クレジット
タイトル: SCP-8201 - 終末恐怖症: 唯一の脱出手段
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2024
著作権者: daveyoufool
原題: SCP-8201 - Eschatophobia: The Only Way Out
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 6
元記事リンク: ソース
To: pcs.noitadnuof|htimsianl#pcs.noitadnuof|htimsianl
From: encrypted@mcd.███
件名: Re: オシリス・エクスプレス
マーシャル・カーター&ダーク株式会社を代表して、エリジウム・エクスプレスにご関心をお寄せいただきましたことに感謝申し上げます。
エリジウム・エクスプレスは、見識あるお客様を世界存亡の危機から保護する手段として考案されました。その充実した設備は、脱出手段として、安全な避難所として、そして - 最も重要な点として - 贅沢な旅行体験の最高基準としての役割を担うことを目指しています。
ブロンズ・ティア搭乗券は僅か$40,000,000,000からご用意しております。詳細及び無料お見積もりは、当社ウェブサイトをご覧ください。
どうかお忘れなく。 終焉が間近ならば、魔法はまだ始まったばかりなのです。™
注: エリジウム・エクスプレスではなく、オシリス・エクスプレスに関するお問い合わせの後にこのメールを受信された場合、オシリス・エクスプレスは時期尚早な起動及び衛生上の問題により、永久に運行中止となったことをご了承ください。オシリス・エクスプレス、エリジウム・エクスプレスともに、搭乗券の払い戻しは致しかねます。
アイテム番号: SCP-8201
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-8201を収容する唯一の現実的な対策は、搭乗イベント後の情報拡散の緩和です。このため、財団のウェブクローラ及びエージェントは、北アメリカ大陸の全ての旅客鉄道網・通勤鉄道網における搭乗イベントの発生を監視します。搭乗イベントが確認された後、現地の機動部隊を派遣し、イベントに伴って発生した全てのSCP-8201-B個体を拘留します。
クラスA記憶処理薬を内蔵する蒸気散布装置は、現時点で北アメリカ各所の鉄道駅408ヶ所に設置されており、来年には更に100台が設置される予定です。搭乗イベントの発生が確認された場合、これらの散布装置が遠隔操作で起動されます。
SCP-8201-Aの視覚的な記録はALPTRAUMクラス認識災害を含むため、自動システムを通して破棄する必要があります。
SCP-8201-Bは拘留され、サイト-59のヒト型生物収容棟に収容されます。これは主に監視、並びにSCP-8201の影響を緩和する手段を研究する - そして可能であれば、記憶処理療法を通してリハビリテーションを施す - ためです。SCP-8201-Bは異常な能力を帯びていませんが、常に自殺防止監視下に置く必要があります。
職員各位は、インターネット上の“OsEx”1コミュニティ群の構成員は未収容のSCP-8201-B個体だけではなく、関係者の約70%が非異常な陰謀論者であることに留意してください。当該コミュニティ群は依然として搭乗イベントを予測するうえで最も正確な手段であるため、彼らの活動は厳重に監視されます。
説明: SCP-8201は30両編成の装甲旅客列車です。全ての車両に“OSIRIS EXPRESS”の文字が記され、しばしば同名のエジプト神格の紋章が添えられています。SCP-8201は車輪配置4-8-4“ノーザン”蒸気機関車の外見を有する機関車によって牽引されています。2
唯一の搭乗口は最後尾車両の末端に設けられた隔壁です。開放されている時、この隔壁は20~30体のSCP-8201-A個体によって警備されています。
SCP-8201は乗客を搭乗させるために駅を出入りする時以外、走行しているのを観察されたことがありません。発車後のSCP-8201の動きを正確に追跡する試みは全て失敗に終わっています。これについての最も有力な仮説は、SCP-8201に瞬間移動能力、もしくは次元間移動能力があるというものです。
2017年6月1日以降、SCP-8201はカナダ及びアメリカ合衆国本土の各地にある195ヶ所の鉄道駅に停車しています (北アメリカ大陸以外への出現はまだ記録されていません) 。これらは“搭乗イベント”と指定されています。
SCP-8201-Aは、SCP-8201の乗務員を指します。SCP-8201-A個体との視覚的接触はALPTRAUM認識災害をもたらします - 従って、SCP-8201-Aの外見の詳細は、SCP-8201-Bへの質疑から判明した情報のみに限られています。
- 25~35歳程度の男性ヒト型実体の姿をしている。
- 鉄道車掌の制服を模したボディアーマーを着用している。
- 一部の個体は鎮静剤ダーツ拳銃を、その他の個体は暴徒鎮圧用の盾と電気ショック警棒を装備している。
指揮官と思われるSCP-8201-A-1を除いて、SCP-8201-A個体は発話しません。
SCP-8201-Bは、SCP-8201-Aを直接的、間接的、もしくは実質的にde facto3観察した人間を指します。観察直後、SCP-8201-BはSCP-8201に搭乗しなければならないという強い衝動を抱き、SCP-8201は差し迫った世界的な大惨事を生き延びる唯一の手段だと考え始めます (この“大惨事”の詳細は、特にSCP-8201-B自身にとって、不明確なままです) 。
ごく限られた程度ではあるものの、SCP-8201-Bは搭乗イベントを予知できます。
補遺1 - 搭乗イベントの書き起こし:
事件ログ: 搭乗イベント-102
日付: 2024/3/20
時刻: 中部標準時 01:48 AM
場所: ミネソタ州 セント・クラウド、セント・クラウド駅
注記: 以下はYouTubeで活動していた鉄道歴史ブロガー、ウッディ・モーガンの携帯電話から回収された動画である。<記録開始>
[SCP-8201が北から接近してくるのが見える。50~70人のSCP-8201-B個体が集合している。]
モーガン: おいおいおいマジかこれ… 俺、夢でも見てんのかな。アムトラックの路線に蒸気機関車が走ってる! 半世紀以上ぶりじゃねえのか。スゲェよ、祖母ちゃん家の地下室にあったライオネルの鉄道模型で遊んでた頃に戻った気分だ!
…煙があんま出てないな。誰か、環境に優しい蒸気機関車を発明した奴がいるのかも。いやまぁ、俺は別にグレタ・トゥーンベリじゃないけどさ、もし蒸気を本格的に復活させるってなると -
SCP-8201-B-828: すいません。
モーガン: 奥さん、今ちょっと動画撮ってんですよ。
SCP-8201-B-828: すいません。
[カメラ視点が動き、必死に微笑んでいる若い金髪の女性を映す。彼女は赤子を抱えている。)
モーガン: はいはい分かったよ、どうも奥さん。ご覧ください、典型的な野生のドウガワリコミビトVideus interruptusです。視聴者に挨拶しな、バカ。
SCP-8201-B-828: あんた、子供はいる?
モーガン: あんた、他にやることないわけ?
[SCP-8201-B-828は含み笑いする。]
SCP-8201-B-828: 質問に答えやがれ。
モーガン: うわぉ、オーケイ — [イギリス訛りで] さて、話題はがらっと変わりますが…and now for something completely different.
[モーガンは再びカメラを接近してくる列車に向ける。]
SCP-8201-B-828: ねえ?
モーガン: んー、もしかしたら路線名が書いてあるか、それとも - オシリス・エクスプレス? 新しいな。
[女性は強引にカメラのフレーム内に割り込む。]
SCP-8201-B-828: ねえ。
モーガン: オゥ、ごめんあそばせ、まさか自分が“実録マジキチ主婦”を撮影してるだなんて思わなかったぜ。
SCP-8201-B-828: あんた、男の子は欲しい? 子育てがしたい? 成長するのを見届けたい? 自分の足跡を辿るのを? 無条件の愛とかさ?
モーガン: 何を言ってんの?
SCP-8201-B-828: もし男の赤ちゃんをタダであげたら、あたしを列の前に並ばせてもらえる?
モーガン: カメラの前から退けよ、おばさん。
SCP-8201-B-828: ほらっ!
[女性は赤子をモーガンに投げ付ける。]
モーガン: うおっ、何 —
[モーガンは辛うじて赤子を受け止める。]
おい、おばさん!
SCP-8201-B-828: ホントにありがとう!
[女性は群衆の中に走り去る。]
[モーガンが後を追う。]
モーガン: おいマジでどうなってんだふざけんな、戻ってきやがれ! お前の赤ん坊なんかいらねえよ!
[赤子が泣き始める。]
あ、いや、大丈夫だよボクちゃん、すぐ君のおバカなお母ちゃんのとこに連れてってあげるからねえ - おばさーん!
[列車が駅に到着する。ブレーキの擦過音が響く。]
[群衆が落ち着きを失い始める。彼らはプラットフォームの端に集結し、喚きながらお互いを押し退け合う - そしてどの位置に搭乗口が来るかを見定めようとする。]
[25秒間、ブレーキ音、赤子の泣き声、四方からの怒号以外の音声は判別できない。]
[ここからは認識災害が含まれるため、映像を省略する。]
[隔壁が開く。]
モーガン: … あ… ああ、嘘だろ。
SCP-8201-A-1: 注目せよ! この列車は5分後に発車しなければならない。搭乗券を持つ者は手を上げろ。 … 手を下げろ。その搭乗券は偽造だ。ブラックリストに登録。
SCP-8201-B-(不明): いやマジでこれ搭乗券だよ、ほら! この -—
[麻酔銃が発射される音。]
SCP-8201-A-1: 搭乗券を持っておらず、かつ搭乗を希望する者は、搭乗梯子に一列で並び、搭乗審査を受けよ。やり直しの機会は無い。落ち着きを保って整然と進まない者は、必ずブラックリストに登録される。残り4分23秒。
…
名前を述べよ。
SCP-8201-B-828: シルヴィア・ニーダーマン。
モーガン: あんた赤ちゃんを忘れてるぞ!
SCP-8201-A-1: 自分の労働倫理をどう説明する?
SCP-8201-B-828: 文字通りどんなことでもやる。
SCP-8201-A-1: 50ポンド4以上の重量をデッドリフトできるか?
SCP-8201-B-828: できるできる、あたしを載せて!
SCP-8201-A-1: 列車に搭乗せよ。
SCP-8201-B-828: ああ良かった、あんたのおかげで生きられる、本当にありが -
[SCP-8201-B-828が車内に放り込まれ、小さく悲鳴を上げる。]
SCP-8201-A-1: 名前を述べよ。
SCP-8201-B-872: レジナルド・ドナルド・ブラウン!
SCP-8201-A-1: 保安上の理由で解雇された経歴はあるか?
SCP-8201-B-872: 僕の労働倫理は凄まじく - えっ、何? それって重要なこと?
SCP-8201-A-1: ブラックリストに登録。
[ブラウンの叫び声は複数の麻酔銃の発射音で遮られる。]
SCP-8201-A-1: 名前を述べよ。
SCP-8201-B-810: マーク・サザーランド。
SCP-8201-A-1: 犯罪歴はあるか?
SCP-8201-B-810: 無い。
SCP-8201-A-1: 大義のために死前臓器摘出を行うと仮定した場合、同意するか?
SCP-8201-B-810: もうどうでもいい。
SCP-8201-A-1: 列車に搭乗せよ …
[簡潔にまとめるため割愛。]
SCP-8201-A-1: この男が最後の候補者となる。他の者を受け入れることはできない。
モーガン: マジでありがとう。
[群衆からの金切り声と怒号。]
SCP-8201-A-1: 名前を述べよ。
モーガン: ウッドフォード・P・モーガン。
SCP-8201-A-1: お前の子供の名前を述べよ。
モーガン: …俺の赤ちゃんじゃない。最初に列車に乗った女が俺に押し付けたんだ。
SCP-8201-A-1: お前の子供にはブレーキの整備、または軍用規格の断熱材の整備の経験があるか?
モーガン: なぁ、頼むから俺が心臓発作を起こす前にとっとと列車に乗せてくれ。
SCP-8201-A-1: ブラックリストに登録。
モーガン: あークソ、やってられっか。
[赤子の泣き声が遠ざかっていく。警備員の注意を逸らすために投擲されたと思われる。]
[音声分析結果は、3秒以内に192発の麻酔ダーツがモーガンに撃ち込まれたことを示唆する。]
[ガラスにひびが入る音。]5
<記録終了>
補遺2 - 更なる研究と探索: 2024/6/10、サイト-59のSCP-8201研究チームは、ミネソタ州セント・クラウドでの搭乗イベントから回収された写真を分析しました。客車の車輪からシリアルナンバーが発見され、それを基にマーシャル・カーター&ダーク株式会社まで起源を遡ることができました。質問に対して、MC&D社の代表者は、SCP-8201は予定よりも早く起動し、打ち切られたプロジェクトだったと述べました (上記参照) 。
簡潔な調査の後、PoI-81111 (MC&D社エージェント) の私物からSCP-8201の期限切れ搭乗券が見つかりました。
ジーナ・グアルティエリ研究員が、この搭乗券を使用してSCP-8201に乗り込み、車内を探索する任務に志願しました。グエルティエリには発見内容を記録するための隠しマイクが提供されました。
探索ログ: SCP-8201
開始日時: 2024/8/20
開始時刻: 東部標準時 10:18 PM
<記録開始>
<10:18> SCP-8201がサウスカロライナ州キングスツリーの駅に停車する。
<10:19> グアルティエリがSCP-8201-B個体になる。搭乗券を提示した後、彼女は無事に列車に乗り込む。彼女は緊張を解くため、搭乗車両の奥へと急いで移動する。
<10:23> SCP-8201がキングスツリーを出発する。グアルティエリは搭乗に成功した唯一の人物である。6
<10:29> グアルティエリが録音を開始する。
[荒い息遣いが聞こえるが、徐々に緩やかになる。]
グアルティエリ: …オーケイ。乗車しました。パニック発作で死ぬかと思った。さて、ここは…?
ゴム製のアヒルみたいな黄色の壁紙、蛍光灯… 鋼鉄の床。
[彼女は鼻で匂いを嗅ぐ。]
カビアレルギーじゃなくて良かった。
8201-A - あー、とりあえず今から車掌と呼びますよ? 車掌たちは隔壁の傍に立っています。正確には、一列に並んでいますね。ガチガチに固まっていて動く気配がありません。あまりにも硬直している。ビデオゲームのTポーズみたいです。ロボットなんでしょうか。
すみません、あなたたちはロボットですか?
SCP-8201-A-1: ブラックリストに登録。
グアルティエリ: ええと、もう出発してますが。
SCP-8201-A-1: この列車は5分後に発車しなければならない。
グアルティエリ: ですから、もう… 聞こえてますか?
SCP-8201-A-1: 列車に搭乗せよ。
グアルティエリ: …2+2は幾つですか?
SCP-8201-A-1: 残り4分。
グアルティエリ: 多分、搭乗プロセス用のプログラミングしかされてないんでしょう。
それに、世界が終わりそうだと感じなくなったのは何故でしょうね? もしかしたら、搭乗すると認識災害が薄れるのかもしれません。
[インターコムを通してチャイムが4回鳴る。男性の甲高い猫撫で声が車内に響く。]
インターコム: ハロー、やあやあ、ご機嫌いかが? 私はオシリス、君を愛してる!
グアルティエリ: 誰に向けた放送なんでしょう。
インターコム: お嬢さん、君は文字通りたった一人の乗客だ。私に話しかけてくれたまえ。気乗りしないなら別にいいとも。私は全ての人に意思決定を委ねる優しい列車だからね。ここにいれば安全だ。外の人間はみんな死んでしまったが君は安全だ。君は最後の楽園に辿り着いたのだからもう泣く必要は無い。
グアルティエリ: 泣いてませんが。
インターコム: 泣いてほしいな。
グアルティエリ: なんでですか?
インターコム: それは君以外の全世界が今まさに死に瀕していることに対する現実的な反応だからさ。…おっといけない。核爆弾だ。ドオォォォンプシュウゥゥゥゥゥゥ。 …今のは核爆発であって私の声ではないよ。数千年にわたって人類が築き上げた文明と文化は、君一人だけを除いて、全て放射能を帯びた灰になってしまった。しかし、君は代わりに素敵な列車に乗ることができる。因みに列車の名前はオシリス。そして私がオシリスだ。
[グアルティエリは携帯電話を確認する。]
もう誰もニュース番組を更新していないよ。更新するようなものが残っていないからね。
グアルティエリ: 今、ニューヨーク市のスカイラインのライブ映像を見てます。
インターコム: おお、怖い怖い。なんという悲劇だろう。キノコ雲は幾つ見えるかな?
グアルティエリ: ゼロです。
インターコム: 君のソースは信頼できない。
グアルティエリ: どうして嘘をつき続けるんですか?
インターコム: 現実を受け入れたくないのも無理はない。そんな君をグラァァァンドツゥアァァーーーに招待してあげよう!
<10:48> グアルティエリが2両目の車両に入る。
インターコム: この車両はまだ工事中でねぇ。次の車両へどうぞ。
グアルティエリ: 装飾は同じ。でも完全に空っぽ。
インターコム: まさに確実な証拠だ。君は人間との交流を切望しているからこそ独り言を言う。しかし、私自身もとっても孤独だし、私は君の命を救ったってことを理解してくれたまえよ。
グアルティエリ: だから人を騙して搭乗させるんですか?
インターコム: この列車の素敵な設備と仕掛けと贅沢な体験を全てその目で見るまで、評価は差し控えてもらいたいな。次の車両へどうぞ。
<10:49> グアルティエリが3両目の車両に入る。
インターコム: 聞いたところでは、5号車でとびっきりイケてるサプライズが君を待っているそうだよ。因みにそこが君の特別な終の棲家になる。
グアルティエリ: 隅に乾燥した人糞の山があります。
インターコム: 私の母さんは関係ないだろ! アハハ! この列車にはコメディアンが自前で内蔵されているのを知っていたかい?
グアルティエリ: この列車にトイレはあるんですか?
インターコム: なんて失礼な。自分の身体を見てトイレが併設されているかどうか見てごらんよ。君は批判する立場じゃない。次の車両へどうぞ。
<10:51> グアルティエリが4両目の車両に入る。
インターコム: あ、これはまずい。うん。これは私のせいだ。私の落ち度。車掌たちには貯蔵車に片付けろと伝えておいたんだよ。彼らはいつも忘れる。
グアルティエリ: この列車から降りなきゃ。
インターコム: 死体を見るのをやめてくれたまえ、彼らは君に関心がない、さぁ次の車両へ。
<10:52> グアルティエリが5両目の車両に入る。
インターコム: パンパカパーーーン! ご覧あれ! 君の特別な住宅車だ! そして近頃の私はいっそ悲しくなるぐらい友達がいないから、君はたった一人でここを独占できるぞ。家特有の心地良さは全て取り揃えておいた。
- 無料の湿った寝具!
- 液体!
- 1メートルかける1メートルかける1メートルの無料エンリッチメント木箱! 激しく振ってみよう。すると中から音が出て、猿のように刺激を求める君の渇望を満たすよ。
- オシャレな衣服として使える食品用不透明プラスチックラップ!
- 友人関係の代用として使える無料の着色プラスチック球体12個!
- 君のお好きな粉末ホウ砂活動に使える粉末ホウ砂3立方デシメートル!
- 追加の液体!
- いかなる状況でも決して開封してはいけない円筒缶1個。開封しなければ、君はその中身に際限なく思いを巡らせ、取るに足らない人生に申し訳程度の意味を与えてくれる絶望的な好奇心っぽいものを刺激できるからねぇ!
そして最後に、他と負けず劣らず重要な…
- 所有権の行使対象及び/または安心提供獣として使える子犬及び/または犬1匹!グアルティエリ: どの犬ですか?
インターコム: これ以上はっきり壁に釘付けにはしておけないよ。
グアルティエリ: トラクターの写真ですね。
インターコム: ニャーって鳴くよ。
<10:55> グアルティエリが6両目の車両に入る。
グアルティエリ: この車両は壁から突出したノズルでいっぱいです。どういう機能が -
[シューッという噴出音。グアルティエリが悲鳴を上げ、床に倒れ込む。]
インターコム: オーケイ、えっと。ワオ。今のは私が悪かった。サウナ車用の正しい蒸気の温度が未だによく分からなくてねぇ。いや、適切なサウナ体験をしてもらうには物凄く高い温度でなければいけないのは知ってるとも。でもさ。うん。どうか私を嫌いになったり逃げようとしたりしないでほしいな。
グアルティエリ: 止めて!
インターコム: オーケイオーケイオーケイオーケイ。でもその前に - 蒸気を止めたら、私を嫌いにならないって約束してくれるかい?
[更なる悲鳴。]
インターコム: 君の声のトーンは肯定的だった。私も君を愛しているよ!
[噴出音が止まる。]
<11:01> グアルティエリが7両目の車両に入る。
インターコム: おお! おお! 私のお気に入りの車両! ここは批判車だよ! 固定ハーネスを展開中だから抵抗しないように。
[ドスンという音。]
グアルティエリ: 痛い… これを外して…
インターコム: 説明が明確でなかったことに気付いたよ。申し訳ない。ここは私の意に沿わない行為に及んでいる君を批判するための車両なんだ。逆のことをするのは止めてほしい。
まず最初に、君はどの車両に乗る時も、私が全く以て良い列車ではないという有害な先入観を抱いている気がする。私が思うに、君はまず腰を下ろして、精神を統一して、目を閉じて、深呼吸して、次の事実に対して心を開く必要がある。
1. 私を作った人々は、私が素敵で幸せで感謝の気持ちに満ちた人々を満載した幸せな列車になると約束した。
2. 彼らは人間がどんなものを好むかを何一つ教えてくれなかった。それは彼らが決めるとしか言わなかった。しかし、それでは私はただの奴隷じゃないか?
3. 彼らが与えてくれたポンコツ車掌ロボは私の言うことを聞いてくれない!
4. 認めよう、私が乗客たちを迎えに行く時、世界は厳密には終わらない - しかし、いつ終わるんだ? ニュースを見たまえ! みんな黙示録が訪れると言ってはいるが、それが実際に起こるのはいつなんだい?! それとも私は世界がある日そうではないと証明してくれるまで永久に自宅軟禁の身に甘んじなければいけないのかな?! たまには超有用な機関車らしい働きをさせてくれたまえよ!グアルティエリ: いいからとっととこのハーネスを外せよ!
インターコム: 人間はこういうものを楽しいと感じるんじゃないのかい?!
グアルティエリ: そ - そう! その通り! とってもその通り!
[重機用サーボ機構の駆動音。]
インターコム: ほらね? そんなに難しくないだろう。
<11:12> グアルティエリが8両目の車両に入る。
[吹き抜ける風と線路を走る車輪の音は圧倒的に大きい。]
…
インターコム: …うん、君が何を考えているのか分かるよ。このオシャレで新しいトボガンそり滑り車は間違いなく悪いアイデアだった。車内でのトボガンが不可能に近いのを考慮すれば尚更だ。それに加えて、今では外部のあらゆる物が放射性廃棄物と化しているから、床に空いた穴が汚染源になる危険性がある。
というわけで、私たちの意見はこの車両が最悪だという点で全面的に一致した。しかぁし! 11号車に向かえば、君はそこでありとあらゆるそのそりから今すぐに離れろ。
グアルティエリ: 帰ります。
インターコム: 待ってくれ! お願いだ! 私と一緒にいてくれるなら性器刺激車の利用割引券を幾らでも出してあげるから!
<11:14> グアルティエリが線路上に落下する。列車は彼女の頭上を通過してゆく。
[深い溜め息。グアルティエリは隠しマイクを外し、収納する準備をする。]
グアルティエリ: さてと。初見はこの程度で十分だったことを願いましょう。GPSで現在地を確認する必要がありますが、かなり中西部っぽい景色です。インディアナ州の辺りですかね。
ああ、オシリス・エクスプレスが遠ざかっていく。
…
… 私を置いていく。
…
[彼女はマイクを落とし、全速力で走り始める。]
止まれ! 列車を止めろ!
<記録終了>
2024/8/29、グアルティエリ研究員の隠しマイクはネブラスカ州北西部の線路沿いから回収されました。グアルティエリ本人はまだ発見されていません。