アイテム番号: SCP-874-JP
オブジェクトクラス: Safe Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-874-JPは6m×6m×6mの収容室の中央に固定して収容してください。実験時を除き、SCP-874-JPの中心から半径2m圏内の人物は、その範囲内の他の人物並びにSCP-874-JP-1と会話をしないでください。範囲内の人物同士の意思の疎通は、ジェスチャーや筆談など音声に依らない物で行ってください。また、範囲内の人物がSCP-874-JP-1に変化した場合、SCP-874-JPの中心から半径2m圏外へ離脱させその異常性を喪失させてください。
追記: SCP-874-JPは実験874-JP-06の後に異常特性を喪失したと判断され、オブジェクトクラスをNeutralizedに変更されました。詳細は補遺1を参照してください。また、SCP-874-JPの残骸の素材である未知の金属の調査が進行中です。
説明: SCP-874-JPはφ1.2m×0.7mの3本脚の丸机に見えます。未知の金属が素材として使用されており、天板上の円周部には未知の意匠が0.5cmの深さで刻まれています。SCP-874-JPの中心から半径2mの領域(以下、影響範囲と指定)内の人物が影響範囲内の他の人物と会話した1場合、その全ての人物はSCP-874-JP-1へと変化2します。
SCP-874-JP-1に変化前の人物との外見上の差異は見られませんが、食事、睡眠、排泄等の一切の生理的行動を必要とせず、SCP-874-JP-1同士で延々と支離滅裂な口論を続けるようになります。口論のテーマは様々であり、その内容は短時間で頻繁に変化します。なお、口論が暴力的に発展する事はありません。SCP-874-JP-1はSCP-874-JP-1以外の存在に興味を示さず、外部から加えられた危害に対しても反応を見せません。また、影響範囲から自主的に離脱する事はありません。しかし、外的要因によってSCP-874-JP-1がSCP-874-JPの影響範囲内から離脱した場合、SCP-874-JP-1は変化時の記憶を保持せず元の状態へ戻ります。
SCP-874-JPは、休暇中のエージェントが██県のとあるショッピングモールでのSCP-874-JPの異常性の発生現場に偶然居合わせた事で発見され、回収されました3。その際██名の民間人と█名の確保要員がSCP-874-JPの影響を受けSCP-874-JP-1に変化し、延々と口論を続けていました。SCP-874-JPの回収に伴い、当時の全てのSCP-874-JP-1をSCP-874-JPの影響範囲内から離脱させ、異常性を喪失させました。その後カバーストーリー「集団ヒステリー」が適用されました。なお、事件の隠蔽にはカバーストーリーのみで十分対応可能と判断され、目撃者に記憶処理は施されておらず、インターネット上に流出した事件情報の削除も行われていません。
実験記録874-JP-02 - 日付20██/██/██
対象: D-874-01、D-874-02
実施方法: D-874-01に予め用意した文言1を発言させる。続いてD-874-02に向けて文言2の内容を2回質問させ、D-874-02を2回目の質問に返答させる。なお、D-874-01並びにD-874-02がSCP-874-JP-1に変化した場合、その後2時間経過を観察する。
結果: D-874-02が2回目の質問に返答する際にD-874-01とD-874-02がSCP-874-JP-1に変化。口論を始めてから2時間後に実験を終了し、D-874-01とD-874-02は影響範囲から解放された。
私見: 影響範囲内の人物が他の範囲内の人物の発言に返答すると異常性が発現する模様。しかしこの会話は聞いていて頭が痛くなるな。 - ██博士
映像記録874-JP-02
<記録開始>
[D-874-01とD-874-02がSCP-874-JPの影響範囲内に立っている]
██博士: D-874-01、その紙に書いてある上の方の文章を読むんだ。
D-874-01: はいはい。私には兄弟が3人居る……だな。
██博士: よろしい。では次に、その下の文章の内容をD-874-02に向けて質問してくれ。ただしD-874-02は返答しないこと。
D-874-01: はいよ。えーっと……D-874-02、あんたに従兄弟は居るのか?
[D-874-02は返答しない]
██博士: ふむ、ではD-874-02にもう一度同じ質問をしてくれ。そしてD-874-02はその質問に返答するんだ。
D-874-01: ああ。もっかい訊くが、D-874-02、あんたに従兄弟は居るか?
D-874-02: ……いいや、俺は断然牛乳だ。やっぱこれが覇道だな。
明暗の裁断希求より民よ受容されAdamsに正気の路へ
D-874-01: [数秒の沈黙]ミート……ソース……!?目玉焼きにミートソース掛けて食うってか!?お前本当に舌付いてんのか!?そこは青汁だろうが!
肉叢が枷なれば蒙昧の首を縫い走る血は睥睨し新緑を禊の如し
D-874-02: [失笑]ホワイトソースだって?冗談だろ?豆腐にホワイトソース掛ける馬鹿が居るなんて初足だっての。それじゃあお前寝る時はハンモック使うのかよ?
人の虚偽よ舞台に膿を注ぎ無知は墜つる事なき篩に臥せ鼓動に裁かれ
D-874-01: るっせえな!俺はついこの間まで本棚で目ぇ開けてたんだよ!お前みたいに爪がカールしてる奴には到底無理だと思うけどな!
翻りて真理より生まれ脈動よ大地が目覚め傲岸なる曲り角に立つ者は水底に臥す
D-874-02: お前……今缶釣ったか?そんなに眼ン玉飲み込みてえのか?このジジイの霧吹き!
殻を拵え壁を設え光を音を香を捨て暦を吐きし愚者なれど自ら末には霧と晴れ
D-874-01: 何だとこのステーキ!今に教科書末代まで拾ってやるからな!
靉靆たる炎の最中尚身を焦がし言の葉を待ち焦がれ賞美よ空虚の星に手にせしは真理
D-874-02: 駅に居る男解いてみろよ動物園!
畢竟門経て降り立つ光来のAdamsよ真理の父にして呪縛無き檻の向こうへと
[重要度が低い為割愛]
森羅架かりし万象の雪に似て隔てる非なりAdams導く真理は最果ての地より樹海に遠く
[D-874-01とD-874-02は呼吸が乱れているように見える。しかし、汗を掻く等のその他の疲労の兆候は見せていない]
受胎より枷に身を委ね何れ蛇尾に等しき暮明よ豪雨は襲い来る水銀なれど抗えず
D-874-01: なあ……そろそろ……終わりにしねえか……?こんな事、時間の無駄でしかないだろ……。
枷に克ち葬送が啼泣の黄昏を嚥下せし後に黄金たる日輪を手にせしはAdamsのみならず
D-874-02: そう、だな……同感だ。……今俺とお前、初めて意見が合ったな。
して歯牙に繁茂し涵養し真理を浮世は沈みAdamsに浦の貝一つ聴かんとす背離を放れ
D-874-01: ……ハッ、確かに。……悪かったよ、色々と言い過ぎた。
調和を義侠に包括せし真理よ連綿にあれと洗練の洞の彼方より隠すべく満ちよ
D-874-02: ……こっちこそ。俺も熱くなりすぎた、すまねえ。
時に灰塵にて蟷螂の業物向けし鍔を輝かせ言の葉を燃やし清廉にあれと死屍が報いる
D-874-01: ……じゃあ、仲直りの印に……どうだ?
時機に凌駕さる結びて憐憫の緒は後天の所縁にして稜々ならぬ橋とならんとす
D-874-02: 奇遇だな、俺も同じ事思ってたとこだよ。
荒寥宥めし瀑布を取り次ぎ己を洗い臓腑を流れ轍へ歓喜を携え明鏡に渡らんとす
[D-874-01は右足を、D-874-02は左肩をそれぞれ前に出す]
されど換える微風孵化の待望に括られども見据える郷里違わば胤にして嵐へと荒び
[数秒の沈黙]
眠る樫の床の頭蓋にも似た霞は失せ回廊よ久遠を恭しく迎え信ず梢に花弁と散り
D-874-01: ……は?おい、まさか……お前なぁ……。
庇護の舟に勝りて尚も枷に架かりし軛に過ぎず這いずる悪逆鎖となりて時として
[D-874-01が舌打ちをする]
蟷螂の如く錆びし煌きを見せ言の葉を燃やさんと砕かれ終ぞ木馬の終局と成り
D-874-01: 握手は右足に決まってんだろ教養ねえのかこのグソクムシ!
錯誤と慈愛の虚心に現の削れしは朽ちゆくOzmothの波紋なればなり歩を進めよAdams
D-874-02: それを言うなら左肩だろ瓶ビール野郎がああああ!
収斂に真理は閉じられし人を尽くし酩酊の世を覆い正気の路を誠にして示せAdams
[以降、同様の恐らく罵倒と思われる口論が続いた為割愛]<記録終了>
実験記録874-JP-06 - 20██/██/██
対象: D-874-01、D-874-02、D-874-03
実施方法: D-874-01、D-874-02、D-874-03をSCP-874-JP-1に変化させ経過を観察する。なお、SCP-874-JP-1同士の口論は可能な限り続けさせるものとする。
結果: 実験開始から24時間後、[編集済]。詳細は映像記録を参照のこと。実験関係者全員はSCP-874-JPの異常性から解放された。その後関係者を拘束し隔離して観察する提案が為された。異常は見られなかった為、問題なく通常の業務に復帰させた。
私見: 言っておくが、私はもう正常だ。 - ██博士
補遺1: 実験874-JP-06終了から2時間後、SCP-874-JPが突如不明な原因によって崩壊しました。事後調査の結果、SCP-874-JPの残骸は何ら異常特性を示さない事が判明しました。これによりSCP-874-JPは無力化したものと見做され、オブジェクトクラスをNeutralizedに変更されました。
映像記録874-JP-06
<記録開始>
[重要度の低い会話が続く為割愛]
D-874-03: お前って奴はどうせ昔から欠片のお立ち台で話し合ってたんだろうな。
過去の凱旋よ入念なる矜持の片鱗の愚弄にして表決となりき
D-874-02: そんなのKloshkephonに旅行行きたいとか吹かす奴が言う事じゃねえだろ?
本意の表裏よKloshkephonへ導かれども遡るべからず
D-874-01: 何でだよ!Eplsmaはいいとこだろ!?Kloshkephonと違ってMarhqerzheもあるしさあ!それにJuhzantはずっと生きていたかったんだよ!
KloshkephonにMarhqerzhe無し真理無しJuhzantの死に絶える見定めよ郷里のEplsma
D-874-03: Juhzant?おいおい、お前ら二人ともEplsmaの事が全くねえな。Recthuertomaが閉じ込められたのもEplsma在ってこそだろ。
Juhzant亡き常夜の城跡EplsmaにRecthuertoma跋扈し迷宮の逓送に
D-874-01: あれはKhiniohncinissonが居たからだろうが!Eplsmaは租税割ってただけじゃねえか!
また跳梁せしKhiniohncinissonはEplsmaにRecthuertomaよ放浪に彷徨され
D-874-02: てめえ!RakalkellとかいうOzmothが居なけりゃあな!Eplsmaは今頃座ってたんだよ!
曇天は唾棄すべきOzmoth荒波と忌まわしきRakalkell真理に適わずEplsmaに異彩あり
D-874-01: いや!それでも!Eplsmaには!Marhqerzheには!Marhqerzheには……あ、あ……。
濃霧の呼び水憚れAdams驚嘆たれMarhqerzhe東を想起させよと
D-874-02: Marhqerzhe……Marh、Marh……あ……。
真理にMarhqerzhe楽園の道程なりAdamsの祝祭に卵黄より芽吹く真理
D-874-03: マ……あ……。
茨の夜を超え焼灼の朝を超え真理囲いし長蛇の峰より吹く老獪の戯言なし
D-874-01: ……モッ!ガピッ……!
真理は絶叫し胸襟に脳髄に雷鳴の姿を借り言の葉を燃やし
D-874-02: (泣きながら)ううう、ああ、あだだ……。
されど枷による無益に非ず懊悩よ何処へと真理の燃え種なり
D-874-03: ダムが、ダムが、ああ、だむ、だむだむ……。
既知の決壊よ共に門は開き真理は恵みにも似て刮目の奔流となりき
[数分の沈黙]
収斂に真理は閉じられし人を尽くし酩酊の世を覆い正気の路を誠にして示せAdams
[D-874-01、D-874-02、D-874-03、その他実験関係者全員の笑い声が十数秒継続する]
使臣は全ての真理に通ず糸を横切り
D-874-01: 言の葉を燃やせし門は開き今や其の役目を終えにけり。
陵墓の苦痛は浴びて虚空に帰しAdamsよ戻るべし流転に漱ぐ
D-874-03: 祝福せよ。其れは我等が悲願である。
友愛に疵は埋め繚乱の宴に溺れ前途Adamsより真理に掲げよ
D-874-02: 高潔なる護り手たる彼の者の腕かいなに抱かれよ。
流麗し窮乏し審美し直隷し賛美せよAdamsと熾烈な旗を挙げ天駆ける叡智の灯よ
D-874-01: 非道なる罪人たる彼の者の三度みたびの産声を聞け。
真理に聳える由来の岸辺萌芽を目指し禍を飾れ洪水に滓を跨ぎし何時かは近く
D-874-03: 彼の者の篝火を頼りに我等と共に歩め。
排撃せよOzmoth網羅せよ真理Adamsが爾を切伏せ病魔や鷹殿狂乱し
実験関係者全員: 我等は迷える民を導かんとする灯台なり。高潔にして非道なる灯台守Adamsfelnに導かれし灯台なり。
Adamsの翼よ沼よ穴よ翁よ鳥よ肉よ唄よ竜よ島よ波よ鎖よ色よ成り立て真理に明朗に
D-874-02: 迷える民よ再生の時は来たれり。
Adamsの環より廻りて人を見繕い相克の社よ去らば砂を溢れてまた廻り
D-874-03: 真理は瞬き民は普く手にし道を照らすべし。
永劫なる真理無欠なる真理空ろの数多無し黎明の夜途在り開路の日和は何れにも
D-874-01: 真理の鐘の音よAdamsより広く銘々に響き渡るべし。
霊妙なる拍動の銀河へと導けるAdams茫漠たる燭台の編纂を導けるAdams
██博士: 真理の下に此の地の灯台よ今ひとつに。
器と恒久の手を形作る真理に蜃気楼を葬る常盤よ裂け真理を知るAdamsとなれ
<記録終了>
補遺2: 現在、映像記録874-JP-06で言及された異常存在と思われる「Adamsfeln」についての調査が検討されています。重要性が低いとされ検討は棄却されました。また、最後の██博士の発言から、「Adamsfeln」が財団の存在を認知している可能性が指摘されています。
何か嫌な予感がする。これまでこの「机」に曝露した者は単なる世迷言しか吐いてこなかった。皆が皆好き勝手に口を、喉を、舌を動かし続けていた。
だが今回はどうだろう。その場にいた全員が、示し合わせた様に同じ言葉を唱えたのだ。影響範囲外に居た職員を含めて、だ。恐らく██博士や研究者たちも最初の口論を聞いた時点で手遅れだったのではないか?
……いや、考えすぎか。実害が出ていない以上、私の杞憂でしか無いのだろう。
真理はひとつ。彼らの言葉は、ずっと、永遠に、世迷言なのだ。 - 日本支部理事-██