2010年2月10日、O5-1の寝室にSCP-843-JP-Jが出現したことで、財団はオブジェクトの存在を初めて認知しました。以下は監視カメラに収められた映像の書き起こしです。
[室内を徘徊するSCP-843-JP-J。O5-1は気付いていない]
[5分後、オブジェクトがO5-1を取り囲む。O5-1は依然として就寝中である]
SCP-843-JP-J: [不明瞭な呟き]
[O5-1の首が僅かに動く。声に気付いたとみられる]
SCP-843-JP-J: [不明瞭な呟き] ……す。
SCP-843-JP-J: [不明瞭な呟き] ……ます。
O5-1: んっ……ん?
[O5-1が起床、オブジェクトを視認する]
SCP-843-JP-J: [小声] あっ、おはよーございます。
SCP-843-JP-J: いつもお世話になっております、OBメディアです。
O5-1: なっ、アノマリーか?
SCP-843-JP-J: 突然ですみませんが……ここでギャグを一発、お願いします。
O5-1: [沈黙] ギャグ?
SCP-843-JP-J: えっと、ご存知ありませんかね?ジー・エー・ジー、そちらの俗社会では「短い言葉や仕草などで、滑稽な効果をもたらすもの」と定義されるやつです。寝起きの状態で、どこまで面白いギャグをやれるか試してるんですよ。
O5-1: ふん。アノマリーなぞに披露する訳が……ぐっ!?
[これ以降、O5-1は従順的な態度になる。精神影響の効果と推定]
O5-1: わ、分かった、やる……。
SCP-843-JP-J: ありがとうございます!では行きますよ。3、2、1…… [ハンドサイン]
O5-1: えー、コホン。雪の高山を駆けるオオツノジカの物真似。
[身振り手振りで芸を披露するO5-1。この間、オブジェクトは沈黙している]
O5-1: [息切れ] ど……どうだ?忘年会で大ウケしたやつだぞ。
SCP-843-JP-J: あの、準備運動は良いんで、そろそろ披露してもらいたいんですが。
O5-1: 何?さっき見せたではないか。
SCP-843-JP-J: えっ…!?私の陽電子頭脳では、意味を成さない動きと分析されてますが。
SCP-843-JP-J: ああっと、すみません。この番組、10の32乗個の宇宙で配信されておりまして、ローカルすぎるネタはギャグとして見られにくいんですよ。もう一発お願いできますか?
O5-1: で、では…… [熟考] 捕まったグレイ型生物実体の物真似。ハナセ、ワレワレハ[O5命令により省略]
SCP-843-JP-J: うーん。
追記: 監視映像はO5-1によって削除された。
SCP-843-JP-Jの消失後、「OBメディアのドキドキ!寝起きドッキリ」と題された動画が、ランダムな動画サイトにアップロードされます。内容はオブジェクトが起こしたイベントの一部始終を撮影したもので、冒頭ではターゲットの所属宇宙と簡単なプロフィールが紹介されます。投稿アカウントの身元を特定する試みは失敗に終わりました。動画右上には四角型のワイプが設けられていますが、ワイプに映る人物が総じて人間の形態を取っていないことは注目すべき点です。
SCP-843-JP-Jのターゲットには他の要注意団体の指導者・幹部も含まれています。これまでの所、SCP-843-JP-Jの反応が最も良かったターゲットはマナによる慈善財団代表の██ ███氏であり、SCP-843-JP-Jの大半が発作を起こし、██氏の自宅を半壊させるなどのトラブルを招きました。
インシデントログ843-JP-J-1: SCP-843-JP-Jの撮影手法は年々多様化しており、芸の披露を要求する以外にも、顔にキネトグリフを描く・鼻から寄生生物を流し込む・寝床ごと対立団体の本拠地に転移させる等、主体的かつ過激な行動を仕掛けるようになりました。そうした傾向の中、2019年10月1日分の配信において、一部の映像にモザイクが掛けられると共に、OBメディアによる謝罪文が掲載されました。
「OBメディアのドキドキ!寝起きドッキリ」に関するお詫び
この度は崇高なるカルキスト・イオン様(3572)のご逝去につきまして、心よりお詫びを申し上げます。事の次第としましては、イオン様の寝室に弊社スタッフが忍び込み、カメラに内蔵したプラズマ投射砲を放ち、強制的に起床させるという企画でした。しかし、ご高齢の身体にとって今回のドッキリは耐えられなかったようで、全細胞の粒子化により、ゲストの死亡時に行う蘇生処置が不可能となってしまいました。我々は+23.9°宇宙における人間種の脆弱さを改めて認識すると共に、小道具の製造委託先であるラプターテック=メカーネ興業に対しまして、現地世界により則した調整を施すよう、改善の申し入れを行いました。私どもとしましても、快適で愉快な番組を視聴者様に届けられるよう、引き続き努力する所存です。今後とも当番組を宜しくお願いいたします!
株式会社Okkana Bikkuriメディア 第163副取締役 [判読不能]
なお、動画には「ロバート・ブマロ」名義で500ptの宣伝ポイントが支払われていました。