SCP-8911


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1989年頃のサイト-333。その後1992年に全焼した。

アイテム番号: SCP-8911

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-8911はサイト-333の屋内にのみ影響を及ぼすため、直接的な収容措置は不要です。サイト-333に駐留する全ての職員はSCP-8911について説明を受け、自身の立会いの下で発生した全てのSCP-8911を報告する義務を負います。

説明: SCP-8911はサイト-333で発生する聴覚異常現象です。影響を受けた職員は、一見すると無作為なタイミングや場所で、様々な人気シチュエーション・コメディ番組に用いられる録音笑いに似た音が聞こえたと報告します。SCP-8911の発生源はまだ特定されていません。

補遺8911.1: 以下は、記録されたSCP-8911発生例と、意図的にSCP-8911を発生させる試みの概略ログです。

1991/01/23: ラザフォード博士が書類を読んでいる最中に指先を切る。SCP-8911が約5秒間、彼のオフィス内で聞こえる。間もなくアノマリーの発生が報告され、SCP-8911に分類される。

1991/01/24: D-1221は制御環境下において、1枚の紙で右手人差指に切り傷を作るように指示される。D-1221は従うが、SCP-8911は発生しない。

1991/01/24: D-1221は制御環境下において、1枚の紙で左手人差指に切り傷を作るように指示される。D-1221は従うが、SCP-8911は発生しない。

1991/01/24: D-1221が放屁する。SCP-8911が約5秒間、実験室内で聞こえる。

1991/01/24: D-1221は制御環境下において、バナナの皮を踏んで転ぶように指示される。D-1221は従うが、SCP-8911は発生しない。

1991/01/24: D-1221は制御環境下において、バナナの皮を踏んで転ぶように指示される。D-1221はこれを拒絶し、ニュービー警備員に鎮圧される。D-1221に殴打を加えた後、後ずさりしたニュービーはバナナの皮を踏んで転ぶ。SCP-8911が約7秒間、実験室内で聞こえる。

1991/02/25: ハーランド博士は自宅が台所火災で全焼したことを知らされる。大きな拍手音を伴なうSCP-8911が約15秒間、複数の職員オフィス内で聞こえる。

1991/03/01: クイン研究員は無関係なプロトコル違反で解雇を通知される。大きな拍手音と喝采を伴なうSCP-8911が約20秒間、サイト-333全体で聞こえる。




補遺8911.2: SCP-8911が引き起こす各種の騒音や混乱への苦情を受けて、サイト-333運営陣は当該アノマリーの解体試行の是非を採決しました。投票の結果、5-2-2でSCP-8911の解体処分が決定しました。以下は試みられた措置の概略ログです。

計画: サイト-333 オープンマイク・コメディ・ナイト。

根拠概要: SCP-8911は滑稽な出来事に反応を示すため、望むものをより多く与えることによって満足し、消え去ると思われる。

ステータス: 承認

結果: SCP-8911は4時間に及ぶイベント中、一度も発生しなかった。解体試行は失敗した。

計画: サイト-333のDクラス職員を全員殺害する。

根拠概要: SCP-8911は他者の苦痛を好むことが判明している。苦痛を供給することによって、SCP-8911を鎮め、消失させられる可能性がある。

ステータス: 却下

結果: カルロス研究員はこの計画を提言したことで戒告処分を受けた。カルロスがその言動による1ヶ月間の減給を通告された時、SCP-8911がサイト全体で聞こえた。

補遺8911.3: 1991/06/30、ノーラン・グード管理官の後任として、ヴィンセント・ボハートがサイト-333を視察する予定になっていました。彼の到着時、SCP-8911がサイト全体で聞こえ始めたことが注目されました。以下は、ボハートが到着し、SCP-8911との相互作用が確認された後に実施されたインタビューです。

回答者: V・ボハート

質問者: N・グード、サイト-333管理官

注記: インタビューは、ボハートが到着し、SCP-8911との相互作用が確認された約15分後、サイト-333の屋外で行われた。

<記録開始>

グード: やぁ、ヴィンス。

ボハート: よう、ノーラン。お前のサイトが俺を笑い者にしてるんだが。

グード: うむ。君もこのサイトのちょっとした、あー、問題に気付いたようだね。

ボハート: 問題? 俺はてっきり悪趣味なイタズラかと思ったぜ。

グード: いや、そんなことはしないとも。

ボハート: とりあえずそうと分かって安心したよ。こいつは何だ、アノマリーか? あと、そのレコーダーは? まさか俺にインタビューする気じゃねぇだろうな。

グード: 後世のために我々の行動を全て記録しておきたいだけだ。アノマリーかという質問については、その通り。ほら、これが資料だよ。

[ボハートがSCP-8911の資料を読んでいる間、短い沈黙が続く。]

ボハート: こりゃまたとんでもねぇな。オーケイ。このサイトは録音笑いのアノマリーに憑りつかれてるってことか。しかし、なんで俺が建物に入った途端にそれが始まったんだ?

グード: 多分、君には生来の面白さがあるんじゃないかね。

ボハート: [笑う] そう思うか?

グード: 恐らくだがね。それか、君の身に起きる出来事が愉快なのかもしれない。

ボハート: 確かに、俺には面白おかしい災難が降りかかりがちだ。それに俺は結構愉快な奴だと自負してる。

グード: そうか。どうだ、中で話さないか? そろそろ昼飯時だ。

ボハート: 根性悪のお笑いSCPに存在するだけで笑われたくねぇんだけどな。

グード: おいおい、止したまえ。私たちはもう何ヶ月も耐えているんだ、数時間ぐらい平気だろう。

ボハート: 分かったよ。食堂にソルトウォーター・タフィーはあるか?

グード: あるとも。

[ボハートとグードがサイトに近付く。グードが暗証番号を入力した後、ドアが僅かに軋みながら開く音がする。ボハートが中に入ると、大きな拍手、喝采、どよめきを伴なうSCP-8911が聞こえる。.]

ボハート: [SCP-8911にかき消されないように大声で] おうおう、全く愉快だな。愛してるぜ観客ども! 今夜も元気でやってっか、アトランティック・シティ?

グード: [SCP-8911にかき消されないように大声で] さぁ来たまえ、こっちだ。

ボハート: ワオ、なかなか良い所だな。食堂は一式揃ってんのか?

グード: あー、割と普通だと思う。君は普段、昼食をどうしているんだ?

ボハート: 休憩室の冷蔵庫から適当につまむ。 [含み笑い]. 異常なもんを扱う仕事の有難い利点さ。従業員の昼飯が消え去る理由が幾らでもあるからな。

[ボハートは余所見をしながら後ろに下がろうとする。]

グード: ヴィンス、後ろに気を付—

ボハート: おうっ!

[ボハートは清掃されたばかりの床で足を滑らせ、“濡れた床注意”のフロアサインの上に転倒する。]

グード: 大丈夫か?

[SCP-8911が騒々しくなり、サイト全体で音量が180デシベルに達する。]

ボハート: たった今すっ転んだ人間に期待できる程度にゃ大丈…

[ボハートは立ち上がろうとするが、濡れた床で再び足を滑らせる。左脚の靴が脱げ、股間を直撃する。]

グード: 手を貸そう。

[SCP-8911の笑い声が苦しげになり、それまで笑っていた複数の声が咳込み始める。]

ボハート: [喘ぐ] うぅ、また立ち上がって転びたくない。

グード: おいおい、馬鹿なことを言うもんじゃないぞ。

[グードはボハートを立ち上がらせるが、ボハートの眼鏡が顔から滑り落ち、床に当たる。片方のレンズにひびが入る。]

ボハート: 最高だな。ファッキン・ファンタスティック。

[ボハートは身を屈めて眼鏡を拾い、掛け直す。]

グード: これで良し。さぁて、食堂に氷嚢を取りに行こうじゃないか。

[SCP-8911の笑い声は大部分が咳と喘鳴に変化しており、音量も弱まっている。]

ボハート: 靴ぐらい拾わせろ。クソッたれのお笑いサイトめ。

[ボハートの眼鏡が再び顔から滑り落ち、彼は誤ってそれを踏む。メガネは修復不可能なほど破損する。]

[SCP-8911の音量は著しく弱まり、ごく少数の声だけがまだ喘鳴を発している。]

グード: その… すまんね、ヴィンス。まぁ少なくとも財団には腕の良い検眼医がいるだろう?

ボハート: だろうな。特に俺は昇進するわけだし。

[ボハートは身を屈めて眼鏡と靴を拾おうとする。完全に腰を曲げた時点で、彼は放屁する。]

[SCP-8911が最後に一度だけ空咳を発し、沈黙する。]

ボハート: おっと、こりゃ失礼。

[10秒間の沈黙。]

グード: ヴィンセント、私たちは8911の解体に成功したらしいぞ。

ボハート: 俺たち?! 俺“たち”ってのはどういう意味だ?!

グード: 分かったよ、そう怒らないでくれ、ただ…

[グードが録音装置の電源を切る。]

<記録終了>

注記: SCP-8911はこれ以降、サイト-333で発生していない。グード管理官はボハートのアクシデントに巻き込まれやすい体質をサイトの為に活用したことを評価され、ボハートにはサイトの食堂で利用できる無料食事券が贈呈された。SCP-8911の文書記録は現在、Decommissionedへの再分類が保留されている。







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