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タイトル: SCP-8306 - 職長
翻訳責任者: Tetsu1
翻訳年: 2025
著作権者: Dino--Draws,
Rosyfox2002,
TealQuacks
原題: The Foreman
作成年: 2025
初訳時参照リビジョン: 15
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-8306
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SCP-8306、サイト-898敷地内で撮影。
特別収容プロトコル: これまでのところ、SCP-8306を収容する試みは失敗に終わっています。しかし、実体は既に財団職員が確保しているレッドブルック鉱山及びサイト-898から出ることを望まないまたは不可能です。結果として、SCP-8306はこれらのエリア内の自由な立ち入りが許可されています。1
サイト-898職員は、夜間にブラインドを閉じることを推奨されます。
説明: SCP-8306は、SCP-8987から出現した最初期のRUNS REDアノマリーであると考えられており、鉱山で回収された文書におけるそれに関する報告や言及は1963年に遡ります。これはSCP-8987の活性化イベントがレッドブルック鉱山の操業に影響を及ぼし始めたのと同時期です。2
SCP-8306は標準的な60歳ほどの人間男性に類似し、通常1960年代の鉱山労働者に典型的な服装を着用しており、多くの場合関連する器具を携行しています。3目と口は空虚で大きく開いており、青白い肌を有します。多くの場合、SCP-8306には泥と石炭の粉塵がこびりついています。
SCP-8306の正確な異常能力の実際の範囲は不明ですが、一貫して自身の意志で顕現・消失する能力を示しています。SCP-8306を物理的な障壁で妨害することができないために、これを主な理由として収容の試みは放棄されました。
SCP-8306は知性を示す既知の唯一のRUNS REDアノマリーです。予測不可能ではあるものの、友好的で善意を示すように見え、人間の言葉を話すことが可能です。実体は名前を有していると明言したことはなく、「職長」とだけ自称し、サイト-898ではこの肩書が口語的に用いられています。数名の職員はSCP-8306と親交があるものの、真の性質への理解が欠如しているため、職員はその周囲では慎重になるよう警告されています。
更に、SCP-8306は黒肺塵症に似た症状を示しているようであり、職員はその呼吸と頻繁な咳を、「湿っていてガラガラとしている」あるいは「喘息のようだ」と表現しています。これらの特徴的な音、及び口笛を吹く習慣が、SCP-8306の存在を識別するために頻繁に用いられています。いかなる状況においても、職員は口笛を吹き返してはなりません。
ミランダ主任、SCP-8306に関する過去の報告や目撃例をこのファイルに添付していただけますか? 私のセクターではこのアノマリーの調査を開始しており、イーデン管理官はその行動や、それが我々と共にいる動機について解明することを望んでいます。
- フェイト・ハーグローブズ博士、未確認動物指揮
いいですよ。報告書は少し整理されておらず、多くが私のデスクに散らばっていますが、探しているものは見つけられるかもしれません。
頑張ってください。
- ゾーイ・ミランダ主任、セキュリティ・収容主任
補遺8306.1: 添付文書、要求に応じ。
サイト-898の建設は、正直に言って、順調ではなかった。公式にはサイトの建設は先週の時点で「完成」とされていたが、完了とは程遠い状況だった。主な構造は警戒と監視が緩んでいる隙にMC&D4に襲撃される懸念から急ピッチで進められた。そもそもこの場所は、私の第一候補ではなかった。
MC&Dの小さな企業城下町を我々のものに造り替えた。あぁ、皮肉なことは認めるが、無駄は禁物だし、出したくなかった。スタッフを住ませる家が必要だったんだが、ちょうど過剰な小屋が既に存在していた。少なくとも、新たな友人は気にしていないようだ。彼が建設現場の外れに潜んでいるのを見たり、ランタンを従えて敷地内をうろつきながら口笛を吹いているのを聞いたりしたが、心配になるような遭遇は何も起きなかった。
しかし最大の難関は、財団がアパラチアの奥地に大規模な電力機構を用意してくれそうにはないことだ。送電線網がなく、建設は全て人力とオイルカーボンのみで行われた。フル稼働後の電力供給をいかに最大効率化するか、決定権は私の手に委ねられている。そこでスタッフの会議を招集し、アイデアを募ることにした。
これについて一番人気を得た案は、赤い小川レッドブルックを使うというものだった。鉱山ではなくて、炭層湿地から向こうの谷の崖に流れ出る支流を水力発電に使うというものだ。建造が成功すれば、流れ込み式システムによって完全に自給自足できるようになり、ここから大きな恩恵が得られるだろう。
ただヒラード博士は、サイトの足元に眠る豊富な資源、つまり石炭を燃料として使うことを提案した。私自身も一瞬考えた選択肢だった。
そして翌朝、ヒラードは枕に死んだカナリアを見つけた。
私は凶兆を一笑に付すほど愚かな人間ではないので、そのメッセージを心に留めておいた。
— ジュリアン・イーデン管理官、サイト-898建設レポート、1966/07/13
| 抜粋済SCP-8306セキュリティレポート (1967-1968) | ||
|---|---|---|
| 日付 | 報告職員 | 遭遇の説明 |
| 1967/02/15 | アルフレッド・リン隊長 | 夜中にSCP-8306が小屋の扉をノックしたと報告した。彼は応えなかった。 |
| 1967/05/05 | エージェント ルディ・ウェラー | 非番の散歩中、エージェント・ウェラーはレッドブルックの側に座っているSCP-8306に遭遇した。5エージェントによると、実体は「光を持っているか?」と訊ねた。この要求を却下すると、SCP-8306は消失した。 |
| 1967/07/30 | ヘレン・ギブス博士 | 夕暮れ時、小屋に戻っている途中、ギブス博士は周囲の森が異常に静まり返っていると報告した。彼女は木々の端に立ってこちらを見つめているSCP-8306を発見した。 |
| 1967/08/22 | フランシス・ヒラード博士 | 小屋の床下から苦しげな息遣いが聞こえたと主張した。 |
| 1967/10/06 | サラ・リンジー博士 | SCP-8987地震観測所内の職員は、SCP-8987の洞窟で、木の根元に座って口笛を吹いているSCP-8306を発見した。数日後、現場にいた全員が医師に軽い咳を報告した。 |
| 1967/12/13 | エージェント グレン・バード | 警備巡回中、エージェント・バードは鉱山の奥深くで爆発のような音を聞いたと報告した。この活動は他の職員に検知されず、聞かれることもなかった。調査したところ、エージェント・バードは、トンネルの端で動かずに掘削孔の多数開いた壁を向いているSCP-8306を発見した。 |
セキュリティレポート8306、1970/6/20、セス・ミランダ博士
真夜中を少し過ぎたころ、それは始まった。重たいブーツが松葉や草を踏みしめる音で目が覚めた。今では、外で誰かが歩く音を聞くのは珍しくない。遅くまで働いて、暗闇の中帰路に就く。でも、彼らは懐中電灯を持っている。窓の外に現れた光はそれではなかった。橙金色の、揺らめく炎だった。
私たちは皆、夜は小屋のブラインドを閉めておく。森はこちらを覗き見ているし、私は遅くに目覚めたら8306の空虚な顔が見つめていた、なんて目に遭う不幸な一人にはなりたくない。
でも好奇心が勝ってしまった。私はカーテンを開けた。
8306は町を歩いていた。彼は向こう側の列を歩いていたため、小屋の隙間を過ぎて道の端にぶつかり、こっちを向いたときに初めて彼を見た。そこから光は更に明るくなり、彼は家の間を歩いてきた。影はますます妙になっていった。
彼のランタンが灯ると、そこには人々がいた。私たちの誰でもないけれど、ベランダには確かに人がいた。ロッキングチェアの上に腰かけて、扉の前に立って、草と泥の上に座って。彼らは彼が歩くのを見つめていた。
私はその場に座って、見物人たちを見ながら、異様に静かなことに気付いた。鳥の声も風もなく、他の小屋からも物音一つない。鉱山の向こう側のドアが勢いよく開いて、誰かが出てきて、その場に立ってただ見つめ始めたのを見た。誰かは見えなかった。それがここの誰かだったのかどうかも。
考える気は起きなかったから、視線を戻して8306と揺れるランタンを見つめた。彼は一度だけ立ち止まり、頭を影の方に向けた。そちらに帽子を傾けてから、重い足取りを再開した。
その時、静寂が破られた。彼が歌い始めた。
今、ナイトスタンドにテープレコーダーを置いている。時々鳥の鳴き声を録音するのが好きで、寝るのに役立つ。それでこの途中でそれを手探りで見つけて、電源を入れた。音質は最良ではないけれど、このレポートに追加した。
いつの間にか火が消えていたんだと思う。瞬きしたら光はなくなっていた。城下町は何もなく、誰もいなかった。
けれども、8306の音は聞こえた。彼は口笛を吹きながら、夜の中へ奇妙な音を跡に残していった。6
サイト-898の職員文化は、敷地内のSCP-8306の長期的な存在により、迷信や伝統の形で影響を受けています。数年にわたるサイト職員へのアンケート調査では、SCP-8306を積極的に恐れる者と、興味や好奇心をを持って捉える者とに分かれています。
新規職員、転入職員、訪問者は滞在初夜、小屋の窓枠の外側に小さな物体をSCP-8306への「贈り物」として置くことを推奨されます。物体が他者から指定されることはありませんが、多くの人物は小さな装飾品、輝く石、道具などを置きます。
通常、これらの提供物は朝にはなくなっています。
これらの贈り物は、新規職員にSCP-8306の存在を慣れさせるのと同時に、サイトの敷地内で新人に歓迎されているとSCP-8306に示す効果があると考えられています。前者の成功率は、夜間にSCP-8306を窓に引き寄せることの潜在的な心理的影響のため不明瞭ですが、後者については実体本人から肯定的に述べられています。
また、複数の物体を提示された場合、SCP-8306は一つのみを回収します。ランプオイル、音叉、頁岩、塩水タフィーを好みます。
1968/6/23に撮影された画像。
全職員が従っているわけではないものの、サイト-898で発生したSCP-8306に関する迷信に基づく行為は以下を含みます。
- 夕暮れ時は窓のブラインドを閉める。
- 木々の中から咳が聞こえたら必ず「お大事にbless you」または「お気になさらず'scuse you」と言う。
- 夜間に口笛を吹くことを避ける。7
- レッドブルック鉱山入口にある、左側の木の支柱を2回叩いてから入る。
- レッドブルック鉱山入口にある、左側の木の支柱を2回叩いてから出る。
- 前述の通り、善意から窓枠に贈り物を置く。
アーカイブ済記録
記録日: 1975/03/02
関係人物: アティカス・ルーン博士8
ビデオカメラは数秒間下を向いているが、ルーン博士の指から滑り落ちて森の床に落下し、地面に打ち付けられる。彼がそれを拾い直すと同時に、足を引きずる音が聞こえる。SCP-8306の靴だけが見える。
ルーン博士: うわっ! 失礼、お—
彼は数歩後退し、SCP-8306の顔以外の全身を映し出す。
ルーン博士: 何か妨害しようとかの気は全然なかった。腰抜かしちゃって。
SCP-8306は小川のほとりの大きな石の上に座っているようである。弱弱しく笑う。
SCP-8306: あぁ、全く大丈夫。驚かせる気はなかった。
ルーン博士: 進行方向はちゃんと見ときゃよかったな。たまにゃ謙虚にならなな。 [緊張したように笑う] でも嬉しいよ。そうしてなきゃあんたとぶつかることもなかった。
SCP-8306は漫然と首を傾け、一瞬カメラの視界に顔を下ろす。
SCP-8306: ふん、嬉しい? 初めての感想だな。
ルーン博士: ハッ、だろうさ。 [冷笑する] サイトの半分が、山の上から下まであんたが悪霊だのなんだのって中傷して震えあがってら。他人の言葉信じんのも飽きてきたところ。
SCP-8306: 確かに神経過敏になってるのはそうだが、とはいえここじゃ少しくらい注意しておいた方が身のためだ。一部、他よりも敏感になってるのがいるってだけだ。
ルーン博士: 実にその通り。ここの奴らの一部は明らかに自分が何に参加してここにやってきたのかわかってない。 [目をむいて、ため息をつく。] 他に初めてのことは?
SCP-8306: ハッ! 1日1儲けできるようになったことかな。いずれにせよこんな丘なんかで随分くつろげるようになったみたいだな、えぇ? 山のど真ん中に道具設置しちゃったりなんなりして。
ルーン博士はためらうように見える。彼は足を動かす。
ルーン博士: あんたにとって…… 俺たちがここにいるこたぁ問題か?
SCP-8306: ヘン。 [はねのけるように手を振る] あんたらの同族と同じ道を歩まない限りはどうでもいい。
ルーン博士: マーシャル・カーター&ダークのことか?
SCP-8306: 奴らはこの丘に持ち込んだ地獄なんざなんにも気にしない。無煙炭アンスラサイトの畏敬すべき命令以外なんにも気にしないんだ。
SCP-8306は胸元にガラガラとため息を漏らす。
SCP-8306: あんたたちがどんなカードを持ち込んでプレイし続けるかは、時間が教えてくれる。
ルーン博士: [顔をしかめる] 鉱山を作った奴らの話はもういい。奴らが人々に何をしてきたかは見た。
SCP-8306は首を傾け、ルーン博士を見つめる。
SCP-8306: 話のネタを持ってるみたいだな。
記録上に沈黙。
ルーン博士は再び足を引きずるように見える。息を吸い、それから吐く。SCP-8306は前のめりになる。
SCP-8306: 俺もそうなんだよ。
アーカイブ済ファイル: 調査 レッド・カナリア

1966年頃。
要注意人物8987
ケシュナー職長(左)。
PoI指定: 8987
同定日: 1966/05/16
名前: セオドア・ケシュナー
詳細: PoI-8987、セオドア・ケシュナーはサミット・アンスラサイト操業時のレッドブルック鉱山職長でした。調査レッド・カナリアの後、サミット・アンスラサイトはマーシャル・カーター&ダークのフロント企業であり、ケシュナーは鉱山を担当するMC&Dの工作員として活動していたことが判明しました。
ケシュナーは1966/06/06に財団職員により確保され、サイト-898の建造中にサミット・アンスラサイトの鉱山町に一時的に拘留されました。サミット・アンスラサイトがSCP-8987の木材を採取した動機についての尋問はほとんど成果を上げず、ケシュナーは鉱山とその労働者全般に対する侮辱を繰り返し表明するのみでした。
確保語にケシュナーの小屋が捜索され、内部から以下が発見されました。
- 偽造の職長資格証明書。
- サミット・アンスラサイトの雇用記録。死亡した労働者の名前は線で消されていた。
- 従業員の医療文書。10
- 3年分の事故報告書。報告された中には死亡事故もあった。過去6ヶ月間の報告は未開封で、未署名であった。
1966/06/08現在、ケシュナーはサイト-898敷地内に留まっています。サイトの設立は完了しているため、彼を小屋からサイト自体に移送しての拘留は承認保留中です。
背景文書: 以下は、調査レッド・カナリア初期に発見された、鉱山内におけるSCP-8306の存在について論じた手紙のスキャンです。送付されなかった理由は不明です。

レッド・カナリアインシデントレポート
日付: 1966/07/08
前記: 18時3分頃、セオドア・ケシュナーは仮収容室からサイト-898へ移送中に職員のもとから逃走した。警備員は追跡中、炭層湿地で彼を見失った。
以下は赤い小川に設置されたCCTVシステムにより撮影された。
ケシュナーは咳き込み、罵声を漏らしつつ、茂みの中からよろめきながら出てくる。暗いために映像はよく見えないが、泥や植物に覆われているように見える。彼は立ち止まって息を整え、頭を振って歩みを再開する。赤い小川が彼の道を遮っているのを見て立ち止まり、暗闇と水の向こう側を目を細めて見る。
ケシュナー: 畜っ生が。
木の葉の音を聞き、頭を振りあげる。ケシュナーは武器にしようと大きな石を地面から持ち上げ、音源を探る。湿地の深い茂みから光が見え、明るさを増していく。金色の光がカメラ映像をはっきりと照らす。
ケシュナーは緊張し、喘鳴が聞こえる。
SCP-8306が現れる。ランタンを掲げており、漆黒の長い影を投じている。ケシュナーはそれを見て目を見開き、飛び退く。
ケシュナー: ジーザスクライスト—
SCP-8306は湿った息を吐く。
SCP-8306: 言葉には気をつけろ。ここで聞いてるのはお前の主じゃないぞ。
ケシュナー: 誰がお前みたいな悪魔の言葉なんか聞くか。 [SCP-8306の方向に指を突き出す] お前はこの深淵に這い出てきた瞬間、この場所に地獄をもたらした。
SCP-8306: 門を開いたのはあんただろう。俺よかよっぽどあんたのしでかしたことだけどな。
ケシュナー: 何をぬかしてやがる。お前は俺の鉱山に出没して、俺の部下を追い出して、何より俺の獲物にこんな野郎どもを呼び寄せた! お前の所業を気付いてないとでも思ってたか? お前馬鹿みたいに口笛が好きだよな。
SCP-8306: 別に最初から隠そうとなんてしてないんだがね、ん? 繊細さなんてものはとっくに捨てたよ、セオドア。
ケシュナー: どうでもいい。この場所が盗まれたと知ったら、上司は俺の首をはねるだろうな。 [言葉を止め、冷笑する] テメェのもお望みだと思うぜ。
SCP-8306: ハッ、この場所は最初からあんたたちのものじゃないんだがな! この地面の下にあるのは人間の獲物じゃない。金のガチョウでも探して金になるものでも盗もうと? どうせ見つかるのは猿の手ぐらいなのに。
ケシュナー: ここにあるのがそんなに危険だってのなら、なんでお前は他の馬鹿どもをここに導く?
SCP-8306: 彼らはあんたらよりも賢いからな。彼らはそれを見つける。それを放っておく。あんたみたいなネズミどもを鉱山から蹴散らした前例だってある。
ケシュナー: 放っておかなかったら? 自分のために取っていったら? 既にそうしてたりしてないか?
SCP-8306は低い、喘鳴のような笑い声をあげる。ランタンを付近の岩に置く。
SCP-8306: 彼らは「保有してる」かもしれないが、自分のものではないとわかってる。採掘活動はもう終わってるよ。
ケシュナーは嘲笑するが、両手で岩をしっかりとつかむ。
ケシュナー: あの鉱山は相当な価値があって、俺たちはそれ以上の人件費を投入した。上司が黙ってこんな状況を受け入れるとでも思ってるなら、とんでもないことになるぞ。
SCP-8306: 彼らの方こそとんでもないことになるだろう。
ケシュナーは困惑して言葉を止める。SCP-8306から一歩下がり、目を行ったり来たりさせる。
ケシュナー: まあいい。とにかく俺の邪魔をするな。この地獄の穴から出ていく。
SCP-8306: 二つに一つか。
ケシュナー: はぁ?
予兆なく、SCP-8306はケシュナーに突進し、タックルする。彼の背中は地面に打ち付けられ、痛みに叫び声を上げる。彼はもがき、SCP-8306は彼を地面に押さえつけようとする。
ケシュナーは岩を振るい、SCP-8306の側頭部を打って、破砕音を響かせる。SCP-8306は喘鳴を漏らして身を震わせ、ケシュナーの手から即席の武器を奪おうとする。その間、SCP-8306は膝をケシュナーの腹部に押し当て、圧力をかける。
ケシュナー: この野郎—
SCP-8306はケシュナーの手を土へとねじり、岩を叩き落す。以前の衝撃により実体の鼻が折れ、顔の一部が引き裂かれたようである。傷から泥がにじみ出る。
ケシュナーはより大声で叫び、SCP-8306を撃退しようとするが効果はない。その手は彼の喉を掴み、土と泥を彼の肌に塗りつける。
サイト-898職員が、ゾーイ・ミランダ主任に率いられ現場に到着する。警備員らが茂みから飛び出し、武器を掲げて散開する。銃器のカチカチという音に、SCP-8306は動きを止める。ケシュナーは空気を飲み、SCP-8306はわずかに緩めて背を伸ばし、見つめる。職員チームはSCP-8306の存在に驚き、ミランダ主任はわずかに武器を下げる。
しばらくして、ジュリアン・イーデン管理官とヘレン・ギブス博士が湿地から現れる。イーデン管理官は警備員に向かって必死で手を振る。
イーデン管理官: 武器を下ろせ、武器を下ろせ!
SCP-8306は石がこすれ合うような音を立てる。
SCP-8306: 聞いてほしい。俺にはやらねばならない仕事がある。
ケシュナーは必死で息を切らす。彼はサイト職員の方を向いて目を見開く。
ミランダ主任: そうですか?
イーデン管理官: アノマリーを撃ってはいけない。
ミランダ主任は目を細めるが、頷く。彼女は警備員の方を向く。
ミランダ主任: 境界を確保して。
警備員は緊張した様子で散開を続ける。SCP-8306とケシュナーの付近は幅の広い小川に近く、完全に包囲することができない。
ケシュナーはもがきながら、職員に助けを求めて叫ぶ。
ミランダ主任はイーデン管理官を見る。
ミランダ主任: 誰も収容器具を持っていません。武力を用いずにSCP-8306を追い払うことはできません。
イーデン管理官: 理想を言えば、それは避けたいな。
ギブス博士: 話し合いで解決できるとは思えません。
イーデン管理官: やってみる価値は—
SCP-8306は頭を振り上げ、振り向きざまにイーデン管理官と目を合わせる。彼は硬直する。
SCP-8306: 終わるまで何もしないでくれ。あんたらはこいつからもう得られるもんはないだろうが、俺にはあるんでね。
別の、金属が軋む音。SCP-8306のランタンが石の上から落ちて地面にぶつかり、土の上でガラスとランプオイルが爆発する。炎が夜空に舞い上がる。
それにより、サイト職員は燃え上がる油から離れて散り散りになる。草は湿っており燃え上がらないが、それでも油は炎の線を描いている。イーデン管理官は燃える油がわずか1 m先に飛び散っても、怯みも動きもしない。彼は輝く炎を通してSCP-8306を見つめる。
SCP-8306はしばらく彼と視線を合わせた後、ケシュナーへと首を戻す。イーデン管理官はそこでようやく息を呑んで後ろによろめき、トランス状態から覚めたことで混乱する。11
ギブス博士は驚いて彼に手を当てる。
ミランダ主任: 今のはアレにできることの警告に過ぎないと —
ギブス博士: じゃあどうするの? 彼を死なせるの?
イーデン管理官: 待った。
イーデン管理官はゼーゼー息を切らす。
ギブス博士: イーデンさん?
イーデン管理官: 干渉するな。
ケシュナーは、なんとかSCP-8306の片手を喉から引き離して首を振る。彼はうなり声を上げてSCP-8306を蹴り、胸に当たって空洞音を立てる。アノマリーはねばねばとした咳と吐き気を繰り返す。
ケシュナー: イカレてんのか? こいつを引き離せ! 俺は—
石炭の染みついた泥が彼の顔に噴出したことで言葉は遮られる。この物質はSCP-8306の顔の開口部から漏れ出て、流れ続けている。ケシュナーはそれに鼻と口を詰まらせる。彼は濃い泥でゴポゴポと音を立てながらSCP-8306を引っ掻き、SCP-8306は再び手で彼の喉を掴む。
ギブス博士は息を呑んで一歩下がる。
ケシュナーは嘔吐し、泥と胆汁を吐き出す。それは彼の服を黒く染め、倒れている地面を濡らす。泥が目に入っている。SCP-8306は彼の顔の上に前のめりになって、動かない。呼吸をしていないように見える。
ミランダ主任はイーデン管理官を一目見る。彼は目を見開いて広がる光景を見つめる。
ミランダ主任: このままでは殺されますよ。
イーデン管理官: 止めることはできない。
ミランダ主任: 不可能という意味ですか、それともすべきでないという意味ですか?
背景で窒息音が聞こえる。
イーデン管理官は返答しない。彼は震えている。
SCP-8306は更に2分間ケシュナーを締め付け続ける。彼の喉にはあざが付き、頭部は黒い泥に覆われ、沼地で身をよじる中、涙が泥と血と唾液に混ざる。彼が動かなくなるころには、火は消えている。油は冷気に触れてシューと音を立て、泡立つ。
SCP-8306が立ち上がると、警備員は再度武器を掲げる。イーデン管理官はその行為に顔をしかめるが、静観する。彼はSCP-8306の目を見ないようにする。
実体は彼らを見つめ、何も言わない。しばらくの間、激しく喘鳴を上げる。武器は掲げられ続けている。
SCP-8306は意識のないケシュナーの襟をつかみ、小川の中に引きずる。
サイト-898職員は干渉しない。
<記録終了>
後記: 2日後、サイト-898は軽微な電力変動に見舞われた。サイトの水力発電所の調査の結果、複数のタービンに人間の遺体が詰まっているのが発見された。








