Info
タイトル: SCP-8348 - 隣で目を覚ます日はもう来ない
翻訳責任者: Tetsu1
翻訳年: 2025
著作権者: AstralNavigator,
Dr Angell
原題: We Wake Together No More
作成年: 2025
初訳時参照リビジョン: 10
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-8348
配属サイト
サイト-08
サイト管理官
ネイサン・リード博士
研究責任者
ブルース・コールドウェル博士
担当機動部隊
N/A
配属サイト
サイト-08
サイト管理官
ネイサン・リード博士
研究責任者
ブルース・コールドウェル博士
担当機動部隊
N/A
SCP-8348-1
特別収容プロトコル
アンドリュー・デュラントとホリス・デュラントは従順である限り、通常の日常生活を継続することを許可されます。SCP-8348が大衆に目撃された場合は財団が介入し、必要に応じてクラスC記憶処理を行います。
デュラント両名を単一宇宙内の存在下へと復帰させるため、サイト管理官ネイサン・リードはSCP-8348効果の無力化への研究を承認しました。ブルース・コールドウェル博士率いるサイト-08応用奇跡論部門チームがこの目標達成のため現場調査を実施します。
説明
SCP-8348はアンドリュー・デュラントとホリス・デュラントにのみ影響する再帰的現象であり、両者を別々の宇宙1に存在させ、日の出2のたびに一方から他方へと移動させます。
財団は、デュラント両名がそれぞれの宇宙に用いていた呼称を採用しました。この財団が存在する宇宙はA宇宙、もう一方はB宇宙に指定されています。アンドリューとホリスが宇宙を入れ替わる際は、着用している衣服や持ち運び可能な物体と共に転移します。
SCP-8348は、儀式用キャンドルであるSCP-8348-13によって開始されました。SCP-8348-1には二人で実行するトリガー儀式の指示が付属しており、「愛を証明する」ことが目的と記述されています。このキャンドルは1910年にまで遡り、アンドリュー・デュラントがこのアイテムやその他のアイテムを購入した地所の調査から、「星鹿教団Order of the Sidereal Stag」4として知られるオカルト団体の関与が示されています。
補遺01
財団の接触前に、デュラント両名は連絡を取るため、ベッドサイドテーブルに互いの手紙を残すシステムを発案していました。財団の調査で回収されたこれらの手紙の転写を以下に添付しています。これらは、SCP-8348の効果が最初に活性化した直後から開始しています。
2000年1月6日
ホリスへ
今まで書いた中で一番奇妙な手紙だと思う。もしかしたら、失恋のせいで幻覚を見て、まだお前が俺を置いて出てっていないなんていうかすかな希望にしがみついてるのかもしれない。でも、お前がいなくなって何日も経つってのに、バスルームの床にお前の服が落ちてるとか、お前が気に入ってたマグカップが流しに置かれてるのとか見てるんだ。不気味な話なのかもしれないけど、どうやってかお前が近くにいるみたいで、安心するんだ。
はっきりさせるため、お前がカードを通してどうにか話しかけてくれることを願って、タロットスプレッドを引っ張り出した。何も得られそうになくて、イライラして放置しておいたんだ。それは翌日消えてて、でもその次の日になったら戻ってきてて、スプレッドの真ん中に「ペンタクルのキング」が鎮座してたんだ。俺がお前の表示体として選んだカードだ! どうにかして、お前がそのカードを俺に送ってきてくれたんだな。今でも俺の近くにいる。この手紙がどうにかお前に届くことを願う。
最近いろいろきつかったのはわかってるけど、こんな風にお前が何もかも置いて出てっちゃうなんてとても信じられない。お前らしくない。どうか自分が狂っちゃったわけじゃなくて、お前が本当にここにいてくれてることを願う。もしかしたら、今夜作ったチョコチップマフィンを食べてもくれるかも。焼きあがる匂いを嗅ぐと、お前を思い出す。オーブンの側にお前がせっついて、冷却ラックからまだ熱いままひったくってニヤニヤしてる姿が目に浮かぶ。
自分で食べることはできなかった。食事は何も喉を通らない。
随分と適当に話しかけてるよな。多分、俺はあの儀式のことを考えないようにしてるんだ。俺のひっきりなしの愚痴を終わらせるためにお前がやったあの儀式。あの儀式が、あのキャンドルが、これと何か関係してるんだろ? どうか、申し訳なく思ってることをわかってほしい。明らかに俺は、自分の理解を超えた力に、強すぎる何かに巻き込まれてしまった。
会いたくて、辛くてたまらないよ。もしここにいるなら、何か言ってほしい。なんでもいい。俺にできるのは、お前が無事で、またお前に会えるよう祈ることだけだ。
愛してる。
アンディ
2000年1月7日
アンディへ
うそ。返事が来るなんて信じられない。この前、あのタロットスプレッドがどこからともなく現れて、すぐに君だとわかった。「ペンタクルのキング」が僕だとかなんとか言ってたのを覚えてたから、そのカードを探してスプレッドの一番上に置いておいた。あぁ、そうしておいてよかった。大丈夫だと聞いて大部分は安心したけど、まだ君が心配。何も食べてないみたいだから、夕飯を作って冷蔵庫に入れておいた。ラザニア、君のお母さんのレシピで。きっと食べてね。
何が起きてるのかはさっぱりわからないけど、きっと奇怪な偶然の仕業だと思う。何か変な…… 量子的なものかもしれないけど、君のせいじゃないと思う。君の買ったスピリチュアルなものを恨んだりはしない。きっと自分なりの方法で新年を迎えたかったんだと思う。可愛いって思った。
営業をスムーズに進めるため、僕は本屋でたくさんの時間を過ごしてる。僕が独りだけって知ると、お客さんが寂しそうにする。僕は君ほど社交的じゃないけど、なんとかやってる。これ2つをやるとなると大変。しかも君なしで独りとなると。増えた仕事量を君に任せて手伝ってもらえるといいんだけど。
今すぐ抱きしめられたら一番いいんだけど、少なくとも手紙を書くことはできる。ジェシーが言ってたみたいに、「コミュニケーションが鍵!」なのかな。事務所に電話して、当面はカウンセリングをキャンセルしようかと思う。
身体に気を付けて。ちゃんと食べてね。
君の夫
ホリス
追伸 マフィンありがとう! どこにいるにせよ…… 僕のマフィン屋さんがまだ営業してくれてるなんて信じられない。
2000年1月8日
ホリスへ
あぁ、お前がまだここにいるってわかってた! 「ここ」ってのが具体的にどこなのかはよくわからないけど、とりあえず安心した! これは間違いなくあの儀式に関係あるから、昨日店に行ってサンフランシスコで買ったオカルトグッズの在庫を全部調べてみた。何がどうなったのか、どう戻せばいいのかの手掛かりは何一つ見つからなかった。参考になりそうなのは、コレクションの中にあったグリモワに書かれてた、「星鹿教団」ってのだけだ。明日図書館に行ってもう少し調べてみる。
そう言えば、オカルトコーナーの在庫を確認したところ予想以上に快調だったぞ! パトリシアは真ん中に大きなルビーのあるあのきれいなアミュレットを買ってくれたし、新しいお客さんは柄に変な紋章のある黒曜石のナイフを買ってくれた。既に元が取れ始めてる!
それと、みんながずっと希望してたオカルト読書クラブを始めることにした。最初の会合は次の木曜だけど、もしかしたら俺はその場にいられないかもしれないな。明日俺がそっち側に行ってようものなら、金曜日に組み直す。こりゃ記録付けるのだいぶ大変そうだな、ハハ。お前が店のために一日どんなに働いてくれたか気付いてなかった。自分でやるのは骨が折れる!
この手紙(とラザニア!)をもらえてうれしい反面、朝に隣で一緒に起きれないことが寂しいな。やっぱ朝はいい男stud-muffinを眺めて心あっためないとな、寒くて仕方ない。
愛してる。
アンディ
2000年1月9日
アンディへ
これが儀式に関係してるって君が確信してるのは知ってるけど、僕は別の理由を探ることにする。オンラインフォーラムをいくつか見てたら、変なことが起きたって話を見かけた。君が設定させたインターネット接続を使うことになるなんて思わなかったし、まさかこんなふざけた話を本気で受け止めることになるとは考えもしなかったけど、この世界って思ってたより「X-ファイル」っぽいんだね。上手くいくといいな。
オカルトコレクションは調べなくていいって言いたいわけじゃない。そのアイテムが何なのか一通りわかれば、もっと上手く売り込んでもっと速く売れるかもしれない。けどとりあえずは、サンフランシスコで仕入れたのが元取れそうでよかった。レンタルトレーラーで全部運ぶのは安くなかったけど、その話は既にしたね。
読書クラブってのは人を店に集める方法としては悪くないけど、よりによってオカルト読書クラブとなると、必要な数を集めれるかわからない。コストダウンが必要だ。損金算入と無料ってのは別物だから、ケータリングはやめとこう。それと、君がまだ在庫報告を完了してなかったことには気付いてなかったけど、少なくとも既に終わらせてる。今や2つの世界でこのビジネスをしなきゃならないから、仕事量は2倍だ。そっちにも上手いこと回してもらいたい。
会いたいよ。
ホリス
追伸 確かに、「ここ」を把握するのは厄介だ。こっち側のベッドの上に「A」って書いといたから、明日はそっち側のベッドの上に「B」って書いとく。そうすれば目覚めたとき自分がどっち側にいるかわかって、何がどこで起きてるのかも把握しやすくなるはずだから。
2000年1月10日
ホリスへ
あのコンピューターはいい投資になるって言ってなかったっけか? 何か使えそうなものが出てくるといいんだけど。図書館じゃ残念ながらあんまりいいもん見つからなかったから。この「星鹿教団」って団体とかその儀式とかについてはどこにもなかった。きっとかなりマイナーなオカルト教団だったんだろう。いつもならこういうとこでツイてるタイプなんだけどな。でも「俺の調査をやめさせる」つもりはないみたいで良かった。また一緒になれるまでやめるつもりはない。
それと心配はいらない、読書クラブは絶対に成功させる。実は、シュガーハウスのクリスティーナ先生のところへ行って、読書クラブへの招待チラシと20%オフクーポンを束にして渡したんだ! 読書クラブの会合で売る用に焼き菓子も作ろうかな。
愛してる。
アンディ
追記 壁に書いて宇宙に名前を付けるってのはいいアイデアだな! 朝、自分の居場所を把握するのにかなり使える。お前はいつも賢いよな。お前がいなかったらどうなってたことか。
レジのクーポン設定の変更手順は省略してもらえるか? 一日中格闘して諦めた。あの悪魔の機械をいつもお前に任せてるのは理由があるんだよ。
2000年1月19日
アンディへ
信じられないとは思う。僕たちみたいな奇妙な状況に対処する人たちのフォーラムの話は覚えてる? 今日そこで、「SCP財団」を名乗る組織の人に会ったんだ。彼らは異常なものから人々を守って、本物の変なものを見つけるためにあのフォーラムを監視してるらしい。これを秘密にしとくことに同意する限り、起きたことを直せるよう手伝いをするって言ってくれた。信頼していいと思うよ。
彼は明日君に会いたがってるらしいけど、君が自分で品定めしたいよね。初めての本物の手掛かりだと思う。本当に直してくれるといいけど。
ホリス
追記 B宇宙のオカルトコーナーの経費報告書がまだ完了してなかったよ。今は2倍やらなくちゃいけないから、忘れないで。それと、クーポンって何枚印刷したの? みんながまた割引で来ようものなら大変だよ。オグデン事件の二の舞にはならないようにね。
追追記 エージェントは儀式用キャンドルの残りについて聞いてきたから、君の考えは合ってて全部繋がってるみたいだね。ずいぶんとおかしな話だね。
2000年1月20日
コールドウェル博士に会って、書類にサインした。他に選択肢があったかどうか怪しいけど。従わなきゃキャンドルを返してくれるかどうかも疑わしい。
クーポンは読書クラブの本限定で、オカルトコーナーはだいぶニッチで人気もないから、心配はいらないと思う。ただ、先に相談せずにクーポンを配っちゃったのは申し訳ない。二人に影響するものを一方的に決めたのは軽率だった。
経費報告書は、明日起きたらお前のデスクに置いてあるはず。
アンディ
2000年1月21日
それは大した問題じゃないよ。Bにはまだキャンドルがあるけど、もしこれが原因なら、僕たちから遠い方がいい。これをやり遂げたいし、直すためならなんでもする。
これが全部終わったら、書店を経営危機にさらすことなく、省略したものは元に戻したい。それに、ずっと君の作業をカバーすることもできない。色々おかしな状況なのはわかってるけど、ビジネスの運営は止められるものじゃない。本当に、本当に君には力を入れてほしい。
それはそうと、今日は壊れた棚を修理して、配達員が荷物を雨ざらしで置いてかないように配送扉に屋根を取り付けた。一番大きいバスルームの排水もこれでひとまず大丈夫そう。明日はBで同じことをする。来週分の夕食は冷蔵庫にあるよ。
ホリス
2000年1月22日
ありがとう。
アンディ
補遺02:
2000/01/27、SCP-8348に配属された応用奇跡論チームは、SCP-8348の効果を無力化する最初の試みを行いました。
実験リーダー: ブルース・コールドウェル博士
主題: 奇跡論的に誘発された宇宙分岐停止の試み
概要: 奇跡論的効果を最初に引き起こした儀式用キャンドルの残骸は、デュラント家の居間の床に描かれたタイプ8バックラッシュ補正円の中心にある2枚の銀鏡の間に置かれた。作業に必要なEVEレベルを生成するため、エバーハート共振器が用意された。アンドリューとホリスは、それぞれの宇宙で部屋の反対側に立つように指示された。進行中の宇宙転送効果を利用するため、作業は交換イベントが発生する日の出の瞬間に完了するように設定された。
結果: 実験は意図された結果を達成できなかった。SCP-8348の効果は依然として継続している。
注: 作業中、アンドリューがA宇宙を去る前にホリスが出現した5。交換イベントは完了し、アンドリューはB宇宙に転移した。チームメンバーはホリスが高レベルの精神的苦痛を表明したことを記録した。
補遺03:
財団の監視により、無力化試行の失敗の後に更なる手紙が回収されました。
2000年1月28日
アンディ、上手くいかなくって本当にごめん。涙が止まらない、すぐ近くにいたのに! 見ることだってできたのに! 必ずこの埋め合わせはするって約束する。また一緒になれるなら何でもする。これを直すためにできる限りのことをするまで、止めることはない。
2000年1月29日
ホリスへ
あぁ、大丈夫。これは呪いを解くあくまで最初の試みだ。きっとなんとかしてくれる!
それはそうと、読書クラブは大盛況だ! 焼き菓子は売り切れたし、サンフランシスコの荷物もいくつか売れた! かなりの人数がクーポンを使ったが、最終的には元が取れるはず。
それから、倫理的に仕入れたパロサント6を買える地元の業者をやっと見つけた! そこから更にいくつか買った。お香とエンドキャップ用の小物数点。明日にはA宇宙に発送される予定だから、しっかり見張っといてくれ!
愛してる。
アンディ
2000年1月30日
アンディへ
ということで、今日君の荷物が届いた。なんで1000ドル分のお香が必要だと思ったのかはわからないけど、今月の予算が全部一気に吹っ飛んじゃった。恋愛小説コーナーの補充資金をどうするか考えないと。どこかから資金を引き出して今月中に本を配置しないと、客が来なくなる。予測可能な問題だった。こんな問題をまた起こすほど馬鹿じゃないと思ってたんだけど。
オカルトコーナーは、君がどれだけ望んでいようが、資金源としては頼りなさ過ぎる。そこに何度も何度もお金を投じようが、数字は変わらない。理解してくれてるものと思ってたけど、明らかに間違いだった。
これが続くようなら、今後のことについて話し合わなきゃならない。
ホリス
2000年1月31日
ほら、読書クラブのメンバーはお香みたいなもっと低予算の消耗品を欲してたし、俺もちょっと夢中になり過ぎたとは思うけど、予算オーバーが近いなんてお前も教えてくれなかったじゃないか。
あと、今後のことだって? 本気か? 雇用主みたいに俺に押し付けるんじゃなくて、パートナーらしく話してくれればお前の立てた予算にちゃんと従うんだが。
アンディ
2000年2月1日
この件はちゃんとパートナーとして話しただろ。君は何度も何度も、話はしっかり聞かないしお金について信用できないって示してきた。これ以上好き勝手させるわけにはいかない。
会社のクレジットカードは解約して、法人口座の情報も変更した。利益分配金はいつも通り君の個人口座に支払われる。今はB宇宙で同じことをしてる。
がっかりだよ。
ホリス
2000年2月2日
面白くない冗談だと言ってくれよ。だって本気なら、一体何から言ったらいいかわからない。
お前は一度だって俺の意見を重要に扱ってくれなかったじゃないか。耳も傾けないし、妥協もしない。俺の声をただの雑音みたいに。「俺のやり方でやらせる」とか言ったって、一回も最後まで聞いてくれなかっただろ。何回真剣に会話しても、お前が本当にこっちの言葉を聞いてくれてるって信頼できないんじゃ、やってみたところでどうなる? お前は自分が一番いいと思うことをして、俺が反対しても、自分のやりたいように押し切るだけじゃないか。
本屋みたいにさ。これは全部お前の夢だったんだよ、ホリス。俺はこんなの夢見てない。だから、寛大にもちゃっちい隅っこに居場所をを貸してくれてありがとう、それとお前が思ってた以上にスペースを占有しちゃってごめん。がっかりしたか? 俺の気持ちを想像してみろ。夫を見つけたと思ってたのに、そいつが見下してくる支配的な野郎になっちまった気持ちを。
ふざけんじゃねえよ。
アンディ
2000年2月3日
本屋はもう「僕の」夢って? 夜中にドライブしながら話したことは、夢見たことは、君にとってただの「いい感じの」言葉でしかなかったの? だってこれは僕のためじゃなかったんだ。骨を折って働いてきたのは、僕たちの夢だと思ってたからなんだ。こっちは君のためなら胸を引き裂いて心臓を差し出していいってのに、君はそっぽ向いて、心臓を質に入れて棒きれとか法外な石ころとかと交換しようとしてるみたいだ。
あるいは僕たちの人生を台無しにするクソキャンドルとね。どうもありがと。
ホリス
注: アンドリューはホリスの手紙への返信を停止しました。以下5通はいずれもホリスからのものです。
2000年2月5日
うん、今になって手紙をやめたか。全く別の宇宙から更に無視してくるつもり? 本当にこんなことしたいの?
2000年2月7日
わかった、本気というわけだね。こんな感じの生活に落ち着くしかないみたいだ。それでも日々、君の影響は目につく。乾燥機の中に洗濯物を放置してったり、ミキシングボウルをシンクの中に洗わずに置いてったり、僕の机から文房具を盗んで返さなかったり。これまで君にイラついてた要素全部。
今でも君の出したものの片づけをしてる。
2000年2月9日
やあ。片付けしてくれてありがとう。面白いね。君は、君のものが全部なくなってれば僕が喜ぶと思ってるみたいだけど、今は君のことがあんまり感じられないや。こういうちっちゃい目印が僕たちを繋いでいたことに気付かなかった。寂しいな。喪失感がすごい。
ほら、財務情報は全部オフィスに置いておいたよ。また全部完全に見れる。オカルトコーナーを拡張したい? 何か言ってよ。少しでも…… また一緒に話したいな。
2000年2月11日
アンディ、お願い。こんなことしないで。
2000年2月13日
アンディ、本当にごめん。
僕は本当にクソバカだった。世界が離れてるのに、本屋なんかのことで文句垂れちゃって。一体何考えてたんだろう。長い時間をかけて、この危機を解決してまた一緒に生きてこうと考えてたのに、僕がいてほしいと君に思ってもらえるような努力を完全に怠ってた。
君がこの本屋や僕たち一緒の人生について僕ほどに気にかけてないんじゃないかって、ずっと怖かった。そして僕の夢が君の夢じゃないって言われてそれが裏付けられて、恐怖に負けてしまったんだ。そして僕の中の醜い恐怖が火を噴きだして、全部君のせいにしてしまった。全部取り消せたらいいのに。あんなひどいことを言ったり、ずっと君を拒絶しなきゃよかったのに。本当の本当にごめん、アンディ。あまりにひどいことをした。
君と一緒にいたい。僕の過ちを償いたい。けど、ここまで事態を悪化させるべきじゃなかった。無視されることとか、拒絶されることにうんざりしてるってことは完璧に理解した。君はすごい人だってずっと思ってる、アンドリュー。君は情熱を秘めた、素晴らしい人だ。君がいれば何でもできるって思える。そしてこんなひどい扱いをしてきたことを、僕は謝罪しなければならない。
まだできたうちに、ちゃんと話を聞いとけばよかった。
心からの愛と哀しみを込めて。
ホリス
2000年2月14日
ホリスへ
もちろん本屋のことは気にかけてる。でも時々、お前が俺よりも本屋のことを気にしてるように感じちゃったんだ。恥ずかしいけど認める、あれが俺の夢じゃないって言ったのはただ怒りをぶつけてただけだったんだ。あんな残酷で不誠実なことを言って本当にごめん。俺が忘れっぽいのは知ってるけど、気にしてないからじゃないってことは断言する! ストレスに飲み込まれて、一瞬でもひどい現実から気を逸らせるようにこういうことをしちゃうってだけなんだ。
正直に言えば、お前に世話してもらうのに慣れてたんだと思う。何もかもを。いつでもお前がすぐそこにいるから、少しくらい気が抜けてても大丈夫。それを当然と思うのは不公平だよな。だから俺が見つけた業者に連絡して、購入した商品のほとんどを返品して、金の一部を恋愛棚の補充に使って、残りを会社の口座に戻しておいた。
返信を止めて申し訳なかった。見捨てられたとか、愛されてないとか感じさせるつもりは全くなかった。気持ちがいっぱいいっぱいになって、どう返事したらいいかわからなくて、しなかったんだ。でも、俺がお前を諦めたなんて二度と感じてもらいたくないから、頑張ってる。
どの宇宙だろうと、お前のことを許さないことなんてない。この…… これは、俺たちが閉じ込められてるものは、これまでぶつかった中で一番難しい試練で、でも俺はお前にうんざりなんてしてないし、これからもしない。一生解決できないとしても、永遠にこんなのが続くとしても、お前にこの身を捧げる。俺たち二人に。
心からの愛と献身を込めて。
お前のマフィン屋より
追記 キッチ ンでレモンポピーシードマフィンが待ってるぞ。
追追記 ジェシーはきっと俺たちを誇りに思ってくれるだろうな。
補遺04
2000/02/15、財団の監視システムは短時間、10.5キロキャスパーというEVE強度を測定し、これは通常の交換イベント中に記録されていた5.3キロキャスパーという上昇値を大幅に上回っていました。監視システムにより、アンドリューとホリスは共にA宇宙に存在することが確認されました。
コールドウェル博士のチームは、SCP-8348の状態を特定する調査を実行しました。奇跡術分析において、影響の完全な無力化が確認されました。デュラント両氏が、当初の儀式を終了させる何らかの条件を満たしたものと仮説が立てられています。
コールドウェル博士の勧告に基づき、サイト管理官ネイサン・リードはSCP-8348を"Neutralized"分類することを承認しました。アンドリューとホリスは財団機密保護のため、ミーム的に強制される秘密保持契約に同意しました。


