SCP-8976
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A ROUNDERHOUSE Joint

評価: +11+x
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コンテンツ情報 ↑

[映像記録破損]

L ピアソン: ……それであなたは⸺、すみません。いつ初めにそれを見たと仰いました?

M ジョーンズ: 1982年。SUGARBIRDを作っていた頃ね。

L ピアソン: SUGARBIRD?

M ジョーンズ: ええ。部門間の機器コードを標準化するという大きな取り組みの一環でね。SUGARBIRDは、機器からのリクエストを受け取って、それを標準化されたシステムの形式に変換してから、関連するデータベースにフィードバックするという、最もつまらなくて単調な作業の1つを実行するアルゴリズムだった。当時のわたしたちはまだ本当の部門ではなく、数人の秘書がいるだけの小さなオフィスだった。私と、もちろんそれだけじゃなくて…ウィリアムズ、ハンナ・テヴォイ、ソンヒョン・バーバー⸺彼のことは単に皆ソニーと読んでいたけど⸺それとレスリーね。

L ピアソン: 私はその時いないですよ。

M ジョーンズ: もちろん貴方じゃないわよ。別のレスリー。

L ピアソン: なるほど。あなたは1982年、RAISAの初期の職員と共にSUGARBIRDを制作していた。それで、最初にSCP-8976を発見したのはいつのことですか?

M ジョーンズ: 最初は発見してないの。私はそこに無いのを見たのよ。

L ピアソン: どういうことです?

M ジョーンズ: 1967年から1969年にかけて、電気的収容部門が行った機器注文記録の一部が消えていたの。情報が織り交ざりはじめて、間違った注文が間違った記録に書かれて、ありえない日付と時刻がついて、っていうのを、私は自分の端末上でそれが起こるのを見たのよ。それで最終的に、それらの情報は消え去って、最初から何もなかったかのように記録に穴を開けて終わったの。

L ピアソン: ご存知だと思いますけど、デジタルデータが失われる理由なんて無数にあるでしょう。

M ジョーンズ: セキュアな財団の端末で、わたしたちが使っていた3重の冗長系付きバックアップで、私はその時以外で起こったのを見たことが無いわ。それはたった数キロバイトのデータで、喪失しても誰も⸺もちろん私を除いて⸺気付かないようなものだった。誰にも気付かれずに済んだかもしれなかったけど、あまりにも急に大胆になったのは彼にとって失敗だったわね。

アイテム番号


SCP-8976

オブジェクトクラス


KETER

特別収容プロトコル


TBA

説明


SCP-8976は現在未収容の、SCIPNET分散ネットワークの中に存在するデジタル情報実体です。SCP-8976の詳しい性質や目的は、さらなる研究が待たれるため、未解明のままです。SCP-8976は、SCIPNETネットワーク内の情報を消費している情報食性の実体です。現時点では、これが知覚能力を有していると信じられる根拠は存在していません。

発見


SCP-8976は、SUGARBIRD計画の過程において、情報安全局の局長である私、マリア・ジョーンズによって1979年7月2日に発見されました。詳細な説明は以下を確認してください。

『情報食』(1976) - マリア・ウェズリー・ジョーンズ博士による未発表の随筆


1.png

Elise Smiling (1895), ウジェーヌ・カリエール作。情報の消費を視覚的に例示させるため、画像に情報消費アルゴリズムを繰り返し適用させている。

Ⅰ. 時々、人類の記録技術の発展がわれわれ人類と言う種を永久に変えてしまうことがあります。風船の上に乗ったアリのように、わたしたちは世界がどれほど広がっているかを知ることはできません。ただ足元で世界が揺れ、その先端に向かって動いていくのを感じ取れるに過ぎないのです。シュメールの農夫は穀物の種を耕す方法を学び、ジェームズ・ワットは革命的な蒸気機関を披露しました。そうやって風船に息が吹き込まれていったのです。

今、わたしたちは知識社会の瀬戸際にいます。どのように言語が形成されて、わたしたちが作製することのできる思考機械の規則や制限がどのように構成されるか、情報の理論がまさにわたしたちの目の前で描かれつつあります。膨大な情報の蔵書を部屋や倉庫といった、小さなアレクサンドリアに保管できる能力は、かつて穀物が与えてくれたものと同じ希望をわたしたちに見せてくれています。この予測をしているのは私だけではありません。だからこそ、私はさらに確信を深めています。

しかし、新しい地形は新しい捕食を招きます。ダーウィンの進化論はそれらの生存について語っています。環境にニッチが生まれると、何かがそれを埋めるために進化するのです。わたしたちは情報の奔流の中に生きています。私がこれを書いている機械には、私の生まれる前の記録が保存されており、そしてそれは私よりも長く残るでしょう。進化したり、そのようにデザインされた何かがいれば、それが飢えることは決してないでしょう。私は、新しい情報の消費、すなわち情報食infovoreによって存在する実体⸺生物か、プログラムか、もしくはアルゴリズムか⸺について考えています。

[映像記録破損]

L ピアソン: すみません。今、ファイルを見ていたんですが……1982年に初めて見たと仰いましたよね?

M ジョーンズ: そうね。それが何か?

L ピアソン: ファイルには1979年7月2日だと書いてあります。

M ジョーンズ: あら。きっとタイプミスでもしてしまったのね。1982年の春よ。

L ピアソン: そうですか。それと、ずいぶん簡素なファイルですね。

M ジョーンズ: 当時は今より緩かったのよ。そのくらいの内容で提出して、もっと情報を得られてから、後追いで補完してよかったの。

L ピアソン: このメインファイルに更新をしたことなんてありましたっけ?

M ジョーンズ: いえ、メインファイルじゃないわよ。何を言っているの?何か新しいことが見つかったら、補遺として追加していくだけ。

L ピアソン: このファイルには200を超える補遺が、40年以上にわたって追加されていました。

M ジョーンズ: ご存じの通り、長期間のプロジェクトだったわ。最初はとても単純だったのだけどね。私はそれの行動をもっと観察して、正確に何なのかを理解したかっただけだから。

インシデント番号


8976.2

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ

概要


8.9kBのジャンクデータを、SCP-8976の攻撃を受けたメモリ区画に挿入しました。反応なし。

インシデント番号


8976.3

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ

概要


8.9kBの記録データを、SCP-8976の攻撃を受けたメモリ区画に挿入しました。内容は削除された記録から再作成しました。反応なし。

インシデント番号


8976.4

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ

概要


8.9kBの記録データを、SCP-8976の攻撃を受けたメモリ区画に挿入しました。内容は1975年3月と日付のついた、財団機器の新しい記録です。3分13秒後からデータの破損が始まり、3分59秒後には端末のメモリからデータが完全に消失しました。
2.png

Elise Smiling (1895)

Ⅱ. もし存在するなら、情報食者は消費的なアルゴリズムであることでしょう。それ以上の制約はありません⸺なぜその必要があるのでしょう?情報食実体は情報を消費して知識を食べ、たらふく食べた後に残されたパンくずならぬ無の痕跡⸺それが存在しないことにのみ気を向けます。このように、学ぶものを求めるという意味では、それは人間とさほど変わりありません。

しかしわたしたちとは異なり、情報食者は「記憶」できないので、学んだことから将来の世代のために情報を残すことをしません。効率的な消費者であるためには単純でなければなりませんが、そのために複雑な記憶構造は構成されません。複雑な記憶を持つとしたら、食べたもののサイズと複雑性に線形に比例したものになるでしょう。つまり、個別の情報に対して、それを以前食べたかどうか判断する作業を行うにつれて、その作業はますます遅くなるということです。情報食者は、味わった情報を簡単に破壊できるため、その情報に戻ってくることは二度とありません。情報食者のほとんど倒錯したと言っていい単純さには注意するべきです⸺食べた情報は決して記憶されず、食べたことも決して記憶されず、常に空腹を感じているでしょう。

情報食プログラムの利用方法は数多く存在します。控え目に言っても、2000年までにほとんどの金融機関は主に電子記録を保存するだろうと予測されていて、リスクは完全に管理可能になるでしょう。国家や社会全体がすぐにそれに追随します。そのようなデータの一部分だけを貪るように情報食プログラムを開発すれば、その虫食い穴に気付かれる前にかなり長い間メモリの中を暴れ回ることができるでしょう。

L ピアソン: 2回続けて何も起こらなかった時に、何か思い違いをしていたとは思わなかったのですか?

M ジョーンズ: 私は間違いを犯さない。

L ピアソン: なるほど。では4番目のインシデントについて教えてください。

M ジョーンズ: 関係しそうな変数が、データの内容とメモリ内の場所の2つだった。内容の方が操作しやすかったから、最初に意味のない、意味のない0と1をぐちゃぐちゃに配置しただけのデータでやってみた。何も無かった。次に、メモリの特定の部分に記録されたことが問題で、そのせいでどうやってか引き付けたのかもしれないから、消されたデータをコピーして同じ場所に置き換えたの。

L ピアソン: 消されていたデータを、どこから?

M ジョーンズ: 私の記憶はとても確かSteel trapよ。で、それも上手くいかなかった。だから私は新しいデータを用意して、それは消えてなくなった。オーケイ、これで、新しい情報と新しいデータが要ることがわかった。次の2回は、新しいデータで繰り返した。

L ピアソン: ISAの他の職員にも見せたのですか?

M ジョーンズ: もちろん。

インシデント番号


8976.7

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ、ソンヒョン・バーバー、レスリー・メイヤー

概要


38.9kBの記録データを、SCP-8976の攻撃を受けたメモリ区画に挿入しました。内容は1951年3月と日付のついた、財団機器の新しい記録です。10分間待ちましたが、反応なし。

インシデント番号


8976.8

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ、ソンヒョン・バーバー、レスリー・メイヤー

概要


前回のテストに使用した38.9kBの記録データを、SCP-8976に攻撃されていない新しいメモリ区画に双周しました。10分待ちましたが、反応なし。
3.png

Elise Smiling

Ⅲ. 情報食はその消費によって定義されます。それは重要であったり馴染みのない情報を見つけ出すように設計⸺これが人工的に設計されるか自然にできるかは問わずに⸺されます。これは、人間と情報食者との決定的な違いをもたらします。人間は重要な情報や馴染みのない情報を探しません。全ての情報は、消費するまではわたしたちにとって馴染みのない情報であり、消費した時にのみ、それが重要かどうか決定できます。本質的に、わたしたちは頭の中に、重要なもの (職員番号)、馴染みのあるもの (家の鍵の場所)、その両方であるもの (新婚初夜の記憶) で整理されたモデルを記憶の中に構築するのです。

まとめると、人間の心は、情報食者が最も簡単に捕食できる記憶セットの理想モデルです。従って、人間が記憶するように電子化した記憶のモデルを構成することと、電子化したデータとして人間の記憶を整理することの両方のリスクがわかります。情報食者は情報の繰り返しをすべて破壊して、将来の検索をより効率的に行うために、重要で馴染みのある情報を探します。もしそれが心を捕食しても、心は捕食されていることに気が付かないでしょう。人間の記憶は、電子的な記憶とは異なり、誤りあるいは自己不信を起こしやすいからです。その関係は、髄液に口吻を突っ込んで吸い取る寄生虫のそれに近くなります。

M ジョーンズ: そいつは私を挑発していた。存在を照明するための他の証人がいる時には何もして来なかった。

L ピアソン: なにか他の変数が関係していたのかもしれませんね。知性がある、というのはだいぶ飛躍した結論に見えます。

M ジョーンズ: まあ、否定はしないわ。私がそう直感的にそう感じただけ。

L ピアソン: ] というのは物凄いことですよ。まあ分かりました。それは確認を取ったのですか?

M ジョーンズ: ひとまず、二、三回の実験で。これはとても奇妙なことだから、覚えておいてね。私はデータベースの小さな奇妙な癖を見つけたの。SCiPNETは今のような形でさえ存在していなくて、研究論文を交換するサイトのためのパケットネットワークが大部分だった。私にはISAのために他にもっと急いでやらないといけない仕事があった。

L ピアソン: だから、それは脇に置いておかれた。

M ジョーンズ: そう言えるでしょうね。記録形式の標準化、資源割当てと物資要求の中央集権化。そちらの方が優先されたわ。私は研究者じゃないし、それは……一種の趣味のプロジェクトだったから。

L ピアソン: わかりました。けれど、その後もあなたはその問題に、明らかに何度も戻ってきましたね。

M ジョーンズ: ずっと気になり続けてたのよ。もしそれが大規模にデータを食べ散らかしていたら……。私は何が分かっていないかを分かっていないのが嫌いなの。だからそれに集中することにしたわ。そいつが何を狙っているのかを解明して、パターンを作れないかどうか試したの。

インシデント番号


8976.17

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ

概要


1970年から1980年にかけての、機器の注文、職員のシフト記録、給与領収書の総計からなる77.45kBのデータ。データの破損は2分10秒後に始まりました。データは部分的にしか破損および消去されず、大部分はSCP-8976に影響を受けずに残されました。

インシデント番号


8976.18

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ

概要


人事ファイルMG-1955432 (マリア・ウェズリー・ジョーンズ) から抜粋された職歴に関する概要からなる245.55kBのデータ。データの破損は39秒後から始まり、2分3秒かけてデータは完全に消費され、消失しました。

インシデント番号


8976.45

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ

概要


私の個人的な写真からなる23.6MBのデータ。データの消費は21秒後から始まり、4分1秒かけてデータは完全に消費され、消失しました。
4.png

Elise Smiling


Ⅳ. 情報食者に感染された記憶媒体⸺生物学的か電子的かを問いません⸺は、その最終段階になると、媒体の身であった部分はもはや孔に近くなります。しかし、記憶媒体はそれに気が付かず、そのまま自分の働きを全うしようとします。元々記憶を保持するための存在ですから、その記憶が破壊されたら、媒体は空のセットへと近付き、意義を失います。この点において、コンピュータは人間より勝っています。電子的な記憶媒体は空になったとしても、新しいデータを入れ直すことができるからです。生物学的な記憶媒体は、ひとたび空になってしまったら、新しいデータを入れ直すことはできません。人間は一度しか人生を生きられません。脳は、文字化けして破損した残骸の海に浮かぶランダムなバイト列の中から、整合性を確認できるデータをどうにか塚見ます。それがどういう結果に辿り着くかは予想できません。

L ピアソン: あなたを狙っていたのですか?

M ジョーンズ: 特にそうというわけではないわ。数年前に亡くなった保安職員2人のデータと記録で、同じことを繰り返した。喜んで食べたわ。変わってしまったの。それはもう飽きてしまって、機器の注文じゃ興味を示さなくなってしまった。

L ピアソン: それが懸念だった、と?

M ジョーンズ: 本当にね。私が貴方に言ったときに、貴方も懸念したでしょう。

L ピアソン: ……ええそれは、はい。私、なんて言いましたっけ?

M ジョーンズ: ジャンクデータなんて誰も気にしないって言ったわ。10年前の領収書や指示書なんて誰も気にしない。だけど自分の写真や文章は違う。

L ピアソン: とても熱心に破壊していましたが。

M ジョーンズ: 私の記憶は確かよ。Mind like a steel trap.文章は書き直したわ。タイプライターで。何もリスクは冒していないの。

L ピアソン: 写真は?

M ジョーンズ: ]

[彼女は一瞬微笑む]

M ジョーンズ: 残念な損失だったけどその価値はあったわ。

L ピアソン: それで、どういう結論になったんですか?

M ジョーンズ: わたしたちはコンピュータじゃないから、記憶を厳密な順序で並べたりはしない。それは経験、景色、音、その他の感覚の寄せ集めであり、最近のことかどうか、自分たちにとって重要かどうかでおおまかに分類されている。一方SCP-8976は盲目のモグラみたいに貪欲で、穴を掘った先に何があるかわからない状態で目の前の物を貪り食っている。自分が欲しているものを探す方法がないの。

L ピアソン: それで、どういうものを欲するの?

M ジョーンズ: 大切なもの、重要なもの。わたしたちが大切にしている、子供のころから頭の中に残っていて死ぬまで残り続けるような記憶。誰かにとって重要な情報をそいつらは欲しているの。

L ピアソン: なるほど。

M ジョーンズ: ええ。ところで今何時かしら?

L ピアソン: 2時の15分前ですね。

M ジョーンズ: あら、ミーティングの時間ね。

L ピアソン: ……いえ。ミーティングはキャンセルになりましたよ。覚えていませんか?

M ジョーンズ: あら、私を通さずにそんなことをしないで欲しいわ。

L ピアソン: ]

インシデント番号


8976.67

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ

概要


予定していないインシデント。前週にSCiPNETに提出されたSCP-████の補遺が欠けているという苦情がRAISAにありました。私が仲裁に入り、SCP-8976が活動していた典型的な痕跡を発見しました。補遺は書き直して、再提出するよう指示されました。

インシデント番号


8976.70

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ

概要


自身が1979–1987年に書いた状態/問題分析で構成された、1.4MBのデータ。データの破損は1分3秒後に始まりました。1分15秒でデータの破損は止まり、ファイルは消費されずに止まりました。飽きたようです。

インシデント番号


8976.71

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ

概要

5.png

Leslie Smiling

予定していないインシデント。SCP-████のファイルが失われたという苦情がRAISAにありました。私が仲裁に入り、ファイルおよび関連文書の全て (123.3MB) がデータベースに存在していないことを確認しました。SCP-8976がメモリ内で活動していた典型的な痕跡を発見しました。機密上の理由で調査を延期するように指示し、ファイルは書き直されました。奴はどんどん飢えています。

Ⅴ. 人間はお互いに気を配るため、この点において優れています。相手が何かを忘れていることに気付くと、心配して、相手に思い出させようとします。わたしたちは思い出させてもらい、記憶の空白を埋めることができるという点でも優れています。ただし、もちろん他者というのもまた欠陥のある人々の集団ですから、愚かなことに、あなたに誤ったことを納得させようとするかもしれなません。それでも、彼らは最善を尽くそうとしています。

記憶は単なるデータの一種別ではありません。記憶は、感覚などの様々な種類のデータの複合体です。サクラメントで食べたオレンジの味と、レイ・チャールズのレコードの音は、完全に異なる種別の入力ですが互いに密接に絡み合っており、足に当たる小川の冷たい水を感じたり、投げられた石に対する赤面するような屈辱を感じたりします。それらは複雑で重なり合っているため、そんなパズルの1ピースだけが抜け落ちたとき、それに気付くことは困難です。

L ピアソン: このログはISAがRAISAになったときのものですね。お忙しかったでしょう。

M ジョーンズ: とても。今の私みたいにね。RAISA職員が横柄に私の仕事を邪魔して気を散らすことなんてないわ。

L ピアソン: 貴重なお時間を取らせて申し訳ありません。ですが、必要な評価プロセスですので。

M ジョーンズ: 必須なのはよく知っていますから。貴方が生まれる前から私はの職に就いているのですよ。

L ピアソン: 私が就いたときも助けていただきました。

M ジョーンズ: どういうこと?

L ピアソン: なんですって?

M ジョーンズ: 貴方を助けたって、どういうこと?

L ピアソン: ]

M ジョーンズ: いいえ、私たちは初めて会ったはずよ。

L ピアソン: ]

[彼女は鼻を鳴らす]

M ジョーンズ: べつに貴方だけがそんなことを言っているわけじゃないけれどね。

L ピアソン: このログは問題ですよ。これによると、そいつはメインデータベースにアクセスできたってことでしょう?読み込み、書き込み、書き換え、それに削除まで。

M ジョーンズ: ええ。最初のうちはできなかったんだけど……育ったみたいね。より強力で、より飢えたものに。

L ピアソン: それで、貴方はそれが知性を持っていると信じている、と?

M ジョーンズ: 今?ええ。それは……ええ、それはRAISAの再編成をしていた時だったわ。そんな小さくてしつこいサーバーのバグのために費やす時間も気力もなかった。

L ピアソン: ]

M ジョーンズ: その時私は、私よりも長く生きる有機的な部門を作ろうとしていた。その取り組みから戻ってくるまで、私はじっくり座って結果を分析するなんて本当にやらなかったわ。今思えば、それが間違いだったわ。評議会と会議する前に急いでデータを見るくらいしていれば、何か違ったかもしれない。

L ピアソン: かもしれない、だけでしょう。

M ジョーンズ: 分かってる。けれど、そう思わずにいられないでしょう。もしかしたら、これはさっさと撲滅されていたかもしれない。エリーゼが生きていたかもしれない。

M ジョーンズ: なに?

L ピアソン: エリーゼと仰いましたけど、この文書のどこにもエリーゼなんて出てきていませんよ。

M ジョーンズ: あら、いえ。彼女はいるのよ。ただ…

[彼女はこめかみを軽く触る]

M ジョーンズ: ごめんなさい。少し混乱してたみたい。

L ピアソン: 大丈夫ですよ。少し休憩しますか?

M ジョーンズ: いえ、いえ。大丈夫です。さっさと終わらせてしまいましょう。それはどんどん大胆になっていきました。与えられてないデータベース領域にまで踏み込んでいったのです。秘書をしていた時には、データベースに目を光らせておくのにちょうどいい小さなペットでしたが、今や私は大きな部門の管理官です。SCiPNETの有用性はすぐには低下しませんでしたが、それは既に消し去るべきものでした。

Ⅵ. 私はもうすぐ退職します。私はこの組織に忠実に奉仕して、RAISAを私が誇りに思う組織に育てあげました。時々、私はあのファイルやこのエッセイに帰ってきます。しかし、決して長くは戻っていません。これは混乱したとりとめのない文章なので、引き出しにでもしまっておいた方が良いでしょう。この補遺は主にレスリー、あなたのために書いています。私がルーファスと一緒にモンタナに出発した後、あなたが私の引き出しを探すだろうと思っているからです。若かったころ、ISAのシフトの間にこの文章を書いていました。椅子の繊維が擦れる音や、オフィスの壊れたエアコンが出す古臭い空気の匂い、秘書やタイピストが履かなければならなかったばかげたハイヒールの締め付けられるような窮屈さを覚えています。

インシデント番号


8976.83

報告者


自身(のみ)

概要

データは物理的に隔離されたサーバーに読み込まれ、その後、電源を備えたファラデーケージの内部に配置されました。データは、高重要度に分類された様々なSCPに関する78MBの実験データで構成されていました。データの破損は2分10秒後に始まり、7分32秒かけて完全に消費され、消失しました。進行を遅くすることしかできませんでした。


インシデント番号


8976.98

報告者


自身(のみ)

概要

SCiPNETとネットワークが完全にクリーンアップされました。全ての機密データは物理的な永続メモリにバックアップされました。コアサービス群は。異常なコードや改変がないか検査された後、2週間かけて1つずつ復帰されました。データの回復前に空のネットワークで試験が行われました。私の個人ファイルと機密ファイルから構成された101.3MBのデータが使用されました。データの破損は55秒後に開始され、2分後、全てのデータが消費され消去されました。こんなことはありえません。


6.png

Elsie Smiling

インシデント番号


8976.101

報告者


自身(のみ)

概要

SCiPNETシステムへの電力を意図的に減らしました。サクラメントに戻って、小川に向かって石を投げています。厚着をしてケンブリッジ行きの電車を待っています。MITの講堂で、プラッド柄のドレスと足の痛くなるハイヒールを履いています。白人の教授たちは私が何も言えないことを知っているので、嫌悪感と欲望が半々に混ざりあった態度を隠そうともしていません。私が戻ってこなければクリスマスにクラリスの家に行けるので、それを知らせるために故郷のパパに手紙を書いています。

私はまたそこにいます。

[不明]: あれほどのことを生き延びたと。

M ジョーンズ: どれだけ深く潜り込んでいたのか、私には全く分からない。あれは回路基板とシリコンの間をうごめいて、もはやSCiPNETに寄生しているだけでなく、その一部になっていた。

L ピアソン: ]

M ジョーンズ: 誰も見ていないのは私のせいじゃないわ。人間は間違いを犯すもの。何かが欠けているのを見て、何か思い違いをしていたと思い込むわ。

L ピアソン: あなたは違う。

M ジョーンズ: ええ、私は違う。今までもそんな人間じゃなかったわ。私が小さい時から、覚え間違えるなんてことしたことがないもの。私の姉は人形をどこに置いたか忘れたり、洗濯物を一晩中外に置きっぱなしにしていたけれど、私は違う。

L ピアソン: ]

M ジョーンズ: けれどとても上手になったじゃない。

L ピアソン: あの、貴方は……覚えていますか?

M ジョーンズ: 私は今なんて言ったの?

L ピアソン: 大丈夫です。ええ、大丈夫です。続けてください。

M ジョーンズ: わたしたちが実行しようとした30幾種類の戦略のうちのたった2つに過ぎないの。

L ピアソン: ]

M ジョーンズ: 貴方は明らかに父親の頭脳を受け継いでいる。わたしたちは成功しなかった。わたしたちが何を探しているか、知っているのが私だけだったのもよくなかった。評議会は、存在しているかどうかも分からないものに私がお金を使うことを好まなかった。評議会の思うままになっていれば、きっとそのファイルは破棄されていたでしょうね。

L ピアソン: どうしてそうならなかったのでしょう?

M ジョーンズ: RAISAの誰もが、私の判断は疑いようがないと知っているからです。

インシデント番号


8976.120

報告者


私(だけ)

概要

prj. ウッドペッカーが実行中です。scipnet dbのリアルタイム冗長バックアップがリアルタイムで更新されています。4人のraisa技術者がデータの正確性を確保するために待機しています。予期しないデータの削除があった場合、セントラルscipnet dbへの再アップロードを承認する前に、2人以上の技術者でデータの有効性を確認します。

最初のSCP-8976インシデントによって、ウッドペッカーのバックアップから同時にデータが消えました。プロジェクトは中止されました。失敗。


インシデント番号


8976.129

報告者


マリア・ウェズリー・ジョーンズ、エリーゼ・ロベルタ・ジョーンズ

概要


scipnetはraisaの発行する一意生成された二次認証コードを送付されていない変更の書き込みを許可しないよう修正されました。毎回の書き込みごとに認証コードを要求され、その生成と送信前にはユーザidと意図の検証が必要です。更新はpushされました。

その後SCP-8976は検証機構を完全にバイパスされ、ハードウェア上のメモリが直接改変を受け、結果としてレジスタの短絡がおきました。基盤の交換には多くの費用がかかりました。インシデントは更新を巻き戻すまで、何度も再発しました。執念深いネズミだこと。

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Elsie Smiling

Ⅶ. オフィスを完全に乾燥でき、血を流すs木々が外の少年は間違えてISAエルジーの少女たち見つめる等しく痛々しい要請によって青オレンジを彼を耕せない土地が誰もが悪くなるかどうかパパは死んだ境界のクラリスの引き出しが照らされているのを知っていた何人かがあの太陽を揺らす鬱陶しい石を覚えてルーファスがドアがモンタナにまた戻ってきた少年達の顔が揺れて実現する着ているものをつまんで煙草を喫うまで彼がプラッドのドレスを投げて空気を吸う私たちを。エリーゼは家にいないで冷たく泣いて裸足の書き物をケンブリッジの後でタバコを作って投げられた共有の間で焼かれはしない彼の忘れられたわたしたちの中にいる授業で溶ける女の子を引っかく私たちのそれらを横切るあなたは生きて講義教授をずらしショットガンが廊下を通って隠すことを知っているとき小川は一人で探している。彼らの拒絶をばかげたものにしましょう。私は白がかっていて、眠ったメモが望むので高く伸びた赤いクリスマスは婦女です。束ねられた渦がサクラメントのドレスを被り椅子母は今週頭に踊りに抜け出して私のパッチそれでない水は全ての結婚式が古い壊れた愛科学が言う調節器嫌悪がかかとに座tて父落ちる子銀行熱い白いMIT少したずねる秘書繊維に戻って泣くものの側にタイピストが匂う私に不快な電車が待っている。名前を書いて貼り付け血が黒く流れ落ちた私の知る周りにいる回り廻る周りにいる回るぐるぐる周りに回る周りに回る周りにいる廻る周りて一気に回って家に帰ってくる

M ジョーンズ: ああ、疲れたわ。お水が欲しいわね。

[不明]: ]

M ジョーンズ: ありがとう。何の話をしていたかしら?

[不明]: これです。ファイルの。

M ジョーンズ: ああ、そうでした。見覚えがあるわ。これは私が書いたものでしょう。

[不明]: そう……だと思いますよ。見た限り、あなたはSCP-8976のファイルに書き込みをしていた唯一の人ですから。

M ジョーンズ: もちろんそうよ。そう、誰も読もうとしなかったのよ。でも細心の注意を払って、すっきりと、全てを記録するためにベストを尽くしたわ。

[不明]: これがすっきりとして、細心の注意を払ったと?

M ジョーンズ: 生意気なことを言うわね。

[不明]: いえその⸺いえ、わかりました。すみません。ですが、その、ここの大部分は私には理解できません。

M ジョーンズ: これ?ああ、今ではRAISAは真に有機的組織organismになっているでしょう。もはやクローゼットに閉じこもっているだけじゃない、専用のサイトまであるのよ。活用できるリソースがあったから、私はそれを使ってSCP-8976の活動を遅らせようとしたの。

[不明]: なるほど。ですがあまり上手くいかなかったようですね。

M ジョーンズ: ええ。石を投げて血が出るのを願ったに過ぎなかったわ。

[不明]: ]

M ジョーンズ: 止まらなかったのよ。そして今も。だからってコイツのために屈するわけにいかないのよ。

[不明]: ]

M ジョーンズ: さっき言った通り、私はまだやっているの。管理官には一定の責任があるわ。同じことを繰り返すのは好きじゃないの。

インシデント番号


8976.151

目撃者


ひとり

概要

243mbのraisaの機密データと109.4mbの私の個人的な写真、文章、思い出、計画のパッケージをアップロードした。後者のデータ破損は5分11秒後から始まり、9分59秒で全て消費され消失した。前者は全く触れられなかった。貪欲で、私を欲してる。いいでしょう。

[不明]: ]

M ジョーンズ: それがファイルの最後の項目なら、ええ。そうです。これで終わりですか?

[不明]: ]

M ジョーンズ: 何ですって?どうして評議会が関係あるわけ?

[不明]: ]

M ジョーンズ: 私のファイルに監査はいらない。ジョーンズ管理官なのよ?

[不明]: ]

M ジョーンズ: 馬鹿なことを言わないで。私は退職してない。私はここを作ったの。

[不明]: ]

M ジョーンズ: 私は……いや、私は……やめて

[不明]: ]

M ジョーンズ: それは真実じゃない。止めなさい⸺黙りなさい。

[不明]: ]

M ジョーンズ: 1996年、ビル・クリントン。

[不明]: ]

M ジョーンズ: ……いえ。ここは私のオフィスじゃない。ここはどこ?

[不明]: ]

M ジョーンズ: (過呼吸) 私は⸺ここは何処なの?あなたは誰?

[不明]: ]

M ジョーンズ: (叫んで) アンタは誰よ⁉レスリーはどこ⁈私の赤ちゃんはどこ⁈この⸺私に触るんじゃないよ!出ていけ!

[映像記録破損]

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Elsie Smiling

Ⅷ. また子供時代に戻っている。私はサクラメント郊外の、乾燥していて耕作不能な、太陽に灼けて枯れ果てた土地にいる。父はここでオレンジの木が芽吹くまで血を流していた。白人の少年たちが教会に来ていることを知り、エルシーと一緒にこっそりと小川へ裸足で抜け出したことを覚えている。牧師が病気で、今週は教会が無いことを間違えてすっかり忘れていて、彼らが私たちに向こう岸から石を投げてエリーゼが頭から血を流したのを見て、顔が熱くなったのを覚えている。母のドレス泣いたことを覚えている。母を覚えている。私は母になって、小さて黒い女の子が泣いているのを見ている。父がドアの横でロッキングチェアに座って、ショットガンを持ったまま眠っているのを覚えている。クラスで完全に孤立していたことを覚えている。科学の授業を一緒に受けている数少ない白人の女の子は、私にノートを一切見せようとしなかった。ルーファス・ピアソンに会って、タバコを喫うかどうか聞いたことを覚えている。私たちの結婚式を覚えている。エリーゼが頭から血を流したことを覚えている。ダンスパーティーで男の子が私にタバコを差し出して、それに火をつけて、灰色の煙が空中に渦巻いたことを覚えている。川の岸辺にいた女の子の頭を覚えている。冷たい青の中に赤が溶けていったのを覚えている。名前は知らない。彼らを愛している。全てを覚えている。何も覚えていない。

私はそれでもいい。

RAISA職員による慎重な分析の結果、評議会はSCP-8976文書を以下の理由でアーカイブすることを決定しました。

  • 異常性が立証されていない、かつ/または十分に確認されていない。 … SCP-8976は元RAISA管理官であるマリア・ジョーンズ以外の財団職員によって目撃されたことがなく、ジョーンズ管理官はこのファイルを標準的なアーカイブ化投票から繰り返し保護していました。
  • 主研究者が財団に所属していない。 … 元RAISA管理官であるマリア・ジョーンズは病気を理由としてすでに退職しており、異常現象に関する今後の研究や連絡に参加できなくなっています。

[ピアソンは湖畔にある家の門口の階段を昇っている。時間は夕暮れで、太陽が沈みかけている。彼女の黒いピックアップトラックが砂利敷きの私道に停めてある。彼女はドアベルを鳴らすが、何も起こらない。]

ピアソン: ごめんください

[彼女はドアを力強くノックする。ドアは蝶番が軋む音と共に勢いよく開く。どこかで、鳥がその音に驚いている。]

ピアソン: ママ?
[反応はない。彼女は敷居をまたぎ、指先で壁を探り、電気のスイッチを見つけ出した。彼女はスイッチを押した。何も起こらなかった。]

ピアソン: マジか。ママ?いるの?

[彼女はポケットから形態を取り出してフラッシュライトを取り出す。光線は無数の塵の粒子を捉えて、空気の中を漂った先で突然不安定になっている。]

ピアソン: なんてこと。

[見えているほぼ全ての表面という表面に、黄色いポストイットPost-It、色とりどりの付箋、スコッチテープで貼られたノートの切れ端がびっしりと付いている。玄関ホールの壁全体がそれでおおわれている。ドアの隣にあるテーブルには、キャラメルとばらばらの鍵が入ったボウルが置かれている。床はぼろ布、靴下、その他の衣類が散らばっているが概ね綺麗になっている。ピアソンはホールを進んでいく。]

ピアソン: ママ?私よ。大丈夫?

[反応はない。彼女はホールから、おそらくキッチンだった場所へと抜ける。今は明らかに紙で膨れ上がったファイルの箱が天井まで積み重なって、狭く細い廊下となってしまっている。彼女はあちこち向きを変えて通り抜けなければならない。箱には震えた筆跡で、月と年がシャーピーSharpieで手書きされている⸺1994年4月、2008年3月。特に順序は決まっていないようだ。]

ピアソン: 怖がらせるつもりはありません。ジョーンズ博士。私です、レスリーです。私は、ええと、古いファイルを見直すことになったのでお知らせに上がりました。SCP-8976はアーカイブされました。

[彼女は隙間から抜け出してリビングに到達する。]

ピアソン: (静かに) これはJesus……。

大規模なメモリの断片化

[リビングはつけっぱなしになっているテレビの強烈なカラーバーで照らされている。ピンク、赤、青、緑の光が無数のファイルの箱やVHSテープやCDやDVDやテープレコーダーやノートやマイクロフィルムや新聞紙の山を照らしている。テレビの前にはソファーとコーヒーテーブルがあるが、ふくらはぎの真ん中まで積み重なるメディアの海のせいで、どちらもその上面しか見えない。壁はVHSとカセットのテープがぐらぐらと積み重なって、強迫的にラベル付けされた山でいっぱいに固められている。テレビはDVD、VHS、マイクロフィルム、その他半ダースの旧式のプレーヤーやアクセサリに接続されている。カセットプレーヤーはカチカチと音を立てており、テープが完全には挿入されていない。レスリーは手を伸ばして、テープを中に押し込んだ。カセットプレーヤーはそれを受け取って、僅かな間カチカチと音を立ててから画面が切り替わった。]

大規模なメモリの断片化

大規模なメモリの断片化

[映像は何度も何度も録画されたホームビデオだが、画質がひどく劣化しているため、元々どのような映像だったかを判別することができない。結婚式の衣装に身を包んだ男女が祭壇に立っている姿、カヤックから撮影した湖のショットなどのフレームが存在する。エルヴィス・プレスリーのパフォーマンスが数秒間流れて、その後にルワンダ虐殺のニュース映像が流れる。2人の若い黒人の少女がお揃いのドレスを着てカメラに向かって手を振っている。サウスタワーに向かってユナイテッド航空175便が衝突する。ソ連赤軍がアウシュビッツを解放する。滅菌された病院のガウンを着た男性が赤ちゃんを抱いている。ベルリンの壁が崩壊した。建物の前に立ち、笑顔でブリーフケースを持っている女性。N95マスクを着けてカメラに向かって手を振る老夫婦。クリスマスプレゼントの箱をびりびりにして、ゲームキューブに向かってキャーキャー騒いでいる2人の子供。講義者の群衆に発砲するイスラエル軍兵士。走り去る車。バンパーに括りつけられた缶ががらがらと音を立てている。葬式で泣く女性。芝生に立てられて燃えている十字架。白いフードを被った男たちがそれを囲んでいる。湖畔の家の前でキスをするカップル。映像はどんどん劣化して、灰色のノイズに紛れて分からなくなっていく。テープが排出され、前方に滑り落ち、床に散らばる何千もの映像の海へと沈む。]

大規模なメモリの断片化

大規模なメモリの断片化


ピアソン: ああ、もう。

[彼女は振り返り、壁から適当にポストイットを剥がす。それには何も書かれていない。辺りを見回しても、全て何も書かれていなかった。突然の静寂の中、奇妙で静かな、何かをひっかく音が聞こえた。]

ピアソン: ああもう、そこにいたの。ママ?ジョーンズ博士⁉

[彼女は踵を返して、遠くの廊下からちかちかと明滅する光が来ていることに気付いた。彼女は床に敷き詰められたメディアの海をかき分けて、その光に向かって歩いて行った。引っかくような音は少しずつ大きくなっている。]

ピアソン: ママ?ママ⁈

[彼女が角を曲がると、そこには寝室があった。床に散らばったメディアは部屋の中まで続いている。年老いたマリア・ジョーンズは肘掛け椅子に横たわり、頭を後ろに傾けている。部屋の隅にある蓄音機が、ずっと前に擦り減った古いレコードを回している。音楽はもう聞こえず、鈍い引っかき音だけが聞こえてくる。]

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Elsie

ピアソン: (優しく) ああ、ママ。どのくらいそうしているの?

[ジョーンズが少し身じろぎする。]

ジョーンズ: だ⸺誰だ?

ピアソン: 私よ、ママ。レスリーよ。

[レスリーは携帯電話を持ち上げながら前に進む。ジョーンズは光の中に身を乗り出す。彼女の頭蓋の左半分は陥没していて、血の付いた大きな傷口が開いている。ピンクがかった灰色の脳がその穴から見えて、顔全体に血が固まっている。彼女は目を細めて光を見る。]

ジョーンズ: エリーゼ?

[ジョーンズの背後の暗闇で影が動いた。レスリーは叫び声を上げる。]









































致命的メモリエラー. 最後の安全なページに戻ります…

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