クレジット
タイトル: SCP-8338 - 私はアメリカ合衆国の大統領だ。だからもうブロッコリーは食べん!
翻訳責任者: ShiibaMana
翻訳年: 2024
著作権者: MisterFrown
原題: SCP-8338 - I'm president of the United States. And I'm not gonna eat any more broccoli!
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 3
元記事リンク: ソース
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ホワイトハウス

SCP-8338-1
特別収容プロトコル: SCP-8338-1の死に伴い、SCP-8338はNeutralizedに再分類されました。標準的な文書アーカイブと、財団全体による既存の不明瞭化の取り組み以外には、収容のためのさらなるプロトコルは必要ないと考えられています。
説明: SCP-8338は、ブロッコリー(Brassica oleracea var. italica)の全品種を対象としたHWK-クラス"アブラナ科植物崩壊"シナリオの仮説でした。
SCP-8338が発生した場合、ブロッコリーの全品種はノウアスフィア(叡智圏)からの急速な概念放出により合意的現実から瞬時に消滅すると推測されていました。イベントの性質上ブロッコリーは人類の知識から除去されることになりますが、その存在の痕跡は残り、一般大衆の目に触れる状態にあり、広範囲にわたって正常性を侵害することになります。
SCP-8338の脅威は、現実改変者であったSCP-8338-1が意図せずに能力を行使することで創造されました。SCP-8338の創造によりその能力は失われ、結果としてSCP-8338-1の能力は標準的な人類のレベルにまで低下しました。SCP-8338-1のブロッコリーに対する憎悪が、全てのブロッコリーの絶滅を主張する(「ブロッコリーは全て滅びてしまえ!」等)などの意図しない奇蹟論的儀式を通じてSCP-8338を発生させたと考えられています。
SCP-8338-1はジョージ・H・W・ブッシュ氏でした。彼は1989年から1993年までアメリカ合衆国第41代大統領を務めた人物であり、ブロッコリーを非常に嫌っていました。
補遺8338.1: 発見経緯
SCP-8338が最初に発見されたのは1992年、SCP-8338-1の唯一の大統領任期の後半でした。農作物の定期的な動向調査の際、ブロッコリーの栽培量と消費量の両者に異常が発見されました。両者とも異常に減少していることが判明しましたが、原因不明の短期的な増加も散見されました。このデータと既に財団が把握していたブロッコリー関連の異常の可能性の照合中に、SCP-8338-1が最初に注目されました。
SCP-8338-1は当時のアメリカ合衆国大統領という立場上、既に財団によって無関係な異常活動に対しての監視を受けていました。監視カメラの映像と事前に蓄積されていたSCP-7914のデータの比較を経て、解析部門によりさまざまな発見がなされました。
ブロッコリーの普及率が前例のないほど増加したと思われる事例は全て、通常は家族の命令によりSCP-8338-1が目に見える形でブロッコリーを摂取した際に発生したことが判明している。これによりSCP-8338現象は一時的に安定し、ブロッコリーの存在が再び不安定化するまでしばらくの間抑制される。
残りのデータの簡単な要約:
- SCP-8338-1のブロッコリーの摂取状況は世界中のブロッコリーの状況と関連している
- SCP-8338-1はブロッコリーに対する世界的な影響が正常性を侵害するレベルに達するのを防ぐために、1か月に1回ブロッコリーを摂取する必要がある
- SCP-8338-1が3か月以上ブロッコリーを摂取しなければ、SCP-8338が発生しブロッコリーが合意的現実から完全に消滅する
当データの公表後、SCP-8338及びSCP-8338-1の性質と両者の関係性が完全に判明し、さらなる行動が促されました。
補遺8338.2: 会議録
SCP-8338の研究責任者であったフランシス・オウン博士は、SCP-8338-1及び連邦捜査局異常事件課のサミュエル・ブラウン課長との会談のため、ホワイトハウスへの出張を命じられました。アメリカ大統領という立場上、SCP-8338-1は就任時に既に財団とヴェールの存在について説明を受けていいました。
«ログ開始»
オウン博士: 大統領閣下、お会いできて光栄です。
[オウン博士がSCP-8338-1に握手を求める。SCP-8338-1は困惑した表情を浮かべるが、躊躇いがちに握手を返す。]
SCP-8338-1: よろしいよろしい、しかしなぜ君たちは私にブロッコリーを食べろというのかね?
オウン博士: 閣下、我々の組織がお送りした概要説明ファイルでお分かりのように—
SCP-8338-1: 読んでおらん。
オウン博士: 何とおっしゃいました?
SCP-8338-1: ブロッコリーは食べん。
オウン博士: は?
SCP-8338-1: バーバラ1はたまに、私がとても上機嫌な時にブロッコリーを食べさせるのだが、サミュエルが言うには、何らかの…不足を防ぐために少なくとも1日1回は食べる必要があるらしいね?
オウン博士: おっしゃる通りです、閣下。しかし—
SCP-8338-1: ああ、勘弁してくれ!なぜ私がクソ忌々しいブロッコリー不足などを気にしなくてはならんのだ?私はアメリカ合衆国の大統領だ。だからもうブロッコリーは食べん!
ブラウン課長: 大統領閣下、私がお伝えしようとしてきた通り、ただの不足ではありません。地球上の全てのブロッコリーが消滅するのです!
SCP-8338-1: なぜそれを気にしなくてはならんのだ?
[ブラウン課長が右手を顔に当て、鼻から大きく息を吐く。]
オウン博士: 閣下、ブロッコリーが徐々に減っていくのではありません。突然、ブロッコリーに関する人類の知識が完全に消え去るのです。それが存在していたことすら誰も理解できないでしょう!
SCP-8338-1: それはいい!実のところ、その"不足"とやらが起こるように全力を尽くすつもりだ!
ブラウン課長: 我々は今しがた"不足"ではないと…
オウン博士: 大統領閣下、失礼ながら、我々の組織がそのようなことを許すわけがないとご存知のはずですが。
SCP-8338-1: 私はアメリカの大統領だ!私は君たちのちっぽけな財団を我々の領土で活動させ、資金も提供している。私の言うことをよく聞くがいい。ブロッコリーはもうたくさんだ。君たちに私が止められるものか!
ブラウン課長: この会談の前に言っただろう—彼は聞く耳を持たないだろうって、なあ君kid。
オウン博士: "君kid"?私のほうが年上なんだぞ。
«ログ終了»
SCP-8338-1との悲惨な会談の後、財団はSCP-8338の発生及びアメリカ合衆国との紛争の双方を防止するため、彼に密かにブロッコリーを提供する様々な作戦を開始しました。
補遺8338.3 重要な作戦の記録
作戦 #: 01
説明: ホワイトハウスに職員として潜入した財団のエージェントが、SCP-8338-1にブロッコリーが1房入ったスムージーを提供する。スムージーの中の他の材料がブロッコリーの存在を隠すと考えられていた。
結果: SCP-8338-1は快くスムージーを受け取り、飲み始める。しかし、彼はすぐにブロッコリーに気付き、スムージーの残りを捨てながらエージェントを非難した。SCP-8338-1がブロッコリーの一部を摂取したため、SCP-8338の発生は防止された。
作戦 #: 03
説明: 財団のエージェントはSCP-8338-1の息子であるジェブ・ブッシュ知事を徴用し、彼が次にホワイトハウスに訪れた際に父親にブロッコリーをもっと摂取するように「冗談で」勧めさせる。
結果: SCP-8338-1は息子に対して激怒し、最終的にはジェブ・ブッシュがホワイトハウスのクリスマスパーティーに招待されなくなるという口論に発展した。この試みは失敗とみなされた。
作戦 #: 09
説明: SCP-8338-1の年1回の健康診断で、彼は看護師を装った財団のエージェントから錠剤を渡される。その錠剤には微量のブロッコリーが含まれているが、通常の人間が知覚できないほど極めて微量であることが確認されている。
結果: SCP-8338-1は首尾よく錠剤を服用したが、ブロッコリーのような味がすると不満を述べた。どのような手段で感知したのかは不明だが、彼の現実改変能力の潜在的な残滓か、SCP-8338の現在の主要媒介者であることで獲得した追加の異常性質のいずれかである可能性がある。
作戦 #: 15
説明: 実験的なテレポーテーション技術を利用し、ブロッコリーの小片をSCP-8338-1の胃の中に転送する。
結果: テレポーテーションがSCP-8338-1の胃に合併症を引き起こし、ブロッコリーを除去する手術が必要になった。ブロッコリーが原因であることを認識した彼は、ブロッコリーに対する嫌悪感を増した。この試みは失敗とみなされた。
作戦 #: 28
説明: SCP-8338-1をブロッコリーの概念と融合させてSCP-8338を無力化するために、エリケシュ概念工学を利用する計画が提案された。
結果: O5評議会の投票により却下。
補遺8338.4: O5評議会による会合
1997年まで、SCP-8338は補遺8338.3で取り上げられた異例の方法によって首尾よく阻止されていました。しかし、それは財団にとって継続的な困難であることが判明しました。この問題の解決策を決定するため、O5評議会が招集されました。
«ログ開始»
O5-1: これより、O5評議会による会議を招集する。本日の議題はSCP-8338とその対処法についてである。スリーに発言権を与える。
O5-3: ありがとう、ワン。過去5年間、我々はSCP-8338を防止すると同時に、SCP-8338-1との衝突を防ぐことに成功してきました。しかし、SCP-8338は依然として正常な社会全体にとって危険な脅威であり、SCP-8338-1は近い将来に協力する兆しを見せていません。それでは、解決策を協議しましょう。
[沈黙。]
O5-3: 本当に?何も?誰も思いつかないんですか?
O5-7: スリー、作戦ログを見たか?我々はあらゆることを試した!他に何ができる?
O5-12: そうだね、まだ試していないアイデアが1つだけある。君たちは気に入らないと思うけど。
O5-1: 現時点では、できることは全てやるつもりだ。トゥエルヴ、君のアイデアとは?
O5-12: 彼を殺そう。
[沈黙。]
O5-12: 何で?彼はもう大統領じゃないんだ。
O5-9: まあ、彼の言うことも一理ある。
O5-2 しかし、元大統領を殺害するのは賢明なことなのか?
O5-10: かつて行ったことだ。
O5-1: 投票しよう。
是 | 非 | 棄権 |
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O5-1 | ||
O5-2 | ||
O5-3 | ||
O5-4 | ||
O5-5 | ||
O5-6 | ||
O5-7 | ||
O5-8 | ||
O5-9 | ||
O5-10 | ||
O5-11 | ||
O5-12 | ||
O5-13 |
O5-1: 動議は可決された。
O5-3 上手くいくことを願いましょう。
«ログ終了»
補遺8338.5: 無力化
SCP-8338-1は機動部隊アルファ-1 ("レッド・ライト・ハンド")の隊員らにより、1997/08/11に彼の私邸内で終了されました。特別に改造されたBZHRユニットによって作られた影武者が彼の代わりに配置され、今後25年以内に寿命を迎える予定でした。
解析部門の調査によると、SCP-8338-1の終了後、SCP-8338の影響を受けたデータは全て予想値に戻りました。3か月の経過観察後、SCP-8338はNeutralizedに再分類されました。SCP-8338-1の影武者は引き続き監視下に置かれていました。
2018/11/30、SCP-8338-1の影武者は予定通りに死亡しました。以下はSCP-8338-1の長男であるジョージ・W・ブッシュ氏が、影武者の死後に行われた葬儀で述べた弔辞からの注目すべき抜粋です:
[…]
ご存知の通り、私の父はブロッコリーが食べられませんでした。しかし、私は父ほどブロッコリーに憎しみを持ったことはありません。彼がキッチンに押しかけ、母が夕食にブロッコリーを出そうとしているのを見て「ブロッコリーは全て滅びてしまえ!」と叫んで出ていってしまった日もありました。父は本当に個性的でした。私は彼から多くのことを学んだと思います。
[…]
補遺8338.6: 報告書の更新

SCP-8338-2
2018/12/17、解析部門の職員はSCP-8338-1の影武者の葬儀後にSCP-8338の影響を受けたデータの再発生を検出しました。異常の再活性化の理由を突き止めるために行われた様々な要注意人物の監視は2週間後に実を結び、ジョージ・W・ブッシュ氏についての十分なデータが収集され、彼がSCP-8338の新たな主要媒介者となったと判断されました。
SCP-8338の再活性化の真相が判明するまで、ブッシュ氏は暫定的にSCP-8338-2に指定されています。
SCP-8338のNeutralizedからの再分類は保留中です。