
クレジット
タイトル: SCP-8344 - おとなになったら
翻訳責任者: amakumo_oo
翻訳年: 2026
著作権者: Hyrule-Maniac
原題: SCP-8344 - When I Grow Up
作成年: 2025
初訳時参照リビジョン: 3
元記事リンク: ソース
アイテム番号:
8344
収容クラス:
SAFE
特別収容プロトコル: SCP-8344はサイト-17の標準Anomalous物品ロッカーに保管されます。接触は心理学職員が同席する、監視された室内での承認された実験でのみ許可されます。SCP-8344によって製造された全ての手紙は目録化、スキャン、およびアーカイブされなければなりません。オリジナルの手紙はさらなる異常性を検査された後、承認された場合のみ対象への返却が許可されています。同一の対象への繰り返しの実験はウェクスラー上席研究員の承認がない限り禁止されています。
説明: SCP-8344は約18cm×12 cm×12cmの表示のない木箱です。人間の対象が内部に手を挿入した際、SCP-8344内に手書きの手紙が1枚発生します。これらの手紙は対象の幼少期、通常5歳から12歳時点での字体や語彙、感情を反映しています。
内容は幼少期に飼育していたペットや家族関係、興味関心といった詳細を反映しており、概ね対象の発達的な背景に正確です。外部の記録により正確性を確認することが可能な、対象が完全に忘却していた経験を反映した事例も存在します。多くの場合手紙は対象の感情や行動に対して重大な影響を及ぼしますが、いかなるミームあるいは認識災害効果も示していません。
通常、対象は1枚の手紙のみを受け取ります。SCP-8344から追加の手紙を受け取る試みは失敗しています。箱内部にはいかなる機械ならびに異常物品も確認されていません。非人間を対象にする実験では異常性が発現しませんでした。
特筆すべき例外として、D-3147、マーカス・エイブリーを対象にする実験において、対象は異なるセッション下で5枚の手紙を受け取りました。この繰り返しの接触は現在調査下にあります。
補遺 8344.1: 発見
SCP-8344は20██年██月██日に、ミシガン州[編集済み]の退職済みの小学校教師であったエラノア・ワッツの自宅屋根裏で発見されました。彼女の死亡に伴い私財が売りに出されており、数名の元生徒がその整理に参加していました。彼らは彼女の所有物にその箱を発見したこと、また彼らが「クラスの感傷的な慣例」だと考えていたイベントへの参加を試みていたことを報告しました。生徒のうち1名が箱内部から当該人物の幼少期を正確に反映した字体で書かれた手紙を発生させていたことが目撃者により証言されました。
さらなる調査により、ワッツは定期的に「未来の自分に向けての手紙」を書くよう生徒に促しており、毎年学年末にそれらを小型の木箱に格納していたことが判明しました。これらの手紙が返却された事例はなく、またワッツが届けていた記録もありません。この時期におけるSCP-8344の異常性の有無、および異常性の顕在化が段階的であったかは不明です。
元生徒へのインタビューから得られた回答には一貫性が見られます。ほとんどの回答者は箱を再度認識するまで慣習について失念していました。複数の回答者がオブジェクトに対し強い反応を示し、懐かしさや後悔、「共感してもらえた」といった感覚を報告しています。また元生徒のうち1名がオブジェクトへの接触後急性の不安発作で入院しました。オブジェクトは地元の法執行機関に潜入していた財団工作員によって警告され、生物災害というカバーストーリーの元回収されました。
敷地内にその他の異常物品は発見されませんでした。
補遺 8344.2: 実験ログ
実験ログ 8344-0148
対象: D-1483
結果:
手紙はノート用紙に紫のクレヨンで書かれており、稚拙でスペルミスが存在する。「花びんをわってごめんなさい。ネコっていったけどおれのせい。おこられるのがこわかった。」
読了後、対象は目に見えて感情的になった。長い静止の後、彼はこの手紙が破棄される可能性を尋ねた。理由を問われた際、彼の回答は以下であった。
「あれは俺がついた最初の嘘だ。あれ以来、嘘をつくのが簡単になった。」
実験ログ 8344-0097
対象: D-9702
結果:
手紙は赤のマーカーで殴り書きされた1文として現れた。「おれら今わるいやつ?」
対象はメモを音読後即座に敵対的になり、職員が彼を「嵌める」かどうかを答えるよう要求した。セキュリティ職員に対する暴行の試みにより対象は隔離された。この対象への追加の実験は許可されない。
実験ログ 8344-2133
対象: アラン・ミアーズ博士(レベル3研究員)
結果:
手紙はルーズリーフの紙に鉛筆で書かれている。いくつかの単語にスペルミスが存在する。「いちばん頭のいい人にならなくてもいいんだよ。ただわらい方を忘れないで。」
対象は小さく笑い、その日の残りは静穏な様子であった。心理評価により、接触によって一時的な鬱症状が阻害されたことが結論付けられた。実験後対象は職員士気向上の取り組みやユーモアのセミナーに参加した。理由について、「私はかつて面白い人間だったことが分かった。」と回答した。
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名前: マーカス・エイブリー
Dクラス指定: D-3147
以前の身分: 死刑囚
犯罪記録: 殺人罪
マーカス・エイブリーは2024年5月14日に財団拘置所に輸送されました。彼は複数の州で起こった、結果的に3人の民間人の死を招いた一連の武装強盗事件への関与で有罪判決を下されています。裁判記録および目撃者の証言によると、彼はグループの計画役と運転役を務めていました。犯罪科学的証拠において彼が一度も武器を使用していなかったことが確認されています。
これにも関わらず、共犯者によるそれぞれの司法取引にてエイブリーは事件の首謀者でありスケープゴートであると認識されました。市民の怒りにより、致死性の注射による死刑が迅速に求刑されました。財団においてエイブリーの攻撃性の低さ、最低限の抵抗、およびDクラスプログラム配属への高い心理的承諾が記録されています。
初回の心理鑑定では鬱症状、空虚感、将来への願望の低さが示されました。SCP-8344が提示された際、彼はその影響を報告しませんでした。この初回の実験結果は前例からの特筆すべき逸脱です。1枚の手紙をけ取り、短期間の感情的な反応を示したこれまでの対象に反し、エイブリーは5枚の手紙を受け取りました。それぞれの手紙は徐々に深く、内の葛藤と希望をより反映する内容となっています。
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「おとなになったら人を助けられますように…」
マーカスは手紙を読み、数秒間それを静かに抱えた後テーブルに置いた。セキュリティーカメラにより、彼が発話することなく2回追加で再読した様子が記録された。彼が思考していた内容を質問した際、彼の回答は以下であった。
「あれを書いた記憶はないが、俺みたいだった。それか何と言うか、俺が俺ってこうだよなと思ってる奴みたいな。」
苦痛の様子は見られず、対象はセッション後数時間静かに黙想した。2日後、屋外任務への申請が初めて行われた。
セッション1 – 手紙1の後
日付: 2024年10月3日
トラス博士: あの手紙についてどう考えますか?
D-3147: 偽物ではない。というか…そんな訳がない。あれは俺の昔のクレヨンの使い方だ。だらしない“P”、反対の“E”。あんな感じで丁寧になろうとしていたのを覚えてる。
トラス博士: あれを書いた記憶はありますか?
D-3147: いや。ただ、誰かが撮ったのを忘れている写真を見ているみたいな感じだ。なんていうか…本物なんだ。
トラス博士: あなたは人々を助けたいと書いていましたね。
D-3147: [笑う] は、良い結果にはならなかったみたいだがな?
トラス博士: もしかすると、今のところは。
対象は驚いた表情を見せ、静かに思考した。動揺や苦痛の兆候は見られなかった。
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「まだ犬は好き? 1ぴき飼えればな…」
対象は手紙を読んで小さく笑った。実験において楽しむような反応が観察された最初の事例である。彼は以下をコメントした。
「ビーンって名前の駄犬がいたんだ。玄関の外のところでよく寝てたな。あいつのことは忘れてた。」
数日後、対象は以前より財団職務プログラムへの興味を全く示していなかったにも関わらず、アニマルケアへのアクセスを申請した。また対象は「態度が許されれば」週に1度屋外に出る許可を求めた。
セッション2 – 手紙2の後
日付: 2024年10月7日
トラス博士: 最初の手紙と比べて、2つ目の手紙はどのような違いを感じましたか?D-3147: 今回のは…俺は小さいやつだって感じさせられた。悪い意味じゃない。ただ…俺は昔は犬やら太陽光やらについて考えていたんだ。生き残ることについてなんか考えてなかった。
トラス博士: それを忘れていた理由は何故だと考えますか?
D-3147: 結果的にこうなった俺の人生において、それは重要なものじゃなかったからだ。あんただって車で寝泊まりする生活じゃペットを飼ったりなんかしない。
対象は追加の屋外時間と軽い任務を要求した。アイコンタクトと対話の応答に向上が見られた。
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「たまにおれはいつかやらかすんじゃないかって思う…」
読了後対象は明らかな緊張状態になり、手紙を裏返して置いた。数分の沈黙の後、彼はウェクスラー博士にこの手紙が本物であるかを質問した。
「俺はあんな風にはならないよう頑張ってたんだ。俺はただこれから良くなるって思っていた。俺はただ…止まった。」
対象はノートを携帯し始めた。医療スタッフにより、その後数日での僅かな体重増加と睡眠習慣の向上が記録された。
セッション3 – 手紙3の後
日付: 2024年10月10日
D-3147: 今回のは堪えた。
トラス博士: どの箇所が?
D-3147: 全部だ。学校の先生に「俺頑張る。」って言ってたのを覚えてる。叔父さんにも。俺が頑張っているのを人に知ってほしかったんだ。
トラス博士: そして今は?
D-3147: 今はお前が頑張っているかなんて誰も気にしちゃいないって思う。お前を責める機会がない限りは。
対象は日記をつけ始めた。セッション後、沈黙し内省的な様子が観察された。監視カメラにより、広間にて他Dクラス職員に手伝いを申し出ている様子が記録された。
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「今日は悲しかったけどだれにも言わなかった…」
対象は手紙を声に出して読むことを躊躇した。完了後、彼は顔を拭い以下を発言した。
「あの感情を覚えている。あの正確な感情を。俺は小さくて、誰かに言ってもただ『強くなれ』って言われるだけだと思った。だから言わなかった。」
対象はセッション後まもなく心理カウンセリングを申請した。これは彼が自分の意志で申請した初の事例である。セッション4は翌日に行われ、対象は強盗事件への関与について初めて自白をした。
セッション4 – 手紙4の後
日付: 2024年10月16日
トラス博士: 今回の手紙は悲しみを与えたようですね?
D-3147: 泣くとは思ってなかった。子供の頃はそんなことは許されないと思っていた。他の奴らにとって事をやっかいにさせるからだ。
トラス博士: それは一人で抱えるには重いものですね。
D-3147: 別にそれだけだ。一人で抱えようとしていた訳じゃない。でもそうした。そうし続けた。後になっても。仲間内に入ってからでさえ。
トラス博士: あなたはまだあの時の子供と同じだったと考えますか?
D-3147: ただ違う服を着た、同じ怖がりの奴なだけだ。
対象は自主的にカウンセリングの進行を申請した。職員により、攪拌の減少、他Dクラス職員との交流の増加が記された。
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「やったね。You made it.」
対象は明確に予想している様子で手紙を開いた。読了後、彼は数分間手紙を抱え、その後もう一度慎重に閉じてテーブルに置いた。
対象は数分間沈黙していた。手紙を手元に残したいかどうかを尋ねた際、彼は以下を回答した。
「いいや。そいつはもうやるべきことをやったよ。」
セッション後、彼は著しく安静な態度を示した。警備員との会話が増加し、生活ルーティンにより一貫性が見られるようになった。また、職員によりグループ活動時に「他人を中心にする」と評価された。
セッション5 – 手紙5の後
日付: 2024年10月24日
トラス博士: 最後の手紙です。たったの3単語。
D-3147: ああ。
トラス博士: これはあなたにとって何を意味しますか?
D-3147: あの子供は俺らがどんなとこまで来ちまったのかなんて気にしちゃいないんだと思う。ただ俺らはまだ進んでいる。まだ頑張っている。
トラス博士: そしてあなたは?
D-3147: 毎日さ。
対象は安らかな様子を見せた。手紙を手元に残すことを拒否し、 「そいつはもうやるべきことをやった。」 と述べた。
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2024年11月5日、サイト-17の心理職員と倫理職員による全会一致の推薦を受けた財団管理復帰プロトコルの元、マーカス・エイブリー(D-3147)の解放が認められました。解放前、エイブリーに対しSCP-8344の記憶と影響を除去するためのBクラス記憶処理が行われました。非異常性の心理的発達は保持するよう設計されています。
彼は財団監視の下、民間人として就労支援や住宅が割り当てられました。
施行前の最終カウンセリングセッションにおいて、エイブリーは以下を要求しました。
「俺がこれを忘れちまうのは分かっている。だがもし俺が歩み始めようとしたら、ただこれから良くなりたいと願っている誰かとして歩ませてくれ。俺はそれで十分だ。」
エイブリーの最終セッション後、SCP-8344から追加の手紙は発見されていません。
SCP-8344をリハビリや社会復帰に活用する申請は現在倫理委員会の検討下にあります。



