SCP-8916
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記録・情報保安管理局

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SCP-8916、ヘンターヴィル公共図書館の所蔵写真より。

アイテム番号: SCP-8916

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-8916は現地の歴史、文化、遺産における重要な役割を担っているため、撤去は非現実的であり、また異常性を損なうリスクがあると判断されました。そのため、SCP-8916は現状のまま放置されており、ヘンターヴィル住民らは例年通りの収穫祭を続けることを許可されています。毎年5月15日、その年に生産されたSCP-8916-A実例の幾つかを、実験及び分析のために回収するものとします。

説明: SCP-8916は、アメリカ合衆国ジョージア州ヘンターヴィルにある丘、ハチェッツ・ヒルの頂上に立つ異常なスズカケノキです。正確な樹齢は切り倒して枯らさなければ断定できませんが、幹の直径や大まかな外見から推定する限りでは、樹齢40~50年程度1の非常に若い木であるように思われます。しかしながら、ヘンターヴィルの郷土史家は、少なくとも1866年まで遡れるこの木に言及した文書と、20世紀初頭のハチェッツ・ヒルにこの木が存在したことを示す数百枚の写真証拠を所蔵しています。これらの写真はヘンターヴィル図書館で公開展示されていませんが2、補遺8916.2に説明が添付されています。

北米大陸のスズカケノキは、一般的には晩秋に痩果を実らせます - これは棘のある小さな褐色の実で、内部は高密度で固く、大きな種子を内包しています。しかしながら、SCP-8916は毎年必ず同じ日、5月15日3に結実します。毎年5月15日の朝、SCP-8916は、SCP-8916-Aと指定される異常な果実を実らせ始めます。

SCP-8916-A実例は直径4~6インチの概ね球形の果実ですが、しばしば表面下に大きな突起やこぶが生じています。皮は暗色で、硬く、革のような質感があります。実験によって、この皮はヒトの皮膚と生物学的に同一であることが証明されています。皮を剝くと果肉が露出します。果肉は赤みがかったピンク色のヒト筋肉組織ですが、心臓、脳、消化器系の体組織で構成された実例も確認されています。この体組織は、果実がSCP-8916に生っている間は生きており、もぎ取られてからも通常6~10時間ほど緊張と屈曲を継続します。果肉は均一ではなく、不完全な体組織や絡み合った筋肉、また時には異物が含まれます - 最も一般的な異物は筋肉にめり込んだ歯です。SCP-8916-A実例に含まれる血液細胞の血液学的分析結果は、SCP-8916-A実例が例外なく鎌状赤血球症の陽性であることを示します。

補遺8916.1: SCP-8916-A実例の遺伝子検査結果

[倫理委員会センシティブ事項担当局により編集済]

補遺8916.2: ヘンターヴィル公共図書館の所蔵写真、1899~1920年

[倫理委員会センシティブ事項担当局により編集済]

補遺8916.3: 歴史的背景: アメリカ合衆国 ジョージア州 ヘンターヴィル

[倫理委員会センシティブ事項担当局により編集済]

補遺8916.4: 収穫祭の文化的分析、2018年、ヘンリー・ワシントン研究員

SCP-8916の存在とその結実パターンは、ヘンターヴィル住民らが単純に“収穫祭”と呼ぶ毎年恒例の祭典が始まるきっかけになりました。2018年4月、近々開催される収穫祭とその地元文化における位置付けについての報告をまとめるため、ワシントン研究員がヘンターヴィルに派遣されました。

エマ・グッドマン、44歳、主婦

収穫祭はここの郷土文化の礎よ。あれこそがあたしたちを独特にしてるんだからね? どの町も自分たちは特別なもんを持ってるって言いたがるし、実際そうなんだろうけど、他所の町にはあの木は無いし、収穫祭も開かれないってはっきり言い切れるわ。あれは - そう、伝統の一部とでも言えばいいのかしら! だって、あたしの一番昔の想い出の1つは、お父ちゃんがあたしと姉さんたちを収穫祭に連れてってくれた時のものなのよ。つまり、あたしたちがまだ子供の頃にね。当時はせいぜい5歳か6歳ぐらいだったはずだけど、とっても楽しかったのを覚えてる。大通りで菓子屋を開いてたジェンキンスさんが、大きなカートを引いて来て、ソルトウォーター・タフィーを5セントで売ってたっけ。それに当時は、町がロデオピエロを1人雇って、木登りが始まるお昼頃までフェイスペインティングや風船動物アートをやらせてたの。そういう催し物、地元の文化と歴史こそが小さな町を特別にするのよね。

リサ・スチュワートソン、29歳、教師

ええ、収穫祭は最高です! 子供にとっては素晴らしい体験ですよ。だって、私が小さい頃にも母さんと父さんが連れて行ってくれましたし、両親もやっぱり親に連れられて行った、そのまた前の世代も、って言ってました。正直なところ、どういう経緯で始まったかは誰も知らないんじゃないかと思います。かく言う私だって知りませんしね。だけど毎年、5月15日をみんな楽しみにしてますよ。学校は1日休みになりますし、誰もが食べ物やゲームが沢山準備された町の広場に繰り出します。揚げパンの屋台がいっぱい、時には郡内の農家の皆さんがファーマーズマーケットを開いて、これ以上無いぐらい美味しいハチミツを売ったりします。そして正午になったら、みんなでハチェッツ・ヒルに登るんです。 (彼女は笑顔で自分の腹を撫でる。) 4月中に出産予定なんです。名前はもう決めました。この子が伝統を恥じない町で育つんだと思うと、やっぱり嬉しいですよ。

トッド・ラム、51歳、肉屋

収穫祭は厳密には朝8時に始まるんだ。毎年設営を手伝いに行ってる - 当日は誰も食料品の買い出しなんかしないからね、店を開けていても意味が無い。私はジャーキーの箱を幾つか持ち出して、1本1ドルで売る。ともかく、売り子と芸人たちは8時から準備を始めるんだが、メインの催し物は正午だ。みんなでハチェッツ・ヒルに登る - 歴史には詳しくないが、どうもあそこはずっと昔から、ヘンターヴィルの人たちにとって、ある種の待ち合わせ場所だったらしい。理由もすぐ分かる - 木の下に立つとこの町のほぼ全体が見渡せるんだ。いや、ともかく。丘に登る頃には、果物は太陽に数時間焼かれて完熟している。そこで梯子を何本か用意して、摘み始めるってわけさ! 私は腰を痛めてるから、自分ではあまりやらないがね、家族が一緒に時を過ごしている様子を見守るのは良いものだよ。子供たちが笑いながら鬼ごっこをしたり、果物でキャッチボールをしたりしてね、うっかり果物を踏んづけたり、とっておきの服に果汁が跳ねたりすると歓声を上げるんだ。こういうのは小さい町でしか起こらないことだ。君には分からんだろうなぁ。

アダム・ジェファーソン、19歳、大学生

あれの話はしたくない。

トロイ・ホッジス、78歳、退職者

祝わない奴らは昔からいたよ。俺はそいつらを理解できるふりして時間をドブに捨てる気はねえ。仕事も学校も丸一日休みなんだから、そいつを最大限に活かして仲間と一緒に過ごしたらどうかってんだ。ガキの時分だって、うちの家族が町を横切って歩いていく時 - 俺は郡の端っこにある農場に住んでたんでな - 南西地区4の家並みを通り過ぎていくと、そこの連中は家に閉じこもって、せっかくの収穫祭を無駄に過ごしてたよ。声に出しても届かねえぐらい離れると、親父は俺に、世の中にはしょうもねえ奴らだっているんだと言ったもんだ。祭りの始まりがどうだったかなんて、誰が気にするってんだよ? 今となっちゃ、俺たちはただ伝統を祝ってるだけなんだ。そりゃ勿論、繁華街のあの銅像の時みてえに、そういう考えを持つこと自体がけしからんって風潮もあるがね。あの連中は歴史をぶっ壊して書き換えたがってるんだ。しょうもねえ奴らだ。

アンジェリン・モンロー、41歳、司書

第一次世界大戦以降、私たちは毎年、収穫祭の幅広い記録を残しています! 写真とか、出店やイベントの記録ですね。全て1冊の本にまとめて図書館に置いています。こういう文化を維持するための1つのやり方ですよ。子供たちが喜んで読みに来ます - 時々、一緒に親御さんが来て、若い頃の自分が写った昔の写真を見せたりしていますよ。微笑ましいですよね。ええ、それ以前の写真もあります。ただ、あれは公に展示するにはちょっと、ねぇ? 特に小さい子供たちの前に出すのは憚られます。彼らはあんなものを見る必要なんてありません。でも時々、アテネから歴史専攻の学生さんが閲覧しに来たりもしますし、まぁ、失礼があってはいけませんからね、彼らには公開します。ただ、私に言わせれば、あれは奥の書庫にしまいっぱなしで良いと思うんですよ。だって意味が無いでしょう? 今現在の収穫祭とは全く無関係ですよ。

ペイジ・コームズ、7歳、小学2年生

あたし、果物摘みが一番好き! 去年はママとパパが梯子を登らせてくれて、あたしが果物を選んだんだ、手が届く一番でっかいやつを選んだのに、お兄ちゃんが梯子をずっと揺らしてるから取れなくって、だからパパが手伝ってくれてそれで取れたの! それでね、あたしたちが果物を摘んだ後、みんなで敷物とかピクニックテーブルに座って、ママがレモネードを持ってきて、あたしたちみんなで座って摘んだ果物を食べた! 暑かったけど、木がすっごくでっかいからそんなに暑く感じなかった。それでね、みんなやってるから、あたしも食べ終わってから2番目に仲良しのアニー・モンローに種を投げてやったの、アニーのママはモンローさん。でも2番目に仲良しって言ったのはアニーには内緒だよ、あたしが一番仲良しなのはライラ・フリーマンなんだけどあの子は収穫祭には絶対に来ないんだ。

クラリッサ・フリーマン、45歳、リモートワーカー

勿論、娘は行きたがっています。まだ子供ですから。お友達が楽しんでいるのを見れば行きたがりますし、腹を立てて、自分の部屋ですねて、私が収穫祭に行かせようとしないのは自分が嫌いだからだと言います。大きくなったらあの子も分かってくれるでしょう。何台のキッチンカーが呼び込まれても、何組のバンドが演奏に招待されても、私には関係ありません。あれは間違っています。何もかも間違っています。

ジャック・グリーン、38歳、事業主・市会議員

請願は必ずある。収穫祭を中止し、木を切り倒せ。祝うのを止めろ。そういう意見には配慮しない。彼らは単なる扇動者でしかない。収穫祭は我々の歴史だ。小さな町でしか起こらない類の催事なんだ。都会人の声などどうでもいい。我々はあれを止めるつもりはない。もし彼らが気に入らないなら、そう、ヘンターヴィルに来てもらわなくて結構だ。私もやはり息子を木に連れていく。私の家族は北部の侵略戦争以来ここに住んでいる。1899年、ハチェッツ・ヒルのあの木の横に、ロープを手にして立つ曾々祖父の写真を持っているよ。今の収穫祭があるのは彼がいたからこそだ、神よ、彼の霊を休ませ給え。私はその写真を見るにつけて、率直に言おう、我々が現在も収穫祭を開くのは、彼がずっと昔の5月15日にあのような行為に及んだのと同じ理由なんだと、そう思う。伝統を、生活の在り方を、汚そうとする者たちから守るためなんだ。

私は例年通り、5月15日を楽しみにしているよ。今年の収穫祭は既に素晴らしい祭りになりそうだ。 (彼はワシントン研究員の姿を眺め回す。) だが、君は顔を出さない方が無難かもしれないな。

倫理委員会センシティブ事項担当局は、これまでのところ、介入してSCP-8916を財団の管理下に移す提言を却下しています。この木の過去の重要性を考慮すると、その継続的な存在は正常性の範囲内です。

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