インタビュー記録832
インタビュー対象: 日下部機動部隊員
インタビュアー: エージェント・██
<インタビュー開始>
エージェント・██: では、インタビューを始めます。さて、何故あなたはSCP-832-JP-1を破壊したのですか?
日下部機動部隊員: うーん、どう表現したものか……何というか、あの時計はすぐに壊さないとやばい奴だと思ったんですよ。
エージェント・██: 真面目に答えて下さい。
日下部機動部隊員: あー…わかりました。話します、ただ…馬鹿にしたりしないでくださいよ?
エージェント・██: もちろんです。
日下部機動部隊員: それではそうですね…██さんはFPS、あーTPSでもいい、なにかそういう系のチームを組んでミッションを達成するようなゲームをやったことはありますか?
エージェント・██: 私は今までそういったゲームで遊んだことはありませんね。
日下部機動部隊員: では説明しますね。これはある戦争ゲームのルールなんですが、まずゲームを始める前に装備を決めたり仲間を募ったりするんです。私は簡単なミッションならソロで、高難度のミッションなら友人と協力して遊んでいます。で、その後参加したいミッションを選んでゲーム開始。スタート地点に転送されてその後はミッション達成のために好きに行動する。敵をキルしたり、レアアイテムを探したり、まあ目的は何でもいいです。そして、もしもミッション中に自分がやられてしまったらリトライを選んでまたスタート地点からやり直す。ここまで大丈夫ですか?
エージェント・██: ええ、ですがそれがSCP-832-JP-1を壊したこととどういう関連があるのですか?
日下部機動部隊員: あのデカブツ共の動きを見ておかしいと思いませんでしたか?
奴らはまるで部隊員の頭数、装備、作戦行動の全てを前もって知っていたかのように待ち伏せして迎撃してきました。しかも奴らはサイト内の構造にも精通しているようでした。建物内の死角や遮蔽物を活用されて私たちの部隊は完全に攪乱されました。あんな立ち回りは奴らに予知能力があるか、我々の内部に情報を垂れ流したスパイがいたか、もしくは以前にも全く同じ戦闘をしたことがあるかしない限り絶対に無理です。
エージェント・██: すみませんが、あなたの言いたいことがまだ理解できていません。
日下部機動部隊員: それではまた、ゲームの話に戻りますね。プレイヤーはやられてゲームオーバーになったらリトライできます。ですのでプレイヤーは何故自分がやられたかを分析して反省し、次のトライのために準備することが出来ます。装備を強化したり、強い仲間を募ったり、敵の戦力・作戦を先読みして対応策を考えたり…
エージェント・██: 待ってください、あなたはSCP-832-JP-2群がそれをやっているとでもいうのですか?
日下部機動部隊員: ええ、その通りです。
エージェント・██: その…状況証拠以外のもう少し別な根拠はないのですか?
日下部機動部隊員: そうですね…奴の死体から時計を回収した時に、それを見ていた生き残りのデカブツが目に見えてうろたえていたことと、後はあの時計について、奴らを殲滅して死体が消えたすぐ後くらいにいきなり液晶の部分に「Now Loading…」って文字が出てきたことですね。で、文字を見たとたんにハッと気づいたんですよ。「奴らがまたやり直そうとしている」って、そう思ったら後は、考えるよりも早く体が動いて…気が付いたらあの時計を壊してしまった後でした。
エージェント・██: はぁ…もし仮に、仮にですよ? あなたの説が正しかったとしても、我々はタイムリープ現象を観測する手段をまだ確立出来ていませんし、SCP-832-JP-1を破壊してしまったのではオブジェクトの調査も出来なくなってしまい、あなたの説の正当性を立証出来なくなってしまうのですよ?もう少し冷静になって待つことは出来なかったのですか?
日下部機動部隊員: それでは遅いんですよ!
…すみません。自分でもおかしなことを言っているのはわかっているんです。財団に所属してる職員として絶対に犯してはいけないことをしてしまったこともわかっているんです。ただ、どうしても怖かったんですよ!
エージェント・██: 何が怖かったのですか?
日下部機動部隊員: 奴の目です! 俺がとどめを刺した奴の目です! 友人とゲームで遊んでいるときに何度も同じ目をして言われたから、言葉はわからなくても奴が死に際に何を言おうとしていたのかがすぐにわかりました!
エージェント・██: SCP-832-JP-2は何を言おうとしていたのですか?
日下部機動部隊員: 「よくもやりやがったな、次は絶対お前から殺してやる」
<インタビュー終了>