SCP-8323

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アイテム番号: SCP-8323

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル:
SCP-8323を経験した財団職員は、治療のために各自が所属するサイトの医療部門に赴く必要があります。治療内容は、刺激剤1の処方 (適切な場合) と追加の作業の割り当て2、ならびに財団カウンセラーによる毎週の評価から成ります。

一般市民にSCP-8323が発現したことを特定するのは困難であるため、現状ではこれ以上の収容プロトコルは実施されません。

説明:
SCP-8323は夢の中で足音として現れる存在です。出現イベントの要因は不明ですが、SCP-8323は最初に出現して以降に対象が見る全ての夢で現れます。薬物や異常な手段を用いてこの夢を抑制する試みは失敗しています。

SCP-8323が出現する夢はいずれも以下の特徴を備えています。

  • 周囲の環境が対象にとって馴染み深いものであり、ポジティブな記憶と一致することが多い。
  • 対象を除いた生物が一切登場しない。
  • 対象は最初の位置から移動することができない。
  • SCP-8323が対象から不定な距離だけ離れた位置に出現する。
  • 夢を見ている間、SCP-8323は一定のペースで対象に接近し続ける。

対象はSCP-8323の初期位置との距離に影響を及ぼすことが可能なようであり、覚醒期間が長く続くほど次回の出現時の距離が長くなると報告されています。加えて、覚醒期間中に遂行した認知的作業の量に応じて距離はさらに伸長します。

SCP-8323の対象への進行距離は累積するようであり、上述した手段によって適切に相殺されなかった場合、SCP-8323の初期位置は夢を見る毎に接近します。

SCP-8323の影響を受けた対象は不安感の増大を報告していますが、これが異常であるのかは不明です。

SCP-8323に関連する情報は実体験から得られたものであるため、SCP-8323が距離を詰めたことによる結果は不明です。
直上の情報は古いものです。補遺2を参照してください。

補遺1:
財団が初めてアノマリーの存在を認知したのは、デイビッド・モンロー博士が所属サイトの心理学者に対し、異様な夢を繰り返し見るという報告を始めた時のことでした。この時に報告された夢の異常な特徴がフラグ付けされ、他症例の発見を経てSCP-8323に分類されました3

以下はSCP-8323出現事例の一つに関する口述です。

書き起こし
モンロー博士のオフィスのセキュリティカメラから回収された映像。

日付: 20██/07/01
題: オンライン診療予約

簡潔化のため無関係な映像を省略。

[書き起こし開始]

(モンロー博士はデスクの席に着いており、携帯電話を耳に当てている。貧乏ゆすりをしており、片足が不規則に音を立てている。)

セッションがそろそろ終わりだってことは分かってますし、確認したかったことは私の対処方略についてだっていうのも分かってるんですが、ただ、えっと。代わりに、例の夢について話してもいいですか? 昨晩ですが…… いやその、本当に話さないといけないことなんです。

(彼が手で髪を梳く。)

はい、分かりました。ありがとうございます。この前は、線路の上に立ってる夢を見ました。 (休止。) はい? ああ、場所は駅です。すみません、はっきり言っておくべきでしたね。そこは、こう、見覚えのある駅でして。毎日そこの電車に乗って、大学まで通ってました。夢の中では大学生の頃に戻っていたんだと思います。実際、卒業帽が鞄から半分突き出てまして —

すみません。話が逸れましたね。時間はあとどれくらいですか? (休止。) ああ、良かった。その、この間時計を処分しまして。もう針の音に耐えられないんです。

(彼が深呼吸をし、眼鏡の位置を調整して、両目を擦る。)

とにかく。私は線路の上にいます。周りに人はいないんですが、それは…… なんというか、普通じゃないんですけど、予想できたことでした。音声アナウンスもありません。電車の時刻を示す電子掲示板も真っ暗でした。

トンネルを吹き抜ける風はありますが、轟音は聞こえてきません。だから、電車はまだ来てないなって分かるんです。電車が来る前には必ず轟音が響きますからね。ただ…… 静かではありませんでした。

(休止。彼が貧乏ゆすりを止める。)

いつも初めは静かなんですが、今では耳を澄ますようになりました。初めて聞いた時は自分の心音かと思いました。前は静かでした。ずっと静かでした。いえ、実際には音量は変わってないんです。変わったのは距離だけです。

(声がわずかに震え、彼が咳払いをする。両目に生気が宿っていない。)

ほとんどはいつもと変わらないんです。ただ待っていると、足音がする。普通、夢の中だと時間は同じように流れないじゃないですか? 私の見る夢では流れるんです、間違いありません。何時間もそこに突っ立ってました。前までは、夢はとても速く動いてました。いつも走ってるような感覚でした。

(彼が頭を横に振る。再び貧乏揺すりが始まる。)

はい、すみません。そろそろ時間ですね。集中します。最後にどうなるか、話しておかないと。夢は…… 段々と悪化していきます。ちょうど目の前から聞こえるようですが、トンネルとか、反響が…… 100フィートは離れてたかもしれませんし、10フィートしかなかったのかもしれません。正確なところは分かりません。

(彼が両目を閉じ、幾度か落ち着いた呼吸をしてから話を続ける。)

でも、初めて何かを見たんです。かすかにですが、見えました。見えるはずがないのに。あれはまるで、ヘッドライトのようでした。

(休止。)

(声が小さくなる。) ヘッドライトだったのかもしれません。

(彼が顔を拭う。唇が震えている。彼が次に口を開いた時、声は落ち着きを取り戻している。)

こんなに長く話を聞いていただいて、ありがとうございました。話しておきたかったんです、その…… 万が一にも、来週また会えなくなった時のために。この3日間ずっと、アラームに気付かずに寝過ごしてしまってるんです。

あの…… 今のは別に、気に病まれないでくださいね。

[書き起こし終了]

補遺2:

20██/07/06、モンロー博士が数日間理由なく欠勤し、連絡もなかったため、当人に対して財団によるウェルネスチェックが実施されました。

当人の自宅が捜索されましたが、不法侵入の痕跡といった犯罪行為の証拠は発見されませんでした。特筆すべき物品は、ナイトスタンドに置かれた睡眠薬の瓶4と、以下のように書かれた手書きのメモのみでした。

ごめんなさい。ただ疲れたんです。

モンロー博士はベッドの上で発見されました。ほぼ全てのバイタルサインが消失していましたが、唯一の例外として、両目が絶えず痙攣していました。

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