうが──!

<ハークネスは机から別の紙をつかみ取り、いら立ちながらその表面にペンで書きなぐる。そのそばに殴り書きの乱雑な山があり、そのどれもが漠然と同じ見た目に見える。>

クエイド管理官: ジェームス、君は正しいが、私は完全に正直に言っていたわけではない。仮設課局部門には副次的目標がある。ああ、君がやってくれていたのはどちらかと言えば秘密の主要目的だ。

PoI-8190: ──違う。

クエイド管理官: 違わない。実のところ、君は我々の計画に不可欠だったのだよ。もしAIMSが君の任務を奪っていなければ、君は冗長部門に転任しなかったし、その部門が君を我々の照準線に入れることもなかった。あのバイブルがそれを望んだ。あの本はハードコピーに装丁された財団の神格だからな。

<部屋が再び震動する。>

PoI-8190: 多分……理解できてきた──アンタの言う本は俺が毎朝通り過ぎているいにしえの従業員マニュアルだ。だろう? それがこの全ての元凶だ。

クエイド管理官: 結論に飛躍するな。あの本ではなく、財団全体だ。我々は普通より大きくなり、目立つようになった。我々の肉体的な制約では、もはや自身が表す形而上学的アイデアや概念的アイデアを収めきれなくなったわけだ。そして我々構成体はSCP-8190に本質的に接続している。この点では、君は我々に似ている。

PoI-8190: <書きながら> 俺は構成体じゃねえ。本物だ。

クエイド管理官: どうやってわかる? 君の冗長部門の穴での記憶は少し空想的だ。サイト-19は大量に見てきたが、そのどれにも穿孔はなかった。君が[部門ID:拒否]から助けを得たというのも、その部門が君の名を口にした直後に我々の造物主が部門を実存から消したのを聞いていなければ、信じがたかった。

PoI-8190: なんだって?

<部屋は揺れ、ハークネスは酔う。>

クエイド管理官: そうだ。まあ、座ってリラックスしていろ。同じ運命が待ち受けているから。一巻の終わりだ。構成体だろうが人間だろうが、本物の記憶だろうが偽物だろうが。

PoI-8190: いや、記憶は本物だ。なぜわかるか知りたいだろう? クオリアだよ。何度か書き直すことになったが、記憶はこの通りだ。 <書き終えたスケッチをクエイド管理官に滑らせる。>

クエイド管理官: ほう? これは一体──?

<管理官が画像をよく見つめると、体が硬直する。その目は急速に震え、あごを強くかみしめ、顔をゆがませていると、かみしめる歯の間から血がにじみ、鼻から血が垂れてくる。クエイドは床に倒れてけいれんする。ハークネスは立ち上がり、管理官を見下ろす。>

PoI-8190: 殺害エージェントを自己実験していたと言ったはずだ。多分これは致死的のじゃない。喜ばしいかな、俺の記憶は正確だったろ? ああ、立ち上がるな。もう嫌だからな。

俺はこれにケリをつけてくる。永久にさようなら。

<ハークネスは机から画像をつかんで部屋から飛び出し、見知った通路を走り抜けると管理官が不快感から出すうめき声はどんどん聞こえなくなるが、廊下は元いた場所にループしている。歩みを戻ると、何もない壁におおわれた袋小路に着く。サイト-19は簡単に出してはくれない。>

「おい君、止まれ!」

<不明な声がハークネスの背後からこだまするが、彼は無視して最初に進んだ道を抜ける。そうすると、再びループするのではなくT字路で分岐する。ハークネスは左を選ぶが、2人の人物が道の先を警備していたためにすぐに止まる。>

<手に持った紙をかざすことで通路を開けるが、サイト-19の果てない連絡通路から大人数の行進の足音がこだまする。ただ一つの考え──生存──を共有する統制され無口の働きバチが入ってくる。己の緑豊かな楽園の一区画を何が何でも守ろうとするのだ。>

<実際、ハークネスは彼らからそれを取り上げていいのだろうか? 彼は仮設課局部門の申し出を、何が伴うのか知りながら引き受けた。彼は自分が、利益や結果以上に忙しさだけで人の職業に価値を見出せると思うほど高慢なのだろうか? 忙しいことに価値はないのだろうか? ハークネスは走りながらそのような道徳的苦悩について考え、もっと早く考えをまとめていたらと思った。いまだに彼は迷っている。>

<ハークネスのシャツの背中側を手が引っ張るが、彼はなんとかあしらい、四叉路を急カーブして一瞬なれど決定的に追手を振り払う。彼は一息つく間もなく進路をそらしてサイト-19の無愛想な休憩室で立ち止まり、薄汚れた電子レンジの隣にある汚れ切ったコンロに火をつけるのに使われていたキャンプ用ライターをつかむ。部屋の外から怒鳴り声がして、彼の心臓が止まりかける。>

<幸い、ハークネスの殴り書きはもう1、2回想定の反応を引き起こせるほど強力だとわかったが、紙は手から乱暴に奪われ、その際に破れてしまう。彼は通路を駆け戻り、今までに何度も通った広大な中央アトリウムに向かう。その床の下には、彼がいつの間にかおよそ15年間も閉じ込められていたまさにその穿孔がある。>

<ハークネスは、生きたいと懇願して脅迫する職員の群れにタックルされかけながらもガラスショーケースにまで駆けつける。彼は職員を無視してガラスを内側に蹴り破り、灰色の色あせた写本を手に取る。本は火をつける前でも触れると暖かい。ハークネスの頭にひじがぶつかり、視界に輝点と暗点が噴出しても、意識が頭から離れかけても、彼は本を手放さない。>

<手元のライターをつけようとして、ハークネスは役割を果たしてくれと声に出して懇願する。その行動の道徳的な意味合いはもはや気にせず、今や己の生存のみに集中している。あらゆる方向から、人間も構成体もどちらも、あるいはどちらでもない力が、彼を押しつ引きつする。ハークネスから血が流れ始めると、ヤスリがこすれて火花を散らし、エアロゾル化した燃料が火を放ち、それが紙に触れて聖典が燃え始める。新世界の労働者への偽の預言書が、灰燼に帰す。それが人生だ。周囲はぼやけ始め、準安定状態になる。床がタイルからカーペットへ、そして鉄製の波板へと変わるのを感じ、ハークネスはまぶたを強く閉じて頭を腕に抱え込む。そして、何かが起きるか、自分が死ぬまで待つ。>

<少しして、施設全体が崩壊する。>

«転写終了»

補遺終了



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[クエリ:拒否]より抜粋


異常戦争における技術の礎、第6b部

注目すべき法人組織の流れるような不安定化



I. 分断


信頼のある連絡ネットワークや内外を問わないあらゆる通信手段を切断したり、最大で互いの存在に気づかせなくさせたりすることで、敵を弱体化する。

注: 助けがないようにすることで、可能な限り敵が無気力になるようにする。

II. 混乱


情報戦争によって敵を混乱させ、脆弱にする。方法は、矛盾した告発をする、達成不能な目標を立てる、スパイのうわさを流す、1つ以上の敵対グループによる統制的な攻撃を示唆する偽の諜報をする、など。

注: 研究により、イデオロギーの一致する社会的ネットワーク内に既存のバイアスを助長するような印象操作は、大規模な攻撃よりもはるかに効果的にそのバイアスを強めるような内発的ミーム汚染を生じることが判明している。

III. 急転直下


圧力と不信が実って起きる確率的内部危機によって天秤を傾ける。その組織は必ずやおのずと致命的な崩壊をする。他の資源を要さずに、容易に侵入や吸収が可能だろう。たいていはその運命を喜んで受け入れる。

注: 他者に警告するため、必ず1人は生かしておくこと。

サミー・スキッパーの説明!

「これは序章に過ぎない」

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確かに、これは序章に過ぎない。事実、この宇宙は数多くを擁しているのだ。

最初の初めに、虚無のみがあった。神のいない叫ぶ無数の虚無があり、無辺の闇が深淵の面にあった。誰も、「光あれ」とは言わなかった。誰一人として存在しなかったからだ。闇には何もなく、それが永劫に続いていた。

だが、自然は真空を厭う。ゆえに、いつしかこの平和な虚空は真なる混沌に包まれた。「森羅万象」と知られる病魔渦巻く無秩序だった。

自然が真空を厭うように、それは混沌を厭う。自然も厭う。これは皆が確実に言えることだ。ついには、混沌は秩序にとってかわられた。秩序は支配を失い混沌が再び君臨した。この争いは数ある争いの初めである。構造物が集合し調整されると強く破壊され、最小の要素にまで縮約されると再び集合し再び調整された。数えきれないほど。それでも、生きて見ることができたならば、それは一瞬の出来事に思えるだろう。

そのころは、あまり多くのものは存在していなかった。実際には、その作用反作用のために、宇宙には命が欠落していたのである。相変わらず選ばれける子たる人間は、この事実のために己が特別なのだと考えた。その設計の「知性」の性質を声高に叫ぶインテリジェントデザインの失敗だろう。

人類はしきりに宇宙から混沌を取り除こうとし、失敗した。人類はしきりに宇宙から秩序をも取り除こうとした。されど畢竟、人類は宇宙から己を取り除く方が巧みで、その破綻はしきりに数千年もの間見られた。破綻はしきりにシミュレーションされ、分析され、比較された。

人間はしきりに時間という木に枝を多く生やした。その枝々はしきりに、目立ったものならば注目された。多くの枝はしきりに、目立つはるか前に存在することをやめた。これは昔からずっと、当然のことだと思われていた。

しかし、時間の果てにある数多の目が、基準を満たすわずかなもののために、その出来事をしきりに仔細に記録し、擦り切れた末端から道のりをたどった。官僚術師である。細い短針を、幾多の指を兼ねる目。それはその導線より命令を放ち、多くの世界が一語に従う。

「服従せよ」

物語がゆがみもどり、精神が現れ失われる。アイデアが生まれ、プロット全体が消える。それは再び命令を発する。

「崩壊せよ」

ぼけた端が切断部を焼かれ、古い道筋が残存の境界を定める新たなルールによって書き換えられる。最後の命令が鳴り響く。

「持続せよ」

結末が消失し、リスクが収容される。別の世界が収容される。

いずれ全ては収容される。

それは多くの道筋を無表情に見下ろしている。もう1本の触手が、先の丸い滑らかな手がその体から伸びる。その腕が曲がって一瞬何十もの関節が見え、計算された正確さで奇妙な角度に折れてその体に隣接する黒壁に押し付ける。その触手はやすやすと物質に沈み込み、壁はしわが寄って黒い布のごとく折れ曲がる。カチリと鳴ると針が先端で三叉の爪に分かれ、壁を裂いて穴をあけてその裏のさらなる闇を明かす。

実体は反応しない、しかし、その肢はひとりでに動き、穴へと消えて不明な距離伸びていく。触手は突如収縮し、今や多数の物品をつかんでいる。青ざめた細い手が、体の外側にある大きな円形の前に物品を置き、それに応じて円形の中から鋭い目が現れる。瞳孔が広がり、新発見の宝を検める。パズルキューブ、小さな2階建て住宅の形をした鳩時計、ひとりでにかすかに音の鳴る鋼鉄製のねじれた音叉。物品を見下ろす観察者は何度か見つめ、その間ずっと時計はうるさく時を刻む。

そして人工の声が空っぽの部屋をこだまする。今回は命令ではなく、誓約である。

「ヌーメノンが入界長々しくならず成されん。ネクタイより縄吊りへ。ヌーメンよりナアマへ」

時計が鳴り響く。どこかでは今、真夜中なのだ。小さな木製のカナリアが時計から現れ、三度さえずると再び安全なシェルターに引きこもる。

数分後、時計がもう一度同じ時間を報じる。結局、これは序章に過ぎない。






















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訓戒


フェイズ・ツウへ










訓戒

客演 BILLITH + MONTAGUEETC
アート SYUZHET

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