アイテム番号: SCP-8891
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 情報抑制プロトコルはSCP-8891の構成技術が一般科学で再現可能になるまで継続されます。
説明: SCP-8891は、ロータス・パラメディカルが1994年から1996年にかけて製造した、ユエラオEX®神経補綴インプラントです。SCP-8891は慢性疼痛、てんかん、脊髄損傷、運動障害、一部の精神神経疾患の患者を治療する目的で開発されました。

あるSCP-8891レシピエントの側面X線写真 (2003年頃) 。患者は数ヶ月前から顎の痛みと偏頭痛を訴えていた。中央処理ユニットが赤丸で囲まれている。
不活性状態のSCP-8891は、高さ5mm、底面円周9mmの円錐形の装置です。ユーザーの脊髄と近接する位置に移植されると、SCP-8891は生体適合性のあるアルミニウムと金で構成され、厚さ可変のプラスチック網で区切られた体節を有する微細な触手を繰り出します。各連結部の半径断面は60μm、長さは最長で3mです。
これらの触手は中枢神経系 (CNS) と末梢神経系 (PNS) の複数箇所に接続され、損傷した神経組織を迂回して、患者のために電気インパルスを伝達、誘導、生成します。メモリスタ1をベースとしているSCP-8891の設計は、制御下の使用期間中における限定的な学習能力を実現しており、理論上、SCP-8891は外部の監視無しでも長期間にわたって自己調整できます。
SCP-8891は臨床試験で極めて優れた性能を発揮し、耐用年数内では患者にとって理想的な治療結果をもたらしましたが、発売から間もなく製造中止になりました。内部文書は、ロータス社が超常市場2における医療用インプラントの需要を“過大評価”しており、ユエラオEX®の売上高が期待値に達しなかったことを示します。製造コストの高騰、非侵襲的な治療法の発展、1990年代の超常経済不況などが相まって、ロータス社の取締役会は製造中止を決議しました。1997年の第2四半期、ロータス社は独自開発した整備用ツールキットの提供を終了し、同社の顧客639名への技術サポートを打ち切りました。
SCP-8891の耐用年数は10年と見積もられていました。2004年以来、重篤な合併症を報告する患者が増え始めました。記録された副作用には、以前の症状の再発、インプラントの拒絶反応、細菌感染、臓器穿孔、重金属中毒3、失明、難聴、幻覚、痛覚鈍麻、過食症4、エイリアンハンド症候群、余剰幻肢症候群5、鬱病、気分変動、離人感・現実感消失症、内分泌障害、認知症、失語症、構音障害6、自律神経失調症7、脳神経疾患、脳卒中、発作、麻痺、昏睡、死亡などがあります。
2010/01/01時点で、インプラント移植手術を受けた存命患者422名全員が超常的な飛び地に居住しています。これらのユーザーの大多数が軽度から重度の合併症を発症していますが、外科手術の莫大な費用8や成功率の低さも一因となって治療を受けられない状態です。SCP-8891は患者の神経系と密接に絡み合っているため、患者に重傷を負わせずに摘出するのはほぼ不可能です。中央処理ユニットを停止しても効果は無いことが証明されました — SCP-8891が純正の整備用ツールキットから新たな指示を受信しない限り、搭載されたメモリスタは無期限に機能し続けます。
ロータス・パラメディカルは2008年の景気後退期に解散しました。物的資産は全て清算され、知的財産権は親会社のネプチューン・ダイバーシファイド・ホールディングスに移譲されています。現在まで、集団訴訟による補償は一切行われていません。
患者の治療を介した収容試行の予想費用は、SCP財団におけるオブジェクトあたりドルdollar-per-object (DPO) の年間基準額を大幅に超過します。このため、SCP-8891の完全な収容は、財団の運営権限が及ぶものではないと判断されています。
補遺8891-01: 破壊試験によって、SCP-8891との完全な統合は、対象者の反応時間を改善し、環境上の脅威9に対する部分的な耐性を付与し、ベースライン人類の標準を超えて物理的障害に耐えることを可能にすることが実証されています。自己持続機能を有する中枢神経系の増強手段として、ユエラオEX®インプラントが研究・収容ツールとしての未開拓の可能性を秘めているのは明白です。
財団の研究者たちは、好ましくない副作用を抑えた新たな改良版インプラントを開発できると確信しています。この目標の実現に向けて、プロジェクト・キョンシーは、ネプチューン・ダイバーシファイド・ホールディングスからSCP-8891の特許を買い取り、スペシャライズド・ケア・プロバイダーズ10を介した治療応用を開始する認可を求めています。そのようにすれば、財団は既存のユーザーから訓練データを抽出し、ハードウェア及びソフトウェアの更新を実地で耐久試験できるようになります。緩和ケアを必要とするSCP-8891レシピエントが数百名存在し、任務中に負傷する機動部隊員も増加し続けているため、プロジェクト・キョンシーの志願者が不足することはないと見込まれています。
補遺8891-02: 2011/07/22、患者X (76歳男性) が滑落事故に遭い、スリー・ポートランドの聖ヘドウィグ病院に入院しました。C4椎骨の骨折、脳幹の損傷、言語による意思疎通の欠如にも拘らず、患者Xは歩行能力を保っており、刺激への反応を示しました。医療ファイルを見直した医師たちは、患者Xがパーキンソン病の初期症状を治療する目的で、1996年にSCP-8891の移植手術を受けていたことに着目しました。
脳波検査の結果、患者Xには意識があるものの、一般的な閉じ込め症候群と同様に、自らの行動を全く制御できていないことが発覚しました。画像診断によって、SCP-8891は患者Xの脳神経に直接干渉し、視覚・聴覚情報を傍受していると確認されました。異例の状況を踏まえて、聖ヘドウィグ病院の経営陣は長期経過観察のため、患者Xをスペシャライズド・ケア・プロバイダーズに移送することを決定しました。
現在の仮説では、SCP-8891は冗長神経系として機能し、15年分の訓練データを利用して人間の行動を模倣していると考えられています。これによって、患者Xは単純な指示に従い、肉体的な作業をこなす能力を維持しています。今回の発見が持つ重大な意義を踏まえて、プロジェクトの研究者たちは、診査手術を介してSCP-8891の機能の限界を探ることを承認されています。