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(以下、翻訳クレジット)
タイトル: SCP-8320 - 七億匹の魔法使い
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2024
著作権者: Raddagher
原題: SCP-8320 - Seven Hundred Million Wizards
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 33
元記事リンク: ソース
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特別収容プロトコル: 現在までのところ、財団そのものの存在は一般社会に露見していません。財団、世界オカルト連合、異常事件課は、“魔術イニシアチブ”と称される単独組織という名目の下、一般社会に対して活動を公表するという臨時協定を締結しています。SCP-8320は単発の事件かつ唯一存在するアノマリーであるとする偽情報が現在も流布されており、当該現象を非異常な用語で説明するための疑似科学が考案中です。
SCP-8320-1個体は遠隔作動式の奇跡術アンカーを使用して拘留し、対魔術戦闘訓練を受けた最低7名の武装職員が対応します。
SCP-8320-1個体は発見され次第、頭部を銃撃します。
説明: SCP-8320は全世界のあらゆるイエネコに影響を及ぼしている現象です。この効果は完全に逆転可能で、ネコへの本質的な危害をもたらしませんが、結果として生じた知性・器用さ・異常な能力の向上は、個体集団の拡散や多数のペットの失踪に繋がっています。SCP-8320はニューハンプシャー州ブレントウッドの23歳住民であるエリック・█████、以下PoI-8320によって引き起こされました。SCP-8320が最初に発生した2025年6月4日以降、PoI-8320は行方不明です。現場から回収された証拠品に基づいて、SCP-8320は恐らく、PoI-8320が何らかの異常物 (行方不明) を使用して飼い猫 (こちらも行方不明) を“魔法の生き物”1に変えようとしたのが原因だと考えられています。
SCP-8320とその後の事象は、2025年6月4日の午前3:08、Felis catus2の全ての個体が突然、共通の身体的特徴を持つタイプ・グリーンのヒト型現実改変実体、以下SCP-8320-1個体に変身するという形式で瞬時に発生しました。
SCP-8320-1個体に見られる共通の特徴は次の通りです。
- 変身前のネコの年齢に関係なく、非常に高齢である。
- 個体の性別に関係なく、長髪で髭を生やしている。
- 大きな帽子を被っている。この帽子は通常、先端が尖っているか、もしくは折衷的な形状をしている。
- 鮮やかな色調をした床まで届く長さのローブ、チュニック、またはマントを着用している。この着衣には多くの場合、星や三日月などのシンプルな形の刺繍が施されている。
- 木製の長杖スタッフや短杖ワンドを所持している。

SCP-8320-1個体
狭い空間に複数存在する時、SCP-8320-1個体は民間人にとって大きな安全上のリスクとなることが確認されています。SCP-8320-1は縄張り意識が極めて強いらしく、自らの縄張りと見做した場所から他の個体を追い払うために、頻繁に異常な手段に訴えます。これらの抗争は異常能力の行使による重大な物的損害をもたらしていますが、民間人の死傷者は比較的少数に留まっています。各個体間の激しい敵意にも拘らず、SCP-8320-1個体は人間に対してはほぼ常に友好的です。
民間人への危害を及ぼし得るSCP-8320-1の一般的挙動は次の通りです。
- 細いながらも非常に高い石造りの塔を自然発生させる。
- 周囲の構造物、人間、野生動物を顧みずに、他のSCP-8320-1個体に対して火球や電撃などのエネルギー凝縮物を投擲する。
- 小規模で局地的な気象現象 (主に雷雨) を発生させる。
- 小型の家禽 (ハトや雛鶏など) を攻撃し、消費する。

PoI-8320の住居付近で発見された手描きのポスター。3
補遺 – 捲られたヴェールシナリオ 8320
私たちは非常に大きな問題を抱えている。その問題は約7億もの魔法使いという形で現れた。
- E・ウェザーワックス博士の覚え書き
数億体の異常なヒト型実体がイエネコに代わって唐突に出現した結果、直ちにBK-クラス“捲られたヴェール”シナリオが発生しました。当該異常事象は大規模であったため、初期収容は実行不可能でした。4 膨大な個体数に加えて、SCP-8320-1個体群の異常能力と総合的な知性は各個体の収容を極めて困難なものにしました。財団の潜入エージェントとソーシャルエンジニアは現在、アノマリーの公共知識化をSCP-8320のみに制限し、SCP-8320は単発の特異な事件であるという観念を定着させることに取り組んでいます。
SCP-8320-1個体群がネコ由来であると判明する前に、財団は収容及び尋問のために数個体を捕獲しました。注記: このSCP-8320-1個体は、SCP-8320の発生から程なくして、サイト-109の近隣で捕獲された。発見当時、対象は地上数フィートの高さに浮かび上がり、茶を飲みながら1羽の小鳥を丸ごと摂食していた。
[記録開始]
ヴァイムズ博士: さて、私が理解している限りでは、あなたは魔法使いですね。
Dr. Vimes: So, from my understanding, you are a wizard.
SCP-8340-1: わしが理解しとる限りでもそうじゃよ!
SCP-8320-1: That’s my understanding as well!
ヴァイムズ博士: あなたは何故ここにいるのですか? そして何故あの鳥を食べていたのですか?
Dr. Vimes: Why are you here? And why were you eating that bird?
SCP-8320-1: 人はわしを“崇高なるモーゴ”と呼ぶ!
SCP-8320-1: They call me Morgo the Magnificent!
ヴァイムズ博士: 誰がそう呼ぶんです?
Dr. Vimes: Who calls you that?
SCP-8320-1: おう、大抵の者がじゃよ。
SCP-8320-1: Oh, most people.
ヴァイムズ博士: 私は呼びませんよ。
Dr. Vimes: I don’t.
SCP-8320-1: 別に構わん。わしは塔へ戻らねばならぬ。あまり長く留守にしては本たちが寂しがる。
SCP-8320-1: No matter. I must return to my tower. The books get lonely when I’m away long.
ヴァイムズ博士: 塔があるんですか?
Dr. Vimes: You have a tower?
SCP-8320-1: 無論! 優れた魔法使いは皆、塔を持っておる。
SCP-8320-1: Of course! All good wizards have towers.
ヴァイムズ博士: この辺で塔を見かけた覚えはありませんね。
Dr. Vimes: I haven’t seen any tower near here.
SCP-8320-1: では優れた魔法使いがあまりおらんのじゃろ。
SCP-8320-1: Then there must not be many good wizards.
ヴァイムズ博士: あなたが塔を持っているとは思えませんね。嘘をついているんでしょう。
Dr. Vimes: I don’t think you have an tower. I think you’re lying.
SCP-8320-1: 魔法使いは嘘をつくことはできん。蕁麻疹が出るからのう。
SCP-8320-1: Wizards can’t lie. Breaks us out in hives.
ヴァイムズ博士: 魔法使いはみんな嘘アレルギーなんですか?
Dr. Vimes: All wizards are allergic to lying?
SCP-8320-1: いかにも。あとハチ刺されにも。
SCP-8320-1: Yes. And bee stings.
[この時点で、ヘリット博士が入室し、携行銃器を抜いてSCP-8320-1の頭部に発砲する。]
[SCP-8320-1が光り輝く青白い閃光に包まれて消失し、灰色の長毛種のネコが後に残される。]
ヴァイムズ博士: なんてこった、ヘリット。どうしてそんなことを?
Dr. Vimes: Good Lord, Helit. Why did you do that?
ヘリット博士: さっき、こいつらの1体を見かけたんだ。俺の上等な椅子に腰かけてやがった。俺ん家にいきなり現れたんだぜ。
Dr. Helit: I saw one of those bastards earlier. Sitting in my good chair. Just showed up in my house.
ヴァイムズ博士: で、撃ったのか?
Dr. Vimes: And you shot him?
ヘリット博士: 俺はパニクってたんだよ。でも、猫は取り戻せたから、丸く収まったってことだよな?
Dr. Helit: I panicked. But now I have my cat back, so it all worked out, didn’t it?
[記録終了]
財団は多数のSCP-8320-1個体を収容・無力化した後、SCP-8320-1個体は完璧な人語での発話が可能である反面、人間と同等レベルの知性体に分類するのは不適切だという結論に達しました。サイト-109は個体の捕獲に向けて、奇跡術アンカーと対魔術装置を搭載した特殊設計の移動車両を開発しました。魔術書や鳥などの興味の対象が車内にあると知らされると、大半のSCP-8320-1個体は自ら進んで収容されることが判明した後、武力行使の頻度は大幅に減りました。SCP-8320の起源に関する情報を収集するため、捕獲された個体は車両後部に拘束され、エージェントからの単純な質問を受けました。質問に対して的確に回答できるほどの知性が無いと判断された個体は、非異常な拳銃で無力化され、可能な限り捕獲地点に近い場所で解放されました。サイト-109のSCP-8320偵察チームは、次のような一連の質問を用いて、複数のSCP-8320-1個体を捕獲・無力化しました。
全ての魔法使いは何処から来たのか? | |
---|---|
饒舌家のルシアン | 「最も高き山を越え、最も広き川を渡ってやって来た。」 |
痒がりのオズワルド | 「とても大きな亀の背から降りてきた。」 |
自信過剰のマズドー | 「わしの母ちゃんと父ちゃんから。」 |
ここでの目標・目的は何なのか? | |
---|---|
無精者のアクサー | 「邪悪な悪魔のロッサーナックから王国を救うために来た。」5 |
卑劣なるサディアス | 「多分、治癒師とか、そういう科学系の仕事で無知な大衆に奉仕することじゃろう。」 |
侵入者のジェレミー | 「わしは死神から逃げておるのじゃ。ここならよもや見つかるまい。」 |
イエネコとは何か? | |
---|---|
力強きカッシウス | 「ある種の食器じゃないかと思うがのう。」 |
金欠のナイジェル | 「わしが知っとるわけなかろうが?」 |
肉厚なるウルリック | 「ふしだらな女を指す時の失礼な言葉。」 |
補遺2 – 魔術イニシアチブ
SCP-8320を完全かつ無害に逆転できることが確認されると、財団は速やかに、SCP-8320-1個体の掃討と無力化を担当する部隊を世界中で編成し始めました。動員可能な機動部隊員は全員、銃器に精通している他部署の職員と共に、臨時機動部隊シグマ-32 “プロパガンダルフ” に再配属されました。厳密に財団の運営と不可分でなく、必須でもない作戦は全て中断されました。この間、各国政府に潜入している財団エージェントは、民間人がSCP-8320-1個体と似通った服装をするのは危険であるという見解の普及に努めました。
世界オカルト連合と異常事件課は、SCP-8320が無力化されるまで財団との一時的な同盟を組むことに同意しました。組織間での連絡を取り合うため、担当者が1名ずつ任命されました。注記: 以下は財団職員 ウェザーワックス博士、世界オカルト連合エージェント ニット、異常事件課職員 オッグ博士の間で行われたビデオ通話の書き起こしである。
[記録開始]
[通話にはウェザーワックス博士とオッグ博士しか参加していない。]
オッグ博士: 今回の事件の発端になった薄らバカの家の近くでポスターが見つかったと報告を受けている、目を通して見ようじゃないか-
Dr. Ogg: I have something here about some posters found near the home of the dimwit that started all this, I think we should take a look at-
ウェザーワックス博士: じゃあ、彼女抜きで始めちゃいます?
Dr. Weatherwax: I suppose we should get started without her, then, shouldn’t we?
オッグ博士: そうだな-
Dr. Ogg: I suppose we should-
[エージェント ニットがビデオ通話に参加する。彼女はカップ麺を食べながら空いた手で手帳をめくっている。]
エージェント ニット: ごめん、今来た! 忙しくってさ。
Agent Nitt: My apologies, I’m here! Big day, huh?
ウェザーワックス博士: タイミングが悪かったですか?
Dr. Weatherwax: Is this a bad time?
エージェント ニット: いや! 違うよ。通りの向こうで送電線が切れてね、何人かと話し合わなきゃいけなかった。そのまま続けていいよ、私は準備中だから。心配しないで。さて! 魔法使いの話だっけね。
Agent Nitt: No! No. Downed powerline across the street, had to talk to some guys about it. Carry on, I’m just getting myself in order. Ignore me. So! Wizards.
ウェザーワックス博士: お互いに電撃を飛ばし合う程度のことしかしていないのを幸運の星に感謝してますよ。
Dr. Weatherwax: We’re thanking our lucky stars that they’re not doing much besides shooting lightning bolts at each other.
エージェント ニット: 実はウチのやり方で自由に動けるようになって嬉しいんでしょ?
Agent Nitt: Bet you’re glad to have our methods at your disposal now, aren’t you?
ウェザーワックス博士: いいえ-
Dr. Weatherwax: No-
[ウェザーワックス博士がくしゃみをする。]
エージェント ニット: 噓アレルギー? それと多分ハチ刺されにも?
Agent Nitt: Allergic to lying? Perhaps bee stings as well?
ウェザーワックス博士: いいえ、私は猫アレルギーです。
Dr. Weatherwax: No, I’m allergic to cats.
オッグ博士: いや、それはちょっとおかしいんじゃないか。
Dr. Ogg: Well, that doesn’t exactly track.
ウェザーワックス博士: 魔法使いのフケは猫よりも酷いに違いありません。
Dr. Weatherwax: The wizards must have worse dander, I think.
オッグ博士: ここに合衆国の野良猫と屋外飼育猫の数を推計した報告書があるんだがね-
Dr. Ogg: I have a report here estimating the number of stray and outdoor cats here in the United States-
[オッグ博士は書類を収めた大きなバインダーを床に取り落とす。]
オッグ博士: あっ、クソ-
Dr. Ogg: Oh, shit-
ウェザーワックス博士: そのままで結構です、オッグ博士、屋外猫が多すぎることぐらい分かってますから。
Dr. Weatherwax: Just leave it, Dr. Ogg, we know there are too many outdoor cats.
エージェント ニット: そして今は屋外魔法使いが多すぎるってワケ。
Agent Nitt: And now there are too many outdoor wizards.
オッグ博士: それに関して言えば、屋内飼いの奴らも多すぎるんだがね。
Dr. Ogg: And too many indoor ones as well, for that matter.
ウェザーワックス博士: ですが幸いにして、屋内飼いは非常に発見しやすく、無力化は更に容易です。
Dr. Weatherwax: But as luck would have it, they’re very easy to locate, and even easier to neutralize.
オッグ博士: 本当に銃だけでいいのか? 対魔術対策も不要と?
Dr. Ogg: And guns are really all it takes? No anti-magic countermeasures?
ウェザーワックス博士: ナイフも試しましたが、頭部に刺し込まなければ効果がありません。頭は他のどの部位よりも刺すのが難しいんですよ。
Dr. Weatherwax: We tried knives as well, but it only works if you get them in the head, which is notoriously harder to stab than anywhere else.
エージェント ニット: 爆発物はどう? 奴らを爆破してみた?
Agent Nitt: What about explosives? Have you tried exploding them?
ウェザーワックス博士: 爆破はまだ試していません。
Dr. Weatherwax: We have not tried exploding them.
[ウェザーワックス博士はくしゃみをする。]
ウェザーワックス博士: うぅ。失礼しました。私たちにはやるべき業務があります。
Dr. Weatherwax: Ugh. Excuse me. We have business.
エージェント ニット: 最短時間でどれだけ大勢の魔法使いを吹っ飛ばせるかを算出する業務?
Agent Nitt: The business of calculating how many wizards we can blast in the shortest amount of time?
ウェザーワックス博士: その通り。
Dr. Weatherwax: Exactly.
[ウェザーワックス博士は再びくしゃみをする。オッグ博士が上体を起こし、机の底面に頭をぶつける。]
[記録終了]
注記: 以下はミシガン州アルマでMTF S-32 67D班が撮影したドローンカメラ映像の書き起こしである。班員のうち、“キング・ジズ”及び“マーリン”は現役の機動部隊エージェントで、“ガンダルフ” “オズ” “ホワイト・ウィッチ”は他部署の職員である。彼らの赴任地は廃墟化した元工業地帯であり、少なくとも30匹から成る野良ネコのコロニーが生息していることで知られている。
[書き起こし開始]
18:32 [任務開始から約3時間後、67D班はある廃屋の中で休憩を取る。]
18:35 [班長キング・ジズが班員たちに話しかける。ホワイト・ウィッチが退室して用を足しに行く。ガンダルフは目に見えて緊張している。]
18:38 [キング・ジズが大雑把な身振りを交えてマーリンを叱責する。オズがベストからナイフ2本と制式拳銃1丁を取り出し、拳銃の分解を試みる。キング・ジズはオズも叱責し、拳銃を組み立て直してから彼女に返却する。マーリンが笑う。]
18:40 [ガンダルフが幾度も窓に歩み寄り、いずれかの方向を確認する。オズが地面に片手を突き、ナイフの先端を指の間の隙間に刺して遊び始める。キング・ジズがオズからナイフを取り上げる。]
18:41 [ホワイト・ウィッチが戻ってくる。キング・ジズは班員たちを集めて円陣を組み、2本の指を立てて様々な方向を身振りで指す。マーリンは頷く。ガンダルフとホワイト・ウィッチは困惑の表情を浮かべる。オズは熱心に頷く。]
18:43 [ガンダルフが画面外でキング・ジズに何事かを知らせる。ドローンが移動し、割れた窓をくぐって民間人が入室する様子を映す。彼は拳銃で武装している。]
18:45 [キング・ジズと民間人が会話している間に、更に2名の民間人が加わる。]
18:50 [後ほど████████・コーエンと特定された最初の民間人が、入って来た窓を指差しながらキング・ジズと交渉する。]
18:54 [キング・ジズが肩をすくめ、班員たちに向き直って追加の計画を伝える。オズが自分の拳銃をガンダルフのショットガンと交換し、片手で振り回す。マーリンがショットガンを取り上げ、より小さな拳銃をオズに渡す。ホワイト・ウィッチが退室して二度目の用を足しに行く。]
[書き起こし終了]
結: ████████・コーエンと他9名のアルマ住民は、SCP-8320-1個体をネコに戻す方法を発見し、独自に個体を無力化するための遠征を指揮していたことが判明した。コーエンと同行者たちは多数の個体を成功裏に無力化した実績を挙げ、現地からの撤退を拒絶したが、最終的にはキング・ジズの指導に従うことに同意した。彼らは全員、67D班員たちは合衆国連邦捜査官であると思い込むように誘導された。現地の法執行機関は類似する民兵組織の結成を抑制するように勧告された。
魔術イニシアチブがSCP-8320-1個体群の排除に取り組み始めた数週間後、財団はウィルソンズ・ワイルドライフ・ソリューションズから次のメッセージを受信しました。
やぁ!
こちらと同様、君たちも近頃のあれやこれやで忙しくしているだろうね。今回の事件は実質的に動物管理上の危機だから、私たちは目が回るほど忙しい! なるべく暴力に訴えずに問題を解決するように心掛けつつ、サプライズゲストたちを可能な限り迅速かつ人道的に毛むくじゃらの姿に戻している。地元の野良猫集団にワクチン接種と不妊手術を施すキャッチ&リリース計画も立ち上げたし、そちらは大成功だ! ただ、状況が長引けば長引くほど、猫だけでなく、羽の生えたお友達の身も心配になっていく。魔法使いたちが世界中で鳴禽類の個体数に深刻な被害を及ぼしているのは今や明白だ。本来の猫の姿と比較しても、彼らの食欲ときたらまさに底無しだよ。世の中を“正常”に戻すためにも、組織間で共有できそうなリソースについて話し合いたい。要するに、君たちは火力に優れているかもしれないけれど、ウィルソンズには猫のお世話に関する高度な専門知識がある。
- F. W.
注記: 以下はウェザーワックス博士、オッグ博士、エージェント ニットのビデオ通話の書き起こしである。
[記録開始]
[オッグ博士が書類の束をめくっている。]
オッグ博士: -問題はだね、バス停にいた人たちは誰一人として、その男が本当に魔法使いなのか、それともただのコスプレイヤーなのか分からなかったんだ。異常な能力は報告されていなかったが、それでも連中は銃を抜いた。だからこそ、コミック・コンベンションの中止について、もっと世間に顔の利く奴らと話し合うべきなんだよ。
Dr. Ogg: -and the problem was that no one at the bus station could tell if he really was a wizard, or if he was just a fellow in a costume. No reports of any anomalous abilities, but people still pulled guns, which is why we should really be talking to more public-facing people about shutting down the comic conventions.
ウェザーワックス博士: ええ、全くですよ。
Dr. Weatherwax: Oh, shit, you’re right.
[エージェント ニットが通話に参加する。彼女の身なりは乱れており、片方の頬にできた引っ掻き傷から出血している。]
ウェザーワックス博士: あらあら。タイミングが悪かったですか?
Dr. Weatherwax: Good lord. Is this a bad time?
オッグ博士: いったい何が起きた?
Dr. Ogg: What happened to you?
エージェント ニット: 大丈夫。娘が家の中にリスを持ち込んでさ、そいつを追い出すのに一生かかっちゃった。魔法使いたちが齧歯類を食べないのは残念だよ。心配しないで。まぁ狂犬病の予防接種は予約するけどね。タイプ音が聞こえてたらそういうこと。
Agent Nitt: I’m fine. My daughter brought a squirrel into the house, took forever for us to get the thing back out. Shame the wizards aren’t eating rodents, too. Ignore me. I’m going to schedule a rabies shot, though. In case you hear me typing.
ウェザーワックス博士: 無事で何より-
Dr. Weatherwax: Glad to hear that you’re alright-
[ウェザーワックス博士がくしゃみをする。]
エージェント ニット: ワオ。未だに?
Agent Nitt: Wow. Still?
ウェザーワックス博士: 近頃は大勢の魔法使いの相手をしてますからね。
Dr. Weatherwax: I’ve been dealing with a lot of them lately.
オッグ博士: 我々は他のプレイヤーがこのゲームに絡んできたのに気付いているぞ。
Dr. Ogg: It’s come to our attention that we have other players involved in this game.
ウェザーワックス博士: フェオウィン・ウィルソンから財団宛てにメッセージが届きました。
Dr. Weatherwax: Faeowynn Wilson sent us a message.
エージェント ニット: メッセージが届いた? 放浪者の図書館なんか、またウチにパイプ爆弾を送り付けてきたよ。
Agent Nitt: You got a message? The Library just mailed us another pipe bomb.
ウェザーワックス博士: 得られる味方は全て受け入れることを考慮すべきです。相手が図書館でもです。そして民間人でも。
Dr. Weatherwax: We need to entertain the possibility of taking any allies we can get. Including the Library. And including civilians.
オッグ博士: まさか蛇の手と協力しろと言うんじゃあるまいね。奴らがそんな-
Dr. Ogg: You’re not suggesting we collaborate with the Hand. I don’t think they would-
[オッグ博士は机の上の何かに手を伸ばすが、その途中で水の入ったコップを突き倒す。]
オッグ博士: えい、クソッたれ。
Dr. Ogg: Oh, god dammit.
ウェザーワックス博士: 協力ではありません。休戦です。1914年のクリスマスだから、みんな撃つのを止めようという話です。
Dr. Weatherwax: I don’t mean collaborate. I mean truce. It's Christmas in 1914 and we're all going to stop shooting.
オッグ博士: お互いをな。
Dr. Ogg: At each other.
ウェザーワックス博士: 魔法使いは引き続き撃つに決まってるでしょう。私たちは当面、特定団体の活動に目を瞑るべきです。話の通じる者たちには手を貸してもいいでしょう… もし彼らが全世界的な鳥類絶滅事象を食い止める助けになるのならね。
Dr. Weatherwax: Of course we're going to keep shooting the wizards, yes. We should, for the moment, turn a blind eye to the activities of certain other groups. Maybe even lend a hand to the more reasonable ones, if they’re doing anything to help us stop a global avian extinction event.
エージェント ニット: ええっ。そこまでヤバいの?
Agent Nitt: Gosh. It’s that bad?
ウェザーワックス博士: 魔法使いたちは途方もない量の鳥を食べるんですよ、ニット。しかし明るい面もあって、アメリカは猫の生息数が最も多い国の1つです。
Dr. Weatherwax: They eat a horrifying amount of birds, Nitt. But on the bright side, the United States has one of the largest populations of cats.
オッグ博士: そして、発砲する口実を探している銃所有者の生息数も最多だ。
Dr. Ogg: And the largest population of gun owners looking for an excuse.
ウェザーワックス博士: ビンゴ。
Dr. Weatherwax: Bingo.
[記録終了]
補遺3 - 環境への影響
SCP-8320-1個体は魔法で生成した食品と小型の鳥を主食としているようです。SCP-8320の開始から数週間が経過し、世界各国の環境保護機関、活動家団体、政府は鳥類個体数に及ぼされる影響への懸念を募らせています。リスクの即時性を鑑みて、財団及び協力組織は、異常な要注意団体も含めて、あらゆる利害関係者がSCP-8320の駆除に参加できるようにすることで合意しています。
爆破されたSCP-8320-1個体が1匹のネコではなく複数の鳥として再出現したという報告を受けた後、財団は世界各地のサイトで幾度か実験を行いました。以下はサンプルリストです。
場所 | 生じた動物の総数 | 動物種 |
---|---|---|
アメリカ合衆国、ユタ州 | 50 | ハイエボシガラ、キジオライチョウ、アカエリシルスイキツツキ、イナゴヒメドリ |
アメリカ合衆国、メイン州 | 50 | ホオアカアメリカムシクイ、ニシツノメドリ、アオカケス、セジロコゲラ |
中国、広東省 | 50 | ホトトギス、チャバネクイナ、シマアオジ、チャイロサンショウクイ |
財団の研究によって、SCP-8320-1個体は爆発物で破壊されると、正確に50羽かつ各体重10~500グラムの様々な鳥に変化すると判明しました。鳥類種の割合は一見すると無作為ですが、その多様性はSCP-8320-1個体の半径およそ30km圏内における在来種と相関します。また、この無力化手段では、近年絶滅した鳥類種の標本も生成され得ることが指摘されています。6
注記: 以下はウェザーワックス博士、オッグ博士、エージェント ニットのビデオ通話の書き起こしである。
[記録開始]
[ウェザーワックス博士がくしゃみをする。]
オッグ博士: お大事に。先程言ったように-
Dr. Ogg: Bless you. As I was saying-
ウェザーワックス博士: ようやく回復してきましたよ。終わりが近付いているのを実感します。
Dr. Weatherwax: It’s finally getting better. I can tell we’re toward the end.
オッグ博士: やっとか。人生で一番長い4ヶ月だった。
Dr. Ogg: Finally. This has been the longest four months of my life.
[エージェント ニットが通話に参加する。]
エージェント ニット: ごめん。
Agent Nitt: Sorry.
ウェザーワックス博士: 今回はどういう事情です?
Dr. Weatherwax: What is it this time?
エージェント ニット: 今日会議なの忘れてた。
Agent Nitt: I forgot this was today.
オッグ博士: 魔法使いブラックマーケットについて最新情報がある者は?
Dr. Ogg: Anyone have updates on the wizard black market?
ウェザーワックス博士: ダークが莫大な投資をしていると聞きました。あちらこちらで取引が横行してます。数多くの国が在来種の鳥類を取り戻すチャンスに飛びついていますからね。ボロい商売ですよ。
Dr. Weatherwax: I hear Dark is getting awfully invested in it. Been trading them all over. Lots of countries jumping on the chance to repopulate their native birds. Very lucrative.
エージェント ニット: 最低のアイデアだね。魔法使いの誰かが飛行機に火の玉で穴を空けるのも時間の問題だよ。
Agent Nitt: Terrible idea. Only a matter of time before one of them shoots a fireball through the wall of an airplane.
オッグ博士: アンダーソンの店舗の壁を火球で突き破った奴なら既にいる。煮え滾る大釜の中に入れられたのは気に食わなかったようだ。
Dr. Ogg: One of them already shot a fireball through the wall of an Anderson joint. I guess it didn't like being in the bubbling cauldron.
ウェザーワックス博士: 彼らが騙されやすいのを喜びましょう。ニュージーランドを見れば一目瞭然です。あそこは上手くやってのけました。
Dr. Weatherwax: We can be happy they’re gullible. After all, look at New Zealand. It worked out for them.
オッグ博士: ニュージーランドがどうしたって?
Dr. Ogg: What about New Zealand?
ウェザーワックス博士: 猫の個体数過剰問題と鳥の個体数不足問題を一挙に解決しました。プラスチック爆薬をどっさり埋設した空き地で“大魔法使いトーナメント”を開催したんです。しかも鳥は1羽も死ななかった。それについては調査を進めていますよ。“防爆鳴禽類”が生まれたという仮定の意味するところを少々憂慮している研究員もいますから。
Dr. Weatherwax: Solved their cat overpopulation problem and their bird under-population problem in one go. Set up a “grand wizard tournament” on top of a vacant lot full of a healthy amount of buried plastic explosives. They didn’t even lose any of the animals. We’re looking into it. Some of our researchers are a little worried about the hypothetical implications of explosion-proof songbirds.
エージェント ニット: “大魔法使いトーナメント”?
Agent Nitt: A “grand wizard tournament?”
ウェザーワックス博士: 彼らを-
Dr. Weatherwax: They-
[ウェザーワックス博士がくしゃみをする。]
オッグ博士: お大事に。
Dr. Ogg: Bless you.
ウェザーワックス博士: 大勢の魔法使いを喧嘩させずに一ヶ所に集めるにはそれしかないんです。制御されてない喧嘩をさせずに、ですかね。誰が最高の魔法使いかを競う大会だと伝えればいい。
Dr. Weatherwax: It’s the only way they could get so many of them in one place without starting a fight. An uncontrolled fight, anyway. Told them they were going to compete to see who was the best wizard.
エージェント ニット: あと残ってる仕事は? そっちの機動部隊は解散する予定?
Agent Nitt: What’s left? Are you going to disband your task force?
ウェザーワックス博士: 既にほぼ解散しました。農村地域のはぐれ個体を始末する分隊がごく少数だけ残っています。
Dr. Weatherwax: They’re already disbanded, mostly. Just a few squads taking care of the stragglers out in the rural areas.
オッグ博士: 簡単に見つかるのは実にありがたい話さ。奴らの塔は探す必要すらないほど目立つ。
Dr. Ogg: I thank God they’re so easy to find. You don’t even have to look to find those towers.
ウェザーワックス博士: 私たちと猫愛好家たちと銃愛好家たちと鳥類保護論者たちがいる以上、今月末にはケリがつくんじゃないかと思います。
Dr. Weatherwax: Between us, the cat lovers, the gun lovers, and the avian conservationists, my guess is we’ll be done with all this by the end of the month.
エージェント ニット: その後は、世界に“何も起きなかった”と納得させる方法をひねり出すのに注力できるね。
Agent Nitt: And then we can focus on how to convince the whole world it didn’t happen.
オッグ博士: いやぁ、そこまで頑張る必要はあるまい。私の姪は大学生だが、今回の騒動をどう思うか訊ねたら、それで家賃が下がるわけでも学生ローンが返済されるわけでもないからどうでもいいと言ったぞ。
Dr. Ogg: Oh, I don’t think we’ll need to try that hard. My niece is in college and when I asked her what she thought, she said it didn’t lower her rent or pay her loans, so she doesn’t care.
ウェザーワックス博士: 私たちの偽情報部門の観察によると、大半のアメリカ国民の間では、なぜこんな事件が起きたかという話題は、NRA対NRFA裁判の話題よりも遥かに少ないそうです。
Dr. Weatherwax: Our disinformation department is observing that most US citizens are talking about why it happened much less than they’re talking about the NRA v NRFA case.
エージェント ニット: 何裁判?
Agent Nitt: The what?
ウェザーワックス博士: 全米ライフル協会と全米ルネサンスフェア同盟です。
Dr. Weatherwax: The National Rifle Association and the National Renaissance Fair Alliance.
エージェント ニット: あー。
Agent Nitt: Ah.
オッグ博士: 君たち、1体の魔法使いが密航していた貨物船の報告書を読んだか? そいつはアメリカをはるばる横断して船に飛び乗ったそうだ。そして跡形もなく港から消えた。
Dr. Ogg: Did either of you see the reports about the cargo ship that found one of them stowed away? Traveled all the way across the country, hopped on a boat? Vanished from the port without a trace?
ウェザーワックス博士: いいえ?
Dr. Weatherwax: No?
オッグ博士: 奴らの仲間にしちゃ奇妙な行動だと思わないか? 普段見かける個体より思慮深くなけりゃ、そんなことはできないんじゃないかな?
Dr. Ogg: You don’t think that’s strange behavior from one of them? Requires more forethought than we usually see?
エージェント ニット: そうかも。
Agent Nitt: Maybe.
ウェザーワックス博士: 何があったにせよ、その個体はきっともう死んでますよ。
Dr. Weatherwax: Whatever happened, it’s probably gone by now.
オッグ博士: それもそうか。きっともう死んでるだろうな。
Dr. Ogg: You’re right. It’s probably gone by now.
[記録終了]