SCP-8385
評価: +14+x
blank.png

アイテム番号: SCP-8385

オブジェクトクラス: Neutralized

特別収容プロトコル: 財団は欧州連合法規則261/2004に則り1、EU航空便の未払いの補償請求を全て履行します。SCP-8385の顧客サービス回線は財団の法務部門に接続されます。

SCP-8385のミーム的な性質に鑑みて、それ以上の無力化後収容措置は不要だと見做されています。

説明: SCP-8385は、知性を有するドードー (Raphus cucullatus) によって2024年に設立・運営されていた、ドイツを拠点とする航空会社 “エアドードー” です。ベースライン現実に突然出現し、受容されたという点を除いて、SCP-8385の具体的な運営形態は未だ十分に解明されていません。SCP-8385は欧州連合 (EU) のシェンゲン圏内で旅客輸送を行っており、その航空便の大多数はケルン・ボン空港 (CGN) から出発していました。SCP-8385はこれまで一度もフライトを完了していません。

ウェブサイトによると、設立当初のSCP-8385の航空便は“軽飛行機5機と中型飛行機1機”から成っていました。

発見: SCP-8385は当時休暇旅行中だった上席研究員のグストー博士によって発見されました。搭乗ゲートに到着したグストー博士は、当該航空会社の異常性を認識し、SCP-8385従業員との最初の遭遇を携帯電話で撮影しました。

[記録開始]

グストー博士がカメラを弄り回した後、顧客サービスデスクに向ける。この時点では従業員は映っていない。グストー博士は鼻を鳴らし、カウンターに向かい、デスクの奥に腕を伸ばして、カウンターの裏側がカメラ視点に入るようにする。

グストー博士: ほーら、映ったぞ。生きた、呼吸しているドードーだ。なぜか空港のカウンターに居座ってる。

SCP-8385-1: お客様! お客様! どうか、さ、撮影はお控えください。私どもは許可を出しておりませんし、私のプライバシーが今まさに侵害されておりますし、お、お客様が現時点で私を撮影すると空港の保安体制がスクなわれます。

離れた場所から第三者の声が聞こえる。

身元不明女性: それを言うなら“損なわれる”でしょ。

SCP-8385-1: そうです。はい。損なわれます、その通りです。お客様は空港の保安体制を損なっておりますので、どうか撮影をお止めください。皆様にはこの飛行機にご搭乗いただきたいのですが、このまま撮影を続けられると先に進めません。あ、あなた様は全員の旅路を遅らせているのですよ、お客様!

グストー博士は携帯を一旦手元に戻し、カウンターの横から回り込んで、SCP-8385-1の全身がカメラに映るようにする。SCP-8385-1はピンストライプ柄の制服とパイロット帽を着用している。

グストー博士: 生憎だが撮影を止める気はない。私の他に誰か、絶滅した鳥がカウンターでうろちょろしてるのを奇妙だと感じている人はいないのか? しかもこいつは今、我々全員と会話しているんだぞ?

小さな咳払いに続いて、遠くから第三者の叫び声が上がる。

身元不明男性: あのさぁ、とっとと乗ってくれよ。みんな行くとこがあるんだから!

身元不明男性: そうだ、乗務員いじめは止めろ、ジジイ! もう20分近く搭乗が遅れてやがる。このままじゃ俺は乗継便に間に合わねえ。

グストー博士のカメラが、背後で順番待ちをしている群衆を軽く映す。カメラは軽く震えている。

グストー博士: 誰もおかしいと思わないのか? もう一度言うが、ドードーが -

身元不明男性: ワーオ、エアドードーはドードーが経営してるんだとよ。お次は何だ、コンドル航空を経営してるのはコンドルだとでも?

1人の男性が列の外に出て、両腕をしっかりと腰に当てた姿勢でグストー博士を睨みつける。

身元不明男性: 本当におかしいのが何か分かるか? 君が精神病の発作を起こしながらありとあらゆる人の旅程を遅らせていることだよ!

列から喝采やざわめきが聞こえ、グストー博士が滑走路に面した窓に走り寄る直前に、1人の乗客が拍手する。カメラはどこにも接続されていないように見える搭乗橋を映している。映像がズームインすると、1羽のドードーが所定の位置で羽ばたいているのが分かる。

グストー博士: みんな、窓の外を見ろ! 飛行機が見えるか? これでどこかに飛べると思うのか? 私は何も遅らせてやしない、誰もどこにも行けないんだからな。こいつはどこにも我々を連れてってくれないぞ。

群衆は一斉に左側へと移動し、すぐに元の位置に戻る。全員がお互いに首を伸ばし、グストー博士の向こう側をぼんやりと見つめている。

身元不明女性: 飛行機を見たことがないの? それとも飛ぶのが怖いの?

身元不明男性: あんた正気か!? 誰か、警備員を呼んでこのバカ野郎を…

SCP-8385-1: いいえ。いいえ、警備員を呼ぶ必要はございません、じょ、乗客の皆様、すぐに出発いたしましょう。不機嫌でない方、白衣を着てらっしゃらない方、私を怒鳴りつけていない方は今すぐ飛行機にご搭乗ください。遅延をお、お詫び申し上げます。変人は一般的にフライトに好意的な見解を抱いておりません。

群衆から含み笑いが聞こえる。

SCP-8385-1: いずれにせよ、エアドードーは皆さまの安全な旅を祈願しております!

グストー博士: いったいどうなってやがるんだ。

[記録終了]

グストー博士はこの後、財団に連絡して援助を求め、財団は航空機の運航停止と乗客の解散及び別便への振り分けを命じた。

補遺SCP-8385-A: エアドードーCEOとの面会

以下の映像は、グストー博士がSCP-8385-1に対して、経営者との面会を要請した後に撮影された。SCP-8385-1は当初ためらっていたが、繰り返し圧力を掛けたところ、最終的に従った。

[記録開始]

SCP-8385-1: えーっと、それで - ボスのオフィスはこの左側です。どうか、どうか私のためにお口添えをよろしくお願いします。では - 失礼いたします。

グストー博士はドアを2回ノックする。室内から声が聞こえる。

身元不明男性: クソッ、今度は誰だ。たった1日、ほんの束の間の平穏も許されねえのか。勘弁してくれよ、神さん。

ドアが開き、海軍の制服を着ている太ったドードーがグストー博士を見つめている様子が映る。

SCP-8385-2: うおっ! よう! 中に入れ、早く!

グストー博士が入室する。室内にはほとんど何もなく、床に書類が散らばっている。

グストー博士: どうか頼む、君がここの責任者だと言ってくれ。

SCP-8385-2: ああ、残念ながらその通り! 名前はクレイグ。少なくとも俺のデスクにきちんと置いてあった名札にはそう書いてあった。用件は何だ?

グストー博士: 助かった! 元々はパリに行きたかったんだが、もう無理そうだ。

SCP-8385-2: おや? どうして無理だなんて言う? 我が社の自慢の飛行機は、乗客を新たな高み、新たな地、ドードーが未だ足を踏み入れたことのない場所に連れて行く準備万端だ! それこそがエアドードーのモットーなんだ!

グストー博士: フライトはキャンセルされた。まだ聞いていないのか?

SCP-8385-2: キャンセル? キャンセルだと? あのバカども、うちの金が毎分どれだけ無駄になってるか分かってんのか。ちょっと待っててくれ。

SCP-8385-2はデスクの端からぶら下がっている電話機のボタンを嘴でつつく。1つのボタンが外れて飛び散り、他幾つものボタンと同じようにグストー博士の靴の横に落ちる。

SCP-8385-2: おいバカども、お前らは下でいったい何をやってんだ? 客が欠航になったって苦情をねじ込んできた。欠航だぞ! ああその通りだ、遅延でも振替便でもない、欠航だ! 今すぐ事情を教えないようならクビが飛ぶぞ。

通話相手の声はほとんど聞こえない。SCP-8385-2が一言も発しないうちに、次の言葉が聞こえてくる。SCP-8385-2は前後に歩き回っている。

SCP-8385-2: ふむ。うん。へぇ! そうか。成程。オーケイ、俺も愛してるよ。うん。チュッ、チュッ。

SCP-8385-2はそっと受話器を戻し、グストー博士を睨む。

SCP-8385-2: さて! 法務・ド事部を統括してる、俺の誰より愛しい妻に事情を聞いた。生憎だが、フライトは全て -

グストー博士: キャンセルされた。私がさっき言った通り。

SCP-8385-2: そうだ。残念ながら、どこぞのマヌケどもが空港に押しかけて、うちの飛行機の離陸を1機残らず差し止めやがったらしい。ほらよ、5ユーロやるから、ターミナルBの外の自販機で何か買って帰れ。シッシッ! 俺には仕事がある。近頃のドードーは自力で飛ぶこともできやしねえ。

グストー博士: 5ユーロ? それで誠意のつもりか? フライトを欠航にしておいてたったの5ユーロ? 私はパリに行くつもりだったんだぞ。年休は5日しか取れないんだ、鳥頭との口論に半日も費やして堪るか。

SCP-8385-2: おいおい。タダで5ユーロも貰えて、しかも口論だって無かっただろ! その金だって、この椅子のクッションの下に押し込んであったんだ。運が良かったな、ドードーコインじゃあんたの役に立たなかったろ?

グストー博士: ドードーコイン?

SCP-8385-2: そうとも、ドードーコイン! 俺たちはそれで家賃とかを払ってる。大した給料じゃないが、まあどうにかやり繰りしてるよ。じゃあ、悪いけどこれで失礼するぜ。欠航のせいで、俺にも他のみんなにも危機が迫ってるから、大急ぎで行かなきゃならん所があるんだ。

グストー博士: 家賃? 君はこのオフィスで生活してるように見えるがね。家賃を払 - いや、ドードーコインとやらの支払いを受け入れる人間がいるとは思えない。そもそも誰がドードーに部屋を貸すんだ?

SCP-8385-2: 重要じゃない。時は金なり。あばよっ。

SCP-8385-2は急ぎ足でグストー博士を通り過ぎ、背後でドアを勢いよく閉める。グストー博士はSCP-8385-2を追跡する。

[記録終了]

補遺SCP-8385-B: 押収された連絡票

関係者各位へ

我が社の最初のフライトが全て欠航になったとの噂を、既に社内で耳にしているかと思います。ご心配なく、紳士淑女ドードーの皆さん、これは些細なつまづきに過ぎません! この困難な時期を乗り越える間、従業員へのドードーコインの支給が停止されることをどうかご理解ください。しかし、私たちは皆さんの職務がこの航空会社によって掛け替えのないものであると信じており、感謝の証として、ターミナルBの東廊下に水飲み場を設置しました。2 無料で利用できますので、嘴を潤してから仕事を再開してください。

法務・ドードー事部 部長

リンダ・ウッズ

航空学のあらゆる既知の法則において、ドードーが飛べるはずはない。それでもとにかくエアドードーは飛んでいる!

補遺SCP-8385-C: SCP-8385-2の追跡

[記録開始]

グストー博士は喘ぎながら廊下の角を曲がり、SCP-8385-2が半開きのドアを通り抜けようとしているのを見つける。

グストー博士: と… 止まるんだ。もう、に… 逃げても無駄だぞ。

グストー博士は扉を大きく押し開き、SCP-8385-2は驚いて横転する。SCP-8385-2がバランスを取り戻す一方、カメラは様々な機材で埋め尽くされた部屋の中を走り回るドードーの群れを映している。一部のドードーは電話機を使って会話し、他の個体は嘴でモニター、キーボード、マウスを叩いている。1羽ずつ、ドードーは消失していき、後には何も残さない。

グストー博士: 何が起きてるっていうんだ?

SCP-8385-2: ラミレス、とっとと荷造りして出ろ。お前に払うコインは無い。ほら、帰れ帰れ!

SCP-8385-3: でも社長、僕には養わなきゃいけない子供がいるんです。昨日孵ったばっかりなんです。考え直してください。こんな -

SCP-8385-3はSCP-8385-2に走り寄るが、消失し、コーヒーカップが床に落ちて割れる。

SCP-8385-2: えい、クソッ。

グストー博士: ちょっと状況を説明してもらってもいいかな?

SCP-8385-2: そんな時間は無い。全く無い。時は金なり、そして世界を動かすのは金だ。今は乗客1人よりももっと重要な要件がある。ファイルをチェックさせてくれ。いや待てよ、あんたはファイルに載ってないんだからチェックする必要はないな。あんたは無関係者だ。さっさと出て行け。

グストー博士: 話を聞いてくれ、もし実際に何が起きているか教えてくれたら、我々は君を助けられるかもしれないし、君は私をパリまで運べるかもしれないだろう? その後はここに戻って好きなように走り回ればいいさ。

SCP-8385-2: 施しは受けねえよ、ご親切にどうも。俺たちはビジネスをしてるんだ、慈善事業じゃない。金を持ち帰って、それでピーナッツかなんか買って、次のフライトまで待つんだな。残念だが今はあんたの相手をしてる余裕が全く無い。ダメだ。そんな時間は無い。

グストー博士はSCP-8385-2を掴み、5ユーロ札を嘴に押し込む。

グストー博士: 金なんかどうだっていいんだよ。お前たちのビジネスがどういうものかを教えろ。どこをどう見ても正常な事業じゃないぞ。

SCP-8385-2: ヘッ、分かったよ。航空会社を知ったのは初めてか? バカでもわかるように説明してやるとだな、俺たちは飛行機を持ってて、人をどこかに飛ばして、人はそれで金を払って、俺たちはそれで生計を立てる。単純だろ。

グストー博士: 航空会社はな。ドードーはそれほどでもない。航空会社を経営するドードーときたら、いよいよ理解不能だ。お前たちはとっくに絶滅したんじゃないのか。

SCP-8385-2: ああ、絶滅したよ。その通り。そしてあんたが邪魔立てし続けるつもりなら、歴史は繰り返される運命だ。リンダ! 職員の調子はどうだ?

SCP-8385-4: ハニー、もう8羽程度しか残ってないわ。乗客たちが補償金をよこせってしつこくせっついてくるの。規模を縮小しなくちゃ。縮小!

SCP-8385-2: ケッ、恩知らずのカスどもめ。じゃあ、適切な削減をしておくれ、マイ・ラヴ。いや実際、飛行機さえありゃ、俺たち2羽でこの船を - もとい、航空会社を運営していける。

SCP-8385-4: 削減できそうなものはもう全部削減した。もう手一杯よ。どうやってこんなに大勢の補償金を支払えばいいのかしら。

SCP-8385-2: 売って売って売りまくれ、それがエアドードーのモットーだ… 搭乗券! もっと搭乗券をたくさん発行しろ! 新規のフライトを約束するんだ、新しい高度でも大陸間便でも国際便でも、客が入りそうなネタなら何だっていいぞ。さあ、急いで -

グストー博士: フライトか、まさに移行期にぴったりのキーワードだな。パリに行きたいんだが。

SCP-8385-2: おい、あんたまだいたのか? 忙しいのが分かんないかな? サービスカウンターに行けば誰かが対応してくれるさ、俺には構わないでくれよ。

SCP-8385-4: もうサービスカウンターなんて無いわよ、あなた。あなたと、あたしと、メンテナンスが必要な飛行機が1機だけ。

SCP-8385-2: あいつはついさっきメンテナンスしたばっかりだろ、今さら何が要るってんだ?

SCP-8385-4: えっとね、もっと法的な意味でのメンテナンスというか、お給料を上げてほしいんですってよ。

SCP-8385-2: まだ一度も飛んでないのに!? あの野郎、どういうつもりで昇給なんか求めてるんだ、俺は -

SCP-8385-4: あたしたち。

SCP-8385-2: もちろんだとも、お前。俺たちは身を粉にして会社を存続させようとしてるのに、今や俺の飛行機が船を沈めようとしてやがる。いや大丈夫だ、間違いを正して仕事を再開しよう。元通りに -

SCP-8385-2とSCP-8385-4は突然消失する。グストー博士は溜め息を吐き、SCP-8385-4が操作していたモニターを覗き込む。

グストー博士: 乗客の補償請求が75件… 対応したのはたった1件で、私に5ユーロ支払って終わりか。その5ユーロ札も今はクレイグが持っている。畜生、なんてサービスだ。

電話が鳴る。グストー博士が不承不承に受話器を取る。

グストー博士: こちらエアドードーです。本日はどのようなクソッたれフライトをお望みですか?

身元不明発呼者: ああ、良かった! やっと人間が電話に出てくれた。気が狂うかと思ったぜ。フライトが欠航になったんだが、補償 -

グストー博士: 順番にお待ちください。

グストー博士は受話器を本体に叩き付けるように戻す。即座に次の着信が鳴り始める。

[記録終了]

グストー博士は全ての着信を財団が管理する回線に転送し、同回線はその後21時間にわたって乗客の補償請求に対応した。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。