SCP-8775
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SCP-8775

アイテム番号: SCP-8775

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-8775は引き続き、リー・ロイ・カールソン研究員の所有下に置かれる予定です。演奏もしくは練習時に、カールソン研究員は視た記憶の迅速かつ正確な文書化を円滑に進めるために、終始録音機器を携帯しなければなりません。これまで発見された記憶を引き続き追体験可能である、更なる記憶を発見可能である、そして存在を掴めているものの目下追体験不可能な記憶解放に十分な腕前を持っている、以上の前提条件を確実に満たせるように、カールソン研究員は毎就業日の最低2時間をSCP-8775のギター練習に充てなければなりません。

説明: SCP-8775は1976年製の黒と白のエレクトリック・ギター、フェンダー・ストラトキャスターです。ギター本体の底の縁には1本の大きな引っ掻き傷が走っていますが、それ以外では普通の外見をしています。

SCP-8775は元々武装生物学的収容エリア-14所属のミーム研究者、コンラッド・スコット博士が所有していました。スコット博士が近親者不在の中で失踪した後、トーマス・マクレーン管理官が2009年に同オブジェクトの所有者となりました。翌年、彼は継息子のリー・ロイ・カールソン研究員にこの品をプレゼントしました。カールソン研究員が初めてこのギターを演奏した際に、オブジェクトの異常性質を発見しました。

SCP-8775で特定の楽曲を演奏すると、奏者はスコット博士が同じ楽曲を演奏した時の記憶を追体験します。この効果が発生する正確な基準は分かっていませんが、より完璧に、かつ正確に楽曲を演奏した時に活性化が起きやすいように思われます。記憶との関連性を有する楽曲の演奏を試みた際に完全な活性化が起きなかった場合であっても、奏者は強烈な既視感を覚えます。記憶の持続時間とは無関係に、追体験はほぼ瞬間的なもので一貫しています。元になった記憶の大半はスコット博士の高校の最終学年後期と大学の前期の時期に該当する1976年に起きたものです。

理由は不明ながら、この効果を誘発可能なのはカールソン研究員に限られています。スコット博士のレコード・コレクションの構成品を手掛かりにした1970年代のロック音楽での夥しい試行錯誤を通じ、彼はこれまでに、明瞭な記憶を作り出せる11の楽曲の特定にどうにか成功しました。彼はまた、ラッシュの『西暦2112年 序曲』とレインボーの『銀嶺の覇者』も関連する記憶を発生させると報告していますが、それらの記憶を追体験できるほどの腕前での演奏は、どちらの曲でも実現出来ていません。

補遺1: 楽曲及び関連する記憶の一覧

以下は記憶の内容と判明している限りのスコット博士の経歴を踏まえ、年代順に並べてあります。記憶の説明はカールソン研究員による振り返りを要約したものですが、カールソン研究員の音声記録の適切な直接引用には更なる背景情報が含まれています。

楽曲 関連する記憶 注記
ディープ・パープル『スモーク・オン・ザ・ウォーター スコットはとある楽器店にいます。彼は1本のギターとして店頭に並んでいたSCP-8775を手に取り、最初の主要三和音を鳴らした後、店員の怒鳴り声で演奏を止めます。店員はカウンター上の「『スモーク・オン・ザ・ウォーター』、『天国への階段』演奏禁止」と書かれた貼り紙を指差します。 「そうだな。勿論これが彼が初めて演奏した楽曲だ。私もそうだった。」
シン・リジィ『ヤツらは町へ スコットは60年代と70年代の様々なハードロックやヘヴィメタルのバンドのポスターやグッズが飾られている寝室で練習しています。スコットの父が部屋に押しかけ、サッカー練習をサボった件で彼を怒鳴ります。 「これら記憶は明らかな嘘を含んでいたとしても、多少は受け入れられる夢みたいな代物だ。あの人物は間違いなくスコット博士の父君だが、それでもあの時点では、私自身の父親と認識していた。不快感を…覚えたよ。」
ブラック・サバス『アイアン・マン スコットは今回も寝室で練習しています。演奏を終えると、彼の母親がドアをノックして、入室します。彼女はギターの演奏を称賛しますが、次の微分積分のテストでAを獲らなければ、ギターを売ってしまうつもりでいると注意を促します。 「母親とは上手くやっていけたんじゃないかな。」
ピーター・フランプトン『君を求めて スコットは大きな邸宅の真正面に佇み、即席の自動車用バッテリーに小型アンプを繋いでこの楽曲を演奏しています。スコットの目の前の芝生には花が並べられており、"プロム?1"と読めます。黒髪の少女が2階の開いた窓の前に立っています。彼女は顔を赤らめ、堪えるような笑みを浮かべています。 「ギタリストの大半がそうだと思うが、今回の記憶のように夢物語じみたロマンチックな離れ業が自分にもできるのではという希望を胸に、私はこの楽器をまず手に取ったんだ。コンラッドはその偉業を成し遂げたんだ。」
AC/DC『ロックンロール・シンガー スコットは自宅のガレージにて、ベーシストとドラマーの2人の他のティーンエイジャーと一緒に演奏しています。彼は友人達と盛り上がる中で、歌詞の「給料を弾んでくれるらしいなI hear it pays well」を「まさしくこのテイズウェル2right here in Tazewell」に言い替えています。 「"ぶっ飛びイカス野郎radical"のような感じで、友人は彼を"ラッドrad"と呼んでいた。多分な。"コニー"呼ばわりされる時もあったが、ブチギレられるだけだった。」
キッス『ロックンロール・オールナイト スコットはホームパーティーの最中、地面を掘って造られているプール近傍にて、先程の記憶のバンド仲間と一緒に演奏しています。判別不可能なティーンエイジャー1人が泥酔の余り、ドラマーと口論を始めると、演奏はすぐに終了します。 「今回の記憶には…違和感を覚えてしまう。」
ジューダス・プリースト『生け贄 スコットは自宅のガレージに腰を下ろし、無言で演奏しています。ドラムセットも含めて、前回の記憶に出てきていた機材の大半がガレージ内から無くなっています。 「終わった後になって初めて気づいたが、この記憶を追体験している間泣いていた。どうしてなのか全く分からない。」
UFO『エレクトリック・フェイズ スコットは大学の寮舎のベッドに腰を下ろし、練習しています。ギターのソロの箇所を真似すべく、(『ライツ・アウト』の)レコードを何度も再生し続けていましたが、上手くいっていません。ルームメイトが入って来ると、スコットは演奏を止めます。 「演奏を止めろだの何だの、彼は言ってこなかった。なんというか…恥ずかしかったのか?」
ブルー・オイスター・カルト『ドント・フィア・ザ・リーパー 寮舎にて、1人のブロンドの女性が慇懃ながらも不満気な笑みを浮かべて見ている中、スコットはこの楽曲を完奏しようと試みています。彼は音を間違え続け、ソロパートまで演奏するのを断念します。彼は顔を赤らめ、何度も謝罪の言葉を口にします。 「うぅむ。実体験だから身に染みるな。」
ブルー・チアー『サマータイム・ブルース スコットは小さなアパートの一室内の長椅子に腰を下ろしています。彼の周囲には開梱作業途中の引っ越し用荷物が散乱しています。彼は約20分間練習しますが、その後苛立ちが募って演奏を止めます。 「彼はあそこまで自分に厳しくなるべきじゃなかったよ。」
レッド・ツェッペリン『天国への階段 前回の記憶よりも年を重ねたスコットが上記のアパートの一室に座っています。今回、室内は暗く、物が散乱しています。彼は必死になって、ほぼ最後まで楽曲を演奏しようとしていますが、ソロパートを忘れてしまっているように見えます。彼は数分に渡って思い出そうと試みるも失敗に終わります。とうとう、彼は苛立ちの余り叫び声を上げて、ギターを放り投げてしまいます。ギターはコーヒーテーブルの縁に不快な音を立てながら、ぶつかります。 なし。
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