SCP-8833
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アイテム番号: 8833
レベル3
収容クラス:
safe
副次クラス:
{$secondary-class}
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
caution

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アメリカ合衆国インディアナ州エフィラ、カーク・ロンウッド高等学校。1976年2月3日撮影。


配属サイト サイト管理官 研究責任者 担当機動部隊
サイト-81 J・カーライル・アクタス S・D・ロック博士 E-13 “マニフェスト・ディスティニー”

特別収容プロトコル: SCP-8833はサイト-81の安全な異常物品収容ロッカーに保管されています。SCP-8833の利用は、SCP-8833研究チームのメンバーと、承認を受けた実験担当者のみに制限されます。

SCP-8833の研究は進行中であり、他の既存の異常現象との関連性は現在のところ不明です。財団ウェブクローラがウェブトラフィックを監視し、1976年春季に発生した超常現象についての情報、並びにカーク・ロンウッド高校やインディアナ州エフィラの町に関する情報を追跡します。

説明: SCP-8833は1976年版のカーク・ロンウッド高等学校年鑑であり、かつては同校の生徒 キャロリン・カークの所持品でした。この年鑑には出版年代相応の摩耗や使用跡が見られます。SCP-8833の表紙には3本の矢印が描かれており、ページの中央付近に“Reflections of '76”、右下隅に“KLHS / 1976”の文字があります。裏表紙の内側に次のような献辞があります。

“ 最高の一年だったよね? 同窓会が待ちきれないなんて心配しないで、きっとすぐにまた会えるんだから。目一杯の愛を込めて、君の親友一同より。”

前所有者のファーストネームが、彼女自身の筆跡で、裏表紙の右下隅に書き込まれています。

SCP-8833を読んだ人物は例外なく、記述されている人物や出来事への共感を示し、最終的には自らの体験と同一視し始めます。これは普遍的な効果らしく、1976年当時存命ではなかった人物に対しても作用の強弱が生じることはありません。SCP-8833を長期間読んだ人物は必然的に、SCP-8833で記述された人物や出来事に関する具体的な情報を提示できるようになります - これらの情報自体は年鑑に含まれていませんが、その詳細はSCP-8833曝露者間で一貫しています。

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SCP-8833。

長期間が経過すると、SCP-8833曝露者は自らの体験から解離し、1976年度のカーク・ロンウッド高校の生徒であると自称し始めます。複数のSCP-8833曝露者が接触した場合、彼らは少なくとも互いに気軽な親近感を示しますが、相手の具体的な情報を思い出すことはできません。ほぼ全ての事例で、このような状況下に置かれた曝露者たちは、以前に相手との面識があったという確信を抱いていますが、更に追及されると苛立ちを募らせ、記憶の欠落は1976年の春からかなりの時間が経過したためだと説明します。

SCP-8833曝露者は最初のうち、年鑑への懐古の念を伴なう愛着や、読み続ける意欲を示しますが、やがて彼らのSCP-8833に対する言動は著しく変化します。彼らはSCP-8833への全般的な恐怖心を表明し始め、更なる曝露を促す財団職員のあらゆる試みに抵抗するようになります。この言動についての詳細は下記の補遺8833.3を参照してください。

補遺8833.1: 背景情報と発見

SCP-8833はアメリカ合衆国インディアナ州エフィラ、カーク・ロンウッド高等学校の焼け跡から回収された少数の物品の1つです。火災発生当時、同校には322人の生徒と36人の教職員が在籍していました。カーク・ロンウッド高校の焼失後、残りの生徒たちはインディアナ州ブラジルにある、より大規模なブラジル高校へと編入され、後年にはブラジル高校も同じ街にあるノースビュー高校と統合されました。

カーク・ロンウッド高校の火災は、同校の最上級生62名 - その多くは当時、インディアナ州内の別な場所へ校外学習に出かけていた - のほぼ全員が失踪したのと同時に発生しました。火災後に複数の生徒が行方不明になっていると判明した後、いずれの事件も、インディアナ州警察及び連邦捜査局特別犯罪部1による捜査の対象となりました。火災と生徒たちの失踪に至るまでの経緯の一部は、エフィラ警察署長が関与した隠蔽工作の一環として揉み消されました - 最終的に放火犯と特定されたのは署長の息子でした。

完全な報告書は、財団記録・情報保安管理局 (RAISA) に請求すれば閲覧可能です。FBIのダニエル・エイカリー捜査官が提出した報告書に掲載された事件の概要は、次の通りです。

ケース #110449


1976年5月27日の夜、コッター・パーソンズ (18歳、エフィラ警察署長 カル・パーソンズの末息子) 、デール・ブリッグス (17歳) 、サム・“ウォーリー”・ウォーラーマン (17歳) の3名は、車でエフィラに入り、郡道100E沿いのクイックストップ・ガソリンスタンドに立ち寄って、ガソリンを1缶分補充し、マールボロ・レッド100s銘柄のタバコ1パックと、卵3ダースを購入した。その後、3名はカーク・ロンウッド高校へ向かった。当時、校舎裏手の競技場では、翌日の卒業式に向けて準備が進められていた。

3名の目的は、競技場の草むらに下品な文言を焼き付け、留年したコッター・パーソンズが出席できない1976年度卒業式を妨害することだったと推測される。3名は学校が無人であることを期待していたため、駐車場に1台の車があるのを見て驚いた。

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キャロリン・カーク (写真右) と、カーク・ロンウッド高校火災後に失踪した最上級生の1人 ディーン・スミス。

ウォーラーマン氏の証言によると、この車はカーク・ロンウッド高校の最上級生 キャロリン・カークのものだった。パーソンズ家がしばしば出入りしていた近所の狩猟小屋での飲酒に戻りたかったパーソンズ氏は、他2名の懸念を無視してガソリンを撒き始め、その後点火した。ブリッグス氏の証言によると、彼はこの時点で、数冊の本を持ったカーク女史が校舎を出て車へ向かっているのに気付いた。目撃・通報されることを恐れた3名はカーク女史を追いかけ、カーク女史は校舎内に逃げ戻った。

次の行動を思案していた3名は、パーソンズ氏が放った炎が、燃料缶に残っていたガソリン、風、先月からの異常乾燥によって制御不能な規模に拡大していることに気付かなかった。炎は学校の美術棟と体育館の近くまで広がり、やがて体育館の羽目板に延焼した。ウォーラーマン氏の証言によると、彼は一時、校舎内に駆け込んでカーク女史を探そうと試みたが、内部に煙が充満し始めたために逃走し、ブリッグス氏とパーソンズ氏を追って近隣の森へ向かった。

エフィラ消防隊は、ブリッグス氏が現場を離れたと証言した約12分後の現地時間10:19 PMに火災の通報を受けた。到着した消防車#4及び#3は、校舎全体が炎に包み込まれているのを発見し、この火災は翌朝6:23 AMまで続いた。

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エフィラ警察署長 カル・パーソンズ。UIUアーカイブより引用。写真が劣化している原因は不明。

カル・パーソンズ警察署長は当初、火災の原因は屋外物置小屋の電気系統の故障だと推測していたが、更なる調査の結果、最も明確な発火点は校舎南側の物置小屋ではなく、東側の競技場だと確認された。また、パーソンズ署長とグレッグ・チェンバーズ警部補は、コッター・パーソンズと火災を結びつける証拠を隠蔽していたことが後に判明した - 具体的には、3名がパーソンズ宅と高校の間にいたことを示し、購入品に関する情報が含まれていたクイックストップ店員 アーニー・マックの証言と、消防隊が現場に到着する数分前に、パーソンズの車が隣接する道路を猛スピードで走り去るのを目撃した地元中学生3名の証言である。

火災の調査は、現在も行方不明であるキャロリン・カークの捜索によって更に妨げられた。カーク女史の家族は、彼女がカーク・ロンウッド高校の図書室のタイプライターを使って、パデュー大学への出願書類を仕上げるために出かけたことを裏付けた。彼女の車が学校の駐車場で発見されたため、捜査官たちは火災当時、彼女が校舎内にいたと仮定したが、焼け跡から遺体は発見されなかった。

その後、法医学捜査チームの一員が、カル・パーソンズの自宅で、キャロリン・カークの書籍用カバンの焼け焦げた残骸2、並びにカーク・ロンウッド高校跡地から回収された他数点の物品を発見した。特別犯罪部の出張所による介入を促したのは、これらの物品の発見と、警察署長への事情聴取の異様な内容であった。

映像書き起こし


エイカリー: パーソンズさん、私はエイカリー刑事、こちらはジョーンズ刑事です。我々はどちらもFBIから参りました。カーク・ロンウッド高校の火災と、その調査について、幾つかお伺いしたいことがあります。

パーソンズ: 火災。ああ、成程。あの事件か。

ジョーンズ: あなたが火災の原因だと考えているものについて、詳しく教えていただけますか?

パーソンズ: 校舎の近くに物置小屋がある。多分、配線の不具合、電気系統の問題、物置に保管されていたガソリンのせいだろう。全く、事故が起こるのは時間の問題だったわけだ。

ジョーンズ: そう確信していますか?

パーソンズ: 勿論。いいかね、君たち。これが私の最初の捜査だとでも思うか? ここだけの話、どうしてFBIがわざわざ君たちを派遣したか分からんよ。この事件は実に単純明快だ。

エイカリー: では一歩引いて考えてみましょう。火災の夜、校舎が全焼した後に現場に入れたのは誰ですか?

パーソンズ: 私と署員たちだけだよ、当然だろう。いや、消防署のベイカー署長もかな。しかし、現場で長時間過ごしたのはうちの捜査官だけだ。

エイカリー: そしてあなた、そうですね?

パーソンズ: まぁ、そうだな。私は捜査官たちを監督していた。

ジョーンズ: 我々の連絡先の1人から、あなたは集まった証拠品を全てご自分で取り扱っていると聞いていますが、その通りですか?

パーソンズ: 捜査の一環として、という意味かね? ああ、勿論。私は何か非難されているのか?

エイカリー: 我々はあなたや誰かを非難してはいません、パーソンズさん。我々はこの混乱の真相を究明しに来ただけです。さて、あなたは証拠品を入手し、それらは現在全て警察署に保管されているのですね?

パーソンズ: そうだろうな。

エイカリー: 証拠品ロッカーに?

パーソンズ: 証拠品は普通そこに保管する。

エイカリー: ええ、ごもっともな話です。ただですね、あなたにも私の困惑をどうか理解していただきたい。今朝がた、ジョーンズ捜査官が証拠品について訊ねようと警察署に出向いた時、我々が聞かされた話は少し違いました。署の証拠品ロッカーは満杯で、回収した物品は全てブラジル市の警察署に発送したので、そちらのロッカーに保管されているはずだという話でした。

パーソンズ: 明らかに間違った状況が伝わっている。私たちは-

ジョーンズ: 署員さんの話は非常に明白でしたよ、パーソンズさん、だからブラジル警察署に同じ問い合わせをした時には余計混乱させられました。彼らもやはり非常に明白に、証拠品はまだエフィラにあるから見ていないと言いました。そこで私が戻ってくると突然、最初に聞いていた通り、証拠品はブラジルに発送されてなどいないことになっていた - 今は第三者の捜査官が取り扱っているそうですね? 私が名前を聞いたこともない人物が。

パーソンズ: なぁ、もし-

エイカリー: デタラメを抜かすのもいい加減にしろよ、カル。大火災が起きたばかりで、生徒が1人行方不明なんだ。あんたは明らかに証拠をどこかに隠してる。俺たちはその在処を知る必要がある。

パーソンズ: 断言するが、行方不明の生徒はいない。みんな無事だ、私たちはみんな元気にやっている。

ジョーンズ: (合間) はい?

パーソンズ: どうかしたかね?

エイカリー: 行方不明の生徒はいないと言ったな。キャロリン・カーク、火災の夜に学校にいたと親が証言した生徒、行方不明者は彼女だ。あんたが失踪届を出したんだぞ。

パーソンズ: いや、君は何か勘違いをしているよ。彼女は失踪してなどいない。まだここにいる、みんなここにいるんだ。 (合間) みんな… ふむ。

ジョーンズ: パーソンズさん?

パーソンズ: 妙だな。 (合間) しかし彼女は無事だ、無事だ、みんな無事なんだ。みんな一緒だ。いいかね、君たちは明らかにこの件について熟考を重ねてくれているし、それは大いにありがたいが、私たちはみんな大丈夫になる。大丈夫だ。何しろ明日は卒業式だからな、こんな事件のことは忘れて夏に備えようじゃないか。

エイカリー: いや… その…

ジョーンズ: パーソンズさん、カーク・ロンウッド高校の卒業式は2週間前です。何の話をしているのですか?

パーソンズは顔を上げ、2人の捜査官の背後を見て頷く。少しの間を置いて、彼は捜査官たちに視線を戻し、微笑む。

パーソンズ: 大丈夫だよ、君たち。私たちはまた一緒になれる。心配しなさんな。

カーク・ロンウッド高校の火災から間もなく、特別犯罪部は、██名もの人物 (カーク・ロンウッド高校'76年度生徒██名、他█名) が████████郡███████████湖への校外学習遠足から戻らず、謎めいた失踪を遂げた事件の捜査にも着手した。このグループを目撃した既知の最後の人物は、███████████湖まで車で約15分の場所にある、インディアナ州████████の道路沿いのコンビニエンスストアで、 ███ ████████及び██████ ███████を見かけたという████ █████であった。本件の捜査は決定的な結論に至らなかった。███ ████████ ████████ ██ 単純に消えた一方で、現在 ███ ██████████ ████ ████ 試験場 ████████ ██ 死体が浮かんで ██ █████-████████████ 儀式 ██████ ██ られ ███ ██ ████ ██████ ██████████ によって誘引される。いずれにせよ、███████ ███████████ 期待されていない。

この事件、とりわけ ████████ ████ の失踪者██名と ███████ ████████ コーポレーションがどのように関連しているかは現在不明だが、███ █████████ ███ が関与したと推測されている。3

これにも拘らず、█████ █████ █名が依然として███████████ ███: ████ ███████、███ ███████████、及び██████・リー。

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左から右に: ウォーラーマン、ブリッグス、パーソンズ。1976年4月撮影。

カーク・ロンウッド高校火災の捜査はその後3週間にわたって停滞した。事件が解決に向かったのは6月21日、コッター・パーソンズの遺体が父親の狩猟小屋で発見された時で、遺体と小屋はどちらも炎で焼かれていた。パーソンズ氏の車が小屋の外で発見され、遺書が助手席の床に置かれていた。現場に残された証拠は、コッター・パーソンズが車で小屋に向かい、車内でタバコを6本吸った後、降車して小屋に入り、ドアを施錠したことを示唆している。火元はまだ特定されていない。

特筆すべきは、小屋に向かって伸びていた2つ目のタイヤ痕である。このタイヤ痕を残した人物もやはり特定されていない。

自殺と推定されるコッター・パーソンズの死後間もなく、ウォーラーマン氏及びブリッグス氏は、1976年5月27日の出来事への関与を告白し、この報告書に記載された詳細情報を提示した。火災が発生した夜、疑惑を喚起しないようにと口止めされて以来、両者はパーソンズ氏と会話していなかったと述べた。

パーソンズ氏の遺書の全文を以下に掲載する。

火事のことを一言あやまりたかった。あんなつもりじゃなかった。俺はびびっちまって父ちゃんは何も知らないから全部俺のせいなんだ。すまなかった。

俺が学校にいてみんながそこにいる悪夢をずっと見てる。残ってるのはあとほんの少しだ。俺はあっちにいるべきでここにいるべきじゃないと思う。

母ちゃんごめん俺はなんにも上手くできなかった。母ちゃんはがんばったしベストをつくしたけど俺はただのクズだったみたいだ。父ちゃん迷わくかけてごめん。俺あんなことする気はぜんぜんなかったんだ、でも愛してる。

もう行かなきゃいけない。またみんなと会えたらうれしいな。

愛してる

コッター

FBIの記録によると、キャロリン・カークの遺体は未発見のままに終わりました。1976年後半、エフィラの近隣地域で不可解な現象が多数発生した後、広範な記憶改変物質がエフィラの住民たちに投与されました (詳細は補遺8833.5を参照) 。1981年初頭、エフィラで暴力的な公開自殺が相次いだ後、残りの住民たちはインディアナ州、イリノイ州、オハイオ州の様々なコミュニティへと転居させられました。かつてカーク・ロンウッド高校に通じていた郡道100Eの一部区間と、高校の基礎は、どちらも取り壊されました。

補遺8833.2: SCP-8833及び1976年カーク・ロンウッド高校火災から回収された物品群

UIUに潜入していた財団の工作員は、SCP-8833の発見後間もなく、特別犯罪部が提出した最初の報告書が回覧された際にその存在を把握しました。以下は、SCP-8833を含む、財団職員がUIUの管理下から取得できた物品のリストです。全ての物品は一時的にカル・パーソンズが所有していたと考えられています。

アイテム#001: トランプ 1パック
場所: 54番ロッカー
分析: 非異常
注記: 各スートの9からエースまでが、その他のカードに比べて顕著に摩耗している。

アイテム#002: “ハッピー・デイズ”魔法瓶
場所: 学校食堂の南西の角
分析: 非異常
注記: 崩落した天井の支柱に守られていたため、ほぼ無傷。

アイテム#003: 1976年度カーク・ロンウッド高校 プロム横断幕
場所: 12番ロッカー
分析: 非異常
注記: “今日の想い出はいつまでも”と記されている。

アイテム#004: Bbトランペット
場所: 音楽室
分析: 不明確
注記: 楽器自体に特筆すべき点は無いが、ケースには金文字で“失神交響楽”と刻印されている。

アイテム#005: '76年度生 卒業式の写真
場所: 不明 - 崩れたレンガの山の中から発見
分析: 不明確
注記: 写っている人物たちの顔面を除いて、この写真は火災の被害を全く受けていない。被写体らの顔は熱で著しく歪み、判別不可能になっている。特筆すべきことに、黒いスーツを着た男性が教職員に紛れて立っている。この人物の身元は不明であり、やはり顔の特徴は判別できない。

アイテム#006: 1976年版 カーク・ロンウッド高等学校年鑑
場所: 図書室にあった焼け焦げた書籍用カバンの中
分析: Safe クラス異常アーティファクト
注記: 年鑑の内容には矛盾が見られる。詳細は補遺8833.4を参照。

アイテム#007: ハート型のロケット
場所: 男性用更衣室の床板の下
分析: 不明確
注記: 表面には“永遠に一緒”と言う文言が、裏面には“R+J”という文字がそれぞれ彫られている。ロケットの蓋は火災の熱で融解し、開かなくなっている。

アイテム#008: 屋根裏部屋の写真
場所: ボイラー室の内部
分析: 不明確
注記: 屋根裏部屋の内部を撮影した写真。この写真を観察している人物は軽い不安を表明する。

アイテム#009: “ジッポ”ブランドの刻印付きライター
場所: 後者に隣接する競技場
分析: 非異常
注記: 表面には“C.L.P.”という文字が、裏面には“父より”という文言がそれぞれ彫られている。このライターは火災で著しく損傷している。

補遺8833.3: SCP-8833曝露実験

以下は被験者とSCP-8833の曝露実験の書き起こしです。実験は6週間かけて行われ、その間、被験者 (D-18831) はSCP-8833の自由な利用を許可されました。D-18831は週2回、心理学者と面談し、自らの経験について話し合いました。

被験者D-18831は42歳のキューバ系アメリカ人女性で、過度の暴力性や敵意を示したことはありませんでした。D-18831は1976年時点で存命でしたが、1967年生まれであるため、当時はまだ子供でした。また、D-18831は高等学校に進学していませんでした。

補遺8833.4: SCP-8833に掲載されている写真

3ページ: 生徒たちの交流を捉えた数枚のスナップ写真。SCP-8833の読者 (以下“対象者”) がこれらの写真に写り込んでいる。生徒たちは笑顔で学校行事や娯楽活動に従事している。

10ページ: 講義を受けている生徒たちの写真。最初にこの写真を見る時には、1人の生徒がカメラを直視している。対象者は、改めて見直すとカメラを直視する生徒の数が増えていると報告する。

16ページ: ベンチに座り、またその傍に集ってタバコを吸っている生徒の一団。被写体にはコッター・パーソンズ、デール・ブリッグス、サム・ウォーラーマンが含まれる。対象者は時折、この写真の背景にキャロリン・カークが写っているのを見たと報告する。

20ページ: 対象者と他3人の生徒が水着を着て湖畔の桟橋に立っている。生徒のうち1人は、写真に捉えられていない水中の何かを見ている。誰も笑っていない。写真には“こっちに来て見なよ!”というキャプションが添えられている。

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24ページで発見されたキャプション無しの写真。

29ページ: 対象者は、陸上部の生徒たちを撮影した写真群の中に、ガソリンの携行缶を持って競技場の中央に立つ生徒の写真が1枚だけ混ざっていると報告する。

36ページ: 音楽室で1枚の楽譜を読んでいる対象者の写真。非常に背の高い黒い箱が、部屋の隅に置かれている。他数名の生徒が箱を囲んで立ち、そちらに顔を向けて若干の前傾姿勢を取っている。

39ページ: ロッカーの前に立つ対象者の写真。対象者の背後に多数の生徒がいるが、彼らの顔は極度に損傷しているか、その他の理由で歪んでおり、身体も膨張しているか焼損している。全員がカメラを直視している。

裏表紙: 前述した通りの献辞。改めて裏表紙を見た対象者は、“私たちは君を忘れない”という文章とハートマークが、表紙の内側に書き込まれているのが見えると報告する。

補遺8833.5: 被影響者たちへのインタビュー

以下は、カーク・ロンウッド高校火災後、FBI捜査官がインディアナ州エフィラから民間人を退避させる前に実施した事情聴取の、回収された一部記録です。

デイヴィス捜査官: あなたが見たものについて教えてください。

ペンドルトン氏:5 あれはウィルだった6、俺にはそうだと分かった。2時間ぐらい前に家に入ってきて、テーブルの向こう、すぐそこに座った。あいつが入ってきた時に飛び起きたけど、部屋には入れなかった。まるで廊下に身体が引っ掛かってるみたいだった。俺はただ「ウィル、ウィル、今までどこにいたんだ? お前たちはみんなどこに行ってたんだ?」と言い続けた。

デイヴィス捜査官: 息子さんは何か言いましたか?

ペンドルトン氏: 「まだ僕が分かるかい、父さん」と言ったけど、顔を上げようとしないから、はっきりとは見えなかった。勿論分かると言ったら、あいつはまたさっきみたいに同じことを訊いたんだ。「まだ僕が分かるかい」って。

デイヴィス捜査官: その後は?

ペンドルトン氏: 立ち上がって、なんと言うか… 床に沿って滑りながらドアに向かうと、そこを抜けて出ていった。開けたんじゃない、すり抜けたんだ。俺はあいつが消えるまでアホみたいにその場に突っ立ってた。そして、別なドアから出た時には、もうあいつはすっかり姿を消していたよ。

ホワイト捜査官: ムーア雑貨店にいたのは何時頃ですか?

ティルマン夫人:7 昨日、昼の2時頃でした。

パトリック夫人:8 救急隊の持ち寄り食事会があるから、卵の買い出しにね。

ホワイト捜査官: そこで何を目撃しましたか?

パトリック夫人: ええと、ムーアの店の正面にある、建物の前の電信柱に取り付けた大きな看板は知ってるかい?

ティルマン夫人: 何人かの子供があそこによじ登っていたんです、車を停めた時に通りからそれが見えました。地面に落ちている何かを見下ろしているようでした。顔は見えませんでしたが、何人かは学校の生徒用ジャケットを着ていました。

ホワイト捜査官: 彼らが見下ろしていたものは見えましたか?

パトリック夫人: 見えたよ、あ - あたしにはね、でも…

ティルマン夫人: いえ、大丈夫です。私にも見えました。

パトリック夫人: あれは男だった、と言うか、少なくともあたしはそう思ったよ。背丈はあんたと同じくらいか、もう少し高かったかもね。黒いスーツ姿で、黒髪だった。眼鏡も掛けてたかもしれない。そいつは子供たちを見つめ返してて… こう… あんなもの、どう説明すりゃいいのか…

ティルマン夫人: テレビカメラのような物が、地面に置いたある種のスタンドに据え付けられていました。男はそれを調節して子供たちに向けていたんです。彼が取っ手を捻って見上げると、子供たちが炎に包まれて、叫び声を上げましたが、それは… 人間が出すような音ではありませんでした。間違っていました、あの音は全てが間違っていました。

ホワイト捜査官: 男に近付きましたか?

パトリック夫人: いいや、あいつは… あの男もやっぱりどこか間違ってたよ。あいつを見てると何か遠くの物を見てるような感じがして、頭がくらくらした。カメラのせいだと思う、きっと何か仕込んであったのさ…

ティルマン夫人: 火事で亡くなったあの女の子の葬儀の時もそうでした。棺は閉じられていましたけど、なんだか… 何がその中に入っているにせよ、それは正しくないと察しました。その時は何も言いませんでした、失礼になりますから。可哀想なご両親…

パトリック夫人: でもこの人の言う通り、そんな感じだったよ。お巡りさん、あたしはいつも大いなる力ってやつを信じてきたし、生涯ずっと神様に祈りを捧げてきた。あの棺に入っていたのが何であっても、あの男がカメラで何をやってたとしても、そいつは正しいものじゃなかったんだ。あれを見た時、あたしは… 主よお救いください、まるで身体に手がまとわりついてるように感じた。身体中にだよ。

ホワイト捜査官: 手ですか?

パトリック夫人: 馬鹿みたいな話だけど、そうなのさ。誰かに伝えなきゃいけないと店に駆け込んで、戻ってきた時には、もう男はいなくて、車も消えてた。

ホワイト捜査官: では、看板の上の子供たちは?

(沈黙。)

ホワイト捜査官: 看板の上の子供たちはどうなったのですか?

ティルマン夫人: どの子供たちですか?

エイカリー捜査官: カークさん9、それにカーク夫人、お時間を割いていただき、ありがとうございます。あなた方の今のお気持ちを理解できているふりをするつもりはありません。私はただ、この一連の事件の辻褄を合わせたいだけなのです。

カーク氏: 大丈夫です。お返事が遅れて申し訳ありませんでした、こちらとしても…

エイカリー捜査官: ええ、構いませんよ。奇妙な話だと思われるでしょうが、あなた方の娘さんの年鑑についてお訊きしたいことがあるんです。

カーク氏: キャロリンの… 年鑑?

エイカリー捜査官: はい。ご存知の通り、あれは火災被害を免れた物品の1つでしたが… その、幾つか不審な点が見つかりましてね。娘さんはあの本について何か話したり、おかしなことに言及したりしませんでしたか?

カーク氏: おかしなこと? いえ、その… 特におかしな話なんてしませんでした。あれはただの年鑑です、娘は… ほとんどいつも、あれをカバンに入れて持ち歩いていたはずです。ほら、子供ってよく年鑑にサインを貰いたがるでしょう… あの子も年鑑に友達からサインしてもらおうとしていました。

エイカリー捜査官: ご自分で見たことは? つまり、最近あなたはあの本を読みましたか?

カーク氏: いえ、そんな… あれは娘の年鑑ですよ… 私が読みたいと思うような本じゃありません… (カーク夫人に) 君はどうだい…?

(カーク夫人は首を横に振る。彼女は喋ることができない。)

エイカリー捜査官: 娘さんの友達はどうですか? 最近奇妙な人と会い始めたりは?

カーク氏: いえ… 娘には友達が大勢いましたが、みんな専ら内輪で集まっていましたね。特に… 奇妙な人は見かけませんでした。いったいどういうことですか?

エイカリー捜査官: 私はただ、あなたの娘さんが入手してから火災の夜までの間に、何者かがあの年鑑に触れる機会があったかどうかを知りたいのです。

カーク氏: とんでもない、娘はあれをカバンに入れっぱなしで一度も-

カーク夫人: 水を… 水を持ってきてくれるかしら。

カーク氏: いいとも - 少々お待ちを、エイカリーさん。

エイカリー捜査官: お気になさらず。

(カーク氏が退室する。)

カーク夫人: その… 男の人が訪ねてきたんです。

エイカリー捜査官: 何ですって?

カーク夫人: 年鑑の話です。キャロリンの年鑑は他の生徒たちのと一緒には届かなくて… 改めて別なのを送っていただきました。男の人、黒いスーツを着た男性がそれを持ってきました。その人が来た時、家には私一人きりで、彼は… 彼は私に年鑑を差し出して、娘に渡せと言いました。

エイカリー捜査官: その男は名乗りましたか?

カーク夫人: いいえ、彼はただ… よく分からないんですが、とある組織から来たと、そして年鑑をキャロリンに直接渡すように頼まれたのだと言いました。彼は娘が家にいないことに腹を立てていました。

エイカリー捜査官: 彼は他に何か言いましたか?

カーク夫人: 彼は… 年鑑を必ず娘に渡すと、そして彼が訪ねてきたことを誰にも口外しないと、そう私に誓わせました。さもないと… 私に何かをしてやるからなと。彼が話す時… 彼の声はおかしな響きで、彼の口の動き方は… 変でした。私は… そうしなければいけないように感じて、年鑑を娘に渡しました。年鑑を受け取った娘はとても喜びました。

エイカリー捜査官: それ以来、その男に会いましたか?

カーク夫人: いいえ… もしかしてあの人が… あんな… 娘が死んだのは私のせいなんでしょうか?

エイカリー捜査官: そんなことは-

(カーク氏がコップ1杯の水を持って戻ってくる)

エイカリー捜査官: 話題を変えましょうか。


RAISA注記: この書き起こしから得られる情報にも拘らず、国勢調査記録や財団職員が収集した証言の調査は、カーク夫人が1976年当時存命だったことを証明できなかった。死亡証明書記録は、キャロリン・カークの母親 アンナ・カークが1959年、キャロリンの誕生から間もなくして自然死したことを示している。

補遺8833.6: 捜査主任の覚え書き

この覚え書きは、ダニエル・エイカリー特別捜査官によって書かれ、FBIの他の記録と共に1冊のファイルに収められていました。

あれが単なる事故だったなんて冗談じゃない - 火災も、湖も、全てだ。偶然にしては解決されず仕舞いになった糸口が多すぎる。きっと、コッター・パーソンズがガソリン缶に着火した時、彼は相当に長い時間をかけて仕組まれた何かが動き出す切っ掛けをそれと知らず作ってしまったのだろう。あの事件の後には、我々が見知らぬ顔触れがどんどんあの町に姿を見せ、神も人間もとうに忘れ去った町にあまりにも多くの目が向けられた。

我々がカーク・ロンウッド高校火災後の数週間に経験したことは、私が過去に取り組んだどの事件とも違っていた。火災と、校外学習中の子供たちの失踪に挟まれて、あのコミュニティの中心には、修復しようのない、吸い込まれそうな大穴が空いた。それはまるで、誰かが町民たちの魂に突き付けたボルトライフルの引鉄を引いたかのようで、残された空虚は単に有害なだけではなかった - 悪意に満ちていた。もっとよこせ、もっとよこせと要求し続け、町民たちを、そして我々を破滅させようとする苦悩。

私はかつて、一軒の家で陰惨な出来事が起こった結果、その家が住人を憎悪し始めた事件を担当した。あれは難事件だったし、“ある場所にどれだけの憎悪が溜まれば憎み返してくるのか”という疑問は今日に至るまで私の頭を悩ませ続けている。しかし、ある場所がどれだけの絶望を知れば絶望そのものになるのかに関しては、考える必要もない。私はこの目でそれを見た。もう少しで飲み込まれるところだった。

カーク・ロンウッド高校火災後の数週間で大勢の人が消えた。住民だけでなく、捜査官たちまでも。私は滅多にその話をしないが - もう耳を貸す者さえいないだろう - ある晩、パターソンとベイルズは宿泊先のモーテルを出て失踪した。お偉方は二人が怖気づいたのだと結論付けたが、その後一週間、私は人間型の暗いものが二つ、木々の間を飛び回っているのを見たと断言できる。あれを目にするたびに胸が締め付けられた - まるで、私の真後ろに誰かが立っているのに、身動きしてそれを見ることができないように感じた。数日後には、二つの影は消えた。当時はその種の怪現象が山ほど起きていて、スーツ姿の男たちがずっと我々を見ていた。

要するに、あの夏に起きた事件については、このファイルでは正確に伝えようがないということだ。住民退避から数ヶ月の間に、上の連中は町に乗り込み、道路を取り壊し、建物の基礎をひっくり返し、手当たり次第全ての地図からその存在を消し去った。そんな風に町を一掃しようとした取り組みの後でさえ、あそこには追い払えなかった、真の膿み爛れた恐怖がある。もしかしたら、上の連中はあれを追い払いたくなかったのかもしれない。

最後に一つ、これは私が退職前に携わる最後の事件なのはもう分かっているので、自分が部署の規則に違反したのを認めたいと思う。六週間前、私は夜中に目を覚まし、車を走らせ始めた。当時私はシンシナティの出張所にいたが、どうしてもドライブがしたくて堪らず、三時間ばかり走り続けた。時間はゆっくりと流れ、まるで水中を進んでいるかのようで、ラジオからはずっと同じ曲がループで流れていた。何かの影響を受けているという自覚はあった気がするが、あの時はどうでもよかった - 道の先には見るべきものがあった。

私は道路の終端に設置されたバリケードで車を停め、ただ歩き始めた。今では草木が生い茂り、ほとんど森や野原になってしまったが、私は最後の木々を通り過ぎて、月光の下にはっきりとそれを見た。カーク・ロンウッド高校が、炎にも時間にも、他のどんなものにも侵されず、初めから何も起きなかったかのように佇んでいた。開いた正面玄関から奇妙な光が漏れていて、上手く説明できないが、私はそれに恐ろしいほどの憧れを覚えた。玄関口には女の子のシルエットが立っていた。私が手を振ると、彼女も手を振り返した。私は何時間もそこに立っていた - そして、木立の上から最初の陽光が差した時、ふと瞬きすると、全ては消え去り、私は野原に一人きりだった。

我々が報告書を提出した時、上の連中はちょっとしたパーティーを開いた。シャンパンやら何やらを取り揃え、金時計を授与し、雀の涙ほどのご褒美で我々を元気づけようとした。よくやってくれた、難しい事件だった、我々が成し遂げたことは奇跡以外の何物でもないと言った。我々は人命を救ったのだと言った。全てを過去のものにできたのは実に喜ばしいと言った。勿論、全ては戯言だった - 我々があれを葬り去るために何をしようと、本部の諜報員どもが十分隠蔽できたと言い張ろうと、それは十分ではなかったのだ。

彼らの死体は埋葬されていない。どこか別な場所にある。

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