SCP-8847
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アイテム番号: SCP-8847

オブジェクトクラス: Safe

Level 1/8847

Confidential

特別収容プロトコル

SCP-8847はサイト-246の深湖収容庫にある、鉛と銀で裏打ちされたコンクリート製の棺に保管されます。いかなる状況でもSCP-8847に骨質素材を接触させるべきではありません。

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SCP-8847の石膏レプリカ。

説明

SCP-8847は様々な人間や動物の骨の集合体です。20種以上の異なる動物と300人以上の個人の骨が確認されており、その中にはスピノサウルス・エジプティアクス (Spinosaurus aegyptiacus) のホロタイプ標本1 が含まれます。

SCP-8847は、トゥーレ協会の死霊術師ネクロマンサー ヘルヴィヒ・フォスが、ナチス・ドイツのオブスクラ軍団による運用を意図して制作した固有兵器でした。この兵器の核となる前述したスピノサウルスの骨格は、1912年に古生物学者 エルンスト・シュトローマーによってエジプトで発見されました。白亜紀-古第三紀間 (K-Pg) 大量絶滅事象2の結果、この骨格には高強度の招死性タナティックエネルギーが浸透しています。標本自体が極めて古い年代のものであるため、招死力源としての威力は生成当初よりも低下していますが、地球規模で発生した大量絶滅事象の残留エネルギーは、依然として継続曝露40時間で成人を死に至らしめるのに十分な強度で残存しています。3

押収されたオブスクラ軍団の記録によると、SCP-8847の核を形成するスピノサウルスの骨格は当初、断片の集合として回収されましたが、1929年にバイエルン州立古生物学標本館の保管庫内で自らを再構成し始め、その報告がオブスクラ軍団の主任アーキビストを務める Erznekromantエルズネクロマント (大死霊術師アークネクロマンサー) ヘルヴィヒ・フォスによって注目されました。オブスクラ軍団の権力掌握後、ほぼ完全な状態まで再構成された骨格は展示から撤去されてフォスへと引き渡され、フォスは骨格内の招死力源を発見しました。4 極めて強力な招死力源として作用するのみならず、この骨格は特異な死霊吸引タナトヴォリック骨質吸引オセオヴォリック特性を示し、周辺で死亡した生物の霊魂を摂取して活力にすると共に、死体の骨を物理的に取り込んでいました。

フォスの指示で肋骨、四肢、頭蓋骨に拘束ルーンが刻印され、オブスクラ軍団は骨格の制御が可能になりました。更に、骨格の歯にも集束印章が彫り込まれ、有機物・無機物の双方に壊滅的な影響を及ぼす一貫した招死エネルギーのビームを照射する能力が付与されました。5 その潜在的な攻勢能力にも拘らず、フォスは連合軍の侵攻に備えて、ミュンヘンの地下に設けられたオブスクラ軍団のKriegs-Kontrollzentrumクリークス・コントロールツェントルム (戦時統制センター) の防衛にSCP-8847を割り当てました。また、フォスは軍団内での自らの地位を脅かし得ると考えた部下の排除にもSCP-8847を用いました。

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パリの地下墓地から回収されたグールの頭蓋骨と共に写るヘルヴィヒ・フォス。 (1940年11月)

Spinosaurus aegyptiacus のホロタイプ標本が発見されたことはヴェールの外部でも周知の事実でしたが、SCP-8847とその異常性に関する知識は、1944年1月5日までオブスクラ軍団によって秘匿されていました。この日、初期型のエバーハート共鳴器による補助の下で、オブスクラ軍団の遠隔透視遮断印章6の突破に成功した万人救済主義者のアース神族教団は、SCP-8847をはじめ、それまで隠蔽されていた数百ものアーティファクトと構造物を発見しました。

SCP-8847は1944年4月23日、特殊工作員ヨーゼフ - 通称“プラハのゴーレム” - が率いる連合国オカルトイニシアチブ (AOI) の排撃班によって無力化されました。この戦闘の巻き添え被害としてミュンヘン市街の大部分が破壊され、AOI工作員数人が死亡し、連合国側のオカルト資産数点が失われました。SCP-8847とAOI排撃班双方の行動の結果、ミュンヘン市内は11時間にわたって事実上のヴェール破綻状態となり、民間人の間で大規模な騒乱が発生しました。この事態は1944年4月24日、アメリカ・イギリス空軍によるミュンヘンへの合同爆撃で、戦闘を目撃した民間人の大半が死亡すると共に、SCP-8847の存在を示す証拠が全て破壊されたことで終結しました。本件について現地に残存した噂話は砲弾ショックやヒステリーの産物として無視されました。

AOI文書

財団が第七次オカルト大戦に参戦した後、SCP-8847の残骸は、長期保管及び廃棄処分のために財団の管理下へと引き渡されました。以下の文書は、SCP-8847の残骸と共に、連合軍オカルトイニシアチブから提供されました。

批評報告書: オペレーション・ボーンオーチャード

文責: 英国オカルト局 ロイヤルヴィクトリア勲章勲爵士 ロバート・デュラント卿

ボーンオーチャードは戦略的失敗であった。

この失敗は戒めとすべきものである。本作戦の成功した面と失敗した面の双方から学ぶべきことが多くある。

第一に、ICSUTチューリッヒ校に駐留していた支援魔術師ら7の貢献は賞賛に値する。これは突入時の転送に際して死者が一人も生じなかった現時点で三回目の急襲作戦であり、本年初頭に導入された新たなアポーテーション手順による改善と思われる。しかしながら、後述するように、この手順にも欠陥が認められる。

排撃班カドモスの主たる目標は単純ながら過酷であった。大死霊術師 ヘルヴィヒ・フォスの暗殺と、ナチ党本部庁舎の地下にある彼の保管庫及びその内部の全てのアーティファクトの破壊である。

20:37、排撃班カドモスは転送用車両 - 鹵獲されたドイツ製クルップ・プロッツェ軽トラック - に乗り込んだ。トラックと急襲部隊はその後、実空間距離に換算して240kmをアポーテーション移動した。ミュンヘンに再出現した時、クルップ・プロッツェのタイヤ4本全てが地面との交錯によってパンクした。

英国オカルト局 ショーン・オドノヴァン中佐の証言

元々予定されてた計画は、ケーニヒス広場で起きちまった事件よりもずっと単純だった。かなりクリーンで、死者も少なかったはずだ。実際の死者数より若干少ない程度だが… 奴らは所詮ナチスだ。あまり同情する気にはなれねえ。

“タイヤがパンクした”。冗談じゃねえ、道路に溶け込んだんだよ。どこまでゴムでどこからアスファルトだか分かりゃしねえ。どっちみちあのトラックはオンボロだった。技術班の連中はエンジンブロックを引っこ抜いて、ボンネットの下に幸運ビーコン8を括りつけてた。そもそも俺たちゃ庁舎にカチ込む予定じゃなかったんだ。ゴーレムがあのポンコツを十分に近くまで転がしてったら、技術班が魔法でビル直下に爆薬を数百トン転送して、一切合切地獄までぶっ飛ばしてやるはず手筈だった。俺たちがいちいち現場で同じことをやる手間を省いてやろうってな。反石工アンチメイソンたちが同伴したのは、あくまでも何か問題が起きた場合のプランBだった。そう、例えばタイヤが道路に溶け込んじまうとかさ。

結局、プランBに乗り換えざるを得なかった。

その必要がなければ、もっとスッキリと終わったのに。

トラックを放棄した排撃班カドモスは、徒歩でケーニヒス広場近くのナチ党本部庁舎 (マイザー通り10番地) へ移動した。一般ドイツ国防軍とSS警備部隊はオカルト戦術への備えがなかったため、カドモス班は建造物の側面入口付近に配置された警備員らを容易かつ静かに排除できた。その後、鹵獲したSS制服を着用したカドモス班員らが警備員に扮し、主力排撃班の退路を警護するために残留した。入れ替わりが完了すると、無音爆薬で側面入口の錠が破壊され、カドモス班員らは建造物に進入した。

高貴なる古代ゴルモゴン教団 アントニオ・デル・フォルノの証言

今となっては、エクメニクス・ヴォルジが、派遣するアンチメイソンantimassoniは一人で十分だという私の提案を無視したことに感謝しております。トラックが故障した時、幸運ビーコンも指でつまんだ導火線のように機能しなくなりました。確かに制服を何枚かくすねることはできましたが、我々の誰一人として、あの策略が成功するとは思っていなかったでしょう。全員、庁舎内のファシストfascistaどもを蹴散らしながら進む覚悟でした - ヨーゼフ以外は全員。彼と直接共闘したのはあれが初めてでした。彼の能力についての逸話は耳にしていましたが、果たして当時の私は本気で信じていたかどうか。

突入する代わりに、彼は待機を命じました。そして、死者の魂を呼び寄せました - 地下要塞の建造に駆り出されて死んだ奴隷労働者たち、初期の粛清の犠牲者たち、博物館の資料庫に保管された未だ安らぎを知らぬ標本たちを - そして、助力を頼み込んだのです。私は以前にも死霊術negromantiを目にしたことがありますが、ヨーゼフのやり方は全く違いました。…美しかった。亡霊たちは自ら進んで、むしろ喜んで我々を支援してくれました。彼らは完璧な偵察役を務め、役目を終えるとヨーゼフは感謝の意を述べて彼らを解放しました。我々がファシストfascistaと戦う手助けをしたことで、彼らが平安を得られたと信じたい。

例の鉄扉に辿り着くまで一人の警備兵にも出くわしませんでしたよ。

私は成人して以来、ずっとゴルモゴンに奉仕してきました。怒れる神々や古代の怪物さえ封印できる強力な結界を幾つも目撃し、破壊してきました。どれ一つとしてあの扉には匹敵しません。魔法が幾重にも重なり合い、まるでタマネギの薄皮のように層を成していました。一枚でも層を剥がすと、失われたエネルギーを糧として他の層が強さを増し、瘢痕のように絡み合う。戦艦級の鋼鉄に、六つの異なる場所から盗まれた記号が刻まれていました - アラビアの詩句呪文、北欧ルーン、そして勿論メイソン流書記体の列また列。ヨーゼフは扉を開けようと試み、触れる者の魂を吸い取る魔法が掛かっていると言いました。襲撃者から体力を奪い、攻撃を不可能にしようというのです。そこで、彼は我々に頼りました。

我々三人 - 私、ベンサイド、そしてマハル - はしばし話し合いました。扉に掛けられた結界の層は一気に解除しなければならない。さもなくば、結界はバックラッシュでお互いを再構成し、恐らく我々の魂までも巻き込まれる。これは不可能だ、撤退して後日再挑戦するしかないと思いました。しかし、ベンサイドは、かつてイェニチェリ団9との合同任務で見かけたというアラビア文字の一部を識別しました。そして何より、あの馬鹿者idiotiが犯した転写ミスを見抜いたのです。それは小さな亀裂でしたが、十分でした。我々三人は扉を吹き飛ばし、鋼鉄が桜色に赤熱するほどの勢いで結界を崩しました。

ヨーゼフは扉が冷える間も惜しんで押し開け、我々は金庫室を崩落させるべく、爆薬を仕掛けながら後に続きました。

排撃班がオブスクラ軍団の施設に進入した頃、地上の警備員が交代作業に入った。カドモス班の成りすましは即座に見抜かれ、主力班員らに合図を送る間もなく殺害された。SS警備部隊が無音警報を発動し、死霊術師ヘルヴィヒ・フォスに警戒を促すと、彼は守護者を覚醒させ、庁舎内の自室にある抜け穴から逃亡した。この時点で作戦は失敗に終わった。フォスの暗殺は事実上不可能になり、守護者の排除も著しく難化したのである。

排撃班がプランBに訴えざるを得ない不測の事態に十分備えていれば、彼らにはより多くの選択肢があり、入口を防衛していた班員らの死を防げたかもしれない。アメリカのペンタグラムが開発中のミーメティック・カードなどは、成りすました身分の正当性を主張する偽造文書として容易に通用しただろう。ロマ族の催眠術師や妖精シー族の魅惑織りを排撃班に編入するといった他の選択肢もやはり顧みられなかった - カドモス班とチューリッヒ校の支援班はプランAに全力を注いでいたからだ。その結果、排撃班は確率ビーコンの喪失に対する準備が整っておらず、壊滅的な結果を招いた。

プラハのゴーレム 特殊工作員ヨーゼフの証言

“賢者たち教えて曰く: 龍の像とはいかなる姿なりや。祭司シモン・ベン・エラザル説いて曰く: その首に棘を帯びたる全ての像なり。”10 ヨブもまたこう語る - かの者の肌は岩のように固く、その吐息は稲妻を呼び、その顎は恐るべき牙に縁取られ、いかなる定命者の武器も通用しない。傲慢なる獣の王、かの者を統べる者は無し。11 彼こそがレビヤタンである。

無論、私たちはどのようなものに直面するかある程度見当がついていた。私は彼が龍などではなく、ただの Spinosaurus aegyptiacus 、アダムとその一族よりも遥か昔に滅んだ動物の一種であることを知っていた。イニシアチブが便宜を図って入れてくれた閉館後の博物館で、彼と同じような獣の標本を幾つも目にした。それでも、保管庫の扉が開き、私たちが主室へと進むにつれて、私の脳裏には経典の言葉が次々と浮かび上がった。

全てが計画通りに進んでいれば、彼は休眠状態で、仲間たちは比較的安全に任務を遂行できただろう。もし侵入が露見したと知っていれば、私たちも別な対応を取ったかもしれない。しかし現実には、彼は扉のすぐ向こう側で私たちを待ち構えていた。かつて神がお創りになったもののパロディ、人と獣と魚の骨で繕われた太古の巨石。私には、彼の肋骨の狭間に囚われ、ゆっくりと消化されてゆく幽霊たちの悲鳴が聞こえた。

彼が死んでいないことに気付いた時、その身に彫られたルーン文字が輝き始め、悲鳴は高まっていった。そして彼は口を開き、光線を放った。反応する間もなかった。一瞬にして先鋒が崩れ落ち、瞬く間もなく塵へと変じた。聖ゲオルギウス騎士団の勇猛果敢な三人の屠龍騎士が、早すぎる死を迎えた。

獣は彼らの遺体から魂を奪おうとした。骨だけの身体でありながら、まるで息を吸い込むように、戦死者の霊を吸い寄せていったのだ。許すわけにはいかなかった。私は体内の鍵を使って、彼らの幽霊を私に繋ぎ止め、レビヤタンに飲み込まれるのを防いだ。

それがあの獣を激昂させたようだった。今度は私に向かって火を噴いたが、私の身体は朽ちることなき粘土であり、私の魂は永遠の真理なので、どちらも死ぬことはない。サミュエルがそれを知っていればよかったのだが。死して五秒もせずに正気を取り戻した彼の幽霊は、光線の前に飛び出して自らの真髄でそれを受け止め、残響から無へと溶けていった。

そこで撤退を命じた。私は強力ではあるが、あの龍を単独で倒せたかは分からないし、友人たちの命をこれ以上危険に晒してまでもそれを確かめるつもりはなかった。侵入時に仕掛けた爆薬、そして混戦中にゴルモゴンたちが仕掛けた爆薬があれば十分だと判断した。

聖ゲオルギウス騎士団 ジェフリー・チャンドラー卿の証言

まさしく混沌だった。龍退治にありがちな混沌ではなかったのだ、分かるかね。我々はそれを予期し、騎士団はまさにそのために訓練を積んでいる。だが、三人の同胞は剣を抜くことすら叶わぬうちに死んだ。ヨーゼフはあの怪獣に向かって突進しながらも撤退を命じ、ゴルモゴン教団員らは完全に陣形を崩していた。モンタギュー12が私を一瞥した。入門生時代からの知己で、数えきれぬほどの怪物を共に討ってきた仲だが、あそこまで怯えた顔を見たことはついぞ無かった。そこで、情けない話だが、我々はゴーレムの指示に従った。だから私は恐らく、愚か極まりない行為だったとは言え、何かしらの抵抗を試みたゴルモゴンたちを非難できる立場にはいない。

彼らのうち一人が - 確かイタリア人だったと思う - 命令を叫ぶと、アンチメイソンたちは武器を肩から外した。私は元より銃器にあまり関心がない。手近に聖なる鋼の剣があるのだから尚更だ。そんな私でも異様な銃だとすぐ気付いた。それはパイプオルガンとリボルバーの雑種のような代物で、ライフルほどの大きさだった。アンチメイソンたちが狙いを付けて撃った時、飛び出したのは弾丸の雨ではなく、拳大の手榴弾だった。

あれが開けた野原であれば恐ろしいほど有効だっただろう、それは認めざるを得ない。しかし、一部に爆弾が設置された密閉空間では… 連鎖反応を引き起こすだけだった。私は結界のおかげで飛び散る破片から守られたが、ゴルモゴンたちが仕掛けた爆薬が炸裂し、退路は塞がれた。我々は崩れつつある部屋に、怒り狂った龍と共に閉じ込められた。天井が崩落しそうにない場所は龍の背後だけだった。

他に打つ手があろうか? 我々はそちらへ走った。ヨーゼフが怪獣の注意を引き付けている間に、天井の穴から這い出した。私からは手榴弾が命中した部位がはっきり見えたが、ろくな効果は出ていなかった。骨に多少ひびが入った程度で、それも見る間に癒合し始めた。撤退の最大の望みをかすり傷と引き換えにしたわけだ。

だが、私にはゴルモゴンたちの試みを責めることはできない。

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保管庫が損傷し、地下施設が露出すると、ゴーレムと恐竜の戦闘はケーニヒス広場まで波及した。この時点で、警報を受けたドイツ国防軍の正規部隊が到着し、排撃班の生き残りとの交戦を開始した。

英国オカルト局 ショーン・オドノヴァン中佐の証言

“王の広場の戦い”とか呼ばれてるらしいな。大した戦闘じゃなかったし、ドイツ人はあそこをケーニヒス広場って呼んでるが、まぁあの大混乱に付ける名前としては悪くねえ。

ドイツ国防軍はあの大トカゲの存在を予想してなかった。その場の誰一人として奴のことは勘定に入れてなかった。まだ俺たちが生きてるのは、サプライズが両方の陣営に作用したからだ。恐竜を見た瞬間、ドイツ軍の規律はバラバラになった。その場に凍り付く奴もいれば、逃げ出す奴もいた。奴に発砲した連中もごく僅かながらいたっけな。だれも記録管理棟の瓦礫の中で身を潜める俺たちのことなんか考えなかった。おかげで俺たちには再編成し、態勢を立て直し、反撃の用意を整える猶予が生まれた。ジェフは瓦礫をこじ開けて遮蔽を作り、トニーは反々石工アンチアンチメイソン印章で石材を補強し、それ以外の奴らは祈りながら乱射しまくった。

戦闘そのものの記憶はほとんどぼやけてるが、時折透き通るように鮮明な断片が混ざり込む。石材が軋む音を覚えてる。アンチメイソンたちから漂うコルダイトの匂いを。バクスター軍曹が喉を撃ち抜かれ、言いかけた言葉を動脈血の噴出で断たれ、暖かくぬめった脂が俺の顔を覆ったあの瞬間を。

あの恐竜の咆哮を覚えてる。俺は長い歳月を経て初めて恐竜の鳴き声を聞いた最初の生き物だ。

俺は今夜ここで死ぬんだ、そう思ったのを覚えてる。

神に、お祖母ちゃんの神々に、ムハンマドの神に、誰でも耳を傾けてくれそうな神に向かって祈りを捧げ、あの怪物に俺の魂を食べさせないでくださいと懇願したのを覚えてる。

もしかしたら、誰かが本当に聞き届けてくれたのかもしれない。

プラハのゴーレム 特殊工作員ヨーゼフの証言

龍は私の仲間たちに惹かれ、私との戦いを強く拒んでいるようだった。私が霊魂を持たないことを察知し、食べられないものとの交戦に興味が湧かなかったのだろう。

幽霊たちを呼んで味方に加えれば、あの怪物に彼らが吸い込まれる恐れがある。私自身が彼を遠くへ誘いだしたり、気を逸らしたりすることもできない。だから力尽くで食い止めるしかなかった。

スピノサウルスはマイザー通り10番地の入口を突き破り、猛然と私の仲間を追走した。頭をもたげ、また光線を吐くために口を開いたが、私の方が素早かった。上下の顎を掴んで強引に閉じ、反応を中断に追いやった。しかし、余剰エネルギーは行き場を失い、私の中を通り抜けていった。

直前に龍の吐息から影響を受けなかったのは、サミュエルの犠牲が私を護ってくれたからだった。今回、そのような遮蔽は存在しなかった。

私の身体は肉ではない。粘土は永遠だ。だが、私を取り巻くプラズマに封じ込められた死のエネルギーは、窯のように私を焼き焦がすのに十分だった。半焼けの両脚が膝で折れ、私は地面に倒れ込んだ。恐竜の巨体の下で、為す術もなく右腕を踏みにじられ、やはりそれも砕けてしまった。

絶望の淵に立たされつつも、私は熟慮の末に決断を下した。この怪獣は心も魂も持たない造形物でしかなく、だからこそヘルヴィヒ・フォスは容易に己の意思を強いることができた。もしも自我を与えられたなら、死霊術師の支配を脱することができるかもしれないと。

そこで、私は残された手で獣の肋骨を掴み、持ちうる力を全て振り絞って、数百万年前に死んだ動物の幽霊を召喚しようとした。深海の底から一粒の小石を摘まみ上げるにも等しい労力が - 私自身の限界に迫るほどの労力が必要な業だった。しかし、類は友を呼ぶ。獣の身体を掌中に捉えたことで、私は時を超えてその霊魂を呼び起こし、かつての身体に束縛できた。その結果として現れたのは、ヘルヴィヒ・フォスにも、他のいかなる者にも制御できない、自由意志を持つ死体宿りレヴェナントだった。私でさえ、命令を下すことなど思いもよらなかった。それほどに彼の霊魂は古く、強大だったのだ。

フォスの制御から解き放たれた恐竜レヴェナントは動物の本能に従って行動し始めた。恐竜の出現に動揺したドイツ国防軍が発砲を開始すると、銃声に注意を惹き付けられたレヴェナントは広場を包囲する国防軍の警備部隊へと突進し、その防御線を崩壊に追いやった。レヴェナントはそのままミュンヘン市内で暴れ回り、広範囲にわたる破壊をもたらした。混乱に乗じて、カドモス班は再編成を果たし、任務を再開することができた。

聖ゲオルギウス騎士団 ジェフリー・チャンドラー卿の証言

ヨーゼフは手足が繋がった途端、恐竜の足跡を追って全速力で走り出した。我々が彼に追い付けたのは、救助を必要とする民間人に出くわすたびに、その人々が己の民族をどう扱っていようとも、彼は必ず立ち止まって助けていたからだ。私には… 立場が逆だったら同じように振る舞えたか、確信が持てない。

地下保管庫を這い出た場所から優に1マイル半も離れた大きな噴水で、我々はようやくあれを見つけた。水を飲んでいた。いや、少なくとも飲もうとしていた。剥き出しの頭蓋骨を水中に浸しては空のままで引き上げるのを幾度も幾度も繰り返すうちに、焦燥を募らせているように見えた。自分が何百万年も前に死んでいることを理解していたかどうかも分からない。

だから、我々の行いはきっと慈悲だったのだと思う。アンチメイソンたちが再び発砲した時、その効果は遥かに大きく、よろめいた恐竜を目掛けて、モンタギュー、ヨーゼフ、私の三人がかりで突撃した。ゴーレムが注意を惹き付けた隙に、我々は大剣で龍の関節を叩き切った。今回ばかりは癒合することなく、輸送用に梱包される博物館の展示物のように、バラバラに崩れ落ちた。

せめても、我々があの恐竜に安らぎをもたらせたことを願う。怪物とは言えど、あれ自身に選択の余地はほぼ無かったのだから。

排撃班の撤退から間もなく、アメリカ空軍及びイギリス空軍が市街地への連続爆撃を開始し、ミュンヘンの惨状にごく平凡な原因を確立することで、ヴェールを実質的に回復することができた。しかしながら、カドモス班が恐竜レヴェナントを抑え込めず、翌日まで破壊できなかったことや、それによる局地的なヴェール破綻は、いずれも重大な作戦上の不手際である。加えて、ヘルヴィヒ・フォスの逮捕や逃亡阻止も達成されず、この死霊術師は依然として逃走を続けている。殺害または捕縛されない限り、彼は欧州への再侵攻作戦において重大な障害となる可能性が高い。

固有兵器としての機能は失われたものの、SCP-8847の残骸には依然として濃密な招死性エネルギーが蓄積されており、収容の継続が不可欠です。財団所属の死霊術師らは、SCP-8847の招死性エネルギーは今後約1000万年で安全な数値まで減衰すると見積もっています。

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