by PlaguePJP

SCP-8590。
特別収容プロトコル: SCP-8590は現状未収容です。SCP-8590は現実歪曲者ですが、現状ではヴェールへの脅威を呈していません。恒久的な収容が達成されるまで、収容プロトコルの焦点はSCP-8590の出現と行動の追跡および文書化に当てられます。
説明: SCP-8590は現実歪曲能力を有する32歳男性です。この能力には、瞬間移動や物体生成、個人の記憶の操作、全知が含まれます。
SCP-8590はその非常に強力な能力を併用して、低賃金の単純労働に従事しています。
SCP-8590はアメリカ本土全域 (たいていは中西部) に現れます。SCP-8590の出現地点の選定基準は不明であり、パターンは存在しないと思われます。SCP-8590の身分証明書 (ネームタグや運転免許証など) には "デール" という名前のみが記載されています。SCP-8590の役職は不明な要因に基づいて急速に変化しますが、これは恐らく、単にSCP-8590が新しく仕事に就くことを決め、実際に就業しているだけである可能性が高いと考えられています。
補遺8590.1: 発見経緯および最初の交流
ウィスコンシン州での関連のない調査中、財団エージェントのサラ・パーマーズは現地のGoodwill1から領収書を受け取ろうとした際にSCP-8590と遭遇しました。
Goodwillの監視カメラ映像からの転写
«ログ開始»
(パーマーズが通路にいるSCP-8590に接近する。彼女は花瓶を持っている。)
パーマーズ: ちょっといい?
SCP-8590: はい。
パーマーズ: 店長さんはいらっしゃる? 先週に物を寄付したから、領収書を貰いに来たのだけれど。
SCP-8590: 今日はいません。
パーマーズ: ここにいるって言ってたのよ。いつ戻ってくるのかご存知ない?
SCP-8590: それを知るのは私の仕事内容ではありません。
パーマーズ: そう。……店長さんが戻ってきたら、私に電話するように伝えてもらえる?
SCP-8590: 店長とはあまり話したくはありません。
パーマーズ: あんまり役に立たない方ね。
SCP-8590: それはあなたの意見でしょう。
パーマーズ: あー…… 分かったわ。私、この花瓶を見てたの。値札が貼られてないけど、おいくらかしら?
SCP-8590: 持って行ってください。
パーマーズ: は?
SCP-8590: 仮にあなたがこの場所を私もろとも全焼させようと、私は気にしません。花瓶を持って行ってください。
パーマーズ: そう。本当にいいのね?
SCP-8590: 私は気にしません。
パーマーズ: 分かった。ありがとね?
(パーマーズが出口に向かう。)
SCP-8590: (大声で。) それを盗んでいったら、店長はもうあなたを店に入れてはくれませんよ。
(パーマーズが立ち止まり、SCP-8590の方に振り返る。)
パーマーズ: 私は何も盗もうとはしてないわ。
SCP-8590: 支払いをしていないでしょう。
パーマーズ: そっちが持ってっていいって言ったんじゃないの。
SCP-8590: あなたが盗むのを止めるつもりはありません。店長は嬉しく思わないだろうなと伝えているだけです。まああなたを出禁にするでしょうね。
パーマーズ: だったら払わせろってのよクソったれが!
SCP-8590: そんな言葉遣いで言う必要はありませんよ、奥さん。
(SCP-8590とエージェント・パーマーズがレジへ向かう。)
SCP-8590: 本日は以上ですか?
パーマーズ: このクソ — ええ。それだけよ。
(SCP-8590が花瓶を100回スキャンする。パーマーズはそれを見て明らかに我慢の限界を迎えている。)
SCP-8590: 占めて2千ドルです。
パーマーズ: 頭イカれてんの?
SCP-8590: いいえ。
パーマーズ: 2千ドル?
SCP-8590: はい。
パーマーズ: おかしいって思わなかった?
SCP-8590: 100回スキャンしましたよ。
パーマーズ: なんでそんな馬鹿な真似したわけ?
SCP-8590: 止めませんでしたよね。てっきり100個要るものかと。
パーマーズ: 100個も要らないっての。私が欲しいのは1個だけ。
SCP-8590: それならそう言うべきでしたね。
パーマーズ: 非常識にもほどがあんでしょうが!
SCP-8590: 奥さん、店から出ていってもらわないといけなくなりますよ。
パーマーズ: いえ、もう、もういい。心配しないで。どうせ出ていくから。
«ログ終了»
駐車場の監視カメラ映像からの転写
«ログ開始»
(エージェント・パーマーズの車が牽引されている。)
パーマーズ: ちょっとちょっとふざけんなって!
(パーマーズがレッカー車に詰め寄る。運転手はSCP-8590である。)
パーマーズ: どういうつもり? なにうちの車を牽引してるの、私が花瓶を買わなかったから?
SCP-8590 奥さん、そんなわけがないでしょう。あなたは障害者用スペースに二重駐車していました。
パーマーズ: 何を — そ…… そうなの? そうだったかも。勘弁してもらえない?
SCP-8590: 罰金が科されますね。
パーマーズ: いくら?
SCP-8590: 車は100台要りますか? それとも1台だけですか?
パーマーズ: 何言ってんの。要るのは私の車だけ。
SCP-8590: 2千ドルです。
パーマーズ: 本気で言ってる?
SCP-8590: 私は自分の職務を全うしているだけです。
パーマーズ: (呟いて) マジでふざけんなってのこの野郎。クソったれが。
(パーマーズがハンドバッグから現金2,000ドルを取り出し、SCP-8590に手渡す。)
SCP-8590: 袋は付けますか?
パーマーズ: えっ? ……まあ、はい?
SCP-8590: 分かりました。
(SCP-8590がレッカー車から降り、車と同サイズのレジ袋で車を包む。)
SCP-8590: 良い一日を。
«ログ終了»
パーマーズの駐在所の監視カメラ映像からの転写
«ログ開始»
(エージェント・パーマーズが家に到着する。彼女がキッチンまで歩き、巨大なレジ袋をシンク下に収納する。パーマーズが水たまりを踏み、上を見る。上階のシャワーがキッチンまで水漏れを起こしている。)
パーマーズ: こん畜生が!
(エージェント・パーマーズが配管工に電話を掛ける。)
[25分間の余分な映像を削除。]
(ドアベルが鳴る。エージェント・パーマーズがドアに接近する。SCP-8590が外に待っている。)
パーマーズ: 何でそうなんのよ! またあんたか!
SCP-8590: 水漏れの件で電話をいただきました。
パーマーズ: あんたいくつ仕事を掛け持ちしてるわけ?
SCP-8590: 私は家族を養おうと努めているだけです、奥さん。
パーマーズ: 自分が何をしてるか分かってる?
SCP-8590: 私は配管工です。
パーマーズ: 認定はちゃんと受けてるの?
SCP-8590: 私は配管工です。
パーマーズ: 何なの。何なのよこれ。……もう何だっていいわ。
(エージェント・パーマーズが水漏れの場所までSCP-8590を案内する。)
パーマーズ: ここよ。
SCP-8590: ふむ。興味深いですね。
パーマーズ: 何が?
SCP-8590: 水漏れしていることがです。
パーマーズ: 気が狂いそうになってきた。
(SCP-8590が水の漏れている天井を見る。)
SCP-8590: ふぅむ。そうか。なるほど。
パーマーズ: 何? 何がなるほどなの?
SCP-8590: ここに水漏れがあることについてです。もう既に言いましたよ。
(エージェント・パーマーズが頭を抱える。)
パーマーズ: それで — 直せるわけ?
SCP-8590: はい。これはいつも通りのパイプ交換作業に過ぎません。
パーマーズ: ああ、よかった。ありがと。
SCP-8590: 待ってください。
パーマーズ: どうかしたの?
SCP-8590: もう一つだけ。
パーマーズ: 何?
SCP-8590: パイプは100個要りますか? それとも1個だけですか?
«ログ終了»